なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

RYO FUJITA『HITO.RI.GOTO』

藤田亮


柳川芳命などの様々なミュージシャンと共演する一方で須原敬三らとバンド活動も行ない、
大阪拠点に多彩な活動を繰り広げている1976年生まれの藤田亮の新作。
いわゆる他の打楽器類も使っているように聞こえるが、
オーヴァーダビング無しのドラム独演一発録りと思しき約22分1トラック入りだ。


藤田がインスパイアされたバンドCHAOS UKの83年のファースト・アルバムを思い出すジャケットだが
(ちなみに裏面[↓の画像]はINUの『メシ喰うな!』)、
パロディというよりオマージュの気持ちが感じられる。
音の方はノイズ・コアではなく、
あえて轟音と正反対の、ちいさな、ちいさな音で勝負したかのようで、
ジャケットの4つの黒い四角形を手描きしたことに象徴されるように、
音も手作りの佇まいだ。

祭太鼓みたいなリズムやマーチング・ドラムのリズムも息をしていて、
いわゆるロックのリズムとは一線を画す。
かといってジャズでもなく、
いかにも民俗音楽とも違う。
原始のリズムであり、
太古(ancient)からのリズムにも聞こえるが、
すべては藤田自身の律動である。

実際は使っているのだが、
バス・ドラム(キック)の音はほとんど聞こえてこないほどの打ち方だ。
スネアの音は転がり、
ところによってはスティックを使わずに手で叩いているようでもある。
たいへんデリケイトにシンバルを多用しているところも特色で、
個人的には様々なジャンル含めて最近の作品ではあまり聴いたことがないほど高音域が際立つ。

静寂を司り、
贅を削ぎ落とし殺ぎ落とし、
研ぎ澄まされている。
精気が静かに息づく覚醒の調べに、
霊魂(soul/spirit)を呼び起こすような意志と意思が宿る。
祈祷の音楽といっても過言ではない。

灰野敬二のパーカッション・ソロ・パフォーマンスも思い出す。
ただし藤田はドラム・セットを使っていると思われ、
いわゆるロック・バンドのドラム・ソロのダイナミズムも内包しているのが嬉しい。

マイクの立て方などの録音方法やマスタリングなどにも気を配ったと思しき、
音の定位が見えてくる立体感抜群のレコーディングの仕上がりも特筆したい。
ドラムを打っている腕の動きも見えてくるほどだ。
だからこそヴォリュームによって聞こえ方が違い、
ヴォリュームを下げてもドラム・セットの各部分の響きがしっかり聞こえてくるが、
それでもなお“プレイ・ラウド!”とも言いたくなる。

確かな個性が光る一枚。

藤田亮 ジャケット裏

★RYO FUJITA『HITO.RI.GOTO』(No Label, No Number)CD-R
薄手のプラケース仕様ながら厚手の紙のしっかりした作りのジャケット封入。
https://www.facebook.com/rfujita3


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映画『逆行』

逆行_poster


ドナルド・サザーランドとフランシーヌ・ラセットの息子のロッシフ・サザーランドが主演を務め、
東南アジアのラオスをメイン舞台にした初の北米産の映画になる2015年の作品。
異国の地で“事件に巻き込まれた男”が逃走する話だが、
カー・チェイスや血が炸裂するアクションものとは完全に一線を画す目が離せない佳作である。

逆行_sub2

ラオス北部でNGOの医療活動に従事して救える命はあきらめずに救おうと試みるアメリカ人のジョンは、
激務で疲れきった心身を癒すためにラオス南部のリゾート地を訪れる。
そこで“犯罪現場”に出くわして人助けをするも、
やりすぎた“正当防衛”と“誤解”で懸賞金付の指名手配をされてしまう。
無政府状態ではないとはいえ独裁政権下だけにラオスの司法はアメリカと違うし、
捕まったとしてもしっかりした裁判が行なわれるのか素朴な不安も抱いたのか、
包囲網の中であるにもかかわらずジョンは逃げる。
おのれの脚、自転車、舟、盗難車、バス、友達が運転する車などを使って逃げる、
母国への“帰還”を目指して。


