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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

HIGH ON FIRE『Electric Messiah』

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カリフォルニア州北部のオークランド出身のヘヴィ・ロック・バンドHIGH ON FIREが、
10月5日にリリースする8作目。
必要最小限の情報以外は、
書かせてもらったライナーの“アウトテイク”を混ぜつつ内容が極力ダブらない感じで紹介したい。


ふだん調子のいいハッタリをカマさないマット・パイク(vo、g)が最高傑作と言うのも納得のアルバム。
世界一好きなバンドというひいき目無しで僕も最高傑作と断言する。


マットがギタリストを務めるSLEEPの再編が一時的なものではなかっただけに、
HIGH ON FIREのフェイドアウトを心配したのは僕だけではないだろう。
SLEEPも活動を続けていて2018年の8月から9月にかけてツアーを行ない、
AT THE GATESのトーマス・リンドバーグがキュレイターを務める2019年4月の
オランダでのロードバーン・フェスティヴァルのヘッドライナーも決まっている。
そんなSLEEPとほとんど互い違いで、
マットはHIGH ON FIREでもレコーディングとライヴ/ツアーを行なっている。

マット個人としてはSLEEPの日本ツアーを今年1月に行なった後、
HIGH ON FIREでも2月上旬にライヴをした後に本作のレコーディングをスタート。
3月17日にはオランダの“ファスター・アンド・ラウダー”フェスに参加し、
EXPLOITED、ENTOMBED、MAD SIN、NOMADS、GUITAR WOLFNEGATIVE APPROACH
PUNGENT STENCHなどなどとライヴをしている。
HIGH ON FIREの非トレンディな立ち位置と雑食性の肝を示すヨダレが止まらない最高の対バンだ。
さらに4月下旬から5月にかけてHIGH ON FIREはヨーロッパ・ツアーを行ない、
その合間を縫うように本作を完成させたと思われる。
ちなみに本作リリース前後にENSLAVEDとのヨーロッパ・ツアーを9~10月にやり、
11月にMUNICIPAL WASTETOXIC HOLOCAUST、HAUNTと米国ツアーを決行予定だ。

SLEEPの新作『Science』が“ああ”だったから、
HIGH ON FIREの新作が“こう”なったと言い切れる畏怖の念を覚えるほど濃密なアルバムだ。
手を抜いているわけではないにしろマットはSLEEPではリラックスして演奏を楽しんでいる印象である。
対照的にHIGH ON FIREが全身全霊であることは
本作『Electric Messiah』からも痛いほど伝わってくる。


HIGH ON FIREはプロデューサーの変遷も興味深い。
デビュー作の『The Art Of Self Defense』(2000年)と
セカンドの『Surrounded By Thieves』(2002年)は、
ストーナー・ロック仕事人のビリー・アンダーソンとの共同プロデュース。
サードの『Blessed Black Wings』(2005年)は、
NIRVANAのサードも録音してSHELLACなどを率いてきた
スティーヴ・アルビニとの共同プロデュース。
4作目の『Death Is This Communion』(2007年)は、
NIRVANAのファーストやMUDHONEYも手掛けたジャック・エンディノの単独プロデュース。
5作目の『Snakes For The Divine』(2010年)は、
SLAYERを手掛けて後にMETALLICAとも仕事をするグレッグ・フィデルマンの単独プロデュース。
6作目の『De Vermis Mysteriis』(2012年)はプロデューサーのクレジット無しで、
そのアルバムに引き続き録音とミックスを行なったカート・バルー(CONVERGE)が、
7作目の『Luminiferous』(2015年)をプロデュースした。

そして『Electric Messiah』は、
CONVERGEのカート・バルーもエンジニアの一人として参加はしているが、
HIGH ON FIRE史上初のセルフ・プロデュース・アルバムである。


変わった?だの変わらない?だのの評なんか知ったこっちゃなく、
自分らのサウンドを持っているバンドだから再生して1秒でHIGH ON FIRE!だとわかる。
ELECTRIC LIGHT ORCHESTRAの曲名「Fire On High」を“逆走”させたバンド・ネームが最もふさわしい、
“燃えていてハイ”なサウンドのアルバムだ。

