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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BIRGIT×MAKIGAMI KOICHI『a world apart』([ホッピー神山&藤掛正隆]×巻上公一)

BIRGIT×MAKIGAMI KOICHI


ホッピー神山と藤掛正隆によるBIRGIT(ビギアッテ)が巻上公一と組み、
横浜のストーミーマンデーで行なったライヴ音源を編集したCD。

三人とは思えないサウンドだ。
神山はミニ・ムーグ、マイクロ・コルグ、グラムポット、ヴォイス、
藤掛はドラムス、エレクトロニクス、
巻上はヴォイス、テレミン、コルネット、尺八、ホムス(khomus~口琴の一種)を操り、
5~6人編成のバンドみたいなパフォーマンスになっている。

ミニ・ムーグとドラムを核にしてどんどんどんどん曲をふくらませているようなプレイで、
ドイツのクラウト・ロック全般が日本でフリークアウトしたみたいでもある。
ジャジー、ファンキー、コズミック、フリーな躁状態で疾走しながら、
コミカルな和製ホラー映画とサスペンス映画がまぐわった情景も描き出す。

特に目立つのが巻上。
行方知らずの“怪ヴォイス”は言わずもがな(神山とのデュエットと思しきパートも聴きどころ)、
演奏でも“怪演”を繰り広げて奇才ぶりを発揮し、
神山と藤掛を鼓舞しているステージの様子が目に浮かぶ。
ヴォイスと同じく“口”を使ったコルネット、尺八、口琴の演奏は言わずもがな、
テレミンでもエレクトリック・ギターのインプロヴィゼイションのように“歌って”いる。

根がポップでダイナミックな痛快盤だ。


★BIRGIT×MAKIGAMI KOICHI『a world apart』(FULL DESIGN FDR-2041)CD
薄手のプラケース仕様の役62分5曲入り。


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映画『17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン』

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ナチス・ドイツの影響が強まる1930年代後半の
オーストリアのウィーンで生きる青年の成長を描く2018年の映画、
世界的な精神科医として有名なフロイトらとの交流を通して、
ひと時の期間の中で濃縮された人生を描く佳作である。

本作に唯一実在の人物として登場するフロイト役は、
『ベルリン・天使の詩』『ヒトラー~最期の12日間~』の主演のブルーノ・ガンツが務めている。
昨年他界しているため本作が遺作となった。
原作はウィーン生まれのローベルト・ゼーターラーの小説「キオスク」(2012年)である。

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ヒトラーの出身国とも言えるオーストリアの併合をナチス・ドイツが狙う1937年。
自然豊かなアッター湖のほとりに母親と暮らしていた17歳の青年フランツは、
タバコ屋の見習いとして働くためオーストリアの首都ウィーンにやってきた。
常連の一人で“頭の医者”として知られるフロイト教授と親しくなったフランツは、
人生を楽しみ恋をするように教授から勧められる。
やがてボヘミア(オーストリアの北で現在のチェコ)出身の女性アネシュカに一目惚れし、
はじめての恋に戸惑うフランツはフロイトに助言を仰ぐ。
だが時代は国全体を巻き込んで激動の時を迎えようとしていた。

オフィシャル・サイトに載っているストーリーをアレンジし、
ネタバレを避けるべく序盤のあらすじをまとめてみた。

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程良く鮮やかで生々しく冷気漂うトーンでありながら時に幻想的で、
詩情が滲む映像美にまず引き込まれる。
街の様子が短期間に変わっていった頃で、
いつのまにかナチス色に覆われて重苦しくなっていく映像の流れが素晴らしい。
ピアノとストリングスが中心の音楽の挿入も、
大げさに盛り上げようとせず人物たちを静かに見守るように寄り添っている。

序盤から終始張りつめているわけではないが適度な緊張感が観る者を“時代の目撃者”にする。
だらだらせず“贅肉”を削ぎ落した編集で、
甘えが入り込む余地のない人たちの人生がリアルに炙り出される。
一つのシーンを短く切らず長く続けすぎず、
ゆっくりと落ち着いた進行でもさりげなくテンポがいいからぐいぐい引き込まれる。
“R15+”なシーンも簡潔かつ大胆な見せ方でインパクトを残す。

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シンプルな作りだからこそ伝えたいことが生のまま伝わってくる。
ストレートな脚本で山あり谷ありの展開をわかりやすく深いところまで見せる。
ある意味ベタな展開だが、
あざとい仕掛けや考えすぎの映画が目立つ今、
ギリギリの人間は余計なことを考える余地がないことをあらためて知る。

そんな中で青年が夢で見た光景の映像を適宜挿入しているのがいいアクセントになっている。
フロイトが心理学/精神科医の“治療”の一環として行なっていた夢分析も踏まえ、
大半が水中が舞台の映像なのは青年の深層心理が“底無し沼”ということの象徴化のようだ。
さらに青年は意識の流れを整理すべく夢の情景を文章にもしていき、
やがてタバコ屋の店頭に貼り出していく。

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フロイトの話をはじめとして言葉゛も大切な要素の映画だが、
セリフは簡潔で説明的になってないところも重要だ。

