なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『イカリエ-XB1 デジタル・リマスター版』

00_main_convert_20180424163139.jpg


1963年のチェコスロヴァキア(現在のチェコ+スロヴァキア)のSF映画の古典が、
陰影くっきりで味わい深いモノクロ映像のデジタル・リマスター版で5月から公開される。
これまでも自主上映はされたそうだが、
日本では今回が初の正式公開ロードショーとのことだ。

01_sub1_convert_20180424163207.jpg

時は2163年、世界で初めて生命調査の旅に出た宇宙船イカリエ-XB1。
目的地は、太陽に似ていて生命の存在が期待されるアルファ・ケンタウリ惑星系。
イカリエ-XB1は15年後に地球へ帰還する予定だが、時間の遅れにより、
宇宙空間を高速で移動する乗組員は、その間2歳ほどしか年をとらない。

乗組員は老若男女計40人。
艦長、副艦長、数学者、社会学者、歴史学者など様々な分野と職務の人が揃い、
奥さんが身ごもっている夫婦など家族を含む。
船内には、制御室の他、スポーツジムや遊戯室もあり、
長い共同生活をストレスなく暮らせるようになっている。
乗組員の誕生日を記念したダンスパーティーなどのイベントも開かれる。

そんな中で謎の宇宙船を発見し、
探査シャトルで乗り込んで調査したところ20世紀に地球から飛び立ったロケットだと判明。
中で乗組員全員の死体を発見し、
核兵器が搭載されていることも判明する。

02_sub8_convert_20180424163256.jpg

中盤に至るまでのあらすじを書いてみた。

序盤は平穏だった日常が変容していく様子が緊張感の推移からも伝わってくる。
乗組員の中から事故で亡くなる者や自暴自棄になる者も出てくるが、
救いはあり新たな命の誕生で未来に希望も託す。

SF映画でも意外と肝になる人間関係が丁寧に描かれ、
宇宙船内で生活を共にする人間たちのチームワークも見どころの一つだ。
ほのぼのした人間味が滲み出ている。

02_sub3_convert_20180424163231.jpg

とにもかくにも“モノクロの宇宙色”で研ぎ澄まされた映像そのものが実にクールだ。
テキパキとシーンを切り替えるリズム感も相まってテンポがいい。
大胆なカメラのアングルと人物への迫り方が今見ても斬新で、
フレームの切り取り方も的確て対象にしっかりと焦点を絞り、
いわゆる自由主義圏とは状況が違っていた国ならではの創意工夫が感じられる。

宇宙船などのフォルムのカッコよさも格別で、
CGでは味わえない手作り感覚あふれる宇宙映像に目が覚める。
体温が感じられるほどリアルなのだ。

02_sub11_convert_20180424163317.jpg

アウシュヴィッツや広島もセリフの中で飛び出し、
「20世紀の人間はクズ」という言葉も吐かれる。
静かな時間の進行で張りつめていく中で放射線と対峙。
核の恐怖の描き方の点でも早かった映画である。

もちろん説教臭かったりいかにものメッセージ性ではなく、
当時の視点というだけでもなく、
普遍的な意識で暗示させている。
言葉はさりげなく、
映像もシンボリックで、
まさに映画にしかできない表現だ。

クラウス・シュルツなどのジャーマン・エレクトリック・ミュージックを思わせる音楽が、
映画全体を引き締めている点も特筆したい。


★映画『イカリエ-XB1 デジタル・リマスター版』
1963年/チェコスロヴァキア/88分/白黒/
5月19日(土)より新宿シネマカリテほか 全国順次公開
©National Film Archive
http://ikarie-jp.com/


スポンサーサイト

BANTEAY AMPIL BAND『Cambodian Liberation Songs』

BANTEAY AMPIL BAND『Cambodian Liberation Songs』


カンボジアのバンドが1983年にLPとカセットでリリースしたアルバム。
昨年2月ごろにリイシューされたCDである。


カンボジアは70年代後半にポル・ポトの超恐怖政治で支配されていて、
アメリカとの戦争“勝利”後に進出したベトナムに“解放”されるも、
今度はベトナムに“支配”された感じになる。
BANTEAY AMPIL BANDは、
大まかにいうとそのベトナム傀儡政権を打倒する政治組織が作ったバンドだ。

ポル・ポト政権(クメール・ルージュ)時代は知識人や文化人が特にターゲットで粛清され、
映画人だけでなくミュージシャンもことごとく殺された。
そんな中でまさに生き残りの一人の音楽家が若い人とバンドを組んで制作したアルバムである。
そのリーダーはヴァイオリンとキーボードをプレイし、
他にギターとベースとドラムの計5人が演奏。
男女5人が曲によってデュエットや合唱をしながら歌っている。

