なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

GOJIRA『Magma』

GOJIRA『Magma』


リリース元のROADRUNNER Recordsの歴代バンド群の精を受け継いだサウンドながら孤高のボジションで輝く、
フランスの“プログレッシヴ・エクストリーム・メタル・バンド”のGOJIRAによる、
オリジナル・アルバムとしては『L'Enfant Sauvage』以来の約4年ぶりで6作目に数えられる作品。

思わず身を乗り出して聴いてしまう強靭な佳作である。
大ヒットはしてない。
だがこれだけ厳粛な空気感が渦巻いていて緊張の糸がピン!と張り続いているにもかかわらず、
母国はもちろんのこと欧米各国でこれまでで最高のチャート・アクションを記録しているのも納得で、
まろやかなメロディ・ラインと琴線に引っかかるリフがポピュラリティ十分で持っていかれる。
ときおり民俗音楽っぽい旋律も隠し味にしながらディープに迫るのだ。


90年代前半のSEPULTURAとNEUROSIS、すべての時期のフロリダのDEATHの、
音楽性と精神性から触発されつつさらにストイックに求道したかのようで、
ギターの刻み一つをはじめとして音の出し方ひとつにしても意識が表われている。
やっぱり響きに甘えがない。
大切なのはどこから音なり言葉なり画なりを出しているかだから。
どんなジャンルだろうが表現媒体だろうが基本はまずそこだから。

ISISのような弾力性の音の質感も内包し、
RADIOHEADやPORTISHEAD以降のロック・サウンドのシャープな味わいも醸し出されている。
クールなリフの組み立て方も特筆すべきで、
メタルのリフをお手軽に使ったバンドとの違いは一瞬の“鳴り”でわかる。
必要最小限で自分たちの中から紡ぎ出されるリフのひとつひとつがカッコいい。
おのれを磨き倒して導き出したデリケイトな響きのひとつひとつが、
ゆっくりと、ゆっくりと、聴き手を覚醒させていく。

ジャケットの“太陽神”の画が近いというのもあるが、
KING CRIMSONの『Larks' Tongues In Aspic』のメタル感とプログレ感をアップデートしたかのようでもある。
研ぎ澄まされたサウンド殺したての生肉の如き新鮮な響きだし、
映画と同じく音楽もさばき立ての生肉の如き命の匂いが大切だとあらためて思わされる。

米国産だけでなく日本産も含めてハードコア、メタルコア、スクリーモ、マスコア問わず、
スタイリッシュに叫んでいるだけでしかないハードコア風ヴォーカルはもういいかげん勘弁してほしい。
馬鹿の一つ覚えの“正義”を得意げな顔で説く歌声は形だけで意識が聞こえてこないのだ。
でもここで解き放たれているたおやかなヴォーカルにはナチュラルな歌心が宿っていてリアルこの上ない。

動物云々に対して強硬な姿勢を示すこともあるバンドだが、
主張の違いが刺激的で逆に触発されることも多い。
そもそも“みんなと一緒”ってやつほど恐ろしくて嘘八百なものはない。
すべて英語で綴られた歌詞はあくまでも暗示的だ。
いかにようにも解釈できるほどに、ほのめかす表現こそが意識の奥深くに働きかけると心得ているようでもあるし、
エゴを溶かした不穏な色合いを隠し持ちつつ実は慎ましやかな佇まいのサウンドと共振している。
シーシェパードに対するGOJIRAの今の思いがどんな感じなのか実際のところはなんとも言えないが、
音同様にゴリ押しとは一線を画す歌表現であることは間違いない。

冷厳な肌触りでありながらサウンドはあたたかい。
まったくもって心がこもっている。
言うまでもなく演歌みたいなのにしか心がこもってないなんてことは全くない。
そもそもドラムを含む楽器にだって心が宿り得ることはこのアルバムに耳を傾れればわかる。
シンプル&プリミティヴなアコースティック・インストのエンディングが象徴的だ。
表面的なメッセージではなくヒリヒリした感触にすべてが表われていて、
痛みを悼む意思と意志の音と歌で覚醒させる。
オススメ。


★GOJIRA『Magma』(ROADRUNNER RR7479-2)CD
8ページのブックレット封入の約44分10曲入り。


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レコード・コレクターズ 2016年9月号

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●ダムド初のドキュメンタリー映画『地獄に堕ちた野郎ども』の紹介


