なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ラッキー』

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イギー・ポップSTOOGES)が主題歌を歌った映画『レポマン』のレポマン役で知られ、
同じく1984年の『パリ、テキサス』では主役を務めつつ、
『断絶』(1971年)や『コックファイター』(1974年)などの濃い映画で脇を固めた名演で知られる、
ハリー・ディーン・スタントンの2017年の主演映画。

俳優として知られるジョン・キャロル・リンチが初の映画監督を務め、
映画監督として知られるも今回は役者として参加のデヴィッド・リンチらが好サポートしている。
アメリカの映画の大メジャーものからカルトものまでフォローし、
ポッ!と出てブレイクしたかと思えばフェイドアウトする一発屋とは逆の役者道を歩み、
ヤバく渋く飄々と無頼であり続けたスタントンの最後を飾るにふさわしい作品だ。

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主役はアパートで一人暮らしをする90歳の愛称“ラッキー”。
言ってしまえばスタントンが“本人役”で出演したような映画で、
スタントンから聞いたエピソードを脚本に活かし、
ほとんどリアル・タイムのドキュメンタリーみたいな調子で仕上がっているのだ。
スタントンは“ラッキー”役を演じてはいるが、
ほとんど地でやっていると思われる。

オープニングでいきなりヤられる。
90年間の人生が刻まれたヴィジュアルを惜しげもなくさらし、
顔はもちろんのことガリガリのボディも強烈だ。
高齢のスタントンを気遣うため計18日間で撮影したことが奏功したエナジーが濃縮されている。

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(デヴィッド・リンチとスタントン)

“ラッキー”はスタントン自身の実際の人生にダブらせた逸話を語る。
豊潤なキャラの人物が次々と登場し、
愛されていることが伝わってくる“ラッキー”を囲む人たちとの交わりの中で自然と話が引き出される。
偏屈だしシニカルながらナンセンスなようで金言も多数だし、
第二次世界大戦/太平洋戦争中に海軍で日本に赴いた時の話も興味深い。

“ラッキー”の言葉遣いもスタントンの普段の“使用用語”に準じていると勝手に想像できるほど、
不愉快な時に吐き捨てる卑語も痛快である。
スタントンだけでなく他の俳優のしゃべりも聞き取りやすい英語がほとんどだから、
日本語字幕を見ながら独り言や会話の言葉の妙味も楽しめる。

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おのれの“最期”が近いことを自覚した言葉の数々も生々しいが、
クロスワード・パズルに熱中する一方で、
嫌煙なんて知ったこっちゃないタバコの吸いっぷりも痛快だ。
喫煙に限らずグローバルに広がってきている行き過ぎの“潔癖症候群”に中指を立てていることが、
浮世離れした佇まいそのものからひしひしと伝わってくる。

禁煙の飲み屋で常連にもかかわらずカマす終盤の一シーンがカッコよすぎるし、
そこからラストに向かう流れがまた見事としか言いようがない。
昨年9月に91才で他界したスタントンならではの“遺書”のような快作だ。

スタントン出演作のイメージそのもので匂ってくるほどアメリカの激臭が染みついた映像色も特筆したい。


★映画『ラッキー』
2017年/アメリカ/88分/英語/シネスコ/5.1ch/DCP
3月17日(土)新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。
http://www.uplink.co.jp/lucky/


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レコード・コレクターズ 2018年3月号

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●書評『ブラック・メタル サタニック・カルトの30年史』


●リイシュー・アルバム・ガイド
★モーターヘッド
・『モーターヘッド40周年記念盤』
『アンダー・カヴァー』
ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ『L.A.M.F.~Lost 77 mixes(40周年記念盤)』
ジョニー・サンダース『ライヴ・イン・ジャパン 1991』

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映画『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』

『The Beguiledビガイルド欲望のめざめ』第二弾ポスター


フランシス・コッポラの娘であるソフィア・コッポラ監督の最新作。
1971年に映画化された作品(邦題は『白い肌の異常な夜』)のリメイクとも言えるが、
これぞ映画!と膝を打ちたくなる傑作だ。

昨年の『パーティで女の子に話しかけるには』でも競演したニコール・キッドマンとエル・ファニング、
『ヴァージン・スーサイズ』『マリー・アントワネット』のキルスティン・ダンストが中核女優で、
本作唯一のメイン男役はコリン・ファレルである。

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舞台は1864年の米国東部バージニア州。
一種の内戦の南北戦争から隔離された女子寄宿学園に暮らす南部側の7人の女たちは、
脚に重傷を負った北軍兵士を手当し、
“敵軍”ながらキリスト教の教えに従い回復するまで面倒を見ることになる。
男子禁制の園に突如ワイルドかつハンサムな男性が加わったことで女たちは戸惑うも、
紳士的かつ社交的な男の対応で女たち全員が浮き足立っていく。

