なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

OBITUARY『Ten Thousand Ways To Die』

OBITUARY『Ten Thousand Ways To Die』


80年代半ばから活動している米国フロリダ産デス・メタル老舗バンドOBITUARYの新録盤。
新曲2曲がメインのCDで、
ライヴ12曲がボーナス・トラックになっている。


1曲の「Loathe」はOBITUARYらしいスロー・チューンによる曲名通りに胸糞悪くなるほどの嫌悪グルーヴで、
ジャケットどおりに無数の屍の無念の命の中から産まれ出た怪物そのもののサウンド。
至福のフレーズのアルバム・タイトル曲である2曲目もミディアム・テンポで、
これぞOBITUARY!のドライな粘着サウンド。
録音もしているセルフ・プロデュースで文句無し!の2曲だ。

残りの12曲は今年2~3月の北米ツアーの中から11ヶ所のライヴをピックアップしてまとめたものだが、
むろん音質のバラつきなどの違和感を覚えさせない仕上がりである。
『Frozen In Time』(2005年)から1曲、
『Inked In Blood』(2014年)から2曲、
『Slowly We Rot』(89年)から4曲、
『Cause of Death』(90年)から4曲、
『World Demise』(94年)から1曲という、
最初の2作の曲が過半数を占める極端なセットリストで構成。
だがむろんなんも問題はない。

誤解を恐れずに言えばOBITUARYはロックンロール・バンドである。
ブラスト・ビートを使わず、
大ざっぱに言えばスラッシュ・メタルとドゥーム・メタルを粘着質の残忍な音でドライにブレンドし、
飲めや歌えやの“ロックンロール”の肝で笑いながら晴天の下で皆殺しにするようなサウンドだ。
ロックンロールは“いかにもの様式”のスタイルだけじゃない。
デス・メタルだってブラック・メタルだってロックンロールが根っこのバンドは無数存在するわけである

抜けのいいドラムをはじめとしてアメリカンな開放精神炸裂のダイナミズムに解放される。
メンバー写真の満面の笑顔が最近のSCORPIONSの写真みたいなところも実にクール。
浴びれば生き延びられる一枚だ。


★OBITUARY『Ten Thousand Ways To Die』(RELAPSE RR7364)CD
計約55分13曲入り(そのうちメドレーの2曲は1トラック扱い)。
帯付き。


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drillman『vesa』(reissue)

drillman『vesa』(reissue)


京都拠点のパンク・バンドのHELLRISERを率いていたQ-ZOらが92年に結成したオルタナティヴ・ロック系バンドが、
2000年にTAG RAG Recordsからリリースしたサード・アルバムのリイシュー盤。
アートワークを新調し、
CONVEX LEVELの渡辺良が2012年にリマスタリングした音が使われ、
体温を感じる仕上がりだ。

ギター、ベース、ドラムスの他に、
キーボード、シンセサイザー、プログラミング、ジャンベなどのパーカッションなども使用。
エレクロトニカ、シューゲイザー、ドリーム・ポップ、ソフト・ダブ、クラウト・ロックの間も行きかう、
たおやかなサウンドのパワフルなゆらぎに包まれていく。
反復パートも多いが、
いわゆるトランスものよりはポスト・パンク寄りのやさしい弾力の質感の響きで、
ていねいに紡ぎ上げられた作りである。

時にスペーシーで、
曲によってはエレクトリック・ギターがうなりを上げてドラマチックにも展開するロック・ミュージック。
インスト主体ながら日本語のヴォーカルも音に溶け込んでいる。
曲が進むにつれて桃源郷が見えてくる。
ラスト・ナンバーの曲名でもある“floating sun”という言葉のイメージの木漏れ日の浮遊みたいなサウンドだ。

無機的ではなく人間のぬくもりを感じる一枚。


★drillman『vesa』(NASCA CAR Recordings NCR-004)CD
六つ折りペーパー・スリーヴ仕様の約57分7曲入り。
実際のジャケットは↑の画像よりも色が濃いです。


