なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SPIDERS『Killer Machine』

SPIDERS KILLER MACHINE


女性ヴォーカルを擁するスウェーデンの
“パンク/サイケデリック・ハード・ロックンロール・バンド”が、
『Shake Electric』以来約4年ぶりにリリースしたサード・アルバム。
いい感じの成長ぶりがうれしい佳作である。
最近のへヴィ・ローテーションだ。

HELLACOPTERSやNOMADS、MILLENCOLINなどの
スウェーデンのパンク/ロックンロール・バンドのレコーディングで知られ、
ちょっと前にマイケル・モンローも手掛けたチップス・キースビーがプロデュース。
絶妙のバランス感の深いサウンドに酔いしれるばかりである。

ベースやドラムも含めて適度にタイトで柔らかくパンチの効いた響きがたまらない。
WITCHCRAFTの肝を担っていたとも目されるジョン・ホイルズがギタリストだから、
エッジを尖らせつつ淡いサイケデリック/ストーナー・フィーリングも溶け込んでいる。
緩急織り交ぜたソングライティングも素晴らしく、
60年代ポップスの切なくなつかしい旋律を滲ませつつ、
聴かせどころをさりげなく設けたアレンジも見事と言うほかない。

曲によって入るハーモニカも担当のシンガーは英語で歌ってるから語感のクセはないが、
このヴォーカルはやっぱりクセになる。
グレイス・スリック(JEFFERSON AIRPLANE)がちょいポップになったようでもあり、
よりほんのりと艶っぽく魔性をはらんでいる。
デビュー時は愛らしい印象だったが、
ジャケットどおりのオーラで凛としている。
バラードもストロングな感情を込めてビシッ!と歌い抜いている。
ラヴ・ソングらしき歌詞が多めながら批評的なことも歌っていてたのもしい限りだ。
男性陣のコーラス・ワークも特筆したい。

まさにグレイト。


★SPIDERS『Killer Machine』(SPINE FARM 2557757217)CD
歌詞が読みやすく載った16ページのブックレット封入の約42分11曲入り。


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WINDHAND/SATAN’S SATYRS『Windhand/Satan’s Satyrs』(スプリットCD)

WINDHAND/SATAN’S SATYRS


米国東部ヴァージニア州出身のドゥーム系バンド同士のスプリット盤。
どちらもWINDHANDのギャレット・モリス(g)が、
各々のバンドの持ち味を尊重しながら録音している。

女性ヴォーカルを擁するWINDHANDは2000年代末結成でコンスタントに活動している4人組。
オリジナル・フル・アルバムとしては3作目の『Grief's Infernal Flower』(2015年)以来の
2曲を提供している。
6分強の1曲目の「Old Evil」はスローな重量級サウンドなのにドライヴ感十分でスウィングし、
相変わらずセンス抜群のスピード感に惚れ惚れする。
2曲目の「Three Sisters」はさらにスローで14分近くじっくり反復する音の中で、
まろやかな女声もたおやかに溶け込んでいく。
終末の抒情が轟いた後の静かなパートのやさしさがまた格別だ。
至福の調べに解放される絶品。

SATAN’S SATYRSも同時期に結成され、
ELECTRIC WIZARDで昨年の『Wizard Bloody Wizard』からベースを弾いている
クレイトン・バージェス(b、vo)が中心になった4人組。
パンクっ気も強い4分弱の猥雑な3曲が収録されている。
硬く堅い音のストーナー・ロックンロールの「Alucard A.D. 2018」と
ノリノリのドゥーム・ロックンロールの「Succubus」では、
ドラキュラや女夢魔が目に浮かぶホラーなムードも醸し出す。
ジミー・リードの「Ain't That Lovin' You, Baby」のカヴァーは、
ブルース・ロックンロールでさらにイケイケだ。
オジー・オズボーンの流れをくむ悪魔的エキセントリック・ヴォーカルもさることながら、
手数の多いドラムも特筆したい。


★WINDHAND/SATAN’S SATYRS『Windhand/Satan’s Satyrs』(RELAPSE RR7392)split CD
イメージ画がプリントされた8ページのブックレット封入の計約31分5曲入り。
掛け帯付き。


