なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

泉邦宏『近未来原始人 イズミンゴス』

泉邦宏『近未来原始人 イズミンゴス』


渋さ知らズに参加してきたことで知られる多芸多作な音楽家、
泉邦宏のニュー・アルバム。

作品ごとに様々な顔を見せつつ、
ソロ活動で増えている歌ものはもちろんのこと、
たとえ前衛っぽいことをしても毎度人なつこくて大衆食堂の味わいは変わってない。
今回も奇才ぶりを発揮し、
音の重ねを駆使した独演でミックスもマスタリングも一人でやって仕上げている。

珍しく“電気楽器”を使いまくっているらしいが、
もちろん泉のメイン楽器のサックスも活躍。
とはいえ何の楽器等を使っているのはわからない。
嬌声みたいなヴォイスからサックスの艶やかな演奏で背後に怪しい音が踊る不気味な曲で始まり、
人を食ったヴォイス・パフォーマンスが続き、
電子音楽のような音でフリー・ジャズをおっぱじめ、
“宇宙ヴォイス”によるアカペラも繰り出す。
ぶよぶよぐにょぐにょのラテン風の弾力プリミティヴ・ビートが鳴り、
電子音が転がり、
サックスが哀愁の映画音楽みたいな曲あり、
サックスが流浪の民みたいなイメージでサン・ラーも思い出す曲あり。
最後の最後は生活雑音のような音がラジオの混信みたいな音声になって混沌とする。

時にシリアス、
だが微笑ましい“泉邦宏節”に磨きがかかっている
冗談のようで本気であり、
平和への“いのり”と“レクイエム”が聞こえてくる。
「イズミンゴス」「唱和」「交信」「みんみん」「しゅわしゅわ」「風」「ぶるぶる」「探査船ラスタ号」
「ぶーぶー」「いのり」「ハレハレ」「らりむー」「レクイエム」「生活」といった、
曲名からもアルバムの情景が目に浮かんでくる。

まさにジャケット画がハマった近未来と原始の邂逅ミュージック。
タイトルどおりの架空の映画のサントラそのものの怪作、
いや快作だ。


★泉邦宏『近未来原始人 イズミンゴス』(キタカラ K-28)CD
内側にセルフライナーが載った二つ折りのペーパー・スリーヴ仕様の約67分14曲入り。


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本『ヘドバン・スピンオフ ヘドバン的「メタルの古典」100枚』

メタルの古典


11タイトルのアルバムを書かせてもらいました。
字数たっぷりです。


<シンコー・ミュージック・ムック>
A4変型判 96ページ
税込み ¥ 1,296


レコード・コレクターズ 2017年5月号

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【特集】 『レココレ』読者が絶対に聴くべき21世紀の名盤(創刊35周年/通巻500号記念企画)
★2001年以降に発表された洋楽ロックの新作アルバムから
60~70年代的なサウンドを意識して厳選された200枚。
OPETHBLOOD CEREMONY、デイヴィッド・シルヴィアン、Antony And The Johnsons、
グレッグ・グラフィン、パティ・スミスAC/DCJUDAS PRIESTGHOST
のアルバムを書かせてもらいました。
★筆者アンケート~読者にお薦めする“こだわりの"もう一枚。


●ミック・ロック
デイヴィッド・ボウイルー・リードなどの撮影で知られる、
ロック写真家/映像作家のインタヴュー。


●リイシュー・アルバム・ガイド

CHAOS Z『Ohne Gnade』
★CHAOS Z『Ohne Gnade』(ALICE IN... AIW 183)CD

CHAOS Z『45 Jahre Ohne Bewährung』
★CHAOS Z『45 Jahre Ohne Bewahrung』(同 AIW 182)CD


Lou Reed+V.A.『The Many Faces Of Lou Reed』

Lou Reed『The Many Faces Of Lou Reed』


昨年の終り頃に発売された3枚組CD。
79年のアルバム『The Bells』のジャケットを加工したようなジャケットからして
これまた怪しい企画盤のブツだが、
一般のディストリビューションで流通しているし安価で販売されているから紹介する。


ディスク1はルー・リード関連の様々なレア音源集の約69分12曲入り。
1曲目はフェルナンド・ソーンダースが2012年のソロ・アルバム『Happiness』に収めた
VELVET UNDERGROUNDの「Jesus」のカヴァー。
フェルナンドは82年前半からほぼ最期までベースとバッキング・ヴォーカルでルーを支えた人で、
ここではギターを持ったルーとデュエットしているが、
ほぼルーがリード・ヴォーカルをとっている。
2曲目はブッカー・T・ジョーンズ(Booker T. & the M.G.s)の「The Bronx」で、
やはりルーが参加している。
3曲目から10曲目まではVELVET UNDERGROUNDのライヴ。
録音日は不明でライナーによれば69年のステージとのことだ。
オリジナル・アルバムでは未録音の「Sweet Bonnie Brown」と「It's Just Too Much」のメドレーは、
『1969: The Velvet Underground Live』に入っていることでファンには知られているが、
ディスク1の他のVELVET UNDERGROUNDのライヴ音源もそのアルバムのテイクと同じに聞こえる。
そのライヴ盤のMCや観客の歓声等をカットしたもののように思えるが、
ともあれ臨場感十分の音質良好硬質サウンドである。

