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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

泉邦宏『NO PROBLEM』

泉邦宏『NO_PROBLEM』_convert_20181007185638


渋さ知らズでも活動してきた山梨県拠点の奇才・泉邦宏の新作。
非常に多作でアルバムによって作風が大きく異なり歌ものの作品もけっこう出しているが、
今回はインスト・オンリーである。
全曲自作独演でミックスとマスタリングも自分でやり、
ふくらみのある音作りと立体感のある音像の仕上がりも特筆したい。


自称“基本的にはサックス奏者”だけに
大半の曲はオーネット・コールマンの流れを感じさせるサックスが旋律をリードするが、
曲によってはオクターバーのエフェクターをかませるなど
アルト・サックスの音も艶やかなだけでは終わらない。
ほとんどの曲はコンガが土台になっていてパーカッシヴな音も目立ち、
その他の楽器なども使ったと思われるが、
シンプルな作りである。

ジャズと民俗音楽を泉邦宏流に天然ブレンドしたかのようだが、
もちろんチンドン音楽もファンクも湧き出てくる。
今回も通称“ブライアン・ジョーンズのソロ・アルバム『ジャジューカ』”の
『Brian Jones Presents The Pipes Of Pan At Joujouka』を思い出すところもチラホラだ。
唯一コンガが土台になってない曲はフリーキーなキーボードっぽい音も漏れてきて、
スペイシーな辺境メロウ・サイケみたいな味わいも楽しめる。

歌詞はないが、
「No Problem」「Peace」「Let's Dance」「Anti-Major」「No Program」「Young Days」
「Stay Here」「No Progress」「Today」「Good Morning Izumingos」「Just Like All Of Me」
といった簡潔な曲名に泉のストレートな思いが託されている。

怪しくも妖しいジャケットがピッタリの一枚だ。


★泉邦宏『NO PROBLEM』(キタカラ K-31)CD
セルフ・ライナーが内側に載ったカードボード状の二つ折りペーパー・スリーヴの
約62分11曲入り。
実際のジャケットは↑の画像よりもすべての色が濃い。


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映画『まぼろしの市街戦』(4Kデジタル修復版)

映画『まぼろしの市街戦』


1966年のフランス映画の傑作が今月27日(土)から再び日本のスクリーンで観られる。
今回は4Kでデジタル修復された最新マスターでの2K上映で、
彫りが深くカラフルな映像も芳醇な音楽も劇場で体験したら
“これぞ映画!”と痺れて打ちのめされること必至の愉快痛快奇々怪々作だ。

さらに今回は若干エンディングが異なった日本公開版ではなく、
オリジナル版でのDCP上映という点もポイントである。

目に染みるほどカルト映画の匂いがプンプンなのは間違いないが、
日本語の吹き替えが当たり前だった時代のテレビの映画番組で放映されていたほど
老若男女みんなが楽しめて面白がれる。
わかりやすい物語だからこそ深い。
オフィシャル・サイトに載っている大まかなストーリーを多少アレンジして以下に書いておく。


第一次大戦の末期(1910年代後半)、
敗走中のドイツ軍は占拠したフランスの小さな街に大型時限爆弾を仕掛けて撤退。
フランスと手を組んでいたイギリス軍の通信兵は爆弾解除を命じられ街に潜入するも、
住民が逃げ去った跡には
精神科病院から解放された患者とサーカスの動物たちによるユートピアが繰り広げられていた。
通信兵は爆弾発見をあきらめ、
最後の数時間を彼らと共に過ごそうと死を決意。
でも患者の女の子とのラヴ・シーンを楽しんでいる最中に通信兵はひらめき目が覚める。


普段の“商売道具”の伝書鳩が入った鳥かごを片手に
英国スコットランド地域の伝統衣装であるキルトをまとって右往左往する序盤、
口から出まかせに“KING OF HEARTS”を自称して患者たちから王様に祭り上げられる中盤、
激動の後半まで落ち着かない主人公の通信兵の怪演ぶりにヤられる。
他の出演者も全員まさに“役者”でおもしろすぎる。

街ごと吹っ飛ばされるまで刻一刻と迫っているというのに、
そういう事情をほとんどがわかってない状況とはいえ全編カーニバルみたいで、
精神科病院の患者たちは思い思いの“コスプレ”をして公爵や娼婦などに成り切って遊ぶ。
いわばハロウィン状態の映像はこの世のものとは思えない。
遺跡みたいな街の建物も効果的だ。


精神科病院の患者大活躍でも見世物小屋風の“露悪趣味”がまったくない。
わざとらしいところもまったくない。
すべてが天然。
諦念を突き抜けるほどみんな全力で針が振り切れている。

奇想天外なようですべてのストーリーが納得できる脚本も見事。
ちょっとしたきっかけで始まる最後の最後の方の“戦闘”は
“これが戦争”と言わんばかりのあっけなさで、
その後の“最期”に向かうまでの流れも感動的なまでに可笑しい。

一瞬たりとも目が離せない。
ディテールにこだわった緻密な脚本と映像の作りでありながらダイナミズムもバッチリだし、
コミカル&シリアスな心理描写も言うこと無し、
やっぱり映画全体にリズムがあってテンポが良く、
さりげなくビートが効いている。
生きている映画の証しである。


観られる環境の方は是非劇場で。
その価値ありありだ。


★映画『まぼろしの市街戦』(4Kデジタル修復版)
1966年|フランス映画|102分|カラー|シネマスコープ|DCP|原題:Le roi de coeur|英題:KING OF HEARTS
監督:フィリップ・ド・ブロカ|製作:フィリップ・ド・ブロカ ミシェル・ド・ブロカ|脚本:ダニエル・ブーランジェ フィリップ・ド・ブロカ
原案:モーリス・ベッシー|撮影:ピエール・ロム|音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:アラン・ベイツ ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド エール・ブラッスール フランソワーズ・クリストフ ジャン=クロード・ブリアリ ジュリアン・ギオマール
ミシュリーヌ・プレール アドルフォ・チェリ

10/27(土)から新宿K’s cinema他にて順次公開。
http://king-of-hearts-film.com/


レコード・コレクターズ 2018年11月号

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10月15日発売。


●ジョー・ストラマー
挫折から再生への“ドラマ”を描いた編集盤『ジョー・ストラマー001』に関する原稿。


●書評
『お騒がせモリッシーの人生講座』


●ニュー・アルバム・ピックアップ
★レジデンツ『シン・レジデンツもしくはレジデンツのドンとやってみよう』


●リイシュー・アルバム・ガイド
★マーク・ボラン『霊魂の叫び』
★ザ・プラネッツ
・『グーンヒリー・ダウン+5』
・『スポット+5』

John Foxx
★John Foxx『Metamatic』(METAMATIC META63BX)3CD


まちゅこけ『怒涛の唄』

まちゅこけ『怒涛の唄』


大阪の西成を拠点に90年代から活動している女性シンガーソングライター、
まちゅこけの約3年半ぶりの4作目。

PALMの稲田が録音とミックスとマスタリングを担当。
ライヴ音声もブレンドし、
命の息遣いが肌に伝わってくる“生”の仕上がりだ。
ほんとうに唄いたいから唄っている唄を14曲収め、
アルバム・タイトルに偽り無しで65分弱繰り広げる人間ドラマの力作である。


久々に彼女の唄を体感して心の底から打ちのめされた。
ミュージック・マガジン誌でインディ・コーナーを担当していたがゆえに出会った、
10年前のデビュー・アルバム『世界をチャーム』を聴いた時の衝撃を思い出す。


まちゅこけは特別なことをしてない。
穏やかなギター弾き語りのみの曲がほとんどだ。
それでも、いや、だからこそ、まちゅこけの唄とギターは、
潔く、力強く、破格だ。

誰から影響を受けたのか、
どんな音楽を聴いてきたのか、
まったく見えてこない。
英国トラッドっぽいメロディも聞こえてくる。
70年代初頭の女性ヴォーカルのポップな日本のフォークみたいな曲も聴こえてくる。
ブルースの精も漏れてくる。
ところによってヨーデルを思い出す伸びやかな歌い方で、
ところによっては昭和時代の歌謡曲全般が頭の中で呼び戻される。

でもまっすぐなストロング・スタイルの歌唱でもってすべてを突破する。

武者震いがする。
ますます強靭で、
ますます潤い、
ますますさりげなく艶っぽい。
命のヴァイブレイションが躍り震える。
一発でKOするパンチの効いた唄声なのに、
諭すような唄い口で背筋が伸びる。

歌詞は曲によって人称名詞が違う。
“おまえ”という言葉が上から目線で見下してエラソーに聴こえる僕だが、
まちゅこけの“おまえ”は同じ目の高さで向き合って敬意を込めた“御前”だ。
ていねいな言葉遣いで聖歌にすら聴こえる。
意識が内向きじゃなく、
ふだん生活している街の匂いと臭いを吸い込んで研ぎ澄まし、
すべてを包容する無限にでかい唄だ。

「ハングリー」「深海」「W.W.W」「小さな声」「流れ星」「嘘つきはもういない」「真実」「夢を」
「春告げ鳥が鳴く頃に」「僕はふたりいる」「罪の詩」「短い夏」「海になりたい」「どとうのうた」
といったタイトルの曲が真空パックされている。
まちゅこけの唄の世界がイメージできる曲名だ。

いわゆるポジティヴな鼓舞激励の歌が続くが、
まちゅこけの唄には嘘がない。
やさしい言葉で綴られているからこそ、
まちゅこけの唄は底無し沼のように深い。

たとえ日本語わからない人が聴いても、
まちゅこけの蠱惑的な唄声は胸を打つ。
いつも書くように声の響きは正直だ。

もちろんドライに乾いてなんかいない。
じめじめもしてない。
情念なんか突き抜けている。
CD盤面などに彼女自身が描いたイラストにも表れている、
まちゅこけのポップな佇まいが大好きだ。


デリケイトで張りのあるまちゅこけのギターも凛としている。
BIRUSHANAHのISO(尺八)、
殺悪愚やGOOD MORNINGのHIDE(ドラム)、
アカリトパリの戸張岳陽(アコーディオン)とアカリ(三味線と唄)、
橋本洋佑(ウッドベース)、
釜ヶ崎三角公園のみなさん(街のガヤ)、
が数曲に参加してさりげなくアクセントを付けている。


ほんとうに心に響く唄が飢えたまま静かな怒涛になって押し寄せる。
全14曲が終わったあとの余韻がまたとてもすがすがしい。

大スイセン。


★まちゅこけ『怒涛の唄』(クロネコ KURONEKO-002)CD
歌詞が読みやすく載った12ページのブックレット封入。
http://sound.jp/machewqo/menu.htm


映画『遊星からの物体X』(デジタル・リマスター版)

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映画『ハロウィン』で知られるジョン・カーペンター監督版の
82年のSFホラー映画の傑作『遊星からの物体X』が36年ぶりに日本で蘇る。
デジタル・リマスターにより鮮やかな色合いの映像がダイナミックに迫り、
エンニオ・モリコーネの曲をはじめとする音声は立体的に響き、
映画館で体験したい仕上がりになっている。

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舞台は冬の南極基地。
宇宙から飛来して10万年氷漬けになっていた未知の生命体が永い眠りから覚め、
モンスターとなって南極隊員たちに襲い掛かる。
ヒトのカラダを侵略してその人物に“擬態”して南極基地内に潜み、
いつもの仕事仲間と油断して接している南極隊員たちを
一人、また一人襲っていく。
見た目が以前と変わってなくても、
「こいつモンスターが“同化”した奴じゃねえの?」といった感じで
隊員たちは仲間を疑い始めて殺伐とした空気が基地内を支配。
そんな間にもモンスターはじわじわと猛威をふるっていく。

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それなりの敷地面積があるとはいえ南極基地内は活動範囲が限られ、
たやすく脱出できない閉鎖的な空間だからこその緊張感だ。
環境的に極限状況の中での精神的な極限状況が描かれ、
疑心暗鬼になっていく流れに息を呑む。
基本的には殺るか殺られるかの話で、
ともすれば大味に陥りがちな物語でありながら、
デリケイトな心理描写が実に見事である。

もちろん確かな映像力があってこそだ。
場面によって凍りつく心と熱くなる意識は、
雪や氷や霜と火のコントラストにも象徴される。
流血に妥協がない戦いと闘いのシーンのリアリティも筆舌に尽くしがたい。

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『バックドラフト』(91年)や『エグゼクティブ・デシジョン』(96年)で知られる
主演カート・ラッセルをはじめとした俳優たちも名演。
そして後に『ロボコップ』(87年)や『セブン』(95年)、
『ミッション:インポッシブル』(96年)などを手掛けるロブ・ボッティンが担当した、
この映画の“裏主役”のクリーチャーの造型に震える。
超絶的にグロテスクなフリークスの如き生き物として本能剥き出しの息をしている。


余韻を残すラストもいい。


★映画『遊星からの物体X』(デジタル・リマスター版)
1982年|アメリカ映画|109分|カラー|スコープサイズ|DCP|原題:THE THING|ターマン=フォスター・カンパニー作品|ユニバーサル映画
監督:ジョン・カーペンター/脚本:ビル・ランカスター原作:ジョン・W・キャンベル・Jr 「影が行く」
出演:カート・ラッセル、A・ウィルフォード・ブリムリー、T・K・カーター、デヴィッド・クレノン、キース・デヴィッド
デジタルリマスター版は10月19日(金)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー。
http://thething2018.jp/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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