とてもわかりやすい物語だ。
シンプルなストーリーをいかにふくらませるかに注いだ情熱が加速している。
表現に対するそういう取り組みは、
シンプルな構成の曲をいかにふくらませるかという音楽ジャンルのロックンロールにも似ている。

逆行_main

二転三転どころか四転も五転もしていくつもの山あり谷あり川ありの展開をする脚本がまず見事だ。
場面の流れに無理がないし関係する国の情勢などを考慮しながらリアリティを高めている。

ドイツの実験的な音楽プロジェクトTROUMが大胆に挿入するアンビエント/ドローン・チューンも、
シーンにふさわしい磁場を作り上げている。

本作が初の長編映画監督作になるジェイミー・M・ダグは、
カナダのBROKEN SOCIAL SCENEやBEDOUIN SOUNDCLASH、
アメリカのBLACK REBEL MOTORCYCLE CLUBなどの
ミュージック・ヴィデオを撮ってきた映像作家である。
そういう経験を活かしてリズミカルな音楽が持ち得るダイナミズムそのものの映画に仕上がっており、
まったりと佇みつつも映画全体がエモーショナルに疾走もしている。

逆行_sub1

映画を音楽にたとえて曲が脚本だとしたら音に当たる映像力も素晴らしい。
基本的に映像は鮮明ながらクリアーすぎずクリーンすぎない映像は、
土臭く、泥臭く、濁水臭いからこそ、人間の匂いがとろけるように鼻を突く。

監督によれば撮影中には「独裁主義政府の妨害に直面」したとのことだが、
そういったトラブルも“味方”につけて醸し出された緊張感の中で、
ラオスやタイの自然の風景や生活の場の情景をしっかり映し込んで空気感が漂っているところもポイント。
ほとんどが地方都市や田舎での撮影と思われ、
木や水のある自然はもちろんのこと自動車や舟などの一つ一つが見どころになっていて、
なんとも言えないアジアの情趣に包まれ続ける。
そういうのんびりしたシーンと緊迫シーンの落差でも持っていく映画だ。

クローズアップや陰影を有効に使った撮影も特筆すべきで、
いい意味での粗削りの作りゆえに人物描写が実に生々しい。
適度なブレもスピード感を高めることに一役買っている。

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主人公のジョン以外に目立つ役回りの人はほとんど出てこない映画だが、
人と人とのつながりも見どころで、
ハードな状況下でのリアルな友情も見て取れる。
とにかく味のある演技力でも引き込んでいくのだ。

政治家の息子である“送り狼”オーストラリア人観光客、
ラオスのバーの若い女性客、
ラオスのバーテンダー、
ラオスの宿の“女将”、
ラオスの警官、
ラオスとタイに在住のアメリカ大使館員、
ラオスのヤクザみたいな男たち、
顔なじみのラオス人の運転手、
タイの“国境警備隊員”、
などなどの人物がいくつもの節目で登場。
そういった脇役やチョイ役の人たちのさりげないキャラが場面ごとにドラマを盛り立てている。

逆行_sub4

主人公のジョンが熱演であることは言うまでもない。
ストレートな正義感に貫かれた人物だが、
押しつけがましい熱血漢とは一味違う臆病な面も全身から噴き出している。
“聖人”ではないからこその人間味が滲み出ている。
必死だから逃走に際して“犯罪”に手を着けざるを得なくもなるが、
そんな中で心の奥底から湧き上がってくる恐怖や焦燥や葛藤といった感情をしっかり描き込んでいる。
そういった一種のネガティヴな思いを逆にエナジーとして燃え上がらせ、
まさに“Run for my life”し続けていたのだ。