基本的には組織のプロパガンダのための音楽だったようだが、
そういう趣旨の音楽特有のたいへんわかりやすい曲の連続だ。
ちょい勇ましいトーンが滲む曲があるにしても、
切なくも穏やかなムードに包まれている。
彼の地の民謡をイメージするメロディを含みつつ、
日本の昭和の歌謡曲を思い起こし、
ところによっては演歌っぽい。
時に軽快で、
バンド編成のハイカラなアレンジがまた心憎い。

歌詞はわからないが、
クレジットされている以下の強烈な曲名だけでも歌の内容が想像できる。
「My Last Words」「Please Take Care Of My Mother」「Tuol Tneung (The Hillock Of The Vine)」
「Don't Forget Khmer Blood」「Sereika Armed Forces」「Follow The Front」
「I'm Waiting For You」「Please Avenge My Blood, Darling」「Destroy The Communist Viet!」
「Look At The Sky」「Vietnamese Sparrows」「The Vietnamese Have Invaded Our Country」

こういう曲調と歌唱でこのタイトルか!っていうギャップが、
逆に恐ろしくもインパクトがある。
“侵略者/支配者”というだけでなくヴェトナムが共産主義という点でも反発もあったことがうかがえる。
歌声がおおらかだけに怖い。
もちろんパンクでよくある芝居がかったわざとらしい歌い方なんて一つもない。
ゆとりありまくりのムードの曲のようで、
そんな“余裕”なんかこれっぽっちもない感情の震えの歌の連続なのである。

もちろんポル・ポト時代とは比べられないにしろ
ここのところまた統制が厳しくなっている今のカンボジアも根っこが変わらず、
このアルバム・タイトルと音楽がリアルに響いてしまうのが悲しい。


★BANTEAY AMPIL BAND『Cambodian Liberation Songs』(AKUPHONE AKUCD1004)CD
約52分12曲入り。
60~70年代を中心にカンボジアの政治/文化状況が英語とフランス語で綴られた長文ライナーと
メンバーと思しき写真が載った、
36ページのブックレット封入のデジパック仕様。


ELECTRO HIPPIES『Collected Works 1985 - 1987』

ELECTRO HIPPIES『Collected Works 1985 - 1987』


80年代の後半中心に活動した英国のハードコア・パンク・バンドが
タイトルの時期に録った前期の編集盤。
曲のダブりは多いが、
凝った曲もやっていたりするし、
作品全体の流れ云々より様々なレア音源を詰め込んだCDとして臨みたい。
デモでも音質まずまずだ。


NAPALM DEATHEXTREME NOISE TERROR、DOOM、HERESYなど、
80年代前半ほど数はいなくても個性派が多かった当時のUKハードコア・シーンの中で
ELECTRO HIPPIESは、あまり目立たない方のバンドだった。
当時のUKハードコアの“トレンド”の、
極端に速かったり、USハードコアっぽかったり、メタリックだったり、クラストだったり、
というサウンドで他のバンドほど固めてなかったからだ。
逆に言えばそういった要素が全部入っていた。
と同時にドラマーがバンドの核で曲をリードし、
ハジけたサウンドのパンク・ロックっ気は当時のハードコア・シーンの中で際立ち、
ある意味ポップとも言える音だった。
そういった肝は、
ポリティカルな曲主体の中で異彩を放ってパンクを強烈に皮肉った名曲「Am I Punk Yet?」が象徴する。

後にSEDITIONやSCATHAをシーンに送り込んだFLAT EARTH Recordsの
主宰者を含むGENERICとのスプリットLP『Play Loud Or Not At All』で最初に発表し
(そのレコード自体もFLAT EARTHからのリリースだった)、
CARCASSのジェフ・ウォーカーとビル・スティアが主宰したNECROSIS Recordsから
1989年に単独LP『Play Fast Or Die』でも発表した13曲も入っている。
それらの曲も含めて、
そのジェフが“ノーマル・ヴォイス”でシャウトしている全体の半数近くの曲がやっぱり聴きどころ。
当時のELECTRO HIPPIESはSIEGE直系のブラスト・ビート多用のファスト・コアだった。

ジョン・ピール・セッション出演時の9曲の音源も
12”EP『The Peel Sessions』やピール・セッションのオムニバスCDに提供したものに比べると、
これまで僕が買ってきたこのレーベルのCDに多いダンゴ状の塊の音で仕上がっている。
その代わりへヴィに聴こえるとも言えるし、
たやすく手に取って聴きやすくなったことはやっぱりありがたい。


★ELECTRO HIPPIES『Collected Works 1985 - 1987』(BOSS TUNEAGE BTRCRS095)CD
約80分60曲入り。
行替えなしで1ページにギッチリ収めたライナー、
主要曲の歌詞、
本作の曲のオリジナル版のインサートやアートワークの縮小などで構成した12ページのブックレット封入。



