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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

レコード・コレクターズ 2019年11月号

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●書評
『この灼けるほどの光、この太陽、そしてそれ以外の何もかも 
ジョイ・ディヴィジョン ジ・オーラル・ヒストリー』


●リイシュー・アルバム・ガイド
★V.A.『パワー・ポップ万博 70s & 80s』
★ズィオール『ビフォア・マイ・アイズ・ゴー・ブラインド~ザ・コンプリート・レコーディングス:4CDクラムシェル・ボックスセット』
★アンディ・ジョルビーノ
・『歓喜の歌』
・『優美と尊厳』18字×32行
★THUNDER『The Greatest Hits』
(BMG/ADA BMGCAT386TCD)3CD
(BMG/ADA BMGCAT386TLP)3LP

DEAD KENNEDYS『DK 40』
DEAD KENNEDYS『DK 40』(MANIFESTO MFO 42930)3CD


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Crispy Camera Club  at 下北沢シェルター 10月9日

Crispy Camera Club『ROMA』


京都出身のCrispy Camera Clubの『ROMA』リリース・ツアー東京編。
初めて観たバンドだが、
なんだかわからない思いがこみ上げてきて1曲目から目が潤んできた。
そこそこ長いこと生きてきてたくさんライヴを観てきた中で、
こんなこと初めてだ。

メンバー4人がステージに現れて曲を始める前にギターを鳴らした瞬間に全身が痺れてとろけ、
僕は2秒でこのバンドの虜になった。
ナイス!な仕上がりのCDも素敵だが、
ライヴはギター・ポップの域をはるかに超えるほどロックしていた。

“ガレージ・ジャングリー”なミサト(vo、g)のギターと、
変則フレーズを絡めながらストイックにスパイスも効かせる稲本裕太(g、コーラス)のギターのコンビネーションで、
世界が開ける。
シンプルな極上ギター・ロック・バンドでもあるとライヴで再認識した。
中根トモヒロ(b)はフィンガーピッキングで、
ガレージ・サイケのニュアンスを醸し出しつつBYRDSを思い出す瞬間も。
りんすけ(ds、コーラス)のドラムは、
女性ならではと言える程良くルーズな風通しのいいリズムのパワフルに躍るビート。
その二人が曲をドライヴさせる。

MCもダラダラせずシンプルで、
ほっこりした緊張感をキープ。
ドラム・セットのトラブルとミサトのギターの弦が切れて張り替えている時の間の持たせ方も上手く、
特に後者の時間には稲本がスピッツの「ジュテーム?」をエレキ弾き語り。
その稲本とりんすけのコーラスも絶妙でミサトに寄り添う。

しっかりした発声で思いをクールに伝えるミサトのヴォーカルは、
曲をただなぞっている巧いだけの歌唱力とは別次元のリアルに揺れる歌心があふれ、
ポップで胸を突く音とビター&スウィートなブレンドをしていた。
これがCrispy Camera Clubだけの“魔法”だ。
でかいグレッチのギターを弾く姿がカッコいいミサトを中心に、
コントラスト抜群の4人のヴィジュアルもいい。

トラブル・タイムとアンコール含めてトータル約50分。
とても大切な体験をした気がする。
MCから察するに拠点を東京に移すようで、
ライヴを観られる機会が個人的には増えそう。
この晩披露された新曲もバッチリだったから新作もほんと期待している。


LIGHTNING BOLT『Sonic Citadel』

LIGHTNING BOLT『Sonic Citadel』


米国のドラム/ベースの奇天烈“ノイズ・ロック・デュオ”が
アルバム・デビュー20周年の年に放った『Fantasy Empire』以来の約4年半ぶりの7作目。
もちろんメンバーは
ブライアン・チッペンデイル(ds、vo)とブライアン・ギブソン(b)で変わらず、
今回も間違い無し!である。


例によってスタジオでのジャムから創り上げるパターンが多いようだが、
これまで以上にフック十分の聴かせどころを設けてよく練られた楽曲クオリティが高く、
LIGHTNING BOLT史上最もキャッチーなアルバムだ。
ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの味わいが最も濃厚なアルバムでもある。
一般的なハード・ロック/ヘヴィ・メタルのファンの方からするとノイズすぎるのかもしれないが、
一般的なイメージの“ノイジー”なサウンドとは一線を画し、
とめどないエナジーの噴出でサウンドが膨張した異次元空間を創造。
やはりバンド名の“稲妻”みたいな電撃音の持続であり、
加速も躍動も止まらない。