半数近くが速い曲というのもポイントである。
もちろんたとえツー・ビート主体で爆走しようが
メタル・パンクもクラスト・コアもスラッシュ・メタルもクロスオーヴァーもヘッタクレもない。
そもそもHIGH ON FIREには“なぞる”発想がない。
言うまでもなく頭デッカチとは対極で走り、
飢えた野生の動物のうなり声の如く剥き出しハイ・スピード・ロックンロールが火を噴く。
何度聴いても発見が絶えないのは、
シンプルに見えてパッと聴きわからないような“仕掛け”をリズムなどに施しているからである。
やっぱりジャズのニュアンスを応用できるロック・バンドは単なるパワフルで終わらず、
底無し沼みたいにディープだ。

これぞ“限界は何処だ!?”ってぐらいに自分たちを追い込んでいる。
おのれの中の表現のdemonを手繰り寄せて掘り起こして外に解き放つ循環のプレイにも聞こえる。
ギリギリだ。
ほとんど自己鍛錬だ。
甘えがない。
ノスタルジーもない。
サウンドは正直である。

やりすぎなほどのエナジーを放射しつつ、
激情の沸点を突き抜けてクールに屹立している。
ますますゴリゴリになっていると同時に、
ますます侘び寂びも深くなっている。
全9曲の中で、
9分台が1曲、10分台が1曲、6分台が2曲といった具合に、
例によって長めの曲も多い。
だが誤解を恐れずに言えば、
HIGH ON FIRE史上最もフックのある曲作りとキャッチーなアレンジが際立つ。


アルバム・タイトルの『Electric Messiah』は
MOTORHEADレミー・キルミスターに捧げるべく付けられたものだが、
本作収録の同名の曲もレミーを意識したように聴こえる。
曲調だけでなく歌詞もHIGH ON FIRE流の“「Ace Of Spades」解釈”に思えるのだ。
他の曲もひっくるめてマットのヴォーカルからは苦闘と解放の歌心があふれ、
魂の震えと言っても過言ではない。
ポーズなんかありえない思いを放射し続けるがゆえに軋みながら、
じっくりと針を振り切る発声だ。

出自を思えばHIGH ON FIREが本作でも歌詞で引用している神話や史実などの言葉は、
世界中で絶えない紛争や内戦をはじめとするこの世の地獄の“発火点”とリンクしている。
はらわたが煮えくり返ったサウンドの一方で、
研ぎ澄まされた獰猛なインテリジェンスが貫く歌詞の残虐なほど“生”の言葉に打ち震える。
まさに音と曲と歌詞が共振した善悪の彼岸の表現をこの世に刻みつけている。
もちろんいわゆるメッセージ・ソングではない。
あえて言うならナイーヴな“反戦”ではなくリアリスティックな“厭戦”である。


「weirdでストレンジ」と言いつつ
マットも基本的にはHIGH ON FIREをメタル・バンドと自認していて、
僕なら“バーバリック・メタル”と呼びたいアルバムだ。
だがそもそもグレイトなロックはメタルもパンクも食らった混血の燃焼だ。
ハード・ロックやハードコアもひっくるめて
“ファック・ユー!”アティテュードのハードなロックを突きつめたアルバムが、
『Electric Messiah』なのである。

ロックの理想形が体現されていて聴くたびに開かれていく自分を感じる。
ロックだけが持ち得る力と“魔法”をあらためて信じたくなる。


★ハイ・オン・ファイア『エレクトリック・メサイア』(ビクター・エンタテインメント)CD
10月5日(金)発売。


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ORANGE GOBLIN『The Wolf Bites Back』

ORANGE GOBLIN『The Wolf Bites Back』


ロンドン出身の“ドゥーム・ヘヴィ・ロックンロール・バンド”
ORANGE GOBLINが約4年ぶりにリリースした9作目。
これはもう最高傑作!と断言したい。

基本的に方向転換無しの音楽性だけに失敗作はなく安定した作風をキープしつつ
自己保身に陥らずコンスタントに進んできているバンドだが、
今回は特に素ン晴らしい。
活きのいい歌と演奏も印象に残る楽曲クオリティもパーフェクトだ。
メタルの本質を正々堂々と貫くからこそメタルを超えてロックど真ん中に突き抜けている。

