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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

KOЯN(KORN)『The Nothing』

KOЯN(KORN)『The Nothing』


nu metalとも呼ばれるグルーヴィなサウンドで
90年代の半ばに“メタル”を塗り替えたカリフォルニア出身のバンド、
KOЯN(KORN/コーン)の約3年ぶりで13作目のオリジナル・フル・アルバム。

25年以上の活動にもかかわらず、
途中10年近く離脱していたブライアン“ヘッド”ウェルチ(g)も含めて
5人編成の中で4人がオリジナル・メンバーというのが驚異だし、
2009年に加入した実質二代目ドラマーもビシッ!としていて素晴らしい作品である。

ほぼテンションを落とさず“3年に一作”以上という
MOTORHEAD級の精力的なインターヴァルのリリースとコンスタントなライヴを続け、
揺るぎないサウンドが揺るぎない支持を集めて実はトレンドに関係ないバンドだ。
僕もKOЯNに対して複雑な思いを抱いた時期もあるが、
仕事でもファーストから関わっていたバンドだけに、
アルバム・デビュー25周年ということで今回は特に感慨深い。


今や売れっ子のニック・ラスクリネクツが前作に続いてプロデュースを行ない、
ミックスも同じくジョシュ・ウィルバー。
プログラミングでゲストが参加している以外はメンバーだけのプレイで仕上げている。

ジョナサン・デイヴィス(vo)は昨年ソロ・デビュー作『Black Labyrinth』を出したが、
そのアルバムでも数曲書いた英国のシンガーソングライターのローレン・クリスティが
本作でも3曲共作している。
今回のアルバムは曲ごとにソングライターのクレジットが記されているのも特徴で、
SMASHING PUMPKINSのビリー・コーガンと
GOLDFINGERのジョン・フェルドマンも1曲ずつ共作し、
プロデューサーのニックも過半数の曲で作曲者の一人になっている。
KOЯNだけのソングライティング・クレジットの曲は3曲だけで、
ジョナサンが一人で書いて一人でパフォーマンス(すべてバンドっぽい作り)をした
3曲を含む点も特筆したい。

昨年8月にジョナサンが妻を亡くした影響がこのアルバムの全曲に表れていると考えるのは
自然なことだろう。
だが逆に気負いが一層薄れてさらにナチュラルなジョナサンの歌唱と生のプレイが光り、
シンプルな音作りだからこそジョナサンの思いも素のまま伝わってくる。

R&Bっぽいニュアンスの強い曲をはじめとしてグルーヴ健在ながら、
初期みたいなヒップホップっぽい音作りは控えめ。
ジョナサン独演のオープニング・ナンバーは物悲しく美しい曲だが、
ヘヴィ・メタリックなリフが目立つ曲が多い。
キャッチーなサビのポピュラリティの高い楽曲が際立つ中で、
『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』(1987年)あたりのCUREに通じる
ダークな美麗ダイナミズムが炸裂している。

飛びぬけて斬新なことをやっているわけではないが、
ジョナサンの自作自演曲をはじめとして赤ん坊の第一声みたいな空気感に覆われている。
こんなに興奮したKOЯNのアルバムはファースト以来だ。
トータル約44分の堂々たる13曲入り。


★KOЯN『ザ・ナッシング』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-18271)CD
8ページのブックレット封入。
日本盤はロゴをプリントしたステッカーも封入。


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RAINBOW GRAVE『No You』

RAINBOW GRAVE『No You』


NAPALM DEATHの創設メンバーで
1987年発表のデビュー盤『Scum』の前半でヴォーカル/ベースを録った後しばらくして抜けた、
ニコラス[ニック]・バレン(vo、g、エレクトロニクス)在籍のバンドのファースト・アルバム。

数年前に実験的なソロ・アルバムを出したニコラスが再びロックのフィールドを揺るがす衝撃作だ。
しかも1988年のファースト・アルバム『War Crimes - Inhuman Beings』をはじめとして、
英国のDOOMの初期にヴォーカルを務めたジョン・ピッケリング(g、エフェクツ)も一員。
ベーシストとドラマーは無名だが二人とも実に強力な音で曲をリードしている。


アルバムが始まって数秒で終末の空気感に包まれる。
そこいらの“たいへんよくできました”なバンドとは音の鳴りの次元が違う。
鉛色の生肉みたいなヒリヒリ感がたまらない。
曲はわりと長めで2曲は7分以上だが、
計34分弱6曲に凝縮。
反復を基調に一曲の中であまりテンポを変えず、
ミディアム~スロー~アップ・テンポで迫りくる。

ドゥーム/スラッジ系統とも接触する楽曲スタイルだが、
“非メタルヘッド”のバンドだけにドゥーム・メタル/スラッジ・コアとは一線を画す。
何しろ全パートがウルトラ・ヘヴィ・パワフルで、
さりげなくスピード感十分、さりげなく加速しているのだ。

