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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

レコード・コレクターズ 2018年9月号

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●書評
★『AC/DC評伝 モンスターバンドを築いた兄弟たち』


●リイシュー・アルバム・ガイド
★UFO
・『UFO登場』
・『フライング』
・『ライヴ!』
★セヴンス・ウェイヴ
・『来るべき世界:リマスタード&イクスパンディド・エディション』
・『サイ・ファイ:リマスタード&イクスパンディド・エディション』
★デイヴィッド・シルヴィアン&ホルガー・シューカイ『プライト&プリモニション+フラクス&ミュータビリティ』

ALBERTO Y LOST TRIOS PARANOIAS『Skite』
★ALBERTO Y LOST TRIOS PARANOIAS『Skite』(WMM WMM5103M)CD

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★SCREAM『No More Censorship』(SOUTHERN LORD LORD 203)CD


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SPIKE SHOES『henceforth』

SPIKE SHOES『henceforth』


“SDC HYBRID HC SOUND SYSTEM
RAGA-THRASH IN YOUR FACE”を標榜し、
パンク・シーンの枠を超えて活動を続ける仙台出身のSPIKE SHOESの新作。
活動25年目の年に放った6作目のアルバムだ。

おごそかに幕を開けておのれを“浄化”していく意識の流れを作品化したかの如き
ドラマチックなCDである。

“SCATHA meets ISIS"+ダブ、
TRAGEDY meets GAUZE
といった調子の曲の連発でまず顔面アタック。
エモを凌駕した叙情アルペジオに導かれて
“メロディック・クロスオーヴァー“とも言いたくなりつつ、
CONFLICTをはじめとするメロディアスなアナーコ・ハードコア・パンクも思い出す曲が続く。
後半はまずレゲエ with ファンクをアレンジしたようなパンク・ロック・チューンが躍り、
ブラック・メタル系ブラスト・ビートが走る劇的な激情系にプログレなギターもブレンドした曲が連なる。
締めはレゲエの歌ものでまったりと佇むのであった。

練り込まれたアレンジで一気に聴かせる。
ヴァラエティに富んでも散漫に聞こえないのは、
メンバー一人一人が自己主張して自分自身の音を持っているからだ。
曲の表情をふくらませる彩り豊かなツイン・ギター、
音で歌うベース、
手数多く抜けのいいウルトラ・パワフルなドラムの、
鮮やかなサウンド・ハーモニーに貫かれている。

何人シンガーがいるんだろ?と思うほどヴォーカルは“多色”で、
ブックレット等に“vocal”ではなく“koe”とクレジットしているのも何となく納得できる。
激しいパートだといい意味で日本語に聴こえないほど感情が膨張して響き、
レゲエ・ナンバーでは人が変わったみたいに飄々と歌い漂うが、
メビウスの輪みたいな感情の移ろいがリアルだ。

歌詞も示唆に富んでツボを突いてなかなか深い。
現在進行形の世の中もモチーフと思われる内容ながら、
SPIKE SHOESは“免罪符”を必要としない。
サウンドと共振してホット&クールな言葉は、
外来語/英語を自然な感じで多少入れつつ、
侘び寂びの効いた漢字を多用して和の情趣をふくらませている。

開放的な彼らの意識そのままに音の奥行きも広がりも十分で、
各パートがしっかり聞こえてくるレコーディングの仕上がりも特筆したい。
約27分6曲入りのヴォリュームながら聴き応えありありだし、
SPIKE SHOESの核が凝縮されたダイナミックな一枚。


★SPIKE SHOES『henceforth』(Tiny Axe TAXE-0003)CD
歌詞が縦書きで載った12ページのブックレット封入の3面デジパック仕様の約27分6曲入り。


hell - guchi『ONE LAST WISH』(書籍)

ONE LAST WISH


FUGAZIDCパンク・シーン周辺のファンのツボを突くタイトルで放った、
1975年滋賀県生まれの男性であるhell - guchi執筆本の第二弾。
8月1日に文芸社から発売されている。

小説形式のデビュー作の半生記『LIFE.LOVE.REGRET』を出す1ヶ月前の2016年3月から
2017年12月までを、
日記形式で綴った回想記である。


テーマごとに数章に分けられていて、
個々の章の中では時系列になっている。

序盤はライヴ・ハウス等に出かけた時のことやバンド関係者などとの交流の話が中心で、
人名に関しては“イニシャル・トーク”が多いが、
所属バンド等が書かれているから
わかる人にはわかる。
かなりマニアックだが、
精力的に観に行っていて東京にも足を運んでいる人だから
ポスト・ハードコア以降のバンドに興味のある方なら引っかかるバンド名が目に入ると思う。