無数の情報量の音楽が細胞分裂と交わりを繰り返しているかの如き音像は健在だが、
これまで以上にハード・ロック/ヘヴィ・メタルっぽく聞こえるのは、
オープニングや“キメ”の部分で
“それっぽい”クールなフレーズやリフを大胆に織り込んでいるからである。
70年代の“ハード・ロック”が苛烈したかのようで、
ルーツに敬意を表しているからリフをそのまま借りるなんてことは当然してない。
あらかじめ作曲した曲を増幅してよく動く音がフリーキーなドライヴ感は、
飼いならされる前のハード・ロック本来のダイナミズムに貫かれている。
今回も極々シンプルなドラム・セット使用と思しき手数多いビートと共振しながら、
いわゆるベースの音域の音もハジき出しつつ
ギターに聞こえるベース音が際立って哀愁のサイケデリック・メロディの濃度も高い。

くぐもったヴォーカルをキープしつつ、
けっこう“歌”が目立つアルバムだ。
パンクな歌詞も踊っている。
ユーモアは音にも曲にも炸裂していて人を食った曲名もチラホラ。
HÜSKER DÜを思い出すタイトルの「Hüsker Dön’t」は切なめで、
EAGLESのメンバーと関係あるのか「Don Henley In The Park」は田舎臭さがたまらない曲だ。
ラスト・ナンバーの「Van Halen 2049」は“LIGHTNING BOLT節”全開で、
乱痴気オープニングから70年代ハード・ロックのインタープレイみたいな演奏になだれ込み、
いつのまにかカオティックにスピードアップしていく。
いわばLIGHTNING BOLT流のロックンロール・アルバムなのだ。

体力勝負の演奏は我流で十二分にテクニカルだし、
反復していようがトランスと呼ぶには汗臭く泥臭い。
耳にやさしく気持ちいい爆裂音圧仕上がりも見事である。

アルバム・タイトルどおり、まさに“音速城塞”。
大スイセン。


★ライトニング・ボルト『ソニック・シタデル』(P-VINE PCD-24879)CD
約53分11曲入りの二つ折り紙ジャケット仕様で、
歌詞とクレジットが手書き書体で読みやすく書かれた四つ折りインサート封入。
日本盤は米国でのリリース・レーベルのTHRILL JOCKYによる解説文と歌詞の和訳(by 喜多村純)付。


映画『少女は夜明けに夢をみる』

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強盗、殺人、薬物、売春などの罪を犯して更生施設で暮らすイランの少女たちの映画。
シンプルな描き方で無数の思いが息をしているグレイト・ドキュメンタリーだ。

すべて施設内で撮影し、
8人の少女を主にピックアップして監督が話を訊いていく映像をメインにしつつ、
屋内・屋外での少女たちのカジュアルな姿もたっぷり織り込んでいる。
淡々と進めていく落ち着いた筆致だからこそリアルに迫ってきて、
小津安二郎、黒澤明、溝口健二の映画を愛する監督ならではと言うべき、
デリケイトな少女たちの情感をクールかつ丁寧に描写していく映像と流れも素晴らしい。

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少女たちは十代・・・ハイティーンが多いように見える。
監督は男性とはいえ16歳の娘の父親でもあり、
少女たちの父親ぐらい年齢だから監督自身が言うように女性相手より話しやすかったとも思われる。
じっくりと信頼関係を築いていって一人一人に真正面からしっかり向き合ったからこそ、
少女たちはハードかつヘヴィな話でも打ち明けている。
普遍的に言えることだがエラソーにせず、
自分の子どもはもちろんのこと子ども全般一人一人に対して敬意を持って接することが
やっぱり大切だとあらためて思わされる。

監督によればこういう施設からイメージされるケンカの類いはなかったらしく、
みんな同じような経験をしているから話がわかる仲間だ。
もちろんベッドで静かにしている子もいるが、
オチャメで愛嬌たっぷりにハジけて仲間と戯れる子も多い。
政治ネタは控えているが、
クレイジーだったアフマディネジャド(イランの前大統領)に言及したところも笑えた。

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みんな抱きしめたくなる。
チャーミングでかわいいからでもあるが、
みんなあまりも心に深手を負っているからである。

