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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Crispy Camera Club『ROMA』

Crispy Camera Club『ROMA』


女性がフロントに立って2016年に結成された京都拠点の4人組のバンドが、
『SWAG』以来10ヶ月ぶりにリリースしたセカンド・ミニ・アルバム。
約18分6曲入りながら聴き応えありありで、
もうちょい聴きたくなる欲望を募らせる心憎いヴォリュームだ。


ギター・ポップにインスパイアされているのかもしれないが、
今回も普遍的に音楽として素晴らしい。

ファーストの時から男性の正式メンバーが一人増えた。
女性ヴォーカル/ギター、
男性ギター/コーラス、
男性ベース、
女性ドラム/コーラス
という編成になって“細分化されたジャンルの様式美”を軽やかに超えている一因だ。
性別にはNASHVILLE PUSSYとは真逆のステージの立ち位置で、
派手なルックスじゃなくても女性2人を男性2人が挟むヴィジュアル・バランスが映える。
例外はあるにせよ女性と男性の肉体的、精神的、感覚的な違いは音楽の方も表われるもので、
そういった絶妙の交わり具合がたまらない。

本作には未収録で僕も聴いてないが、
STONE ROSESの「Elephant Stone」やSUNDAYSの「Here's Where The Story Ends」の
カヴァーもレコーディングしたらしい。
なるほどニューウェイヴ/ポスト・パンク流れの
80年代後半のいわゆる“UKロック”のニュアンスも感じさせる。
ジャングリーなネオアコ感やサイケ・ポップ感も漂うが、
緩急織り交ぜた楽曲にビシッ!とした芯がさりげなく貫く。
こそばゆくシャープなソロ・プレイも光るギター、
60年代ガレージ・サイケ風のフレーズが耳に残るベース、
UKインディ・ロックっぽいドコズミックなリズム感のドラム。
ギターやヴォーカルもハーモニーも聴きどころだ。

語感や響きやリズムが活かされた日本語の歌詞の曲が大半で、
ほっこりまったり具合が70年代前半の日本のポップなフォーク・ソングも思い出す。
日本語メインで歌っているほとんど曲でも多少英語のフレーズを織り交ぜているところは、
伝統的な日本のロックの歌詞の組み立て方に通じる。
もちろんエゴ丸出しのヴォーカルが前面に出て演奏が伴奏でしかない日本語ロックとは無縁で、
淡い色合いの歌声とデリケイトな音のブレンドが木漏れ日のサウンドを生み出している。
全編英語で歌う一曲もあえて洋楽感を醸し出したようでクールだ。

「ネイビー・ショア」「エンディングロール」「BIG EASY」「ひとりぼっちのレイニーレイン」
「Peggy Jean」「ティンセルタウン (ROMA mix)」
といった曲名からもイメージが広がる。
歌詞に人称名詞をほとんど使ってないところも興味深く、
けれんみのないクールな青春映画みたいな世界観がサウンドと相まって胸をすく。
ジャケット+帯の全体のデザインも70年代のポピュラー・ミュージックのアルバムの再発盤を思わせる。

ていねいに仕上げられていて、
やわらかい質感の音作りも特筆したい。
もちろん“養殖”ではなく天然。
光合成しているみたいなCDなのである。

これまたライヴが観たくなるオススメ盤だ。


★クリスピー・カメラ・クラブ『ロマ』(KOGA KOGA-215)CD


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つしまみれ『まみれマニア20』

つしまみれ『まみれマニア20』


コンスタントに活動を続ける女性トリオ・バンドつしまみれが結成20周年を記念し、
“ベスト・アルバム”と位置づけてリリースした20曲入りのCD。

つしまみれは2014年にもベスト・アルバムの定義のCD『つしまみれまみれ』を出しているが、
そこに収めた曲とは一曲もダブってない。
今回は自分たちのレーベルのMojor Recordsを立ち上げてから録った
2010年12月以降の8枚の作品からセレクト。
一般流通してないCDの曲やシングルのサブ・トラックも含み、
初期に作った「うつ病」と「献血ソング」もアルバム収録ヴァージョンで入っている。
現ドラマーのマイコが叩いた曲が3分の1近くを占め、
2つの新曲も加えている。