パティ・スミスのライヴ評(at 東京・六本木ビルボードライヴ 6月7日昼の部)


●ニュー・アルバム・ピックアップ
★ロメオズ『ひまわりの花』


●リイシュー・アルバム・ガイド
★バッジー
・『ネヴァー・ターン・ユア・バック・オン・ア・フレンド(友情)』
・『イン・フォー・ザ・キル』
・『バンドリアー(反逆の群狼)』
★スパ(リチャード・スパ)『スパズ・ジャンボリー』
★ジジ・マシン/チャールズ・ヘイワード『レ・ヌーヴェル・ミュージック・ドゥ・シャンブル・ヴォリューム2』

The MUFFS『Blonder And Blonder』
The MUFFS『Blonder And Blonder』(OMNIVORE Recordings OVCD-168)CD


hell-guchi『LIFE. LOVE. REGRET』

hell-guchi.jpg


1975年に近畿地方で生まれた男性のhell-guchiが父親に捧げるべく綴った自身の半生記。
帯に書かれた“「成り上がり」より「裸一貫」”という言葉が心に響いたし、
個人的にツボを突く音楽関係の固有名詞も頻発するから一気に読んでしまった。


3日で一気に書き上げたというだけに四十男の初期衝動でもって駆け足で描かれ、
エモい“泣き”の要素はなく飄々とした“足取り”の文章ゆえの感傷が削ぎ落とされた筆致ではある。
でも南カリフォルニアのサンディエゴのニュースクール激情ハードコア・バンド、
UNBROKENの94年のセカンド・アルバムのタイトル『Life. Love. Regret.』と書名がほぼ同じなのは、
偶然ではない。
そのフレーズがピッタリの本だし、
他にもhell-guchiが吸収してきた音楽が言葉の中で息をしている本なのだ。
本書とは直接関係ないが、
最近だとLongLegsLongArms[3LA]レーベル周辺のバンドのライヴにも足を運んでいるようで、
SWARRRMの『20 year chaos』を愛聴しているのもうなずけるカオティック・ライフが静かに走っている。

僕より12歳年下の方だけに同時代感覚とは違うが、
たどってきた音楽遍歴にはうなずきまくりだ。
hell-guchiは大学入学後の90年代の半ばからしばらくは東京に住んでいたらしく、
しかも高円寺のライヴ・ハウスの20000V(R.I.P.)やショーボートに入り浸っていたというから、
僕も絶対どこかで場を共有していたはず。
その頃hell-guchiが愛用していたというANAL CUNTのTシャツを当時ライヴで着ていた人のことを
思い返したりもしてみた。
それはさておきhell-guchiは自身のノイズ・ユニットに加えて自主ライヴ企画を95年に始め、
非常階段のメンバーでもあるT.美川がその準メンバーだったF.コサカイとやっているINCAPACITANTSと、
メロディック・パンク・バンドのLOVEMENを含む組み合わせで決行することもあった。
その頃に現REDSHEERのメンバーが中核だったバンドのATOMIC FIREBALLとも
交流を持っていたようである。

どんなアーティストでもいいってわけじゃないだろが、
ヒップホップやトランス・ミュージックに入り込んだりもしているフットワークの軽さは、
いい意味で文体に表れている。


話を戻すとhell-guchiが“主演”の物語ではあるが、
hell-guchiにとってかなりでかい存在の“親父”のことにかなりの字数を割いている。
“貧乏でも、子供達への愛情は惜しげなく注いでくれた親父。
連帯保証人として背負った1億円の借金を、20年かけて返済した親父。”
という帯の文句に本書の肝が凝縮されている。

子どもの頃からかなり生活が困窮していたようだが、
本当にそういう人間が表現するものは貧乏自慢や不幸自慢にはならない。
可笑しいほど、ある意味突き抜けているからである。
そしてhell-guchiのようにエクストリームな生活状態で子供の頃から暮らしていると
パンクに向かうモチーフは反体制だの反資本主義だのを超えてもっとプリミティヴな“飢えた心”になる。
それにしてもhell-guchiが長男の3人兄弟と“親父”と“オカン”の家族5人は、
貧しいながらも子どもたちの将来を考えた御両親の気だての良さと他人を思いやる気持ちの強さでしあわせそうだ。
お互いに敬意を表わし合っている家族に映る。