逆行_sub5

昨年終盤に大ヒットしたテレビ・ドラマのタイトルの『逃げるは恥だが役に立つ』は、
ハンガリーのことわざの引用だという。
確かに現実はそのフレーズが意味するとおりだし、
人間に限らず時に生き物は逃げなければ生き延びられない。
そのためにはなんだってやることもこの映画は示してもいる。

しかし、だ。

あと一歩で“解放”されるというのに見て見ぬふりをできない男がいる。
“義”のためであり、
おのれに“落とし前”をつけるために男は“逆行”する。
太宰治の『走れメロス』も思い出すこの“逆行”に静かなる感動を禁じ得ない。

正直者は馬鹿をみるのか?
結論を決めつけないラストも心地良い余韻を残す。


★映画『逆行』
2015年/カナダ・ラオス/英語・フランス語・ラオ語・タイ語/カラー/DCP/シネスコ/88分
監督:ジェイミー・M・ダグ
出演:ロッシフ・サザーランド(『ハイエナ・ロード』)、
ヴィタヤ・パンスリンガム(『オンリー・ゴッド』)、サラ・ボッツフォード他
3月11日(土)、ユーロスペース他にて全国順次公開。
配給:エスパース・サロウ
レイティング:G ©2015 APOCALYPSE LAOS PRODUCTIONS LTD.
公式HP:gyakko.espace-sarou.com


ダムドのドキュメンタリー映画DVD『地獄に堕ちた野郎ども』

damned_DVDjk.jpg


英国のパンク・バンドであるDAMNEDの昨年日本でも公開されドたキュメンタリー映画のDVD。


本編に関しては既にたくさん書いたから、
映像特典について軽く触れておくと以下のとおりである。

●オリジナル予告編。
●キャプテン・センシブル(g/b/vo)とフレッド・アーミセンのトーク+の街頭演奏等。
●ゆかりの地を訪れるなど場所を変えながらDAMNEDデビュー前を18分ほど語り倒す
キャプテンの“独演トーク”(コンサート・ホールでの仕事+DAMNEDの前のJOHNNY MOPED時代+
曲を作ったスタジオ+生家の前での昔話など)。
●キャプテンやラット・スキャビーズ(ds)らが明かす、
SEX PISTOLSとの76年の“アナーキー・ツアー”にまつわる秘話が約13分。
キャプテン/ラットや関係者がマルコム・マクラーレン批判も展開。
●キャプテンとラットとヘンリー・バドウスキー(元CHELSEA~DOOMED)が語る、
DAMNED一時解散中に行なったDOOMEDの頃の話を約8分。
●キャプテンの60歳のバースデイ・パーティ・ステージ他における「Smash It Up」のライヴ。

こちらでもやっぱりキャプテンの“ハッピー・トーク”が聞きどころだ。


★『地獄に堕ちた野郎ども』(キング KIBF 1456)CD
本編約111分+特典映像計約49分。


『洋楽ロック&ポップス・アルバム名鑑 vol.3 1978-1985』(本)

洋楽ロックポップス・アルバム3


レコード・コレクターズ誌増刊として出た『洋楽ロック&ポップス・アルバム名鑑』の第三弾。
計48タイトルのアルバムを書かせてもらいました。


今回も米英のナショナル・チャート上位に入ったヒット・アルバムがほとんどを占めるテーマの本だが、
リアル・タイムで聴いたアルバムがほとんどなかったvol.1vol.2とは違い、
個人的に今回はリアル・タイムで聴いたものが多かっただけに色々とはせる思いがあった。
やっぱりリリースと同時代に体験しているものは後追いのものと違い、
あらためて聴くにしても当時の自分の気持ちや色々な状況をダブらせて楽しめ、
普段あまり抱かない懐かしい気分にも浸った。
とはいえロックだけでなくヒットしたポピュラー・ミュージック作すべてを含むため、
ページをめくっていくと結局この本に載っているアルバム自体は聴いたことがないものが多かった。
とはいえ、
当時かじりついたラジオから流れ続けて嫌でも覚えたシングル曲だけは聴き馴染んだアーティストも多い。