一人一人に思わせぶりな態度をとる男に対して7人の女たちもさりげなく自己アピールをするが、
次第に互いを牽制しあうとはいえ、
教師も幼い生徒も突如アクセサリーを身につけるなどのかわいいアプローチが中心。
女の戦いというより無邪気な戯れにも見えた。
とはいえ女たちをたしなめて北軍兵士にキツイことを言っていた園長は、
女たちの本音を代表するかのようにケガの治療で久々に触れた男の肌の感触でに胸の高鳴りを覚える。
年長の一人の少女は男に対してあからさまな視線を隠させない。
そういった女たちの気持ちに応えるように適度な距離感で一人一人と心のふれあいを楽しんでいくうちに、
男は脚のケガが回復してきてエネルギーをもてあましていた。

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以上の中盤までの心理戦に息を呑む。
じりじりした静かなる緊張感だからこそゆっくりと覚醒されていく。
ほとんどの行動がしめやかに、ひそやかに行なわれている。
たとえ“業務”だとしても女たちが他人の目を意識してこっそり男と接している様子がよくわかる。
一人一人のデリケイトな心の動きとその交わりを、
緻密な脚本、シンプルなセリフでていねいに描き綴っていく作りに舌を巻く。

中盤までは落ち着いた展開ながら一瞬たりとも目が離せない。
音楽と同じく映画も意識の流れが大切だとあらためて思わされる。
もちろんグレイトな映画すべてがそうであるように物語の筋を追わせるだけで終わらず、
研ぎ澄まされた映像色も特筆したいところだ。
音楽は映像に溶け込ませる必要最小限の使い方で、
観ている時に何か物音を立てることに気を使ってしまうほど静謐。
だからこそ緊張感が途切れず、
素のままの音声ならではの生々しい空間に飲み込まれていく。

『The_Beguiledビガイルド_欲望のめざめ』ティザーポスター_convert_20180127182422

必ずしも全員がいわゆるお嬢さんではないようだが、
熟女も少女も品のある淑女そのもののストイックな佇まいが圧巻だ。
もちろん今より女性が奔放ではない時代だし、
この頃は南北戦争の真っ最中だから自由は制限されていただろう。
服装にも近いものを感じる乃木坂46から俗っぽさを削ぎ落したような…
と書いても安っぽくなるほど別次元の雰囲気で、
世間から隔絶された空間ならではの禁断の香りに覆われている。
彼女たち一人一人の個人的な背景にあまり言及してないのも、
脇道にそれずに神秘性を高めると同時にテーマの焦点を絞ることに一役買っている。

いわゆるエロいシーンに頼らずとも全編エロティックな匂いに包まれていてとろける。
強烈にアピールするエロを否定はしないが、
醸し出されるものの深さをあたらめて思い知る。
性的な場面も要所要所で極めて限定的に挿入しているからこそそのインパクトは深く、
上品だから淫らなギャップも無限大だ。

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さりげない仕草の一つ一つにまで神経が行き届いた全員が好演だが、
僕としてはエル・ファニングにまた会えてうれしい。
『アバウト・レイ 16歳の決断』『20センチュリー・ウーマン』ほど表に出る役ではないが、
そうでなくても目立つ年長の早熟少女を演じてクールなオーラを放っている。
映画の中でも要所でシャープな存在感を放ち、
男が混入しても無意識のうちに目上を立てることでかろうじて保たれていたこの“女の園”の秩序を
小悪魔では済まない蠱惑的な魅力で破壊。
この映画の物語の流れを一気に急転させた恐るべき19歳である。


“欺かれし者”とも訳せる『The Beguiled』という原題も強烈だ。
女たちがそうなったとも解釈できるが、
後半の男はこういう感じになってしまっている。
無理もない状況下とはいえ男の自業自得ながら、
ハーレムから天国に行きかけたところで地獄へとまさに転がり落ちる流れが恐ろしい。
女たちも悪気はなかったのだろうが、
学校としての体面もあったのか乱された秩序を元に戻すべく、
ジェラシーを超えて寒々とした一致団結による最後の処置がさらに恐ろしい。

映画を観ている劇場内の温度を揺さぶるほどの凍てついた熱気に飲み込まれていく必見作。


★映画『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』
原題 The Beguiled/2017年/アメリカ/93分
2018年2月23日(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国公開
©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
http://beguiled.jp/