特にやはり“親父”の努力は計り知れないと想像できる。
家族内の状況はかなり違うが、
父親に関してはhell-guchiと近い点が多いがゆえにも読んでいて僕も心に染み入ってきた。
大型車の運転手の仕事でやはり「人に使われるのは御免だ」みたいな性格だった
(ただしhell-guchiの親父のメインの職業がトラックの運転手で他にも色々やったのに対し、
僕の父親はダンプの運転手で(有)行川建材興業という会社まで作るもやがて必然的に一匹狼に)。
仕事ばかりしていたようで原始的DIY精神に基づき完成品を買うより自分で作る“趣味”もそっくりだ。
僕も少なからずリスペクトしているから“親父”についての部分は読んでいてちょっと目が潤んできたし、
自分もこういうことを書きたいと思った。


hell-guchiは冒頭に書いたバンドの名前の“UNBROKEN”そのものだ。
父親譲りの精神性であることは言うまでもない。
“UNBROKEN”と言えばアンジェリーナ・ジョリー監督の2014年の問題作映画の原題も思い出すし、
本書のイメージとちょっと違うしカッコ良すぎのフレーズながらその邦題を引用すれば、
さりげなく“不屈の男”である。
そして本のタイトルの最後の“REGRET”だけ“.(ピリオド)”を打ってないところも重要なのだ。

ちょっぴりしょっぱくて苦辛い味の日本映画の佳作を観た気分になった自伝エッセイである。


★hell-guchi『LIFE. LOVE. REGRET』
税込:1080円
単行本(ソフトカバー): 113ページ
出版社: 文芸社
商品パッケージの寸法: 19 x 12.6 x 0.8 cm


SOURVEIN『Aquatic Occult』

SOURVEIN『Aquatic Occult』


90年代前半から地道に活動を続けている北カリフォルニア出身のスラッジ・コア・バンドの新作。 
2006年のCHURCH OF MISERYとのスプリット盤や一昨年のGRAVES AT SEAとのスブリット盤を含めて、
多数の音源を発表してきているバンドだが、
フル・アルバムとしては『Black Fangs』以来約5年ぶりで4作目に数えられそうな作品だ。

今回も素晴らしい。
昨年の2月から5月にかけてレコーディングされたアルバムだが、
CORROSION OF CONFORMITY(C.O.C.)のマイク・ディーンがSOURVEINと共にプロデュース。
奥行きのある不穏な音像に一発で飲み込まれる。
ドラムもC.O.C.のリード・ムリンが全面的に叩いており、
曲によって、
LAMB OF GODのランディー・ブライ(vo)、
AMEBIXのスティグ(g)、
元IRON MONKEYのディーン・ベリー(g)など、
普段なかなか一堂に会することがありえない豪華な面々が参加している。

初期にスプリット盤を作ったことのあるBUZZOV*ENやGRIEFに通じる
“出口無し”スラッジ・チューンの連発ながら、
時にリリカルでクールなリフも連発する侘び寂び十分のサウンドだ。
だらだら長い曲を続けることはなく、
こういう系統のバンドにしては曲が短めで根がパンク・ロックということがわかる。
と同時にドラマチックに展開する前に曲を終えてしまうところはパワー・ヴァイオレンス勢にも通じるが、
みんなで一つになることなんか知ったこっちゃないスラッジ・スビリットに溢れている。

絶妙のタイミングのドラムとギターのリズム・バランスに痺れ、
膨張気味の音のすき間から臭ってくるゆるさがたまらない。
底無しの泥沼に溺れ死にそうな音とヴォーカルは哀愁やさぐれ酩酊トーンで、
ダミ声に逃げずに終末の歌心もこぼれ堕ちる。
T.ロイ・メドリン(vo、g)による浮世を超越した魂と祈りの歌詞もクールだ。

