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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『夢幻紳士 人形地獄』

夢幻紳士_poster


高橋葉介の怪奇ミステリマンガ『夢幻紳士』の映画化。
80年代に『マンガ少年』誌で連載を開始したマンガで、
探偵役の主演は皆木正純、
監督・脚本・編集は『探偵事務所5』などで知られる海上ミサコだ。


昭和初期の日本。
探偵・夢幻魔実也は、他人の心を視たり、他人に自由に夢を見せる事ができる。

ある夏の終わり、魔実也は道端で聞いた不思議な声に誘われ、
木箱から発見された少女に会いに行く。
山奥の診療所で少女に会うと、彼女は反応がなく、まるで人形の様だった。

少女の母親によると、奉公に出たまま数ヶ月間行方不明だったという。
『お願いします。あの子を助けてやって下さいッ』と、母親に懇願されるが、
魔実也は躊躇する。
魔実也はかつて暗示に失敗し、一人の女性を廃人にしてしまったことがあったのだ。

しかし村人を脅かす謎の犬男らの出現により、魔実也は少女の心の中を視るはめになる。
すると少女は、
奉公先の女主人によって、自らを人形と思い込む暗示をかけられていた。

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昭和の日本のホラー映画のような妖しい空気感がたまらない。
ほんと観ていてタイムスリップした気分になるが、
懐古で終わらずにいい意味でさりげなくモダンな味わいでアップデートもされている。
ほとんど血を見せないから精神的なホラー映画、
いややっぱり怪奇ミステリ映画と呼ぶのがふさわしい。
幻想文学ならぬ“幻想映画”とも言いたくなる。

不可思議な物語を濃厚にしていく映像が見事だ。
渋めの発色の画質が効果的である。
人形や紙風船、調度品、家屋などの映り込む“アイテム”にもこだわり十分だ。

さりげなくテンポがいいのもポイント。
場面転換などの思い切りのいい編集の成せるわざである。
スズキケンタロー担当の音楽も怪奇なムードをささやかに盛り立てている。

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俳優陣もみな熱演である。
“人の心を操って幻を見せる”ことで知られる探偵役の皆木正純もハマっていて、
今やほとんど死語の“ニヒル”な佇まいで飄々とヘビースモーカーも演じる。

ワケありの人たちの暗部を描いているような映画でもあるから、
みななかなか強烈である。
もちろん芝居がかったわざとらしいヤツとは一線を画し、
何かに憑かれたような生々しい演技は舞台での演劇経験者が多いからだろう。
即席の役者さんとはセリフの発声が違う。
喉からというより腹から出し、
心臓を射抜くほどの声の力にもおののく映画だ。


★映画『夢幻紳士 人形地獄』
2018年/日本/90分/Color and B&W
出演:皆木正純、横尾かな、岡優美子、龍坐、紀那きりこ、杉山文雄、SARU、井上貴子 、義いち、
山口美砂、森川陽月、山田歩
5/22(土)より東京・新宿K's cinemaほか全国順次ロードショー。
https://mugenshinshi.wixsite.com/movie


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FEDAYIEN(フェダイン)『First』『Joint』ペーパー・スリーヴでのリイシューCD

川下直広(サックス、ヴァイオリン、笛)と大沼志朗(ds)、
渋さ知らズではダンドリストとして活躍している不破大輔(b)のトリオで、
90年代中心に活動していたジャズ系バンドの2枚がペーパー・スリーヴでリイシュー。
どちらも5年ほど前に石崎信郎がリマスタリングするも寝かされた状態になり、
今回発売した地底レコードにリリースの話が回ってきたという。

1997年のアルバム『Live!』リリース時だったと思うが、
フェダインのインタヴューは僕の一つの転機になった。
確か川下が「作家が、小説家ではなく文士と名乗る気持でやっている」という感じのことを言い、
その言葉にインスパイアされてから僕は音楽文士と名乗るようになったからである。
アラビア語で“戦士”を意味するバンド名を背負っていただけに、
フェダインは“士(さむらい)”の気概で活動していた。
僕もそういう覚悟で書かねば・・・と思った。


ファースト

約61分8曲入りの『ファースト』は、
1990年4月に東京・代々木のチョコレートシティで録ったライヴが元で、
同年に最初の発売が行なわれている。
勝井祐二(ヴァイオリン)がゲスト参加した唯一の曲のオープニング・ナンバーをはじめ、
ファーストとセカンドの間のThe POP GROUPも思い出すシリアスな空気感をキープしながら、
豪胆かつ飄々と前進していく。
あまりジャズに聞こえない。
ロックに聞こえる。
ロックンロールとすら言えるドライヴ感も魅力で(実際ラストはロックンロール・チューン)、
いわゆるフリー・ジャズのいかにもの加速演奏とは一線を画す。
メンバー3人が程良い距離感の演奏で程良く乾いた音なのに暑く熱い。
サックスだけでなくベースもドラムも奏でる切ないメロディの侘び寂びも十分。
やっぱこれ最高です。
最初の本作の発売時にミュージック・マガジン誌の編集長だった脇谷浩昭のライナー封入。


