VELVET UNDERGROUND『Live In Dallas, TX: 28 October 1969』 2012.05.17

VELVET UNDERGROUND


権利関係的には“灰色盤”かもしれないが、
13トラック入りのライヴLP。

AB面共にトータル・タイムが29分前後でLPの収録時間の限界ギリギリに近い。
物理的に収録時間が長いほど音質は厳しくなるレコードというメディアの宿命で
ダイナミック・レンジは低めだが、
VELVET UNDERGROUNDの音源を色々聴いている人ならば問題ない音質だろう。

サード・アルバム『The Velvet Underground』をリリースしてから半年経た頃のパフォーマンスで、
ツアーを重ねている最中のライヴだ。
ディスクユニオンのサイトでは、
アルバム・タイトルの日にライヴはやってなくて実際は10月19日の公演ではないかと推測している。
だとしたら
同年の10月と11月のライヴを収めた『1969: The Velvet Underground Live』と近い時期だが、
そのアルバムにも半数近く収めた10月19日の公演と同じ
テキサス州ダラスのエンド・オブ・コール・アヴェニューでの録音と本作にはクレジットされている。

ドローンの音が脱退したジョン・ケイルのヴィオラからダグ・ユールのキーボードになった頃
(このレコードのクレジットではダグの担当パートはベースだけになっているが、
オルガンも弾いていると思われる)。
ルー・リード(vo、g)が完全に主導権を握った“ドローン・ロックンロール”も堪能でき、
特に「What Goes On」が覚醒必至のサイケデリック・テイクだ。
ラストの「Heroin」ではモーリーン・タッカー(ds)の原子ビートも炸裂する。
ファースト・アルバムではニコが歌っていた「I'll Be Your Mirror」「Femme Fatale」は、
スターリング・モリソンがリード・ヴォーカルだろうか。

『1969: The Velvet Underground Live』と大半の曲がダブっているが、
曲の表情が日によって変わるバンドだから同じようにはやっていない。
オリジナル・アルバム未収録曲の
ブルージーな「It's Just Too Much」「One Of These Days」(編集盤『VU』に収録)も披露しているし、
いつまでも出回っているレコードとは思えないからファンは迷わず買いだ。


★VELVET UNDERGROUND『Live In Dallas, TX: 28 October 1969』(B13 B 158)LP
いわゆるジャケット無しだが、透明ビニールのインナー・シート封入。
実際のレコード盤は↑の画像よりも赤みがかっていて濃い紫色だ。


映画『ザ・マペッツ』 2012.05.16

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ディズニーが贈る2011年のアメリカ映画。
人形劇と“人間劇”とのミックスで、
“王道”ならではのアメリカン・パワーに圧倒された。

“マペッツ”は
『セサミ・ストリート』で知られるジム・ヘンソンらが生み出したキャラクターたちのこと。
人形使いが手や腕で人形を操って口の動きに合わせて声を出し、
76〜81年放映のテレビ番組『マペット・ショー』で人気を博した。

本作はマペッツたちに交じって
ゲイリー役で製作総指揮と脚本も担当のジェイソン・シーゲル(『ガリバー旅行記』)、
その恋人のメアリー役のエイミー・アダムス(『魔法にかけられて』)も物語をリード。
悪役としてクリス・クーパー(『アダプテーション』)、
テレビ局幹部役としてラシダ・ジョーンズ(『ソーシャル・ネットワーク』)、
有名人の司会者として指名された本人役としてジャック・ブラック(『スクール・オブ・ロック』)が出演し、
他にも様々な“役者”が多数“援軍”。
デイヴ・グロール(元NIRVANA、現FOO FIGHTERS)など、
様々な人が“カメオ(ちょい役)”で顔を出している。


アメリカの田舎町でゲイリーと育ったマペットのウォルターは。
前述の『マペット・ショー』の熱烈なファン。
結婚間近のゲイリー&メアリーのLA旅行に誘われてハリウッドに出向き、
『マペット・ショー』の殿堂のマペット・スタジオを訪れるもすっかり寂れていて、
石油王が狙っていた。

マペット・スタジオの取り壊しを阻止すべくウォルターたちは、
当時の番組の“ザ・マペッツ”のリーダーだったカエルのカーミットを探し出し、
事情を話して“ザ・マペッツ”の再結成を決意させる。
石油王と交渉して提示された無理難題のハードルをクリアーすべく、
世界中に散っていたマペットの仲間たちを集め、
テレビ局の幹部と交渉して再編“チャリティ・ショー”を行なう。
長年のブランクなどを乗り越えながらリハーサルを重ねてステージに立つが、
当日もすんなりと事は運ばず綱渡りのまま制限時間が迫る。
そしてドラマチックな圧巻のフィナーレに突入する。