それらの新曲がオープニングというところにバンドの自信が見え隠れしている。
1曲目の「THE 給料日」は歌謡ポップス調(≠J-pop)のロックで妙な疾走が彼女たちらしい。
2曲目の「絶対☆ダイジョーブ」もパワフルだが、
日本の民謡風の旋律も絡めつつ後半は手作りのループ状の音とヴォーカルのやり取りがストレンジだ。

新曲が最初ということが示すように曲順は時系列ではなく、、
既発表の曲中心に再構成した“ニュー・アルバム”のような流れになっている。


あらためて聴いて、
ポップなニューウェイヴとオルタナティヴ・ロックが
日本語の歌でブレンドされたユニークな個性が息をしている。
リズム隊・・・特にベースがリードする曲が多く、
曲によってはサーフ・ロックもソフト・ロックもラテンも顔を出し、
女性オンリーのバンドならてはの発想で石頭をくすぐり倒す。

流行りすたりに関係なく我が道を行く。
スノッブなギョーカイ全体が推す“インディ・トレンド”にかすりもしないのが素晴らしい。
サブカルにも媚びを売らないし卑屈にもならない。

高い声域でしっかりと発声するポップなヴォーカルの歌い方が象徴するように、
エキセントリックに見えてまっすぐなバンドだ、意外と。
けっこうヘヴィにロックしている。
やっぱりトリオ・バンドならではのギリギリ感に裏打ちされているのだ。

ところによってはシアトリカルになるが、
ふざけているようでリアリズムこぼれ落ちる真面目な歌ばかり。
と同時に怪しい歌ばかり。
へんてこなポップスばかり。
いい意味で年相応じゃなく若作りもしてなくて年齢不詳の曲と歌ばかり。
わざとらしく曲げようとしなくても自然とちょい屈折したような曲の数々。
ちょっとばかり切なく愛おしい。
名曲「Crazy for you」をはじめとしてポップな歌心があるからだ。

“王道”をやっていてもいつまにか天然でハズしてしまうのが、つしまみれ。
実際はチャーミングなルックスなのだから
ストレートなアー写っぽいジャケットにする手もあるだろうに、
今回も“ビミョー”なジャケットなのがまた、つしまみれらしい。


★つしまみれ『まみれマニア20』(Mojor DQC-1631)CD
16ページのブックレット封入の約75分20曲入り。
パッケージ裏には曲名の英語タイトルも載っている。


そこに鳴る『一閃』

そこに鳴る『一閃』



2011年に大阪で結成以来コンスタントに活動し、
一歩一歩進んで海外展開も本格的になってきた“そこに鳴る”の7曲入りの新録CD。

コンパクトに凝縮されたミニ・アルバムのヴォリュームで一年に一作のペースでリリースを続け、
昨年ライヴ開場で販売された3トラック入りCD『re:program』の表題曲も収録されている。
もちろん7曲だろうが今回も聴き応えありありだし、
CD全体の構成や曲の流れもドラマチックだし、
いい意味で長く感じる濃厚な仕上がりだ。


鈴木重厚(g、vo)と藤原美咲(b、vo)を核とし、
志雄(ds)が“アディショナル・ミュージシャン”としてクレジットされ、
今年2月に決行した初のヨーロッパ・ツアー前の意気込みまでもレコーディング。
もちろん欧州のステージに立とうが日本語表現で押すのは変わらず、
歌詞だけでなく作品のクレジット等も含めて日本語でほぼ統一し、
自分たちの魅力が日本の土壌から出てきたことを強みとして活かしている。
と同時に手垢にまみれた日本らしさを売りにすることなんて全然なく、
持ち前のヨーロピアン・テイストの凍てついた空気感に覆われ、
なおかつ内向的のようで外向き全開のダイナミズムに満ちている。