自分が書いたアルバムを今回聴き続けてあらためて気づいた。
特に80年代前半の米国のヒット・アルバムは“糖分脂肪採りすぎ”で“カロリー過多”の音が目立ち、
こういうのばかり浴びていると“全身の胃がもたれる”ほどで“脳ミソがメタボ必至”と思った。

この時代のパンク云々の観点で見ると、
英国のパンクはまだ当時ヒットした自国のアーティストとリンクする部分が多少ある。
といっても、
多少ナショナル・チャートに食い込んだアルバムもあったにせよ
80年代にレコード・デビューしたパンク・バンドはチャート上位には入らなかったため一つも載ってない。
70年代デビュー組もSEX PISTOLS、CLASH、DAMNED、JAM、STRANGLERSのみの収録で、
彼らがなぜ“(英国)5大パンク・バンド”と呼ばれてしまっているかを客観的な事実で突きつける。
かたや当時の米国のパンクは自国のヒット・アルバムと接点がほとんどなく、
この本に載っているパンク・ロック・アルバムはRAMONESの『End Of The Century』一枚だけで、
洗練メイン・ストリーム・ロックの反動でUSハードコア/地下ロックが生れたことが納得もできる。

もちろんジャケット写真はオールカラーでしっかりした印刷で仕上げられているから
ページをパラパラめくって眺めているだけでも当時の匂いが香ってくる重み十分の本だ。


このシリーズは今回でひとまず終了とのことだが、
この後の混乱の時代の本も見てみたくなる。


★『洋楽ロック&ポップス・アルバム名鑑 VOL3 1978-1985』
湯浅学監修
定価2400円(本体2222円)
A5判312ページ


GUEVNNA『Heart Of Evil』

GUEVNNA『Heart Of Evil』


2011年から東京拠点に活動しているスラッジ/ストーナー/ドゥーム・ロック・バンドが、
昨年10月にリリースしたファースト・フル・アルバム。

元COFFINSのヴォーカルとツイン・ギターを含む5人編成でレコーディングを行ない、
いい意味でメジャー感もある作りで一気に聴ける。

まずパンク/ハードコア/メタル含めてラウドな音のバンドの日本制作のCDによくある
ベッタリして奥行き無しの平板な音の仕上がりに陥ることなく、
位相感のあるレコーディングの音像を特筆したい。
RELAPSE Recordsからリリースされているバンド群にも通じるダイナミックな音作りなのだ。
キャッチーとは言わないまでも全曲フック十分のソングライティングも光る。
よく練られている音だし、
臆せずギター・ソロが入る曲も練られている。

といってもむろんメイン・ストリームから外れたアウトローのヘヴィ・ロックであることは間違いない。
クサと土の匂いが香り、
ブルージーなところはEYEHATEGOD
ノリノリのところはBONGZILLAを思い出す。
滑らかなグルーヴィー・サウンドがゆっくりとドゥーミーにドライヴし、
ロックしていることが何より重要だ。
スロー~ミディアム・テンポだけでなく完全な疾走チューンもやってのける。
OBITUARYの根がロックンロールであるのと同じように
GUEVNNAも根がロックンロールと言ってもいいのではないか。

楽器の音と同じくらいのバランスでスラッジーな不良ヴォーカルも炸裂。
歌詞カードは付いてないが、
いわゆるアルバム・カヴァーのジャケットの紙の他に、
全8曲のヴィジュアル・イメージと思しき画が描かれた厚手の紙の“インナー”が8枚封入されている。

ドライなようで、
さりげなく侘び寂びが効いていて聴き応えありありの一枚。


★ゲヴンナ『ハート・オブ・イーヴィル』(3LA -LongLegsLongArms- 3LA-017)CD
約44分8曲入り。


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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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