とにかく登場人物たちの理屈を超えたナチュラルな感情表現が見事である。

知性をひけらかさない人生訓みたいな言葉で導くフロイトに青年は開かれていく。
フロイトらとの交流で責任感や勇気の大切さを知って愚痴も言わなくなる。
短期間で顔つきが変わっている。
悩みながらもまっすぐでピュアな青年が生のまま静かに演じ切られている。

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ポイントになる人物を絞っているのも映画のテーマを明確にしている一因だ。
青年の急成長が見どころの映画だが、
様々な形での“人生の師”とも言うべき“大人たち”とのつながりが肝の映画である。

もちろん中でも特にフロイトが青年をインスバイアしている。
意外と一緒にいるシーンは多くなく、
限られた時間の中で簡潔に青年を諭しているから押しつけがましく見えない。
フロイトがナチスの殲滅対象のユダヤ人であり、
この映画の時代の直後に病死していることも付け加えておく。

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フロイト以外にこの映画のキーパーソンが3人いる。

まずは青年が働くタバコ屋の店主。
『女は二度決断する』(2017年)で爆破テロの容疑者の弁護士を演じたヨハネス・クリシュが
熱演している。
母国のために片脚を失った松葉づえ生活で、
共産主義を皮肉りつつナチ関連のブツは店に置かない頑固オヤジでもある。
ユダヤ人もお客として歓待していたから近くの店などから露骨な嫌がらせも受けていた。
タバコ屋といっても新聞なども売る一種の雑貨屋で、
違法な“裏本”販売みたいなノリでポルノ雑誌も極秘で扱う店だった。
毎日身近にいたから実際はフロイトよりも青年への影響が大きかったことは、
映画の後半にはっきりと表れている。

青年の“はじめての女(ひと)”になったボヘミア生まれの女性は、
青年の本能を最も突き動かした人物だ。
フロイトが青年に説く愛とリビドーのヒロインである。
蠱惑的な小悪魔キャラで悪気無くウブな青年を翻弄。
それは生きるために割り切って“イロイロ”しなければならない状況の裏返しで、
彼女の事情を理解しつつあったとはいえ終盤に青年が目にした場面は“決定的”だった。
でも彼女の本心はラスト・シーン近くにさりげなく示される。

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そして何より故郷で暮らす母親。
仕事でセクハラを受けながらもたくましく一人で暮らす母親との文通は、
やはり青年の最大のエネルギーになっていた。

終盤のゆっくりした加速に胸が詰まる。

可能性を残したようでもあり断ち切ったようでもあるラスト・シーンの直前、
青年がなぜああいう行動に出たのか。
今ここで僕が書くのはやめておくが、
観た後に色々話したくなる映画でもある。

大スイセン。


★映画『17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン』
2018年/113分/R15+/オーストリア・ドイツ
提供・配給:キノフィルムズ/配給協力:REGENTS
7月24日(金・祝)Bunkamura ル・シネマほか全国公開
© 2018 epo-film, Glory Film
https://17wien.jp/


K2/HARSHFIEND『沈黙』split CDR

K2/HARSHFIEND『沈黙』


日本のベテランK2とカナダの男性による新鋭HARSHFIENDの
ノイズ・ミュージックsplitアルバム。
どちらも昨年の終盤にレコーディングしたCDR作品だが、
しっかり作られた約80分5曲入りである。

K2は歪系エフェクターを使わずにモデュラーシンセだけで練り上げたという2曲を提供。
まさに練り上げたサウンドで、
ジャケットどおりに世界中で続く混沌の戦場や紛争地帯もイメージする。
緻密な音作りでメロディも滲み出ているが、
地鳴りのようなパートはもちろんのこと静寂の時間も不穏で、
“電子音楽のハードコア(electro-core)”と自ら呼ぶのも納得させられる。
「Extracting Pure Violence」「Ultimate Silence Induces Insanity」という曲名もピッタリだ。

HARSHFIENDの方は3曲提供で、
T.E.F.やFACIALMESS、Koobaatoo Asparagus、Igor Amokianも参加している。
反復を多用したハーシュ・ノイズを基本としながら声も漏れてきて、
パーカッションor打ち込みのビートも入ってところによってはポップな印象も。
「All you Need's One Friend」「Silenced」という曲名も意味深で、
特に“(発言/意見などが)禁じられた/沈黙させられた”の意味の「Silenced」は
本作のタイトル曲と言えるストロング・スタイルのノイズ・ナンバーで締めにふさわしい。


★K2/HARSHFIEND『沈黙』(Mapawi)split CDR
紙が二つ折りになったパッケージの約80分5曲入り。
https://kinkymusik.thebase.in/


映画『リトル・ジョー』

リトルジョー:メイン写真


人を幸せにしてくれる新種の植物“リトル・ジョー”が“主役”の問題作。
感染に敏感な今のご時世だからこその“ベスト・タイミング”での日本公開である。
1972年オーストリア生まれの女性ジェシカ・ハウスナーが監督し、
サイエンス“サイコ”スリラー映画でありながら人間ドラマでもある怪作、
いや快作だ。