SEPTIC TANKのドラマーでもあるジェイミー“ゴメス”アレリャーノによる、
プロデュースとミックスとマスタリングもお見事。
重く抜けのいい音の仕上がりのレコーディング状態で
押しと引きのバランスも良く、
音の出方をいい意味でコントロールできていて一気に聴ける。

メンバー4人は1995年の結成時からずっと一緒だけに、
お互いの性格やプレイの癖を熟知しているがゆえのコンビネーションに目が覚める。
めまいがするほどのストロング・スタイルに痺れるばかりで、
聴かせどころバッチリのアレンジ・ワークも特筆したい。

同じような曲は一曲もないし、
ドゥーム・ロックから展開して加速する曲も含めて
緩急織り交ぜたアルバム全体での疾走感が絶えない。
泣けるギター・インスト・チューンもいいアクセントで、
そこからウルトラ・パワフルなハードコア・パンク・ナンバーに突入し、
んでもってブルージーな曲に続くのも心憎い。
それでもまったく違和感のない流れで曲がドライヴし、
自分自身のサウンドを出すバンドはどんな曲をやってもそのバンドの色になることを
あらためて思わされる。

いつもより速い曲が目立つ。
MOTORHEADのクラシック・メンバーの3人に捧げた曲もカマし、
元MOTORHEADのフィル・キャンベルに2曲でギター・ソロを弾いてもらっている。
他の曲からもさりげなく琴線に触れるリリカルなフレーズがときおり聞こえてきて、
それがまた渋くて泣ける。
パンチの効いたヴォーカルも豪胆な歌心が震えとる。

グダグダした言い訳一切無しの顔面直撃サウンドのグルーヴに失禁しそうだ。
大グレイト。
ウルトラ大スイセン。


★ORANGE GOBLIN『The Wolf Bites Back』(CANDLELIGHT CANDLE748236)CD
厚手の紙に歌詞が載った16ページのブックレット封入の約41分10曲入り。


LUCIFER『Lucifer Ⅱ』

LUCIFER『Lucifer Ⅱ』


ドイツ出身で元OATHの女性シンガーが率いるヘヴィ・メタル・バンド、
LUCIFERが約3年ぶりにリリースしたセカンド。

ヨハナ・サドニス(vo)以外のメンバーがすべて変わり、
現在IMPERIAL STATE ELECTRICのニッケ・アンダーソン(ds他)が
HELLACOPTERS結成前から在籍していたENTOMBED時代と同じくドラマーのポジションに就き、
初来日公演にも帯同していたSATURNのロビン・タイドブリンク(g)を含む3人で作っている。
3人ともビシッ!と写ったジャケットに固定メンバーとして活動していく意気込みが感じられ、
ヨハナとニッケがプロデュースしてニッケは録音も手掛けたアルバムだ。


“歌ものドゥーム・メタル”と呼びたいほどヴォーカルが前面に出ているが、
やはりこの魔性の歌声は小賢しい策を弄さなくても目立つ。
自然体で発声しているからこそ妖気がゆっくりと広がっていく。
そこに手数多めのドラムと陰鬱なギター・リフが絡んでいくのである。

ドゥーム・メタルの様式にのっとることはなく、
ロニー・ジェイムズ・ディオ時代も含むBLACK SABBATHの全キャリアを包容したような
ドゥーム・ロックでじわじわ迫ってくる。
JEFFERSON AIRPLANEが湿り気を帯びてハード・ロックになったような
サイケデリック・テイストも十分。
ふてぶてしく多少オカルトちっくに、
しかしあくまでもストロング・スタイルだ。
凛とした佇まいがまぶしい。

ROLLING STONESが1973年の『Goats Head Soup』に収めた「Dancing With Mr. D」のカヴァーが
また絶品だ。
原曲のヤバいドゥーム・テイストをクールに引き出している。
ROLLING STONESといえば、
MOTORHEADもカヴァーした代表曲「Sympathy For The Devil」で“Lucifer”を歌い込んでいる。
ミック・ジャガーのガールフレンドだった前後に曲を提供されたマリアンヌ・フェイスフルは、
『ルシファー・ライジング』という映画に出演している。
こういう“Lucifer”つながりは面白いし必然としか思えない。