DARKTHRONE『Arctic Thunder』

DARKTHRONE『Arctic Thunder』


ノルウェー拠点に80年代の後半からコンスタントに活動し、
ブラック・メタルのイメージの強い“エクストリーム・メタル・デュオ”DARKTHRONEの約3年半ぶりの16作目。
エンジニアとミックスはノクターノ・カルト(vo、g、b)が行ない、
前作に引き続きジャック・コントロール(元WORLD BURNS TO DEATH、現BUTCHER)が
マスタリングを手がけている。
緻密な作りでありながら、
ゆるくてプリミティヴでヒリヒリした生々しい質感の仕上がりも最高の作品だ。


一般人でも開かれた意識であればその時々で多少やりたいことが違ってくるもので、
ミュージシャンだとそれがレコーディング・アルバムなどの作風に表れる。
DARKTHRONEは“ブラック・メタリック・ハードコア・パンク”の流行りを予見して嘲笑うかの如く、
2000年代に日本のバンドも含むハードコア・パンクからの影響の強い曲も多数放ったが、
変わったも変わってないもヘッタクレもない。
メタルもパンクも関係なくロックでいいじゃないか。
いつも書くように音楽も映画も文章もウワベのカタチではなく“行間”の意識に耳を傾けるものだから。


今回はブラック・メタルに“回帰”したとも言えるが、
ブラスト・ビートで突っ切るタイプではなく、
ずっとDARKTHRONEの中で発酵し続けている“ブラックの種”がじんわりと広がる曲が連なる。

ツー・ビートを挿入しつつスロー~ミディアム~アップ・テンポで推移しながらノリが良く、
またまたパンク・ロックとの接点が見えてくるほどフック十分の曲作りも冴えている。
パワー・メタルも含めてスラッシュ・メタル前夜の80年代の暗黒ヘヴィ・メタルに、
パンクの“ファック・ユー!”アティテュードの弾を撃ち込み、
ブラック・メタルの暗赤色の血で塗りたくったかのようなアルバムだ。
異形のメタルと畸形のパンクの混血にも聞こえる。
ブックレットで2ページ割いてビッシリ名前を挙げたサンクス・リストには
リー・ドリアンの名前もクレジットされているが、
彼がやってきているCATHEDRALWITH THE DEADとの接点も大いに感じられる。
裏ジャケットでフェンリッツ(ds他)はNAPALM DEATHのTシャツを着てキメてもいる。

シューゲイザーっぽいパートでも響きがやっぱり違って耽美にはなり得ぬ光が鈍く輝く。
嫌悪憎悪のヴォーカル、
殺伐としたギター、
味のあるトーンで重く抜けのいいビートを放つドラム、
そのどれもが個性的で、
響きに人間が表われるとあらためて思い知らされる。
深いところに届く重金属の響きはまさに記号化され得ないヘヴィなメタル。
愛と平和から遠く離れ、
アルバム・タイトルどおりの“極寒の雷鳴”サウンドは、
むろんメタルの肝の荘厳な邪悪な匂いムンムンである。

3曲は歌詞を載せずにブックレットにはイメージ画だけを載せているが、
すべて英語で歌われていると思われる。
何かの“念”を感じさせるヴォーカルが、
本作収録曲「Inbred Vermin」のタイトルである“生まれつき/近親交配の害虫”のニュアンスの世界観を歌い綴る。

ひとつひとつの音に吹き込んだ思いの強さがジャンル問わずそこいらのバンドと根本的に違う。
にもかかわらず緊張感と殺意に満ち満ちているというよりは
いい意味で余裕が感じられる作り。
それもまた根が“ロックンロール”であることの証しであり、
なにより映画のエンドロールみたいなアルバムのエンディングがまさに“ロックンロール”ではないか。
だからこそ気持ち良くてしょうがない貫禄の一枚だ。


★DARKTHRONE『Arctic Thunder』(PEACEVILLE CDVILEF568)CD
12ページのブックレット封入の約40分8曲入り。


SERPENTINE DOMINION『Serpentine Dominion』

SERPENTINE DOMINION『Serpentine Dominion』


KILLSWITCH ENGAGE
のリーダーのアダム・ デュトキエヴィッチが中心になった
米国の“新型エクストリーム・メタル・バンド”のデビュー作。

他のメンバーは、
CANNIBAL CORPSEのジョージ・コープスグラインダー・フィッシャー(vo)と、
BLACK DAHLIA MURDERのシャノン・ルーカス(ds)である。
アダムはこのアルバムでギター、ベース、ヴォーカル、プロデュース、録音、ミックスを担当。
歌詞はアダムとKILLSWITCH ENGAGEのジェシー・リーチが書き、
アートワークはKILLSWITCH ENGAGEのマイク・ダントニオが手掛けている。

