なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ギミー・デンジャー』(イギー・ポップ率いるSTOOGESのドキュメンタリー)

ギミー・デンジャー メインビジュアル_convert_20170804161444


『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(2013年)の撮影による中断期間を挟みつつ、
ジム・ジャームッシュが監督と脚本を務めて作られたSTOOGESのドキュメンタリー映画。

友人でジャームッシュの映画『デッドマン』『コーヒー&シガレッツ』に出演したイギー・ポップ(vo)が、
直接制作を依頼して実現したという。
昨年発表の目下の最新ソロ作『Post Pop Depression』リリースの際にイギーは、
「STOOGESのストーリーに決着をつける必要があった」と言っていた。
いわばそんなイギーの“STOOGES再統一プログラム”の一環だが、
STOOGESとIGGY AND THE STOOGESの再編作やツアーに匹敵する“STOOGESの重要な作品”である。

四の五の言わずに観ていただきたい。

僕はプレス用の資料とパンフレットに書くため早いうちにいただいたDVD-Rで何度も観たが、
そのあと試写会で観て感動濃度が明らかに違った。
劇映画を多数撮っているジャームッシュだけに劇場のスクリーンで観ることを想定して作っているし、
ドキュメンタリーだろうがあくまでも“映画”として仕上げている。

main1_Gimme_Danger_(c)2016_Low_Mind_Films_Inc_convert_20170804160745.jpg
©2016 Low Mind Films Inc

1969年にアルバム・デビューする前のものも含む写真やライヴ映像を絡めつつ、
関係者の話で進める比較的オーソドックスな作りの音楽ドキュメンタリーとも言える。
その中でジャームッシュが遊び心を発揮し、
DR. FEELGOODの『ドクター・フィールグッド -オイル・シティ・コンフィデンシャル-』のように、
節目になった様々な場面のSTOOGESの行動に即した感じでメンバーの“代役”として
種々雑多な映画やドラマの頓智の効いたシーンを適宜挿入。
さらに同じような調子でユーモラスなアニメーションも使ってメンバーの行動を補完し、
映画全体に潤いをもたらしてポップなテイストを加味している。

とはいえストイックなほどストレートな作りが基本だ。
むろん欠かせない要素とはいえ不良自慢の類いのセンセーショナルなネタに頼らず、
“贅肉”を削ぎ落してSTOOGESの核のみを凝縮。
地に足の着いた仕上がりでSTOOGESの重みをたたえ、
メンバー一人一人に真正面から向き合ったジャームッシュのSTOOGESに対するまっすぐな敬意が
じわじわ伝わってくる。

sub1_Gimme Danger (c) Byron Newman
© Byron Newman

STOOGESの様々なルーツが語られる。
イギーの激しい動きをはじめとするステージングや歌詞の組み立て方に関する話も面白いが、
特異な音楽性の源泉も紐解かれる。
もちろんイギーはパンクのゴッドファーザーだし、
STOOGESがパンク・バンドの元祖でもあることに疑いの余地はないが、
イノヴェイターだからこそパンクのスタイルにこだわることはありえず、
彼らの懐の深さと受容力をあらためて思う。

解散(長期活動停止開始)直後の
パンク・ムーヴメント以降のバンドのほぼすべてがSTOOGESチルドレンなわけだが、
STOOGESをカヴァーしているバンドなどのライヴ映像も含みつつ、
よくある影響力云々に時間をあまり割いてない。
映画の“メイン・アクト”に焦点を絞っていることが引き締まった作りの一因である。

イギーの上半身裸のルーツも含むヴィジュアルやディテールの話題も見落とせないところで、
SEX PISTOLSのシド・ヴィシャスの過激なファッションが
イギーとロン・アシュトン(g)のクレイジーなアイテムの引用とも解釈できる。

sub4_Gimme Danger (c) Joel Brodsky
© Joel Brodsky

子どもの頃も振り返るイギーの他に登場する“キャスト”は以下の7人のみである。
ロン・アシュトン(g)、
スコット・アシュトン(ds)、
ジェームズ・ウィリアムスン(g)、
スティーヴ・マッケイ(sax)といったSTOOGESのメンバー、
2000年代以降の再編STOOGESでベーシストを務めたマイク・ワット(元MINUTEMEN~FIREHOSE)、
アシュトン兄弟の妹でMC5のフレッド・スミスのガールフレンドでもあったキャシー・アシュトン、
STOOGESの後にRAMONESを担当する元マネージャーのダニー・フィールズ。
ミュージシャン仲間や影響を受けた人たちが一切インタヴューに登場しない。
でもSTOOGESの真の関係者オンリーにもかかわらず、
いやだからこそ内向き馴れ合いに陥らずにすべての人に開かれている映画である。