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何から何まで鮮やかで明快な映画だ。
映像色といいストーリー展開といい
ディテールにこだわった様々な事物の作りといい、
古き良きアメリカン・テイストをモダンにアップデートしたかのようで、
問答無用にパワフル。
映像と音を身体で感じることで感動が高まるから、
映画館で見る必然性のある映画だ。

なんたってテンポがいい。
いつも書くように映画もリズム感が大切で、
たとえ荒唐無稽なストーリーであろうがリズムがしっかりしていれば最後まで持っていかれるのだ。

実際ミュージカルのように音楽とダンスが盛り込まれる。
本年度アカデミー賞の“主題歌賞”を受賞した主題歌「Man Or Muppet」はもちろんのこと、
50年代っぽい音楽からグラム・ロック風のバラードやラップまで披露。
特に音楽は出演者たちが歌ったりしてないシーンでも挿入され、
STARSHIPの「We Built This City(邦題:シスコはロックシティ)」、
AC/DCの「Back In Black」、
ゲイリー・ニューマンの「Cars」といった、
テレビで『マペット・ショー』を放映していた当時のアメリカでのヒット曲もたくさん使われている。

古き良きアメリカン・カップルそのものでパンチが効いたゲイリー&メアリーらの人物だけでなく、
登場するマペットたちもキャラが立ちまくりだ。
ゲイリーの“兄弟”のウォルターは内気で、
“ザ・マペッツ”のリーダーであるカーミットは温厚だが、
コメディアンやトイレ会社の社長やロックンローラーのドラマーなど
目立ちたがり屋で一生懸命なマペットが揃っている。

表情も非常に豊かだ。
“マペッツ(muppets)”とは“marionette”と“puppet”の合成語の複数形で、
“marionette”も“puppet”も“操り人形”の意味も持つが、
この映画のマペットたちは何者にも操られてない動きでも魅了する。
セリフも絶妙だ。
ディズニーの映画だから汚い言葉はないと思うが、
とぼけたユーモアもたっぷり。
根がシリアスなストーリーの中にズッコケでハッスルな言動が満載で、
映画のエネルギーをアップさせているのである。

むろん単に楽しく前向きなだけの映画ではない。
明快な作りの裏で色々と深読みもできる。
今の世でウケやすい“俗悪テレビ番組”がクレームでオン・エア中止となった穴埋めに、
“キレイ事”“時代遅れ”と言われる古き良き価値観の“ザ・マペッツ”の再編ショーが組み込まれる展開も、
その一つ。
何か“裏”があるとしてもGOOGLEなどの現実の企業名が次々と映し出されることで、
作品全体のリアリティを高めている点も特筆したい。
様々な人種の人間を一般の人物として随所に登場させているのも意図的だろう。
“ザ・マペッツ”のリーダーがアメリカン・マッチョ男子とは対極の優男のカエルで、
彼とのロマンスも見どころの紅一点の歌姫が強気でプライドが高く肉食キャラのブタという配役も、
日陰の生き物にスポットライトを当てた一種の逆襲にも思える。
随所で滲み出る哀愁もたまらない。
恋愛も絡めて素敵な“人間ドラマ”に仕上がっているのだ。


大人も十二分に楽しめるスリリングな快作だし、
親子で楽しめる人たちにジェラシーすら覚える映画である。


★映画『ザ・マペッツ』
2011年/アメリカ映画/1時間42分
5月19日(土)全国ロードショー。
http://www.disney.co.jp/
© Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.


レコード・コレクターズ 2012年6月号 2012.05.15

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●リイシュー・アルバム・ガイド

★ジョン・ケイル『コンフリクト&カタルシス〜ジョン・ケイル作品集
★トム・ロビンソン・バンド『TRB TWO』
★アニマルズ2タイトル
・『ライヴ・アット・クラブ・ア・ゴー・ゴー』
・『ウィズ・ソニー・ボーイ・ウィリアムソン』
★アレルギー『Live at 新宿LOFT 1983.8.31』
★ガガーリン『地球は馬鹿だった』

『The Total Groovy』
★V.A.『The Total Groovy』(DRAG CITY DC507/STP 7)4CD
ピート・シェリー(BUZZCOCKS)のレーベルから80年代初頭にリリースされたアルバム収納の小箱。