MASTODON『Cold Dark Place』

MASTODON『Cold Dark Place』


米国ジョージア州アトランタ出身のへヴィ・ロック・バンドが昨秋リリースしたEP。
約22分4曲入りというヴォリュームながら聴き応えありありだ。

『Once More 'Round The Sun』(2014年)のレコーディング時に録った3曲と
『Emperor Of Sand』(2017年)のレコーディング時に録った1曲で構成されているようだが、
むろん捨て曲ではない。
アルバム全体の流れを考えると外さざるを得なかった曲と思われ、
録った時期やプロデューサー等が違うにもかかわらず全体に流れが感じられ、
作品タイトルやジャケットもフィットした一つの作品として仕上げられている。

切なく抒情的な一種の歌ものとして統一感がある。
アルペジオも目立つリリカルなプログレ風味を匂わせつつ、
GRATEFUL DEADやQUICKSILVER MESSENGER SERVICEあたりの
すきとおったアメリカン・サイケデリックのテイストも漂っている。
CCR(CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL)のような土臭い伝統的なアメリカン・ロックの王道を
現在進行形でアップデートもしている。
むろんギター・ソロもコーラスもバッチリだし、
多彩なリズムで各パートが絡み合いつつキャッチーに進め、
手数の多さで曲を走らせるドラムを核にゆっくりと加速するのであった。

歌詞は載せてないが、
ヴォーカルはもちろんのこと楽器もていねいに歌っているから、
サウンドだけで視界が開けてくる救済の一枚。
さすがグレイトである。


★MASTODON『Cold Dark Place』(REPRISE 9362-49108-0)CD


NEPENTHES at 新大久保EARTHDOM 3月24日

NEPENTHES at 新大久保EARTHDOM


東京拠点のヘヴィ・ロック・バンドNEPENTHES(ネペンシス)のワンマン・ライヴ。
観るたびにベスト・ライヴを更新しているバンドだが、
またしてもベスト!を更新したグレイトなロック・ショウであった。


セカンド・アルバム『Confusion』のレコーディング後にベーシストが突如脱退。
この最終日のライヴも含めて今年1~3月の4本の発売記念“ツアー”は、
“期間限定メンバー”の助っ人として盟友REDSHEERのオノザトが務めた。
ステージ上で言っていたようにオノザトが「一番好きなバンド」とはいえ、
リズムのタイミングが難しくて長尺ナンバーも多いNEPENTHESの曲を短期間で覚えることは
かなり大変だったと想像できる。
だが完全にバンドの一員としてパフォーマンスも獅子奮迅の大活躍。
REDSHEERのライヴと同じくシリアスな演奏と裏腹の愉快なMCも披露していた。

この熱い男がベースでほんと気合を叩き込んでいた。
NEPENTHESにはブラスト・ビートの曲はないが、
オノザトの重大ルーツであるグラインドコア直系のベースで叩き込んでいた。
アップ・テンポの曲はもちろんのこと、
スロー・チューンも
グランドコアの源泉が初期SWANSであることを思い出させるゴリゴリしたベースで蹂躙した。


最新作の『Confusion』はクールなアルバムだが、
実のところ聴いていて
もうすっかりできあがってしまったバンドではないかという危惧も僕は抱いていた。
growing upとまでは言わないまでも完成し切ってしまったのではないかと。
だがそんな僕の思いは杞憂でしかなった。
ベーシスト脱退のアクシデントで入れ替わってオノザトが加わったライヴを体感し、
ハードコアな“気”でさらにワイルドなNEPENTHESが体現できると思ったのだ。

中盤にメンバー全員がワインの回し飲みをしてからさらにパフォーマンスは熱を帯び、
客も誰もが上気していた。

ドゥーム・メタルとストーナー・ロックとメタル・パンクの王道のようで絶妙に外し、
曲をふくらませる縦横無尽の演奏力と音楽センスにあらためて舌を巻いた。
ギターのKensuke SUTOもドラムのIWAMOTORもナチュラルな“見せる”プレイで魅せる。