例によってスクリームの類いのヴォーカルはないが、
メタルコアの凛としたポップ・ヴァージョンみたいな曲とサウンドに磨きをかけている。
もちろんメタル・バンド!とは言わないしメンバーもそう思ってないだろう。
けど僕がそこに鳴るに惹かれるのは、
メタルの意匠を利用しているにすぎないやつとは一線を画し、
メタルの本質のヘヴィネスもサウンドそのもので体現されているからだ。

よりキャッチーに!より複雑に!という感じである。
一曲の中での展開もますます激しくなりつつ随所に聴かせどころも設け、
やっぱり頭で作っている曲と違うナチュラルな作りだ。

いわゆる速弾きの類いのテクニカルな演奏をアクセントに使って勢いをつけ、
必要とあらばギター・ソロも入れるが、
いずれも簡潔にというところがポイント。
“メタル meets シューゲイザー”といったトーンののギターに対し、
やはりなかなかテクニカルな技も挿入するベースは図太く音も大きく、
アタック感も十分で元気に暴れている。
ドラマーは今回も手数足数多く助っ人以上のウルトラ・パワフルな活躍で、
二人のメンバーに言われたことをただやっているだけにはとうてい聞こえず、
そこに鳴るのロック感を高めて肉体派のサウンドに一役買っている。

二人のヴォーカルも単なる合唱やハーモニーだけでなく、
ますますユニークな絡みや掛け合いを噛ませている。
甘くメロウな感触も強い歌声はクールに突き放しているようにも聞こえ、
そこに僕はポスト・パンクの佇まいを覚える。

NEW ORDERを思い出すキーボードっぽい音も聴こえてくる作品だが、
似てはいないにしろ、
たとえるなら歌詞はJOY DIVISIONを聴いて元気になるような感覚だ。
サウンドと共振して力の光が放たれ、
『一閃』というCDタイトルもピッタリだ。

最高傑作、
もちろん現時点までの、である。
これまたライヴが観たくなるオススメ盤。


★そこに鳴る『一閃』(KOGA KOCA-97)CD
歌詞が見やすくデザインされた8ページのブックレット封入の約24分7曲入り。
CD盤面もCDタイトルそのものので思わずさわりたくなるデザインだ。


Mark Stewart + MAFFIA『Learning To Cope With Cowardice』

Mark Stewart _ MAFFIA『Learning To Cope With Cowardice』


The POP GROUPの(一時)解散後にそのフロントマンのマーク・スチュワート(vo)が
1983年にリリースしたファーストの新装リイシュー盤。
プロデュースとミックスはマークとエイドリアン・シャーウッドだ。

“信者”とは言わないまでも
自分にとってマーク・スチュワートが今もトップ・プライオリティであることに変わりはないし、
The POP GROUPの
「We Are All Prostitutes」『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』と並び、
自分の人生を決定づけた最重要作品でもある。
オリジナルLPから数えてもう数種類持っているアルバムだから今回は見送ろうかと思った。
音質もボーナス・トラックも含めて、
日本のビート・レコードが2004年に発売した計13曲入りのリイシュー盤(BRC-110)が
CDの決定版と思っていた。
でも無視できない音源に惹かれてまた買ってしまった。

バック・バンドだったMAFFIAとの名義ながら実質的なファースト・ソロ・アルバムだ。
今回は以前のリイシュー盤に入っていたボーナス・トラックは無しだが、
リマスタリングされた音の2枚組で、
『The Lost Tapes』と題されたディスク2には
アルバム本編と同時期の録音と思しき未発表音源が10曲入っている。