リトルジョー:サブ5

バイオ企業の研究室に勤めるシングルマザーのアリス(エミリー・ビーチャム)は、
人を幸せにする真紅の美しい花の開発に成功する。
アリスは、自分の息子の名前にちなんで“リトル・ジョー”と名付けるが、
開発されたばかりのその花は成長するにつれて人々にある変化をもたらす。
アリスの息子、助手、同僚の周辺の様子がおかしくなっていく。
アリスはその原因が“リトル・ジョー”の花粉の影響かもしれないと疑い始める。

リトルジョー:サブ3

物語と映像と音声が妖しくブレンドして劇場を異空間に染め上げ、
映画ならではの醍醐味が堪能できる作品だ。

始まって数秒で観る者も“感染”し、
じわじわ、じわじわと、侵され、
きもちよく、きもちよく、息が詰まっていく。

リトルジョー:サブ2

静かに戦慄が走る音声にまずヤられる。
物音もさることながら、
ここぞというときに挿入される伊藤貞司の曲が強烈だ。
監督は自身が最も影響を受けた映画作家マヤ・デレンの映画で伊藤を知り、
ジョン・ゾーンのレーベルから出た『Watermill』の3曲がこの映画のための曲に思え、
映画のリズムやストーリーに大きく影響したという。

ミニマルな音でもアンビエント・ミュージックとは一線を画す曲だ。
現代音楽と言えそうながら尺八や琴、和太鼓も使い、
雅楽やチェンバー・ロックともニアミスする曲で、
ところによっては虫の鳴き声や耳鳴りの音のようにも聞こえる。
響きが神経に及ぼす影響をあらためて思い知らされる。

リトルジョー:サブ4

冷気漂う映画全体の映像の色合いもこの作品の“低温の快楽”を生み出している。
研究室で働く人たちの作業着の“薄緑”も植物カラーで効果的だが、
“リトル・ジョー”のメイン・カラーの“赤系”がこの映画全体を司る。
花粉とともに香りが漂ってきて
観ていると鼻がムズムズしてきて嗅覚まで“侵し”そうなほどの映像は、
ほんとスクリーンで観ているだけで“感染”しそうなほどの妖気を発している。
イチゴミルクみたいな色も含めて時にエロチックですらある。

騙りかけてくるような佇まいで息づく“リトル・ジョー”そのものの“妖花”としての魅力も
カメラはしっかり捉えている。
目が覚めるほど鮮烈な赤をたたえた美麗な“顔”で存在感をアピールする一方で、
ケシの花や食虫植物を思わせる不気味で妖艶な“表情”をたたえ、
動物と同じく植物も命が宿る生き物ということをあらためて思い知らされる。

リトルジョー:サブ6

光の使い方やカメラ・アングル、
テーブルなどの物の置き方、
会話のシーンにおける人物の距離の取り方など、
一つ一つの映像にこだわりを感じる。

エキセントリックな人物が一人もいないにもかかわらず、
登場する全員が異様に見える映し方も素晴らしい。
基本的には静かに進行する映画にもかかわらず目が離せず、
この映画ならではの場所を使った子どもたちの“ラヴシーン”など、
随所に自然な“ハプニング”を設けているのも見事だ。

リトルジョー:サブ1

“リトル・ジョー”は種を守るために“感染”してその人間の人格を変える。
“リトル・ジョー”は繁殖するために人間を支配する。
気分を高め、うつを防ぐ、“幸せの植物”とされる。
最初は“リトル・ジョー”が悪さをしているようにも映る。
でも“リトル・ジョー”は主人公のアリス親子をはじめとして人間関係を円滑にし、
精神的に自分自身を縛っているものから解き放っていく。

監督は遺伝子組み換えや植物栽培にインスピレーションを受け、
植物ウイルスがヒトウイルスに突然変異する可能性があるということなど
専門家の話も参考にして映画にリアリティを持たせている。
“感染”というと近年でいえばエボラ出血熱や新型コロナが頭をよぎる。
だが人類の歴史の中で必ずしもウイルス=病原菌/悪ではないわけだし、
“リトル・ジョー”に“感染”という言葉を使うのはふさわしくないかもしれない。
だがいくら幸せになるからといって人間の意思や意志をコントロールする怖さ、
それがこの映画の肝と言える。

リトルジョー:サブ7

<世界中が幸せになる花>という“リトル・ジョー”の宣伝コピーも、
あながちハッタリではないかもしれない。
だってこの映画、
この世のものとは思えないほど穏やかでやさしい空気に包まれているから。

必見。


★映画『リトル・ジョー』
2019年/105分/オーストリア・イギリス・ドイツ/英語
原題:Little Joe
出演:エミリー・ビーチャム、ベン・ウィショー、ケリー・フォックス、キット・コナー他
監督:ジェシカ・ハウスナー『ルルドの泉で』
© COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019
7月17日(金)アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国で順次ロードショー。
http://littlejoe.jp/


ザ・スターリン40「執念」【大破産】未遂記念PARTY【渋谷・白日夢】6月27日(土)

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14時~14時40分の回に登壇してイヌイジュンさん、宮西計三さんとトークします。
http://stalin40.com/news/20200614.html

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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