なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

レコード・コレクターズ 2017年10月号

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●リイシュー・アルバム・ガイド
★ハード・スタッフ
・『ブリットプルーフ』
・『ボレックス・ディメンティア』
デヴィッド・ボウイ『クラックド・アクター~ライヴ・ロサンゼルス '74』

RAMONES LEAVE HOME
RAMONES『Leave Home 【40th Anniversary Deluxe Edition】』(RHINO R2 559753/08122794027)3CD+LP


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MADAME EDWARDA『Illuminé(イリュミーヌ)』

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“ダーク・ウェイヴ”の枠に収まらない表現を続けている、
東京のバンドのMADAME EDWARDAが1986年の1月にリリースした“第一期”の最終作のCDリイシュー。
現在もMADAME EDWARDAを率いるZIN(vo)のメール・インタヴューの回答も盛り込みながら、
ライナーを書かせてもらいました。


『ヒステリックな侯爵夫人』に続く実質的なセカンド・アルバムのヴォリュームで、
今回が初のリイシュー/初のCD化である。
当時インディーのロックに注目していてサブカル雑誌だった『宝島』で知られるJICC出版局が、
遠藤ミチロウの『ベトナム伝説』やP-MODELの『SCUBA』、
日本の6つのパンク・バンドを収めた『The PUNX』に続いてカセット・ブックで発売した。


曲の切れ目がわかりにくかったカセットとは違い、
曲ごとにトラック・ナンバーが表示されるCDのフォーマットで曲の区切りがはっきりわかる。
オリジナル・カセットよりも音の分離とパンチが増したCDながら、
本作の魅力の一つである骨董感が醸し出された生々しいアナログな音に仕上がっている。

音楽的にはそれまでのMADAME EDWARDAの流れをくむ“ゴシック”ポスト・パンクの曲も含みつつ、
チェンバー・ロック、プログレ、トラッド、クラシックの要素もたっぷり。
4人のメンバー全員が参加したいわゆるバンド形態にこだわらず、
ZINがキーボード類を演奏した小曲も含み、
架空のサウンドトラックとも言うべきコンセプチャルな仕上がりだ。


アートワークも丁寧な作りになっている。
オリジナルのカセット・ブックは、
B6サイズに近い大きさの三つ折り状のプラスチック製のケースに
カセット・テープ+ケースとほぼ同じサイズの68ページのブックが収納されたパッケージだった。
今回の二つ折り紙ジャケットのアルバム・カヴァーはそのケースの表裏のデザインに準じている。
24ページのブックレットは左開きながら元々のブックのデザインを尊重し、
右開きだったがゆえにオリジナル版のブックでは縦書きになっていた歌詞/詩の一部を横書きに組み替え、
画/コラージュも含めてのアート部分は漏れなく凝縮レイアウトされている。
オリジナルのブックから削除されたのは、
一部のバンド写真と巻末に載っていたメンバーの自己紹介コーナーとバンドのプロフィールぐらいである。


当時リリース数か月後に(一時)解散したためか評価が立ち切れてしまった印象もあるだけに、
今一度評価されてしかるべき作品だ。


★マダム・エドワルダ『イリュミーヌ』(WEIRD WEIRD-4)CD
約51分19曲入りの厚手の二つ折り紙ジャケット仕様。


映画『静かなふたり』

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2011年の『ベルヴィル・トーキョー』に続く、
74年フランス生まれのエリーズ・ジラール監督による長編2作目。
快作と呼ぶにはまさにbittersweetな甘く苦すぎる映画である。
オッサンの視点ではなくアラフォーの女性監督ならではの観点で、
“年の差カップル”をロマンチック&シビアに描く佳作だ。


主人公は27才の女。
行きつけのカフェで目にした
“貸し間:ワンルーム 家賃:数時間の労働 当書店「緑の麦畑」へ来店のこと”という貼り紙に反応して、
まもなくそのパリの古本屋を訪れる。
頑固そうな70才弱の男が運営していたが、
その二階の部屋に猫と引っ越して働くことを決める。
商売っ気ゼロのその男はちょっとした変人だったが、
労働賃金以上の“金銭援助”に戸惑いつつワケありの男とわかってからも女は惹かれていく。
男の方も女をただのアルバイトとしては見ていない。
出会ってからお互いが何かから解き放たれていったようである。