近しい人間で固めたことでバンド内の微妙な人間関係と人間模様が浮き彫りになり、
人間ドキュメンタリーとしても楽しめる。
トークの内容以前にメンバー個々の佇まいや話し方を見ているだけでも、
下世話な視点で見ると解散後の“勝ち組/負け組”や格差などに思いをはせ、
色んなことを考えてしまって僕は胸がつまったりもする。
そしてやっぱり、
子どもの頃から幾度となく苦汁を飲んで苦渋を味わいながらもやり続けているイギーの強靭さを知る。

sub2_convert_20170804161039.jpg
©Danny Fields/Gillian McCain

コンスタントに出し続けているソロ・アルバムでは音楽的にブレのある人だが、
発言にブレがないことに表れているようにイギーは頑固だ。
90年代までの無数のSTOOGES再結成の要請にもかたくなに応じなかった。
そんなイギーがSTOOGES“再統一”を決意したのは
映画で本人が語っている現実的に側面もあっただろうが、
長年“放置”してきたアシュトン兄弟に対する仁義みたいなものも感じる。

実は映画の制作開始から昨年米国で公開されるまでに
本作に登場するメンバーの3人が亡くなっている。
アルバム・レコーディングのメンバーに限ればSTOOGESはイギーとジェームズしか生き残っていない。

sub3_Gimme Danger (c) Low Mind Films
© Low Mind Films

イギーの誠実さと正直さも見て取れる映画だ。

RAMONESの映画『エンド・オブ・ザ・センチュリー』もそこが見どころの一つだが
2010年の“ロックの殿堂”入りのシーンがこの映画もクライマックスだ。
どん底に落ちた時に何度も観て僕も這い上がることを決意した。
大したことを言っているわけじゃないのに何度観ても胸に迫るシーンで、
いきなりイギーがオリジナルSTOOGES時代からお馴染みの“指使い”を披露する。
子どもっぽいやつは好きじゃない。
軽いってことだし本気じゃないってことだから。
でもイギーみたいに大人げないのは大好きだ。

反知性主義じゃないが、
ぽろりとさりげなくこぼすイギーの数々の名言でも
“原始人”のインテリジェンスほど的を射たものはないことをあらためて思い知る。

淡々としたラストも好きだ。


★『ギミー・デンジャー』
2016年/アメリカ/英語/108分/アメリカンビスタ/カラー、モノクロ/5.1ch/原題: GIMME DANGER/
日本語字幕:齋藤敦子
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:イギー・ポップ、ロン・アシュトン、スコット・アシュトン、ジェームズ・ウィリアムスンほか
配給: ロングライド
提供:キングレコード、ロングライド  配給:ロングライド
9月2日(土)、新宿シネマカリテほか全国順次公開 
© 2016 Low Mind Films Inc
公式HP:http://movie-gimmedanger.com/


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コメント

たびたびすみません。

観に行く予定ですが、歌詞に日本語字幕が付いているのかどうかは教えて頂けますでしょうか?

Re: たびたびすみません。

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
歌詞には日本語字幕が付いてないです。
そもそも、曲は各々のシーンのBGM的に使われていて一つの曲を長く流すことはなく、当時あまり撮影されていなかっただけにSTOOGESのライヴ映像自体が限られていて一つの曲を長時間使ってないです。内容盛りだくさんで歌詞の字幕を入れる“スペース”はあまりなくて、入れたらゴチャゴチャしてしまい、日本版として映画そのものの核を見えにくくしたかもしれません。
映画もどれだけ贅肉を削ぐかです。ドキュメンタリー映画は特にそうで、身内ウケでしかない無駄なシーンを入れ込んでダラダラしてシラケる内向きドキュメンタリー映画が多いですからね、特に日本ものは。

ジャームッシュが撮ったイギーの映画、と言うだけで、見ない訳には行きませんっ!(^^)!

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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