ジョイント

約52分6曲入りの『ジョイント』は93年のリリースで同じくチョコレートシティでの録音。
南正人(vo,g)と加藤崇之(g)がゲストで、
フェダイン名義のCDとはいえ南の歌が中心だから僕にとっては番外編である。
南の参加ということで『ジョイント』というアルバム・タイトルを深読みすることも可能だ。
このCDはそういう感じではないが、
“レコ発ライヴで南がキメすぎてダラダラいつまでも演奏が終わらず、
曲も決めずに演奏するからドラムの大沼が怒って二度と集まることがなくなったライヴもあった”
という関係者の話も納得できる内容。
南のヴォーカルを軸にしているからフェダインの演奏もレイドバックしたCDである。


★フェダイン『ファースト』(地底 B97F/NIR-004)CD
★同『ジョイント』(同 B98F/NIR 007)CD


映画『デッドロック』

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CANの曲が使われたことで知られる1970年のドイツ映画の日本初ロードショー。
“『マッドマックス』×『エル・トポ』×『続・夕日のガンマン』”
という宣伝文句もハッタリじゃない傑作である。
監督はローラント・クリック。
念のため、同タイトルの違う映画が存在するから注意されたし。

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閉鎖された鉱山デッドロックの監督官ダム(マリオ・アドルフ)は、
荒野で行き倒れになっていた男と大金が入ったジュラルミンケースをみつける。
その若い男キッド(マルクヴァルト・ボーム)を殺しきれなかったダムは、彼を介抱してやる。

デッドロックには、元娼婦のコリンナ(ベティ・シーガル)、
その娘と思われる口のきけない美少女ジェシー(マーシャ・ラベン)がいて、
キッドは異様な緊張感の中で身体を癒していく。
数日後、
キッドの仲間で死神のような非情な殺し屋サンシャイン(アンソニー・ドーソン)が村にやってきて、
ダムをいびりまくって金を奪う。
サンシャインは単身逃げようとするが、
キッドとジェシーが罠を仕掛けていた。

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以上はオフィシャル・サイトのあらすじをアレンジしたものだ。
映画の舞台がアメリカだからセリフが英語というのもあってわかりやすいが、
さりげなく深い。
作りとしては、
場面転換する際の“行間”の作り方にうならされ、
想像力を掻き立てられる。

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カルト映画の匂いプンプンなのがたまらない。
いつも書くように映画も匂いが漂ってくるぐらい臭気を発しないとダメなのだ。
当時一触即発の政治状況の中で撮影が行なわれた中東ネゲヴ砂漠と、
映画の舞台になっている当時のアメリカの匂いがブレンドした土臭さにむせかえる。
発色が妖しく怪しい映像はドラッギーかつアシッドなほどである。

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CANのファンとしては映画の映画のタイトル・トラックが聞こえてくるオープニングで、
もうアガる。
イエジー・スコリモフスキ監督の『早春』の曲などとともに『Soundtracks』(1970年)に収めた
3曲が映画で体験できるのがとにかく感激だし、
映像やシーンにピッタリとハマって盛り上げていくサイケデリックなセンスにうならされる。

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基本的にはマカロニウエスタンものと言える映画だけに容赦ない。
情にほだされてというシーンも含みつつ特に後半は非情だが、
リアリティたっぷりに迫る映像力がやはり素晴らしい。

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俳優陣もみな生々しい名演だ。
美少女ジェシーのミステリアスな存在感が
殺伐としたクレイジーな映画の中で潤いになっており、
ちょっとしたロマンスも大いなる見どころである。

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CANのドーナツ盤のレコード、
モーゼルC96やトミーガンといった銃など、
もろもろのアイテムも小ネタとして楽しめる映画だ。


★映画『デッドロック』
1970年/ドイツ/英語/85分/1.66:1 原題 DEADLOCK
★ドイツ映画賞長編作品賞受賞
監督:ローラント・クリック
音楽:CAN(カン)
出演:マリオ・アドルフ(『ブリキの太鼓』他)/アンソニー・ドーソン(『007は殺しの番号』他)/
マルクヴァルト・ボーム/マーシャ・ラベンなど。
配給 オンリー・ハーツ/アダンソニア 宣伝:ブライトホース・フィルム 字幕:小泉真祐
5月15日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開。
© Filmgalerie451
http://deadlock.movie.onlyhearts.co.jp/


AUTOROLL/MIDNIGHT RESURRECTOR『Auto Resurrecion』

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東京拠点のAUTOROLLと大阪拠点のMIDNIGHT RESURRECTORによる
ハードコア・パンク・スプリットCD。
各々6曲ずつ収録の26分弱のヴォリュームだが、
筋金入りの渋いベテラン・メンバー同士ならでの聴きごたえありありで、
ピュア・ハードコア・パンクの新たなる名盤の誕生だ。


AUTOROLLはUeda(vo、g)がKGSと並行して始め、
Kentalow(ds~元ASSAULT、ALLIANCE)、
Makoto(b)[元・日本のTERROR、KGS)のトリオ編成に固まり、
2010年代の半ばにCD/レコード・デビューしている。