むろんヴォーカルのネギシはまたしても人間臭く微妙にお茶目な堂々たるステージングを展開。
MCでポロリと漏らしたように、
バンカラに見えて「気が小さいから(笑)」前夜は眠れなかったらしい。
にもかかわらず何もかもが全開のパフォーマンスで野性の喉を震わせていた。
終盤には客のいるフロアーをステージにして歌い、
客が詰まってないにもかかわらず危険なダイヴも披露。

1回目のアンコールはあらかじめ用意されていたと曲と思われるが、
もう終わったと思ってお客さんが帰りつつある中、
さらに求めるファンの要望に応えてメンバー再登場。
2回目のアンコールは想定外でヘルパー体制でできる曲が限られているため、
本編でもやっていた鉄アレイっぽいヘヴィ・パンク・ロック・ナンバー「EVOCATION」を
再演したのであった。


2週間前にライヴ・ハウスで出会った時に「2時間ぐらいやる?」と訊いたら、
しばし考え込んでネギシは「90分ぐらいかな」と言っていたが、
オープニングでの演奏ミスのやり直しや最後の最後の曲でのベース機材のトラブル・タイムも含めれば、
結局2時間やった。

入場者全員に物販所でデカ缶バッヂ風の栓抜きを配布したことが暗示したように、
缶ビールでなく瓶ビールの味わいの特濃パフォーマンス。
(だがヴォーカルのネギシがライヴ中に飲んでいたのは缶ビール。
だが飲んでいた銘柄はもちろん“男は黙ってサッポロビール[黒ラベル]”)。
メンバーもお客さんも終演後の笑顔も最高の一夜であった。


PRIMITIVE MAN『Caustic』

PRIMITIVE MAN『Caustic』


米国西部コロラド州デンバーを拠点にしているスラッジ・コア・トリオ、
PRIMITIVE MANが昨年10月にリリースしたアルバム。
スプリット盤も含めて様々な形で音源発表をしてきているバンドだが、
本作に掛けられた“帯”の記述によれば“セカンド・フル・レングス”とのことだ。

むろん路線変更無し。
それどころかますますずぶずぶずぶずぶ底無し沼に引きずり込むサウンドの渦にめまいを覚える。
音も咆哮も呪詛の放射である。
気が滅入るぐらい抜け出し不可能なほど深い。
だがJOY DIVISIONに耳を傾けると生きる勇気が湧いてくるのと同じような感じで、
心の底と骨の髄を揺さぶる。

ノイズ・コントロールとリズムのタメでおのれの意識をじっくりと編み上げていき、
さりげなくフックを設けた曲作りにもゆっくりと持っていかれる。
初期のCORRUPTEDも思い出す。
ギターもメタルなリフだけでなく、
神経をおびやかす音色で銀河の如き寒々とした命のグルーヴの流れを生み出し、
鈍い光が放たれる。
ノイズ・ドローンのパートにしても頭デッカチじゃなく気持ちが入っているからだ。

ブックレットに手書き書体で綴られた歌詞は解読できる範囲で書くと
例によって“そこまで言うか!”ってなぐらいネガティヴ・モード一筋である。
メンバー全員がサンクス・リストに親も挙げているから家族関係は“重症/重傷”ではないようだが、
この“生”の響きを浴びればポーズじゃなく本気ってことがカラダでわかるはず。

満ち足りた顔と声で不平不満を歌って甘さを隠せない音楽とは真逆をゆっくりと進み、
否応無しに時代の空気を吸わされた“原人”の閉塞感を突き抜けようとするパワーが
自爆寸前でうごめいている。
けっこう静謐なだけに殺伐としてまた不気味なラスト・ナンバーは、
現代音楽系のノイズ/アンビエント・ミュージックのようでありながらも“救い”の調べだ。

2017年度のベスト・アルバムに追加したい“希望”あふれる強力盤。


★PRIMITIVE MAN『Caustic』(RELAPSE RR7376)CD
12ページのブックレット封入の約78分12曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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