Alice Bag『Violence Girl』 2012.05.14

ALICE BAG


70年代後半のLAパンクを代表するBAGSのシンガーだった
アリス・バッグの5つのバンドの曲を一曲ずつ入れたオムニバス・レコード。
●BAGS
●CASTRATION SQUAD
●STAY AT HOME BOMB
●GODDESS 13
●CHOLITA
の曲を収めている。

BAGSはLAパンクではあったが、
もっと細かく言うと本作のジャケットに描かれているようにハリウッド拠点のバンドだった。
ここで聴ける曲「We Will Bury You」もアンダーグラウンドの佇まいながら、
ハリウッドからイメージできる都会的なセンスのパンク・ロックだ。

CASTRATION SQUADは80年代初頭のガールズ・バンドで、
GO-GO’Sのオリジナル・ドラマーのエリッサ・ベロも在籍し、
ゴスとは一味違うダーク・サウンドで“去勢分隊”というバンド名にふさわしいサウンドを聴かせる。

STAY AT HOME BOMBは2000年代前半に率いていたポップ・ハードコア・パンク・バンドだ。
その前にアリスがやっていたのが、
メジャー感たっぷりのメロウなフェミニスト・フォーク・デュオのGODDESS 13。
そしてCHOLITAは80年代後半に活動したポップ・パンク・バンドである。

CASTRATION SQUADをはじめとしてBAGS以外もすべて興味深いし、
彼女はアルバムを出すチャンスにあまり恵まれてなかっただけに
まとまった形でのリリースを望みたくなるレコードだ。


★Alice Bag『Violence Girl』(ARTIFIX SPR033)7”EP


TERRIBLE FEELINGS『Shadows』 2012.05.13

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女性ヴォーカルを擁するスウェーデンのパンク・ロック・バンドのファースト・アルバム。
3枚の7”レコードで発表した8曲とのダブり無しの真っ向勝負で、
さらに奥底へと進んだ珠玉の作品である。

GORILLA ANGREBやVICIOUS〜MASSHYSTERI、BOMBETTESのラインの
2000年代後半以降の北欧パンク・ロックの流れを感じさせる。
と同時にジャケットのメンバーの風貌からもイメージできるような、
サイケデリックやトラッドや60年代のブリティッシュ・ビートとも触れ合った深いサウンドに身震いするのだ。
ほとんどが内に秘めたエナジーを静かに燃焼するパワフルな疾走ナンバーだが、
いい意味でパンク云々を超えた一つの音楽として一つの表現として涙が出るほど素晴らしい。
幽玄とすら言える世界が広がり、
ある種の“魔法”が漂うほど音楽の可能性にあふれている。

CDや他のレーベルのLPだとどう鳴るのかわからないが、
ぼくが買ったLPだと呼吸すら聞こえてくるほど深すぎる音の彫りに痺れる。
ギターとベースとドラムの響きにここまで命が宿るものなのか。
しっかりしたレコーディング作業の賜物というだけではなく、
TERRIBLE FEELINGS自身のピュアな表現力と真摯なミュージシャンシップによるものだ。
ヴィブラフォン、グランド・ピアノ、タンバリン、ハモンド、ハーモニカが彩りを添える
アレンジ・ワークも筆舌に尽くしがたい。

たおやかで翳りを帯びたヴォーカルはますますディープに迫り、
パンクによくある芝居がかった歌い方とは別次元のまっすぐな歌唱に胸が打たれるばかりだ。
歌詞は英語。
一人称はほとんど“I”である。
大半は“わたし”と“あなた”の“タイマン勝負”で、
ここぞというときにしか“we”は使わない。
傷を舐め合う“仲間”は求めず責任は自分が負う。
おのれに向き合って掘り下げなければ先に進めないから。
今置かれている“場所”から突き抜けるべく“I am all alone”と歌う疾走はとてつもなく切ないが、
だからこそ
か弱く見えて強靭なのである。

そんな言葉を追いながら耳を傾けていると泣けてくる。
まさに感動の一枚。


★TERRIBLE FEELINGS『Shadows』(SABOTAGE SABO50)LP+DLクーポン
ジャケットも内袋も味のある紙質で手元に置いておきたくなるトータル・パッケージもグレイト。
レコード盤も重い。
細かいところで多少違うところがあるのかもしれないが、
カナダのDERANGED Recordsからもリリースされており、
CDでも発売のようだ。


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