でもなかなか“一線”は越えられない。
というかいつまでも“一線”は越えない。

ある日ぽっかり心に穴が開いた女が映画館にインドの映画『チャルラータ』を観に行くと、
書店主とはあらゆる点で対照的な男が隣に座ってきた。

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例によってネタバレを極力少なくするため思い切り省略して話の流れを書いてみた。

まずフランス臭い映像センスにしょっぱなからヤられる。
パリの媚薬はこんな匂いだろうと想像させる気温が低そうな寒色の映像のだ。
奇をてらわずに大胆なアングルや対象との適度な距離感も申し分ない。
グレイトな映画のすべてがそうであるようにまず映像そのものに持っていかれる。

カット割りも絶妙だ。
長回しせずに比較的細かく切っていて一つのシーンを長く続けないからこそ、
落ち着いた映画にもかかわらずテンポの良さを生み出している。
グレイトな映画のすべてがそうであるように無駄な部分をさりげなく削ぎ落し、
最近の映画では珍しい長さの70分に濃縮した編集が素晴らしい。
さっぱりしている。
いい感じで乾燥している。
淡泊というより淡い。
パリの街並みの映し方も静謐でゆっくり迫ってくる。

こういったところがデリケイトに撮られているからこそ女と男の意識の流れも浮き彫りになっている。

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最近の日本映画に目立つ“自分の身の回りのこと”に絞ったような物語の映画にもかかわらず、
えらく普遍的で深い。
身内ウケみたいなノリとは百万光年かけ離れている。
意識が外に向いているからである。

女と男の静かなるキャラ立ちがとても自然だ。
女は自分を「つまらない女」と卑下する。
「気ままに生きよう」と言う男は気難しく偏屈で、
政治問題に関してシニカルだし人生に対して冷めている。
孤独者同士で世代間で生じる価値観の違いを楽しんでいるようにも見える。

女と男の遠慮のないトークが楽しい。
ウィット・・・いやまさにエスプリが効いている。
インテリジェンスに富むが、
フランス映画につきまとうスノッブとは違うしインテリ気取って難しい言葉を使うようなことをせず、
会話がとてもわかりやすいところも特筆したい。

とはいえ“デート”は沈黙の時間が長い。
言葉を必要としない二人とも言えるし、
お互いの“腫れ物”に触れつつ、
お互いが“一歩踏み込むこと”に躊躇しているようにも映る。
そのジリジリした時間がもどかしいが、
そのジリジリした時間が二人の最高のしあわせの時間だったようにも映る。

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すべて聴き逃がせない“会話の見せ方”にもうならされる映画だ。
もちろん大半は会話と一致した通常の映像で構成されているが、
ロマンスめいた言葉に限って実際に語っている場面ではなく二人のイメージ映像が使われている。


女「孤独を感じないの、生まれて初めて」

男「君を信じている」
女「私を信じてくれた人は初めて」

男「夕べ、君と愛し合う夢を見た」
女「私も」

女「ジュテーム(Je t'aime~愛している)」
男「私もだよ」

女「私は大人。あなたは反抗する子供」

女「あなたは愛が足りない人だから」


二人の関係の肝になるこういったセリフが、
実際に二人の間で交わされていたというよりは、
女がカフェや自室でノートに綴っている妄想や夢想や願望に思えてくる作りに痺れるばかりだ。

そんな女が繰り返す“独り言”は、
「年が近かったらよかった」。

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僕はこの映画の女にも男にもシンパシーを覚える。
特にこの男、
置かれている状況も年齢も違うが、
反核デモに対する意見も含めて“ファック・ユー!”アティテュードがとても他人とは思えない。
観ていて何度も笑ってしまったが、
爆笑というよりは“くすっ”“プッ!”といった類いの笑いである。

そんなふうに笑っていたからこそラストに至る物語の流れには複雑な思いを抱いた。
ネタバレしないように映画を観てない方に向けてこのブログは書いているから思いを封印するが、
男は自分の殻を破れてしあわせになっている娘を見る父親の気持ちなのだろうか。
ポリティカルな問題も含めて、
女の選択がリベラルかつ現実的で自然と言えばそのとおりだ。
それほどまでにクールなほろ苦さを味わうために、何度でも、何度でも、観たくなる。