1985~1991年にNAPALM DEATHをドラムで支えたミック・ハリスと
ニコラスが組んでいたSCORNの1992年のファーストの『Vae Solis』も思い出す。
ニコラスとともに『Scum』の前半を録った
ジャスティン・ブロードリック(GODFLESHJESU)がアーロン・ターナー(元ISIS)と組んだ、
GREYMACHINEも頭をよぎる。
アップ・テンポの曲はRUDIMENTARY PENIやMASTURBATION
1983年頃までのKILLING JOKEも想起。
あとやっぱりCORRUPTEDの反復の感覚にも近い。

JOY DIVISIONの出口無しのニュアンスもサイキックでサイコな響きから滲み出ているが、
歌詞は不明ながら曲名も閉塞感そのものだ。
「Ten Millions Tons Of Shit」「Suicide Pyramid」「Year Zero」
「Brainsick」「Assassin Of Hope」「Dead End」といった具合に
ネガティヴ・メンタル・アティテュードに貫かれている。
SCORNで90年代に初来日公演を行なったときニコラスにインタヴューした際、
まさに「Brainsick」な印象を受けたが、
このヴォーカルも静かなるヘイト・フィーリングに溢れている。
叫びというより歌唱だからこそ生々しく、
シニカルな呪詛すら感じさせるのであった。

グレイト。


★RAINBOW GRAVE『No You』(GOD UNKNOWN GOD059CD)CD
デジパック仕様の計34分弱の6曲入り。


NEBULA『Holy Shit』

NEBULA『Holy Shit』


FU MANCHUの初期アルバム3作でギターを弾いたエディ・グラス(vo、g)率いる
米国ロサンゼルス出身の“真正”ストーナー・ロック・ハンドの新作。
90年代の後半に結成してからコンスタントに活動するもしばらく分裂状態になり、
再編して約10年ぶりに出した6作目のオリジナル・アルバムである。


ほとんどの曲が4分以上で7分を越える曲も2曲あり、
じっくり作っていったことが想像できる快作だ。
BLACK SABBATHSTOOGES(≠Iggy and the STOOGES)の交わり、
もしくはハードコア以降のロックのアタック感とサイケデリック・テイストのブレンドという、
NEBULAならではの持ち味に磨きをかけている。
新ドラマーもいい感じで手数が多く、
パワフルなだけでなくデリケイトなニュアンスも高ポイントだ。

陰鬱なハード・ロックのリフが激しく回転するも静かで暗いパートを内包する曲でスタート。
ゆっくりしたドゥーム・メタル調でも、
パーカッシヴかつダイナミックなハード・ロックでも、
サーフ・ロックちっくなハード・ロックでも、
憂いを秘めてメランコリックなサイケデリック感覚が揺らめく。
メンヘラな空気感たんまり。
と同時にドリーミーな味わいも滲む。

NEBULAが今年の頭に出した初期レア音源集『Demos & Outtakes 98-02』を思い出す。
むろん未発表のオリジナル曲も聴きどころだが、
BLACK FLAGのデビュー曲「Nervous Breakdown」のベタなカヴァーもさることながら、
英国のThe CREATIONによる1968年のシングル曲「How Does It Feel To Feel」のカヴァーが
選曲も出来も極上センスで痺れた。
CREATION Recordsを主宰したアラン・マッギーがレーベル名の元ネタにしたバンドで、
英国のRIDEもカヴァー・シングルを出した曲だが、
その曲に通じる妖しい味わいにもこのアルバムが覆われているのだ。

へなちょこパンクな繊細ヴォーカルも絶好調。
上手けりゃいいってもんじゃない。
巧いのはつまらない。
我流上等なんである。
歌詞は不明だが、
「Man's Best Friend」「Messiah」「It's All Over」「Witching Hour」「Fistful Of Pills」
「Tomorrow Never Comes」「Gates Of Eden 」「Let's Get Lost」「The Cry Of A Tortured World」
といった曲名からもドゥームど真ん中だ。