バンド関係のネタが60ページ近く続いた次に、
母親との“神社巡り”が20ページ繰り広げられる。
これまたマニアックで最初は唐突にも思えたが、
以降のページにつながるスピリチュアルな橋渡しみたいな章とも言える。
中盤以降は2人の女性との関係の話だが、
“恋愛”と言っていいのかわからない微妙なドラマで100ページ以上を一気に読ませる。
最後の最後は前作本のプロモーション奮闘記だ。


日によっては数ページにまたがってもいるが、
日にちによって区切られているから読みやすい。
ヘヴィなことが起きた日もわりと飄々と綴っていて、
感情をあまり重く刻み込まずに淡々とした軽妙なタッチが特徴。
激情のスクリーム!というよりはラップっぽい。
どこに出かけた、何々をした、外食で何食べた(といってもほとんどがラーメン)ということを、
シンプルに書き、
そこかの心象風景を薄っすらと炙り出している。

書名の『ONE LAST WISH』はhell - guchiのとある所持品に刻まれているフレーズだが、
RITES OF SPRINGとFUGAZIの間の1986年に
ギー・ピチョットとブレンダン・キャンティがやっていたバンド名でもある。
ONE LAST WISHの音源は解散後10年以上経ってからDISCHORD Recordsから出たが、
hell - guchiのライフ・スタイルは
DISCHORD Records周辺のストイックなイメージとはかなり違う。
“エモ”からイメージされる内向性ともちょっと違う。
そんなところも愉快だ。

hell - guchiはポスト・ハードコア~激情ハードコア系だけでなく、
ハウス/テクノ系のトランスものも愛聴している。
プロローグとエピローグにバンドやアーティストなどの言葉が引用されていて、
envyなどの歌詞とともにEVISBEATSやTHA BLUE HERBのリリックが載っているのも、
hell - guchiの志向性を象徴する。


本作から読み始めても楽しめるが、
前作のキーパーソンで他界している父親と、
本書の後半のキーパーソンの“彼女”が間に立ってhell - guchiがコンタクトしているのが今回の肝。
“彼女”がhell - guchiの父親と霊的な“交信”をしているからだが、
hell - guchiと“彼女”の関係が微妙になると父親が仲を取り持ったりしているのもユニークだ。

hell - guchiが“オカン”と表記する母親との超親密な関係や、
“彼女”たちとの刺激的な関係など、
ちょこっとジェラシーすら覚える。

映画化も面白そうな一冊だ。


★hell - guchi『ONE LAST WISH』
文芸社
ハードカバーの220ページ。
https://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-19587-2.jsp


MARDUK『Viktoria』

MARDUK『Viktoria』


90年代初頭からコンスタントに活動を続けるスウェーデンのブラック・メタル・バンドが
約3年ぶりにリリースした14作目。

ベーシックなブラック・メタル・スタイルというか、
ブラック・メタル・サウンドをわかりやすく伝えているアルバムである。
トレモロ・ギターで押すよりは、
HELLHAMMER~DISCHARGEのラインのクラスティーなパンク音に近くてノリやすい。
ほとんどの曲でブラスト・ビートを使っているにもかかわらず曲のフック十分で、
ベテランならではの曲作りが光る。
ドゥーム・メタルをブラック・メタルにアレンジしたような曲や、
スローなフレーズで進めていく曲もいいアクセントだ。

効果音を挿入するなどアルバム全体が一つの流れになっている。
歌詞は英語で歌われていて
モチーフはナチス・ドイツ関連の第二次世界大戦中の出来事が軸と思われるが、
やはりなかなか刺激的。
ユダヤ人殲滅のネタとは一味違う戦争の血と鉄の匂いが渦巻く言葉で触発される。
ナイーヴな“愛と平和”云々より波紋を投げかけることがロックの本質だとあらためて思わされもする。

音も曲も歌詞もスウェーデンのバンドならではのバランス感で仕上げられているから、
ブラック・メタルの入り口としても最適な一枚。


★マルドゥク『ヴィクトリア』(ソニーミュージック SICP 5813)CD
約33分9曲入り。
歌詞が載った16ページのブックレットが封入され、
日本盤には歌詞の和訳も付いている。


映画『オーケストラ・クラス』

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音楽に触れる機会の少ない子どもたちに無料で楽器を贈呈して音楽の技術と素晴しさを教える、
フランスの情操教育プログラムのプロジェクトにインスピレーションを得た映画。
みんなで力を合わせてがんばろう!が基本のシンプルでベタな物語だが、
さりげなく社会問題などのスパイスを盛り込んで物語がふくらみ、
いかにもの感動ものとは一線を画すクールな描き方に貫かれているからこそリアルな佳作である。