以上のメンツから想像できる期待を裏切らない作品だ。

ジョージがリード・ヴォーカルだからというだけでなく
さりげなくジャズっぽい展開も含めてCANNIBAL CORPSEを思い出すデス・メタル・パート中心で、
ブラスト・ビート全開の猪突猛進パートや混沌のミディアム・テンポのパートで押す曲も含むが、
デス・メタルと言い切れないサウンドである。
メロディアスなインスト・ナンバーとアコースティックなインスト・ナンバーの2曲に加え、
曲によってはKILLSWITCH ENGAGEを思わせるメロディアスなサイド・ヴォーカルも入り、
叙情性もアクセントになっているのだ。
もちろん既存のメロディック・デス・メタルのスタイルとは一線を画す。
簡潔なギター・ソロで鮮血のメロディが噴き出し、
アダムの作曲ならではのフックがどの曲にも設けられていて暗雲の中から光も差し込んでいる。

音楽性はデス・メタル寄りでも歌詞はポリティカルなニュアンスが強い。
シリアをはじめとする中東、アフリカ北部、アフガニスタン~パキスタンなど、
世界中の紛争の現場をイメージする。
アルバム全体が哀切の念に貫かれていて悲嘆が簡潔に凝縮された聴き応え十分の一枚。


★SERPENTINE DOMINION『Serpentine Dominion』(METAL BLADE 3984-15490-2)CD
12ページのブックレット封入の約27分9曲入り。


田畑満+金子ユキ『Caño Cristales』

田畑


ACID MOTHERS TEMPLEなどで自由な活動を30年以上続ける元ZENI GEVAの奇才・田畑満と、
ACID MOTHERS TEMPLEの河端一らとのFLOATING FLOWERで活動してきて
今年1月には勝井祐二とのCD『Mythos』も出している金子ユキの、
コラボレーションCD。

単なる一時的なセッションとは一線を画す一種のユニットで、
これは一昨年のセルフ・タイトルのアルバム以来のセカンドになる作品である。
田畑が“guitar with guitar synthesizer”、
金子がelectric violinを演奏し、
一昨年の11月に神戸と京都と大阪で録音した約58分4曲入りだ。


インプロヴィゼイションでオーヴァーダビング無しとのことだが、
あらかじめ作曲された曲を演奏しているかのごとく琴線に触れる“サウンド眺望”である。
“虹色の川”とも呼ばれる南米コロンビアのキャノ・クリスタレスをアルバム・タイトルにしているだけに、
色の表情が変移していく幻惑の音宇宙を創造していくパフォーマンスで、
もちろん合成着色料の音ではなく天然の“無限色”をたたえている。

マジカルで幽玄な佇まいながら人なつこく、
コズミックにリズカルで躍動する鮮烈な響きだ。
ところによってはオリエンタル・テイストでインドっぽい旋律も丁寧かつダイナミックに綴れ織り、
アグレッシヴな絡みはスリリングですらある。
アンビエントものやポスト・ロックものとは別次元で飛翔し、
必ずしも多幸ではなく暗鬱な調べにも彩られたデリケイトな生気が溢れている。
ブルースもドローンも息づき、
いわゆるシスコ・サウンドとトニー・コンラッドとのミッシング・リンクのような音像にとろけるしかない。

底無し沼の至福の冥界にゆっくりと吸い込んでいく、
たおやかに研ぎ澄まされたリアル・サイケデリック・ミュージックの佳作である。


★田畑満+金子ユキ『Caño Cristales』(スローダウン SDRSW 05)CD
薄手のペーパー・スリーヴ仕様ながらCD盤は厚紙CD袋に収納されていて折れにくいパッケージだ。
レコードみたいな“33RPM”や“45RPM”ではなく、
“480RPM”というCD盤に書かれた表記もたいへんオチャメである。


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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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