LEPROUS at 渋谷クアトロ 1月30日

LEPROUS『Malina』


ノルウェーのLEPROUSの来日公演があまりに素晴らしかった。
前回の東京公演の倍近く入っていたと思われるお客さんとの交感が肌で感じられ、
クールなのに芯から熱いライヴに目が覚めるばかりだった。

EMPERORイーサーンのソロ・プロジェクトで長年バックを務めてきたバンドという流れで、
ヘヴィ・メタルのファンの方がたくさんいるのは接点が広がってたいへん嬉しいが、
LEPROUSはメタルを突き抜けている。
いつも書くようにメンバーが大好きなRADIOHEADやMUSEとも大いにリンクするから、
その筋の音楽ファンの方もどんどん痺れていただきたいとあらためて思った。
リズムで接点があるKING CRIMSONやNEUROSISが失った音のガッツにも突き動かされた。

ただライヴを体感した上であえて言うなら、
メタルのリフを使わないでメタル感覚を錬金してステージでもヘヴィな空気感を創造する。
いわゆるメロイックサインなどのメタルなアクションでお客さんが応えるのも当然だ。
硬く重くグロテスクな音像は“真性のメタル”とも言えるし、
そういう観点も含めてルー・リードにも通じるほど真正のロックである。

そして研ぎ澄まされたサウンドが意識を覚醒させる。
RADIOHEADやMASSIVE ATTACKをこよなく愛する人ならではのエレクトロニクスを操りつつ、
メタルやパンクやハードコアやポップスよりシャンソンに近い歌声のヴォーカルが象徴的だ。
弦楽器の3人のバッキング・ヴォーカルも、
曲やパートによって入れ替えるのがこれまた絶妙。
さらにドラムだけでなく2本のギターやベースも音をパーカッシヴに打ちつけてくる。
インテリジェンスに富むバンドでありながらかなりの肉体派ということも、
こっちの肉体に音が直撃してくるライヴだと一層実感する。

ライヴ・パフォーマーとしての端正なヴィジュアルも、
奇をてらったことを一切してないにもかかわらず他にないタイプだ。
ちょろちょろ動き回ることはしないが、
弦楽器の3人は自分の持ち場をキープしつつ左右前後にゆっくりと移動する“ステージさばき”が
ナチュラルかつアーティスティックで美すら感じた。
リード・ヴォーカリストはキーボードを弾きながら歌うよりもハンド・マイクで歌うパートの方が多く、
ところによってはRAMMSTEINのシンガーを思わせるほど激しく腕を振り上半身を動かす。
もちろん脱いで上半身裸になったドラマーはまたまた大活躍で、
勢いあまってときおり立ち上がるなどの煽りや派手なシンバル・ワークもまたまた堪能できた。
ナチュラルな真剣顔も含めてとにかくプレイしている5人の姿そのものがシンプルにカッコよく、
ステージ後方に流されたアブストラクトな映像も効果的に重なっていた。

クールな“気”や“念”、
表現に対する誠実さがすべてから放射されていたグレイト・ライヴ。
終演後にステージ前方で肩を組んで一礼をした5人の笑顔も、
演奏中がストイックなだけにギャップがとても素敵だった。


MARMOZETS『Knowing What You Know Now』

MARMOZETS『Knowing What You Know Now』


女性ヴォーカルを擁した1組の“きょうだい”と1組の兄弟から成る、
英国のオルタナティヴ・ロック系バンドによる約3年ぶりのセカンド。

ヴォーカル、ギター2本、ベース、ドラムという5人編成で、
曲によっては男性のバッキング・ヴォーカルも入り、
ところによってはプログラミングも使っているようだ。
オルタナティヴ・ロックに分類されそうだが、
しいて言えば90年代のではない2010年代のオルタナティヴ・ロックである。

ポップでヘヴィな雑種サウンドが曲によって様々な表情を見せていく。
本作をプロデュースしているギル・ノートンがかつて手掛けたPIXIESとFOO FIGHTERSに、
QUEENS OF THE STONE AGEとMUSEとRADIOHEADをミックスし、
さらにたっぷりGARBAGEをブレンドしたかのようだ。
シンプルなエイト・ビートでドライヴするパートも多く、
スピード感が絶えないドラマーのリズム・センスも良い。

女性シンガーは時に妖女の表情も覗かせる魔性のヴォーカルだが、
エキセントリックに見えて
しっかり歌える。
しっとり濡れた声で静かに歌い上げる曲もしんみり聴かせてくれるのだ。

今後も楽しみな一枚。


★マーモゼッツ『ノウイング・ホワット・ユー・ノウ・ナウ』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-17973)CD
日本盤は1曲追加の計約48分13曲入りで、
本編の歌詞とその和訳が載った24ページのブックレットも封入。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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