GANG OF FOURやPiLのTシャツを着たUedaのステージ写真に納得できる
ポスト・パンクのスパイスもちょろりとギターに効かせつつ、
ストレート・フォワード!なハードコア・パンクで畳みかけ突っ切る。
“LIP CREAM meets DISCHARGE with 伝統的なジャパニーズ・ハードコア・パンク”
とでも言いたくなるが、
80年代前半のイタリアやドイツのヨーロピアン・ハードコアのメロディも香る。
一ひねりありの展開で持っていく曲でありながら全体の加速度が素晴らしく、
曲によってはブラスト・ビートをブチ込むドラムとグルーヴィなベースも高得点だ。
ときおり日本語が聞こえてくるヴォーカルは非恫喝系でフラストレイションぶちまけ生々しい。


MIDNIGHT RESURRECTORは2002年に現在のバンド名を使うようになったが、
NO SIDEやTECHNOCRACYなどで活動してきたメンバーが中心で、
2003年のデビューEPから独立独歩の活動をしている。

今回ミディアム・テンポのロッキンな曲「Forever And Always」
(1992年の『Blank Blackout Vacant』収録)をカヴァーしたPOISON IDEAの中期以降を、
メタリックなを肝をつぶして加速させたような曲と音だ
ドラマチックと言えるほど曲のイントロが凝っていて緩急織り交ぜ練り上げた曲だろうが、
加速が止まぬ硬質なヘヴィ・ハードコア・パンク・サウンドである。
もたれがちな気合系ジャパコアの典型的なパターンとは一線を画す噛みついてくる勢いのスピードで、
まさにストロング・スタイル。
前述のカヴァー曲で特に歌心が滲むヴォーカルの苦み走ったシャウトも強力だ。


大スイセン。


★AUTOROLL/MIDNIGHT RESURRECTOR『Auto Resurrecion』(HARDCORE KITCHEN HCK-051)CD
二つ折りの紙ジャケット仕様。
現物のジャケットのバンド名の印刷は↑の画像よりもくっきりしています。


映画『シドニアの騎⼠ あいつむぐほし』

メイン


漫画家の弐瓶勉の代表作とされる『シドニアの騎士』の映画版。
世界各国で配信された初の日本アニメとなったTVアニメ版の主要スタッフが再結集し、
弐瓶勉自らが総監修を担当し、
コミック版とは異なる新たな内容も多く盛り込まれているとのことだ。

サブ3

未知の生命体のガウナに地球を破壊され、かろうじて生き残った人類は
巨大な宇宙船「シドニア」で旅を続けていたが、100年ぶりにガウナが現れた。

再び 滅亡の危機に襲われた人類だったが、
人とガウナから生み出された白羽衣“つむぎ”や
人型戦闘兵器・衛人のエースパイロットである谷風長道の活躍により、ガウナをいったん撃退。
なんとか勝利をおさめたのだった。

それから10年-。
シドニアの人々は、つかの間の平和を楽しんでいた。
“つむぎ”も、今やシドニアの英雄となった谷風長道に想いを寄せながら、
穏やかな日々を過ごしている。

だが、艦長の小林はわかっていた。
ガウナがいる限り、この平穏は長く続かないことを。
そして、人類の存亡をかけ、最終決戦を決断する。
愛する人を守るため、シドニア最後の戦いがついに始まった。

サブ2

以上はオフィシャル・サイトに載っているあらすじを多少アレンジしたものである。

モンスターにも見えるルックスだが愛らしく健気な大柄の“つむぎ”と
好青年・谷風長道との間の<身長差15メートルの恋>を軸に、
シンプルなストーリーの中に感情が揺さぶられる切ないスパイスが盛り込まれている。

サブ4

グッとくる物語もさることながら、
僕が驚いたのは映像だ。
アニメは普段試写会でたまに観る程度の僕だが、
ちょっとしたカルチャー・ショック!とすら言えるほどの衝撃を受けた。

実写映画で使われるCG等にはシラケてしまうことの多い僕でも、
この映画の映像力には目が釘付けになった。
特に内臓のようなモノが細胞分裂のように蠢くシーンは、
ほんと息を呑むほど生々しい。
実写映画では不可能と言える“ナチュラル”な動きがアニメならではの手法で作品化されているのだ。

サブ7

音声も強力だ。
挿入されるモダンな音楽もさることながら、
いわゆる戦闘シーンをはじめとしてデジタル時代のSFものならではの音がリアルに迫ってくる。

音響装置バッチリの大きなスクリーンの劇場で緻密なダイナミズムを楽しんでいただきたい。

サブ8

★映画『シドニアの騎⼠ あいつむぐほし』
原作/総監修:弐瓶勉『シドニアの騎⼠』(講談社「アフタヌーン」所載)
主題歌/挿⼊歌:CAPSULE 作詞/作曲:中⽥ヤスタカ ⾳楽制作:キングレコード
配給:クロックワークス
©弐瓶勉・講談社/東亜重⼯重⼒祭運営局
5⽉14⽇(⾦)全国公開。
https://sidonia-anime.jp/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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