アルバム・タイトルは直訳だと“聖なる糞”だが
“やべえ”“なんてこった”“マジかよ”ってなニュアンスのスラングどおりのオススメ盤。


★NEBULA『Holy Shit』(HEAVY PSYCH SOUNDS HPS103)CD
内側にセルフ・ライナーのような文章が載った三面デジパック仕様。


SLIPKNOT『We Are Not Your Kind』

SLIPKNOT『We Are Not Your Kind』


メタルだけでなくロックを塗り替えてきた米国のバンドが、
アルバム・デビュー20周年の年に放った約5年ぶりの6作目。
威風堂々のグレイトなニュー・アルバムである。


前作『.5: The Gray Chapter』に引き続き、
バンドと共にグレッグ・フィデルマンがプロデュースしてジョー・バレーシがミックス。
歯切れも抜けもいいにもかかわらず濃密な仕上がりで、
渦巻く情念も横溢する気合も生き物のサウンドに宿してデリケイトにレコーディングされている。
ツボを突くビートの質感がたまらないドラムをはじめとして、
研ぎ澄まされた響きへの気遣いに舌を巻く。
初期から不変のサビがキャッチーな曲作りに磨きをかけ、
70分近く通して聴いても疲れない音作りとアルバム全体の構成も見事だ。

インダストリアル・ミュージックやアンビエント・ミュージックを天国のように冷たく、
デス・メタルやブラック・メタルを地獄のように熱く溶かし込んだ、
ソリッド&グルーヴィな重いメタル。
既成のジャンルから外れた“ノイズ”とパーカッションが曲に命を吹き込み、
フックを隠し持つ。
デイヴィッド・ボウイの1977年から1980年までのアルバム、
すなわち『Low』『Heroes』『Lodger』『Scary Monsters』の先鋭的な音の感触を、
ハードコアなBLACK SABBATHテイストで解釈したみたいでもある。

胆力満々の喉を震わせつつポピュラリティ十分のヴォーカルも実にいい。
やっぱりグレイトなアルバムはヴォーカルはもちろんのこと、
楽器の音にもヒリヒリした歌心が息づく。
このアルバムは人間味あふれる暴虐の歌心が激しく呼吸をしている。
大したモチーフがないにもかかわらず機械的にエクストリームな音を作って
進化を目指しているっぽいメタル/ハードコア系のバンドが2010年代以降に目立つが、
人工的な音はやっている人間の空っぽさが見えてきてむなしくなるだけである。
このアルバムはメロディアスな静謐パートも生々しい。
まさに本物だ。

“右”も“左”も
結局は“みんなと一緒に居たい”だけみたいなビョーキの世界的な状況だけに、
「おめーと一緒にすんな」とも解釈できるアルバム・タイトルも痛快である。
孤立はしてない。
だが素晴らしく孤高である。
さらに日本盤には昨年デジタル・リリースしたシングル曲「All Out Life」が追加されているのだが、
“We Are Not Your Kind”というフレーズ(歌詞/和訳付)がサビで歌われる重要曲だけに
注意したい。

大メジャーなバンドでこれほど聴くたびに発見が湧いてくるアルバムは久々だ。
大スイセン。


★スリップノット『ウィー・アー・ノット・ユア・カインド』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-18229)CD
膨大な言葉数の歌詞が載った20ページのオリジナル・ブックレットに加え、
日本盤は歌詞の和訳が載った16ページのブックレットも封入の約69分15曲入り。


ENOUGH TO ESCAPE『Fortune』

ENOUGH TO ESCAPE『Fortune』


名古屋のETERNAL ELYSIUMのユキト・オカザキがヴォーカルと作詞に専念し、
オーストラリア中心に活動してきた4人のミュージシャンが作曲して演奏し、
先月初の日本ツアーを行なったばかりのロック・バンドのファースト。
一昨年オーストラリアのシドニーでレコーディングされ、
昨年オカザキが“根城”にしているスタジオ・ゼンでミックスとマスタリングが行なわれたCDで、
オカザキのレーベルからリリースされている。

ISISが部分的にもっとPINK FLOYDっぼくもっとメタリックになったかのようで、
アンビエント・チューンの小曲やまったりリリカルなプログレ風味もブレンドされ、
ポスト“ドゥーム”メタルとも言いたくなるサウンドだ。

そんな中でマジカルな味わいに一役買っていいアクセントになっているのは、
一声ですぐ誰が歌っているのか判明するほどの存在感を放つオカザキのヴォーカル。
たおやかに歌い上げ、
時に声明(しょうみょう)風に、
時に呪文のように、
時にサイケデリックな風情で響く。
飄々達観とした佇まいは不変ながら、
ETERNAL ELYSIUMとは違ってギターを弾かないだけに
ステージ上で両手を伸ばして悠々と舞ってもいた先日のライヴでのオカザキの動きを思い出す。
日本語を多用しているから和のテイストが強めながら、
何かから解き放たれて漂流するヴォーカリゼイションがエキゾチックに聴こえる。

インスト・ナンバーとして残っている曲もあるが、
もともとインストとして作られていた曲にヴォーカルを入れて仕上げたとは思えないほど、
新たな歌の魅力も味わえるアルバムだ。


★ENOUGH TO ESCAPE『Fortune』(CORNUCOPIA CRCD-009)CD
デジパック仕様の42分10曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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