『コーラス』など音楽映画の名作をプロデュースしてきたニコラ・モヴェルネが製作し、
パリ管弦楽団の本拠地として知られる大規模コンサートホールの
“フィルハーモニー・ド・パリ”の全面協力を得て創られている。
クラシックに対するアカデミックな見方をゆるやかにくつがえす力も持っている映画だ。

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移民の子どもたちが多く集まるパリ19区の小学校へ、
音楽教育プログラムの講師としてやってきたバイオリニストのシモン。
6年生の生徒たちにバイオリンを教えることになるが、
やんちゃで集中力に欠ける子どもたちに一から教えるのは難儀でまもなく挫折。
でも音楽に積極的でバイオリンの才能を持った内気な少年のアーノルドと出会い、
一年後に開かれるフィルハーモニー・ド・パリでの演奏会を目指すことをシモンは決意し、
生徒の悪ガキのイタズラや暴言と思いもよらぬトラブルもプラスに転化していく。

大ざっぱに序盤のあらすじを書いてみたが、
紆余曲折があるにしろわざとらしく盛り上げるところがまったくない。
もちろん楽器初心者ならかなり練習しないと演奏会で弾けるぐらいの腕にはならないだろうが、
必死なシーンを必要以上に見せはしない。
それよりも大切な感情の揺れと意識の流れを、
生徒たちの自主的な姿勢を通してていねいに描き込んでいる。

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講師のシモンをはじめとして大人たちの演技も自然体だが、
子どもたちの演技もみな地のキャラでやっているとしか思えないほどナチュラルである。
監督によれば、
この映画の前半の練習シーンみたいに30秒もじっとしていられない子どもが多かったらしい。
子どもたち同士のちょっとしたケンカも含めて、
撮影中の予期せぬ行動もそのまま撮って編集して本編で使ったと思える映像だからこそリアルだ。

そういった子どもたちのイタズラぶりを盛り込みつつハチャメチャに仕上げず、
映画のテーマを際立たせる落ち着いた編集も特筆したい。
邦画をはじめとして時間の無駄でしかないダラダラしたシーンが目立つ映画にはゲンナリする。
やっぱり映画の出来はeditで決まる。
この映画には甘えがない。

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講師のシモンが中心になって話が進んでいくが、
主役は内気な少年のアーノルドをはじめとする子供たちだ。
移民の子どもたちゆえに様々な人種で構成されているところもポイント。
白人、黒人だけでなくアジア系の子どもの顔も見える。

アフリカのアルジェリアなどの植民地を支配していた国だけに
フランスは昔から移民問題を抱えていて事件も起こる。
この映画に政治的な要素はほとんどないが、
バイオリンの音だけでなく老若男女多人種の“混血”のハーモニーが
いかに美しくエキサイティングであるかもスクリーンと劇場内に広がる。

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バイオリン演奏をみんなと一緒に覚えていく中で、
子どもたち同士の関係もいい意味で淡くクールだ。
言いたいことを言い合う友情や微笑ましいロマンスが溶け込み、
仲間意識がゆっくりと芽生えていく流れが素晴らしい。

とある事の後にファミレスみたいな所で“打ち上げ”みたいな会食が催された時、
親や講師らの大人と子供たちとでテーブルを分けて好き勝手にくっちゃべるシーンがある。
大人たちの話も面白いが、
やっぱり子供たちのが痛快だ。
ちょい下品でエッチネタも絡めてラヴ話もやりあう“ませガキ”ぶりが楽しい。
子どもたちの本音トークを台本無しで好き勝手にやらせていると思えるほど生き生きしている。
子どもが発音しようがフランス語の響きが妙にエロチックなのも効果的で、
みんな大人びて見える。

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いわゆるプロの音楽家として行きづまっていて自分の方向性に迷いも感じていた講師のシモンが、
子どもたちにインスパイアされて少しずつ音楽に対する意欲を取り戻し、
それまでとは違う気持ちで音楽に向き合うようにもなっていく過程も見どころだ。
お互いをゆっくりとリスペクトし合っていく流れとも共振している。
最初はお互いウンザリでもゆっくりと大人と子供たちがリスペクトし合っていく。
とりわけシモンが子どもたちに敬意を表してくことで物語がポジティヴに開かれていき、
さらに親が子どもに敬意を示すことで物語はゆっくりと加速する。

押しつけがましいメッセージを残して幕を締めることなく、
静かな余韻を残すシンプルなラスト・シーンも好きだ。

音楽が持ち得るちからをあらためて知る。

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★映画『オーケストラ・クラス』
2017年/フランス/フランス・アラビア語/102分
8月18日(土)より、
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。
http://www.orchestra-class.com/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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