映画と同じく音楽も滅菌されてない空気感が大切だとあらためて思う。
好きモノにはこたえらない中毒盤。


★SOURVEIN『Aquatic Occult』(METAL BLADE 3984-15448-2)CD
12ページのブックレット封入の約43分14曲入り。


阿武誠二(SEIJI/GUITAR WOLF)『昭和UFO』

昭和UFO


87年に東京でパンク/ロックンロール・バンドのギターウルフを始めた、
セイジ(vo、g)こと阿武(あんの)誠二の“エッセイ”集。

ブログの“フジヤマシャウト”に2007年の6月から今年4月にかけて書いた文章の中から89篇を抜粋し、
加筆および一部改題のうえに再構成した本である。
幼少時や学生時代をはじめとする過去の述懐が過半数ながら当然ギターウルフ結成以降の話も多いが、
書いた順番ではなくセイジの人生を追うような感じで文章が並べ替えられ、
おおおまかなテーマごと固めながら一つの流れができているところがポイントだ。
実直ながら天然の頓智が隠し味になったゴツゴツしたセイジの文体が骨まで味わいやすいように、
ぎゅうぎゅう詰め込まずに字が大きめの風通しのいい縦書きで読みやすい作りになっている。


ひとつひとつの文章のタイトルのほとんどがギターウルフの曲名そのもののセンスで、
どこを切ってもブレのない“セイジ節”全開である。
個人的には同い年(1963年生まれ)ならではの同時代感覚で切なくクスッと可笑しく楽しめたし、
ギターウルフに思い入れのない方もセイジの“まっすぐな人間ぶり”にヤられること間違い無しだ

ビシッ!と曲名が決まればそこから音と歌詞のイメージがふくらんでできあがっていく
ギターウルフのソングライティングそのままの“ドラマ”が描かれている。
ロマンあふれる人間臭い美意識に貫かれている。
シンプル&ドラマチック!なライヴや歌詞や音の世界観そのままの本だが、
底無しの妄想力と夢想力と想像力と観察力に舌を巻くしかない。

ネタは、昆虫、天体、飲食物、特撮もの、現場仕事、バイクなどなど尽きることはなく、
音楽をはじめとするセイジのルーツもさりげなく伝わってくる。
ツアーや映画撮影などで赴いたアメリカやヨーロッパなどの海外“紀行文”もリアルな一方、
日本の情趣があちこちから滲み出ているところもセイジらしい。

“地方出身者コンプレックス”を隠すことなく逆バネにし、
“しでかしてやるぜ!”ってなアティテュードはパンクそのもの。
伝統的なロックンローラーとは一線を画してストイックに自分を追い込んでいく姿勢はハードコアだ。
やせ我慢と根性は体育会系直系でオリンピックに対する愛も非常に納得できる。

ギターウルフがエクストリームな形で体現し続けている“ロック・ロマン”に対する思いも本書の肝である。
ジョーン・ジェットや忌野清志郎らに対しての一ファンとしての態度に象徴されるように、
セイジは純情で正直である。
だからこそピュアだが必ずしもナイーヴではない。
潔癖と言えるほど表裏がないのだ。
ロマンチシズムとリアリズムの間を全力で加速するセイジの意識は、
“M78星雲”というタイトルの回のウルトラセブンと沖縄の話にもよく表れている。


セイジが成人になってから話では文章の中に必ずといっていいほどビールが登場する。
特にビールがメイン・アクトの“生ビール IN タイ”というタイトルの回は爆笑必至だ。

1995年のアルバム『ミサイルミー』のリリース時に
ミュージック・マガジン誌で行なったインタヴューを僕は思い出す。
以降取材するたびに「あのインタヴューは楽しかったなー」と言ってくれて、
ギターウルフのオフィシャル・サイトにも長年転載されていたほどセイジも気に入ってくれた。
そのインタヴューの場所は2年前に閉店した東京・下北沢の名物店ぶーふーうー。
基本的には喫茶飲食店ながらビールをジョッキで出していたお店で、
メンバー3人はビールをガンガンおかわりしてゴキゲンで特にセイジはジョッキ片手に話しまくり、
30年以上ライターをやってきた中で最も噛み合った絶好調インタヴューの一つだ。

僕はギターウルフのインタヴュー記事や書き原稿を本人や事務所等に読んでもらってチェックされたことはない。
どうしても書き間違い等は有り得るから“原稿チェック”を否定はしないが、
その手直しのやり方などで相手の底意地が見えたりもする。
だからこそ光るそんなセイジの潔さに本書はビシッ!と貫かれている。
宇宙を超える人間セイジの器のでかさに圧倒される本だ。


★阿武誠二(SEIJI / GUITAR WOLF)『昭和UFO』
定価:1,944 円(本体1,800円+税)
仕様:四六判/352ページ
リットーミュージック刊


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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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