さりげなく挿入される音楽も粋だ。
ただ物語を追わせるだけに終わらず時間が経つにつれて酔いが強くなるワインの如く芳醇な、
まさに映画ならではの“五感表現”に痺れるしかない。
オススメ。


★映画『静かなふたり』
2017年|原題:Drôles d'oiseaux|フランス|カラ―|73分
出演: ロリータ・シャマ(『マリー・アントワネットに別れをつげて』)、ジャン・ソレル(『昼顔』)、
ヴィルジニー・ルドワイヤン(『8人の女たち』)他。
10月14日より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
©KinoEletron - Reborn Production - Mikino – 2016
公式サイト:mermaidfilms.co.jp/shizukanafutari


CRYPTIC VOID『Into The Desert Temple』

CRYPTIC VOID『Into The Desert Temple』


2014年から米国テキサス拠点に活動しているグラインド・コア・バンドのファースト・アルバム。

元WARMASTER~ Türbokriegのベン(g)、
元INSECT WARFARE~Türbokriegのフランク(ds)、
元WARMASTERのスティーヴン(vo)らによるツイン・ギター体制の5人編成で作られている。
映画と同じく、
ルーズなロックンロールも含めて音楽もいかに贅肉を削ぎ落すかが濃度と強度の決め手になるが、
研ぎ澄まされたエナジーを17分に凝縮していて覚醒される凄まじい作品だ。

『From Enslavement To Obliteration』と『Mentally Murdered』の間のNAPALM DEATH
80年代のTERRORIZER
後期ASSUCK、
京都のMORTALIZED
そしてもちろんINSECT WARFAREをブレンドしたような、
伝統的で最新型のグラインドコアである。

デス・ヴォイスも含めてリズムのメリハリ十分だ。
適度にメタリックなリフやテンポ・チェンジを織り込みつつ一切の弛緩がなく、
息をつく間も与えない。
みっちり音を詰め込んで圧迫感のある押しつけがましい音の仕上がりとは一線を画し、
濃密でありながら風通しのいい音作りがあまりに見事である。
中途半端なノイズを売りにしたりノイズでごまかしたりもせず、
ストロング・スタイルで真っ向勝負。
ざらついていて、
しかもシャープこの上ない。
意識の表れのようにアメリカンらしくカラッと突き抜けた音に胸がすく。

ノスタルジックな“9.11”もヘッタクレもない。
メジャーな政治的トピックに埋もれたこれが今の世界中のあちこちの現実!とばかりに叩きつける。
目の覚める強力盤。


★CRYPTIC VOID『Into The Desert Temple』(RSR 169)CD
約17分15曲(CDの表示上では12トラック)入り。


映画“ヘルツォーク特集2017<誕生!ヘルツォーク>”+映画『問いかける焦土』

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1942年9月5日ドイツ生まれの奇才ヴェルナー・ヘルツォークの監督の75歳を記念して、
東名阪で“ヘルツォーク特集2017<誕生!ヘルツォーク>”が開催される。
上映される映画は以下のとおりだ。

小人の饗宴(1969-1970年 96分)
アギーレ、神の怒り(1972年 91分)
カスパー・ハウザーの謎(1974年 109分)
シュトロツェクの不思議な旅(1976年 104分)
ノスフェラトゥ(1978年 103分)
ヴォイチェック(1979年 81分)
フィツカラルド(1981-1982年 157分)
コブラ・ヴェルデ 緑の蛇(1987年 110分)
問いかける焦土(1992年 54分)日本劇場初公開
キンスキー、わが最愛の敵(1998-1999年 95分)

このうち『ヴォイチェック』『コブラ・ヴェルデ 緑の蛇』以外は僕も観ているが、
様々な意味で狂気を孕むグレイトな映画ぱかりである。
『シュトロツェクの不思議な旅』は、
JOY DIVISIONのイアン・カーティスが首を吊る直前にテレビで観ていた映画としても知られている
(イアンがその時の自分の境遇を映画の主人公とダブらせたという説も有力)。
ドイツのプログレッシヴ・ロック・バンドのPOPOL VUHを“寵愛”し、
彼らの音楽を自分の映画で何度も使っている監督としても有名だ。