ディスク1の終盤の11曲目と12曲目はルーのソロ・ライヴで、
ライナーによれば約71分のディスク2の12曲と合わせて
76年の“ロックンロール・ハート・ツアー”の中の一回分のステージがすべて収められているという。
これまた録音日は不明だが、
こちらも音質良好で熱い。

約49分のディスク3は14組によるVELVET UNDERGROUNDやルー・リードの曲のカヴァー集。
曲順は変更されているが、
2003年発売の『After Hours: A Tribute to the Music of Lou Reed』の曲が丸ごと入っている。
VELVET UNDERGROUNDの曲が過半数を占め、
ルーがソロで発表した曲もほとんどが70年代前半の曲だ。
僕の知らない参加者がほとんどで調べてもあまり情報が出てこないアーティストが多いが、
どのヴァージョンもけっこう引きつけられる。
メロディ・メイカーとしてのルー・リードの魅力を伝えるカヴァーがほとんどで、
「All Tomorrow’s Parties」を「All Tomorrow’s(Beach)Parties」と改題して
サーフ・インスト・カヴァーに仕立てたヴァージョンも楽しい。
72年のセルフ・タイトルのソロ・デビュー・アルバム収録の「Going Down」や、
84年の『New Sensations』収録の「Turn To Me」、
92年の『Magic And Loss』収録の「Cremation」のカヴァーも目の付け所が面白いしクールだ。
VELVET UNDERGROUND時代に未発表のルーの曲「I Love You」「Temptation Inside Your Heart」の
カヴァーも渋い。


★Lou Reed『The Many Faces Of Lou Reed』(MUSIC BROKERS MBB7241)3CD
デジパック仕様。


周尾淳一『The Third』

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“三島由紀夫、ジム・トンプスン、稲垣足穂(以上、作家)、
柳町光男、アレハンドロ・ホドロフスキー、アンドレイ・タルコフスキー、松本俊夫(以上、映画監督)、
コニー・プランク、SUICIDE、ジム・フィータス、エイフィックス・ツイン、ヤニス・クセナキス、
デイヴィッド・チュードア、ハリー・ベルトイア(以上、いわゆる音楽家)に捧げる。“

本人によるそんな言葉がハッタリではない作品が日本の東北からリリースされている。
岩手県花巻市を拠点にしている周尾淳一(Schuo Jun’ichi)の6枚組CD-Rだ。

『山海経』(2008年)と『Variation V』(2009年)に続く周尾の3作目で、
もともと一般的なディストリビューションではなく、
“ディスクコンサート”会場で希望者のリクエストにより1~6枚コピーして販売する音源発表を
2015年から行なってきた作品である。
極一部の人にしか聴かれないのは惜しいと思っていたが、
このたび6枚セットでインターネットを通じても入手可能になったから紹介する。


再生して1秒で場の空気が一変する。

パッケージは簡素でCD-Rというフォーマットながら、
安易な音の作りとは対極の執念すら感じさせる緻密な仕上がりだ。
制作に用いた機材や手法等は不明ながら音の方も手作りの様相で、
デリケイト極まりない“気”が静かに熱くみなぎる。
一度耳にしたら一生忘れないほど彫りが深く研ぎ澄まされた我流の音像に聴き惚れ、
音の中に引き込み吸い込んでいくエネルギッシュなうねりに目が覚める。


一般的な感覚だとノイズ(・ミュージック)といえばノイズ(・ミュージック)なのかもしれないが、
THROBBING GRISTLEのようなインダストリアル・ノイズとも
日本伝統のハーシュ・ノイズとも一線を画す。
アンビエントもドローンもミニマル・ミュージックもすべて飲み込み、
“雑音”というより、
響きのひとつひとつをていねいに磨き上げて研ぎ澄ました音の“群像”である。
これぞまさに“音響彫刻”だ。
だがこの金属質の音は決してひとつの所に留まっていない。
“精”を吹き込まれて自由な生命体として動いている。

全トラックが違う。
しゃべくっているようでもあり、
無数のヒダの動きもあり、
フリー・ジャズっぽくもあり、
おちゃめでポップでもある。
ただ音声のサンプリングのようなものも聞こえてくる一方で、
静かなパートも含み、
ヘヴィにも轟き、
持続低音に圧倒され、
鈍く光る音の層の美しさに息を呑む。

金属を使って音を放射させるライヴをイメージするサウンドの広がりもあり、
細かい音の粒の渦が炉を成した鉱物みたいであり、
音圧も十分。
インプロヴィゼイションのようで一つの流れを成すように“作曲”され、
“メロディ”も“リズム”も密かに息づく聞かせどころを設けた構成力も見事。
動きが克明に見えてくる立体的で生々しい音の仕上がりも驚愕だ。

何より音に芯がある。
だから折れることはない。
飛ばされて覚醒される380分近くに及ぶ力作だ。


★周尾淳一『The Third』(No Label Shu01~Shu06)6CD-R
Disk-1は約74分16秒3トラック入り、
Disk-2は約60分2トラック入り、
Disk-3は約53分3トラック入り、
Disk-4は約77分3トラック入り、
Disk-5は約48分1トラック入り、
Disk-6は約66分1トラック入り。
ディスクノート盛岡で入手可能だ。
http://www.morioka-record.com/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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