泉邦宏『イズミン族の祝祭音楽』

泉邦宏『イズミン族の祝祭音楽』


渋さ知らズをはじめとして実に多彩な活動展開を続けている山梨県在住の音楽家、
泉邦宏の新作。
基本的にはサックス奏者ながら多芸で、
精力絶倫な“多作家”でもあり純な歌ものアルバムもたくさん出し、
作品を出すたびに何が出てくるかわからない正真正銘の奇才である。

今回の核はアフリカ発祥の“親指ピアノ”楽器のカリンバ(木琴の一種のマリンバではない)。
ほぼすべてインスト・ナンバーで、
もちろん一曲の中でも例によって一人で何種類もの楽器を手がけているが、
シンプルな作りだ。


ピアノが一種のリズム楽器である以上に、
カリンバはもっと打楽器に近いからアルバム全体が躍動している。
いわゆるトランスものとは一線を画し、
どこに飛んでいくのかわからない反復の音だ。
サックスをはじめとする管楽器やキーボード/シンセサイザーなど、
色々な楽器類をさらに加えて曲として彩り豊かに仕上げられている。
シンフォニックがかったアンビエント・ナンバーや、
何語かわからない言葉で一人二役みたいな寸劇っぽいヴォーカル芸の曲もやってのける。

ROLLING STONESのブライアン・ジョーンズがプロデュースした
モロッコ音楽の『Brian Jones Presents The Pipes Of Pan At Joujouka』や、
日本のYXIMALLOOを思い起こすところもある。

秘境の部族音楽みたいなアルバム・タイトルと曼荼羅ジャケットどおりの冗談本気の作品だ。
真剣にやっているからこそ頓智が効いて滑稽になっている音そのものが
あちこちで踊っている。
出している音の聴こえ方を言葉にしたような曲名も含めて
おおらかなユーモアに包まれている。
プリミティヴながら不思議とポップで庶民肌。
どんな音楽をやっても滲み出る泉邦宏のキャラは健在である。

と同時にヤバい祭祀や怪しい儀式に使われても不思議はない一枚だ。


★泉邦宏『イズミン族の祝祭音楽』(キタカラ K-30)CD
セルフ・ライナーが内側に載った二つ折りのカードボード状ペーペー・スリーヴ仕様の
約70分15曲入り。


IRON REAGAN/GATECREEPER『Iron Reagan/Gatecreeper』

IRON REAGAN/GATECREEPER


ヴァージニア州リッチモンド出身のクロスオーヴァー・バンドIRON REAGAN
アリゾナ州のデス・メタル・バンドのGATECREEPERという、
米国東西のバンドによるスプリット盤。
両バンドともミックスはカート・バルー(CONVERGE)が手がけている。


日本でもファンが定着してきているIRON REAGANは5曲提供。
昨年の快作サード『Crossover Ministry』に引き続き絶好調である。
ミディアム・テンポもブラスト・ビートもお手の物!とばかりのリズムの“勘”がハンパない。
ジャストなコーラスもひっくるめてポイントを押さえた曲作り、抜けのいい音作り、
メタリックな中に忍ばせるロッキンなフレーズの作り方、楽曲の適度な練り込み方、
すべてパーフェクトに勢いの中に凝縮して5曲で一つの流れを作り出している。
ちょい甲高いヴォーカルはシンプルな歌詞で日常の中の真実を吐き出し、
いわゆるシュレッダーをネタにした「Paper Shredder」など目の付け所も楽しい。


かたや3曲提供のGATECREEPERはオールド・スクールのデス・メタルとでも言おうか。
ブラスト・ビートを使わずに緩急を織り交ぜ、
BOLT THROWERに通じる重戦車スタイルで押す。
1曲目の「Daybreak (Intro)」はタイトルどおりに今回の彼らのイントロで、
「Dead Inside」では世の中に苦悩し、
「War Has Begun」では最近のシリアの底無し沼をイメージもする。
陰鬱フレーズもたまらない。


本物は策を弄する必要がないこともあらためて知る。
ウルトラ・パワフルな肉体サウンドで“出口無し”を突破する好スプリット盤だ。


★IRON REAGAN/GATECREEPER『Iron Reagan/Gatecreeper』(RELAPSE RR7391)split CD
掛け帯付きの計約18分8曲入り。


 | HOME |  古い日記に行く »

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (10)
HEAVY ROCK (251)
JOB/WORK (308)
映画 (277)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (48)
METAL/HARDCORE (49)
PUNK/HARDCORE (433)
EXTREME METAL (132)
UNDERGROUND? (105)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (131)
FEMALE SINGER (44)
POPULAR MUSIC (30)
ROCK (88)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん