なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『PARKS パークス』

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東京・吉祥寺の井の頭公園100周年の年に公開される“音楽青春映画”。
現在と過去と未来をつなげる幻のラヴソングを完成させるべく、
橋本愛と永野芽郁と染谷将太が
井の頭公園を中心にして吉祥寺を舞台に繰り広げる物語だ。
『嘘つきみーくん~』『5windows』で知られる瀬田なつきが監督・脚本・編集を担当し、
トクマルシューゴが音楽を監修している。

サブ1*トリミングやアップで使う際は事前にご連絡下さい_convert_20170313105303

花見の名所としても知られる井の頭公園だけにオープニングは桜。
窓から井の頭公園が見下ろせるアパートの2階で一人暮らしをする純(橋本愛)は、
やることなすこと中途半端で逃げてばかりで卒業も危うい大学生。
そんな純のもとに突然、小説を書こうとしている高校生のハル(永野芽郁)が現れ、
二人はハルの父親の昔の恋人を探すうちに音楽スタジオで働くトキオ(染谷将太)の家を訪れる。
まもなくその恋人が残したプライヴェイト録音のオープンリールのテープを発見し、
それを再生してみると50年前の二人のデュエットが聞こえてきた。

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以上が序盤のストーリーだが、
純とハルとトキオの現在がメインながら、
ハルの父親の青春時代だった過去を“回想”しつつ、
純とハルとトキオの未来を見据える映画だ。

父親を題材にハルが書く小説も“もうひとつの脚本”みたいになっていて、
“ネタ”でふくらんだ想像でハルが50年前の父親を描く“再現フィルム”の過去が現在と交錯し、
時代を行き来する作りである。

昔の吉祥寺駅周辺の写真も適宜挿入。
井の頭公園の中はマイナー・チェンジはしても基本的なところは変わってない。
大切な思いは変わることはない・・そんなこともほのめかされているかのようだ。

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メイン出演者の3人の素朴で愉快な奮闘ぶりが見どころ。
言葉をキャッチボールしながらアドリブ多用でセリフを進めたように見えるほど息が合っている。
橋本愛(『告白』『あまちゃん』『古都』)がしっかり者のようでダメダメな女性を、
永野芽郁(『俺物語!』『こえ恋』『真田丸』)が一生懸命な謎の女の子を演じ、
染谷将太(『寄生獣』『ソレダケ/that’s it』『バクマン』)は
『みんな!エスパーだよ!』シリーズを思い出すメガネ姿でノリのいい男を演じている。
橋本はアコースティック・ギターで弾き語り、
染谷はラップも披露するが、
純とハルとトキオの三者三様のキャラや行動そのままに、
最後まで、つまずき、つまずき、ずっこける。
一致団結に成り切れないところにもリアリティを感じた。

石橋静河、森岡龍、佐野史郎、柾木玲弥、長尾寧音、麻田浩らが脇を固め、
吉祥寺バウスシアターの閉館時のスタッフでもあった井手健介をはじめとして、
高田漣などの吉祥寺に馴染みのミュージシャンらがミュージシャン役も務めてもいる。

サブ4*トリミングやアップで使う際は事前にご連絡ください_convert_20170313105437

個人的には、
吉祥寺に32年暮らしてきて今住んでいるのが井の頭公園まで歩いて5分弱の所だけに、
後にも先にもこれほど自分が知っている場所ばかりの映画はないと思われる。
どこで撮ったか全部わかる。
家のすぐそばだから屋上で井の頭公園の全景を撮ったと思しきマンションまでわかってしまった。
かゆいところに手が届いたロケ地が現れるたびに顔がほころんだ。
吉祥寺進出が新しめで本作にふさわしい雰囲気のレコード店のCOCONUTS DISK、
レコーディングも行なうリピーターが多く本作を引き締める吉祥寺の老舗音楽スタジオのGok Sound、
多数営業する吉祥寺のライヴ・ハウスの中でも本作のムードに近いSTAR PINE'S CAFÉ、
さらにサンロード、ハモニカ横丁、井の頭自然文化園(動物園)、成蹊大学などなど
吉祥寺周辺の名所が続々で、
ちょっとした吉祥寺観光気分である。

日常からかけ離れた感覚を味わうのが映画の醍醐味の一つだが、
撮影場所があまりに日常すぎる映画を観るのもオツなもんだと思った。

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もちろん季節関係なく楽しめるが、
やっぱり春にピッタリだし、
映像もちょい寒色混じりの暖色の映画だ。
トクマルシューゴが監修した劇中音楽や相対性理論によるエンディング・テーマも相まって、
ポスト・ロックな趣の作品に仕上がっている。
と同時に『PARKS パークス』の鍵を握っている曲が象徴するように、
1970年前後のまったりした日本のフォーク・ソングを思わせる甘酸っぱい匂いも鼻をくすぐる。

ほんのりと淡いしあわせ感に包まれている。
まさに、井の頭公園の空気そのものの。
観ていると目的もなく井の頭公園の中を一人で歩いている時みたいに切なくもなった。


★映画『PARKS パークス』
2017年/日本/カラー/118分/シネマスコープ/5.1ch
4月22日(土)よりテアトル新宿、
そして4月29日(土)より吉祥寺駅から徒歩1分の老舗映画館・吉祥寺オデヲンでも公開!
ほか全国順次公開。
©2017本田プロモーションBAUS
http://parks100.jp


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INCAPACITANTS『Survival of the Laziest』

INCAPACITANTS『Survival of the Laziest』


非常階段のメンバーでもあるT.ミカワが80年代初頭に始め、
非常階段の元・準メンバーで多彩な展開しているF.コサカイと活動している、
“ノイズ・デュオ”のニュー・アルバム。
彼らが数々の代表作をリリースしてきたALCHEMY Recordsからの10年ぶりの新作でもあり、
まさに満を持した快哉痛快盤である。

二人の温厚な佇まいからは想像がつかない突き抜けた殺戮の調べがいきなり心臓を直撃する。

パッケージ裏には担当パートとして二人とも“エレクトロニクス、ノイズ”とクレジットされている。
ただジャケットの内側にはエレクトリック・ギターを振り回すコサカイの写真もあり、
実際エレクトリック・ギターの極北の音のようでもあり、
ヒトの声らしき音声も聞こえてくる(幻聴か?)。

猛烈な勢いで渦とクダを巻く二人のノイズの絡み合いはインプロヴィゼイションだろうが、
フリー・ジャズが好きな方もイケるのではないだろうか。
サウンドの分離のいい音の仕上がりだから、
ノイズがどう鳴ってどう湧き出ていてどう搾り出されているかも目に映るほど痛いほどよくわかる。
全身ノイズの絡み合いが半端ない。
ノイズ以前に高周波高音波超高濃度のエレクトロニック・ミュージックでもある。

マグマの如き灼熱こってりノイズが、うねる、うなる、沸騰する。
ドライになんてなりようがない泥酔ノイズである。
どぶろくの熱燗みたいに気合ムンムン。
氷結したウォッカみたいに冷気キンキン。
二人ともインテリとして一部で知られているが、
むろん頭デッカチとは百万光年対極のノイズである。
存在自体がノイズになって無意識のうちにエンタテイナーと化す彼らのライヴと同じく、
汗が飛び散る肉体派ノイズでエナジーほとばしる。
本作のエピローグでしっかり確認できるように、
INCAPACITANTSのライヴでモッシュが巻き起こるのも当然だとこのCDを浴びてもわかる。

アルバム・タイトル(ちなみに今回の“邦題”は懶者生存)でも毎度クスッと笑わせてくれるが、
トローンもヘッタクレもないデリケイト・ノイズの放射連射はゲラゲラ笑っちゃうほど豪傑である。
ほんとうにエクストリームなものほどめまいがするほど美しいこともあらためて知る。
人知れずメロディも漏れてくる。

gooの辞書によると“incapacitant”とは、
“無能力化剤:一時的な眠け, めまい,麻痺まひなどを誘発し,人を活動不能にする薬剤毒ガス,催涙ガス”
を意味するという。
言い得て妙ではないか。

INCAPACITANTSに妥協はない。
あくまでもストロング・スタイル。
INCAPACITANTSに進歩もない
94年リリースのCDのタイトルで表明したようにまさしく“no progress”。
だからこそ歳を重ねるごとに激烈になっている。
やはり、恐るべし。


★インキャパシタンツ『Survival of the Laziest』(ALCHEMY ARCD-256)CD
昨年6月の東京BUSHBASHにおける約33分のライヴ・テイク1曲を含む約76分4曲入り。
ジャケット現物の色合は↑の画像よりも濃いです。


阿部怪異『阿部怪異』

阿部怪異


非常階段JOJO広重やT.美川(INCAPACITANTS)も参加して80年代初頭に活動していたユニット、
阿部怪異(ABEKAII)の唯一の単独作であるカセット・アルバムのCDリイシュー。
そのカセットのA面とB面がCDの一トラックにすべて収められているが、
一つのトラックに数曲分収められているようにも聞こえる2トラック入りだ。
ちなみにカセット・テープでのオリジナル版のリリース元は、
灰野敬二やタコ(TACO)のファーストも出したPINAKOTHECA Recordsである。

各々のセッションによって5~6人が参加していたようで、
ドラム、ギター、キーボード、ベース、シンセサイザー、サックスなどを使い、
ほぼインストのフリー・ミュージックといった趣。
とはいえパワフルなドラムが鍵を握っている演奏だからけっこうノりやすく、
ロックである。

フリー・ジャズ、ポスト・パンク、ミッド・テンポの宇宙音楽、純プログレ、
ショート・カット・パートの繰り返しなどなどで構成され、
ちょいポップ、でもフリーキー、ところによってファンキー。
不失者、THIS HEAT、CONTORTIONSを思い出す瞬間もある。
もちろんエエかっこしいみたいなのじゃないしサブカル臭もなく、
パンク・ロックから逸脱していた初期関西パンクの流れをしっかりくんでいるやんちゃな演奏で、
RAMONESのディー・ディー・ラモーンばりの“カウント”もところによっては聞こえてくる。

セリフなどが入っているわけではなく音楽オンリーだが、
何が飛び出してくるかわからない“ドラマ仕立て”の流れ。
ユニット名を時代劇『子連れ狼』の登場人物から引用したことに納得の珍妙な緊迫感に包まれた怪盤、
いや快盤である。


★阿部怪異『阿部怪異』(ALCHEMY ARCD-257)CD
ユニット名の名付け親でもある美川のライナー付の約47分2曲入り。


DEPECHE MODE『Spirit』

DEPECHE MODE『Spirit』


80年代初頭からコンスタントに活動を続ける英国出身の“エレクトロニック・ロック・グループ”の、
DEPECHE MODEによる4年ぶりの14作目。

1秒でDEPECHE MODEとわかる中毒性の匂いに覆われ、
あっというまにヘヴィ・ローテーションになった。


ポップと言えばポップな曲が多いアルバムだが、
ひとつひとつの音にこもっているものが違う。
自己表現に対する誠実な姿勢や注ぎこんだ情熱が伝わってくるし、
クールな佇まいながらも並々ならぬ“気”や“念”すら感じさせる。

歌声の色気、
音色の艶っ気、
ヒトの律動とのハーモニーで増幅するビートの彫りの深さ、
聴き手の懐にやさしく強引に入り込む楽曲の格調の高さ、
スケールの大きい開放的な音の広がりなどなど、
すべてがパーフェクトだ。
意外と同じことをやっているわけではないがブレがなくブリティッシュの風格も漂う。
英国ロックの矜持が光を放っているところもひっくるめて、
ジャンルは違うが、
中核メンバーが英国生まれで米国在住という点も含めてMOTORHEADに通じるほどである。

ARCTIC MONKEYSとの仕事で知られ、
1曲以外ドラムも担当したジェイムズ・フォード(SIMIAN MOBILE DISCO)がプロデュース。
ファン目線で深化と進化を試みたような仕上がりで、
丁寧に練り込まれた豪胆かつデリケイトな音作りに目が覚める。
歯ごたえ十分の音の質感で聞き応え十二分だ。

90年代終盤のMEGADETHや2000年代以降のIN FLAMESなどのメタル・バンドも魅了した、
浴びていると惚れ惚れとする研ぎ澄まされたヘヴィな音像と音圧に磨きがかかっている。
と同時にむろん80年代前半のニューウェイヴの非マッチョ感もキープし、
テクノ以降の音楽スタイルに遅れず飲み込まれず、
流行りに媚びずに自己更新と自己鍛錬を続けているからこそ何ら揺らぐことはない。

古臭いという言葉があるが、
あらためて言う。
本物に古いも新しいもない。
そんなことをあらためて言いたくなる。

映画『地獄に堕ちた野郎ども』で本人が語っていたように
デイヴ・ガーン(vo他)にとってDAMNEDは特別なバンドの一つのようだが、
デイヴ・ヴァニアン直系のヴォーカルもますます絶好調である。
『Phantasmagoria』(85年)の頃のDAMNEDも思い出す。

あちこちの世界情勢を俯瞰して思いを綴ったことが想像できる歌詞も深く、
耽美と似て非なる“生”の音と共振している。
言い訳せずに“免罪符”を破り捨てているかのようで、
誰もが共犯者みたいなニュアンスも見せ、
冷厳なる歌心が深々と胸を撃ち胸を打つ。

これだけキャリアを重ねてきてたくさんの楽曲を発表してきているにもかかわらず、
まだこれだけフックのある曲ばかりのアルバムを作り続けていることにも驚かされる。
新たな代表作の誕生、
これぞまさにグレイト。


なお“デラックス・エディション”のCDは2枚組仕様になっている。
“ジャングル・スピリット・ミクシーズ”と題されたディスク2には
本編の曲のリミックス・ヴァージョンが5曲収められ、
ほとんどがインストでこちらも大きな音で聴くと快楽アップである。


★デペッシュ・モード『スピリット[デラックス・エディション]』(ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP 30937~8)2CD
ジャケットのアートワークはアントン・コービジンが担当し、
デラックス・エディションは、
28ページのブックレットが綴じ込まれた直輸入ハード・カヴァー“紙ジャケット仕様”だ
ディスク1の本編は約50分12曲入り、
ディスク2は約27分5曲入り。
日本盤のみ、
通常のCDプレイヤー等で再生できるBlu-spec CD2仕様で和訳も読みやすく載ったブックレット封入。


レコード・コレクターズ 2017年4月号

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●書評
デヴィッド・ボウイ ザ・ゴールデン・イヤーズ』



●ニュー・アルバム・ピックアップ
★エレファントノイズカシマシ『DISCOVERY』



●リイシュー・アルバム・ガイド
★デヴィッド・ボウイ『レガシー~ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・デヴィッド・ボウイ』LP
★エレクトリック・プルーンズ『リワイアード』
★オパス・アヴァントラ
・『イントロスペツィオーネ(内省)』
・『クロムウェル卿の奏する7つの大罪の為の組曲』

★Colin Newman
WIREのフロントマンによるソロ初期3作のリイシュー盤。

colin-1.jpg
・『A-Z』(Sentient Sonics SS 01-02)2CD

colin-2.jpg
・『Provisionally Entitled The Singing Fish』(Sentient Sonics SS 03-04)2CD

colin-3.jpg
・『Not To』(Sentient Sonics SS 05-06)2CD


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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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