約41分8曲入りの本編は
音圧に頼らず丁寧に仕上げられたデリケイトなリマスタリングだ。
派手さがない分どっしりと地に足の着いたサウンドだし、
続けて聴いても疲れないLPに近い質感で引き締まった音の仕上がりである。

レゲエ/ダブ・スタイルだが、
レゲエ・ファンの方にはレゲエに聴こえないのではないか。
やっぱりロックなのだ。
マーク・スチュワート関連作の中で最もゆったりした時間の流れにもかかわらず、
マークのソロ作の中で最も深刻な空気感に包まれ、
音だけでなくヴォーカルも何もかも重い。
だが研ぎ澄まされた意識で閉塞感を突き抜けるサウンドに今も打ちのめされるばかりだ。
SEX PISTOLSが曲名をパクった国歌「God Save The Queen」とは別の“裏英国国家”ともされ、
Emerson, Lake & Palmerやブルース・ディッキンソン(IRON MAIDEN)もやった、
英国ロマン派アーティストのウィリアム・ブレイクの詩を歌う「Jerusalem」に集約される。


約46分10曲入りのディスク2は、
制作途中の曲の断片みたいなトラックや未発表曲を含みつつ
アルバム本編の曲の別ヴァージョンが大半を占める。
とはいえイージーなリミックスものとは次元が違う。
「None Dare Call It Conspiracy」のイケイケ・ヴァージョン、
「Jerusalem」の“プロト・タイプ”ヴァージョン、
「Liberty City」のアグレッシヴ・ジャジーなヴァージョンなど、
聴き応えありありの音源ばかりだ。
SLITSのメンバーを含むプロジェクトNEW AGE STEPPERSの1981年のファーストにおいて
「Crazy Dreams And High Ideals」というタイトルで最初に発表した、
マークの“ソロ・デビュー曲”の別ヴァージョンも収録。
もちろん音質も全曲本編と変わらぬクオリティで一つ一つの音のかたちが見えてくる作りである。


印象に残る曲作りも今回再認識した。
それこそ全曲ギター一本で弾き語れるといっても過言ではない。

僕が買った↓のカタログ・ナンバーのCDにはオリジナルLPと同様に歌詞が付いてないが、
昔の日本盤LPのインサートや以前発売されたリイシュー盤のブックレットによれば、
歌詞は告発というよりおのれの足元を見つめ直しておのれの意思をあらためて奮い立たせる内容。
アルバムの音と共振して吐き出すというより内省的でエネルギーをチャージしている“歌”だ。
“臆病さ/気弱さ/卑怯さに立ち向かって対処することを学び身につける”という感じの
アルバム・タイトルに集約されている。
といった具合に金言が連なる歌詞も確かに大切なアルバムではある。
でも張りつめた無限の空間の中から立ち現れる声と音に宿った強靭な意志に覚醒されっぱなしだ。


音楽誌に“入荷予定”の広告が載ってからあちこちの輸入盤屋に何度も電話し、
一刻も早く聴きたかったから最初に入荷した新宿のお店で買い、
初めて耳を傾けた時に総毛立ち姿勢が正された二十歳の頃を思い出す。

また朝から晩まで繰り返し聴いている。
おのれを引き締め直すべく全身に浴び続けると武者震いがしてくる。


★Mark Stewart + MAFFIA『Learning To Cope With Cowardice』(MUTE CDMSATM1)2CD
ジャバラ状に折りたたまれた16面のジャケットで、
マーク・スチュワートの1982年のソロ・デビューEP『Jerusalem』のアートワークも反映され、
CD盤面も含めて前述のビート・レコードの再発盤に近いデザインだ。
僕が買ったCDは曲を読み取る盤の裏面が黒色になっている。


映画『ザ・スリッツ:ヒア・トゥ・ビー・ハード』

THE SLITS_KEYART


1976年の結成時点で女性だけの初のパンク・ロック・バンドになった英国のSLITSのドキュメンタリー。
http://theslits-l7.com/slits.htmlでバンドのプロフィールを書かせてもらったが、
映画自体にはあまり言及してないからネタバレ最小限にしてここで紹介する。