メタル以前にロックには得体の知れない神秘性が大切だとあらためて思わされる。
扱いも存在感も軽く聞こえる省略形の“メタル”じゃなく、
しっかり“ヘヴィ・メタル”と呼びたい重みのある一枚だ。


★LUCIFER『Lucifer Ⅱ』(CENTURY MMEDIA 19075858872)CD
約42分9曲入り。


ALICE IN CHAINS『Rainier Fog』

ALICE IN CHAINS『Rainier Fog』


米国シアトル出身の“オルタナティヴ・ヘヴィ・ロック・バンド”による約5年ぶりの6作目。

バンドの顔だった故レイン・ステイリーに代わって
ウィリアム・デュヴァル(vo、g)が加入してからの3作目になる。
バンドと共にプロデュースしたのは、
その復活以降のアルバムすべてを手掛けてMASTODONKORNの近作でもお馴染みの
ニック・ラスクリネクツである。

オルタナティヴ・ロック以降のフットワークの軽いヘヴィ・ロック・スタイルをキープし、
たおやかに陰影ゆらめく揺ぎない個性でブレがない。
タイトな作りのドゥーミーなサウンドだが、
ゆったりしたメタルのリフを使いつつヘヴィ・メタル伝統のevilな感覚とは違い、
ストーナー/スラッジ勢のようなパンク/ハードコアっ気もほとんどない。
その代わりゴス/ネオサイケ/ダーク・ウェイヴのニュアンスがギターとヴォーカルから漂い、
特にギターはブルースが染み込んでいるにもかかわらず耽美テイストも滲ませている。

ちょいダークでも光が射し込めるまろやかな曲は、
キャッチーなサビのパートを設けてツボを心得た作りも相まってすっきり聴ける。
ポピュラーなロック・ミュージックとしてバランスの取れた仕上がりで、
メインストリームの歌ものロックとしても楽しめる一枚。


★アリス・イン・チェインズ『レーニア・フォグ』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-18088)CD
表紙/ジャケットの中央に穴が空けられていて歌詞などが載った
16ページのオリジナル・ブックレット封入の、
約54分10曲入り。
日本盤はダフ・マッケイガン(GUNS N' ROSES)のライナーの和訳と歌詞の和訳も載った
16ページのブックレットも封入。
初回生産分にはジャケットと同じサイズで同じ絵柄のステッカーも封入されている。


Boris『Phenomenons Drive』

Boris『Phenomenons Drive』


東京出身のトリオ・バンドのBorisが、
結成25周年を迎えた昨年録音とミックスを行なった計約29分3曲入りの透明レコード。

Takeshiがベース&ギター、
ジャケットに写るWataがギター&エコー、
Atsuoがヴォーカル、ドラムス&エレクトロニクス、
とクレジットされている。

A面は14分40秒のレコードのタイトル曲の1曲のみ。
ビートは聞こえてはないが、
2000年代以降のBorisが得意とするシューゲイザー/ドローン・サウンドのヘヴィ・ロックだ。
まったりたゆたうスロー・チューンで、
中盤は研ぎ澄まされた轟音がヴォリューム・アップで鳴りわたる。
耽美で多幸な“Boris節”健在だ。

B面の1曲目は、
名古屋出身の割礼が90年の『ゆれつづける』に収めた「散歩」のカヴァー。
これが本作一番の聴きどころで。
和のドゥーム/サイケデリック・テイストが10分15秒にわたって空間を支配する。
裏ジャケットで一人だけヴォーカルがクレジットされているからAtsuoが歌っているのだろうが、
ドラムを叩かずシンガー専任だったBORIS初期のAtsuoの生々しい歌声をアップデートし、
しばらく封印していたかのような情念が蘇っている。
原曲を超えた!と言い切りたい。

そしてB面2曲目のラスト・ナンバー「センシタイザー」はサイケデリック・インスト・チューン。
彫りの深いレコードの音質の特性が活かされた3分50秒の静かなる佳曲だ。


★Boris『Phenomenons Drive』(HELLO FROM THE GUTTER HFTG-030)LP
計約29分3曲入り。
80年代の日本のインディ盤を思い出す厚紙ジャケットで、
70年代半ばまでのVIRGIN Recordsみたいなレコード・レーベル面のデザインもBorisらしい。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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