ギャルみたいなノリで彼氏の話で盛り上がりもするが、
切ない。
屈託がないように見えるのは、
行くところまで行って絶望を突き抜けているがゆえなのか。
もちろん少女たちの言葉や声も雄弁だが、
屈折もない無数の気持ちが表れている顔が一番の見どころだ。
たとえ笑顔の時でも、
まだ十代なのに諦念を抱いて達観しているようにも映る表情だし、
少女たち一人一人の冷めた気配や静かな佇まいを感じ取れるのも映画ならではの醍醐味である。

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家族がテーマの一つとも言える映画だ。
世界中で“家族万歳!”みたいな声がファシズムみたいに喧伝されるが、
自分の利益しか考えてない人間が力を持つ家族は最も残酷な“組織”になりえる。
この映画は家族という拘束システムの犠牲者・・・いや家族の“生贄”になった子も多く、
“どちらかが死ぬまで地獄が続く”のであればヤることは一つである。

この映画で語っている少女たちのほとんどは情状酌量の余地ありだ。
クスリを買う金が欲しくて母親を殴った子もいるが、
家族の虐待が多い。
クスリを買う金が必要な父親に売春させられたり、
叔父から性的虐待を受けたりなど、
家族であることを理由に利用されてほとんど奴隷や物扱いだ。

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厳格なイスラム国家ゆえにイランの女性は親族以外の男性と一緒にいるのは制限される。
その悪影響か少女たちが望まないとしても親族の男性との関係のみが密になりすぎてしまい、
男が少女たちを自分のモノと勘違いして人格を否定する行動に出ている気もする。

もちろんイランだから自由に映画を撮ることは許されてない。
撮り終えた映像を毎晩イランの法務局に送ることで監督は撮影を許可されたという。
そんな状況下でも監督はイスラム教に関連するシーンも折り込み、
少女たちがイラン社会の“性差別”“性別格差”を口にするシーンも見どころだ。
日本でも当てはまるテーマの映画とはいえ、
やはりイランだからこそ彼女たちはこうなったという不条理もゆっくりと炙り出されている。

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「“塀の中”にいる方がしあわせ」と、
中東やアフリカなどの刑務所に服役した女性が出所する際によく口にする。
この映画でも釈放されて家族の元に帰りたくないという子がいる。
更生施設が“避難所”になっているのだ。

でも、家族の全員ではないとしても、家族の誰かを信頼している少女も多い。
家族に裏切られてもやっぱり家族・・・・という少女たちが切ない。
暴力をふるって母親を裏切ったことを悔やむ少女もいる。

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全員に愛と希望に満ちた未来が約束されているような描き方はしていない。

監督:夢は?
少女:死ぬこと。人生に疲れた。

前半で、そんなやり取りがある。
でも後半には、こんなやり取りもある。

監督:夢は?
少女:生きること。

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シリアスな本音を聞き出す際に監督は必ず一対一で少女と会話をした。
友だちと一緒の時は冗談を言ったりファンキーなノリになるからだが、
そのギャップに胸が絞めつけられるつつ、
そのコントラストがこの映画のリアリティを高めている。

監督と<対話>するときの少女も、
友だちと楽しんでいるときの少女たちも、
すっぴんのピュアな心。
因習から解き放たれているからとても美しく輝いている。


節目節目で入るささやかな音楽の挿入も特筆したい、

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★映画『少女は夜明けに夢をみる』
監督:メヘルダード・オスコウイ 製作:オスコウイ・フィルム・プロダクション
2016年/イラン/ペルシア語/76分/カラー/DCP/16:9/Dolby 5.1ch/ドキュメンタリー
原題:Royahaye Dame Sobh/英題:Starless Dreams
(C)Oskouei Film Production
11/2(土)より岩波ホールほか全国順次公開予定。
http://www.syoujyo-yoake.com/


ヘドバン Vol.24

ヘドバン24


●新作レヴュー
ROBERT PEHRSSON'S HUMBUCKER『Out of the Dark』
★KADAVAR『For The Dead Travel Fast』
ANGEL WITCH『Angel Of Light』
★ENDON / SWARRRM スプリットCD
★MICHAEL MONROE『One Man Gang』
PHIL CAMPBELL『Old Lions Still Roar』
TOXIC HOLOCAUST『Primal Future:2019』
★WORKSHED『Workshed』


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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