ここでは日本劇場初公開の『問いかける焦土』を紹介したい。

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『問いかける焦土』は1991年の1月に中東で勃発した湾岸戦争“関連”のドキュメンタリー映画である。
1992年9月8日にNHK教育テレビ(現・Eテレ)の番組『プライム10』で放映されたが、
本編の半分ほどの映像とヘルツォークのインタヴュー+αの44分の構成だったらしいから、
日本での完全版の公開は今回が初である。

湾岸戦争そのものというよりは“関連”のドキュメンタリーと呼びたい映画だ。
というのも、
サダム・フセイン率いるイラクがクウェートを侵攻した“pre湾岸戦争”のシーンではなく、
“ハイテク戦争の走り”で当時テレビのニュース等が報じたヴァーチャルっぽい映像もほとんどなく、
ほぼすべてが“戦後”のクウェートの“変わり果てた姿”だからである。

13章に分かれているのだが、章ごとに付けられたタイトルがイメージを広げるから記しておく。
1首都、2戦争、3戦争のあと、4拷問室の風景、5悪魔の国立公園、6子供時代、
7「炉の煙のように煙は立ち昇る」、8巡礼、9恐竜が動き始める、10紅炎(プロミネンス)、
11井戸を枯らす、12火のない生活、13「私はため息に疲れました。主よ夜を来たらせたまえ」

平時の首都の映像と、言われなければそうは見えない戦闘中のシーンは、イントロダクション。
あくまでも戦争の爪痕がメインだ。
骨が散乱する砂地、イラク側が使ったと思しき拷問道具、石油で真っ黒の国立公園、
イラク軍の暴力で失語症になった子供、言葉を失った老女などなどが映しだされるが、
映画の中心は油田で猛烈に噴き上がる“火柱”とヴァイオレントな勢いの黒煙を止める男たちの
必死の作業の場面である。

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とにかくそういう映像素材を使ってもヘルツォークの映画!に仕上がっていることに感嘆した。
ヘルツォーク自身の狂気の色と匂いで“事実”をリアルかつシャープかつ緻密に描き込み、
映像そのものの強度も申し分無く覚醒させながら観る者の思考をファックする。

炎上現場での消火作業などで使われているマシーンも含めて映像美に息を呑む。
火や油は現代社会に欠かせないものだが、
この映画の舞台では黒煙を生み出して大池や水や空を汚すネガティヴな要素ながら神々しくも映る。
すべての物事が正と邪のどちらにもになりえるようにも見せる。

もちろん馬鹿の一つ覚えみたいにお手軽なスローガンの“反米”を主張するわけではなく、
最新兵器で“イラク退治”に努めた多国籍軍はもちろんのこと、
この10年ほど後に米国とのイラク戦争で再び矢面に立つサダム・フセインも責めない。
糾弾せずに炎と黒煙と油の映像で
湾岸戦争を…いやもっと大きな視点でヒトという不可解な“種”を深く炙り出す。
まるで観ている者すべてが傍観者で、
まるで観ている者すべてが共犯者であるかのように“現場”を映し出す。

余計な説明はせずに映像そのものに語らせている映画ならではの強みを活かした作品だが、
ヘルツォーク自身がナレーションを務め、
必要最小限のコメントとともに“詩”を挿入している。
その言葉も相まってドキュメンタリーを超えた黙示録の佇まいを呈しており、
ワーグナー、シューベルト、ヴェルディ、マーラー、プロコフィエフらの曲の使用も一役買っている。
言うまでもなく音楽は適材適所での挿入で、
現場作業の音声をそのまま延々と流す場面も多いからこそ生々しい。

英語の原題は“Lessons Of Darkness”・・・暗黒の教訓、邪悪の教訓、暗愚の教訓、
ブラック・メタルのタイトルみたいじゃないか。

表現というものをあらためて考えさせられる。
オススメ。


★“ヘルツォーク特集2017<誕生!ヘルツォーク>”
東京 10月7日(土)~27日(金) 新宿K’s cinema
愛知 上映予定 名古屋シネマテーク
大阪 上映予定 シネ・ヌーヴォ

★映画『問いかける焦土』
原題:Lektionen in Finsternis
1992年/仏・英・独/カラー/デジタル/54分

©ロゴWH Werner Herzog Film high resolution

http://www.pan-dora.co.jp/wordpress/?cat=4


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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