ライヴを含む昔の映像や写真を織り交ぜながらメンバーと関係者の談話で進め、
いわばオーソドックスな音楽ドキュメンタリーの作りである。
SLITS結成前夜から解散中のメンバーの動向を経て再編以降までをクールに追っている。

THE SLITS_MAIN

登場するのは以下の面々だ。
まずはパリマリヴ(ds)、アリ・アップ(vo)、テッサ・ポリット(b)、ヴィヴ・アルバータイン(g)を
はじめとする極初期からの歴代メンバーたち。
映画を撮る前の2010年に亡くなったアリ以外のトークは撮り下ろしのインタヴューが大半で、
もちろん再編後のメンバーたちも含まれている。
1979年のファースト『Cut』の頃に叩いたバッジー(Siouxsie and the BANSHEES、CREATURES)と、
1981年のセカンド『Return Of The Giant Slits』の頃に叩いた
ブルース・スミス(The POP GROUPPiL)という、
男性ドラマーたちも語っている。

映画『パンク・ロック・ムービー』や『パンク・アティテュード』の監督として知られ、
SLITSの初代マネージャーでもあったドン・レッツも登場。
ジョン・ライドン(SEX PISTOLS~PiL)はアリ・アップの義父で近すぎるからか出演してないが、
娘さんが再編SLITSのメンバーになったポール・クックが“身内”の一人としてしゃべっている。
『Cut』の全曲と『Return Of The Giant Slits』の一部をプロデュースしたデニス・ボーヴェルや、
SLITSの影響下で始めたRAINCOATSのジーナ・バーチの話も聞ける。

THE_SLITS_SUB3_convert_20181123161338.jpg

“女性だけ最初のパンク・ロック・バンド”ということに関しては、
当時SLITSのメンバーが半ば馬鹿にしていたLAのRUNAWAYSの方が先という説も否定できないが、
総合的に見てSLITSが世界初とみなしても問題ないだろう。
ただし彼女たちはパンク・ロックのレッテルを貼られることを嫌がり、
だからこそ短期間で進化していった。

一番上にアップした画像の4人がSLITSの“クラシック・メンバー”だが、
バンド発起人で画像の左から二番目のパリマリヴ(ds)はレコード・デビューの時点でもう在籍してない。
彼女がバンドから去ったことも影響し、
名盤とはいえ1979年リリースのファースト・アルバム『Cut』は
既にパンク・ロックからポスト・パンクに進化したSLITSの記録になっている。

THE_SLITS_SUB5_convert_20181123162105.jpg

メジャーな存在にはならかったとはいえ少なからず脚光を浴びた『Cut』以降の人生模様も
ドラマチックで見ごたえ十分だが、
この映画はパンク・ロック時代の“生”のSLITSもたっぷり堪能できる映画だ。

そもそも初期ロンドン・パンク・シーンから出てきたバンドである。
ジョン・ライドンが名付け親でシド・ヴィシャスも在籍したバンドの
FLOWERS OF ROMANCEから枝分かれして生まれた事実が象徴的だし、
SLITSのメンバーの何人かはCLASHのメンバーと付き合ってもいた。
そういうプライヴェイトな話はともかく、
アウトサイダーこそがパンク!とあらためて思わされる時代のスリリングな流れに胸が高鳴る。

THE_SLITS_SUB6_convert_20181123162144.jpg

もちろんセクシズム云々のアカデミックな話はない。
でも一番筋金入りだったパリマリヴをはじめとしてメンバー全員が天然のフェミニズムに裏打ちされ、
そもそも“歌姫”とかではなく女性が楽器を手にしてバンドをやること自体が
オトコ的な価値観が支配するロック・シーンへの“ファック・ユー!”アティテュードだった。
そんな意識から生まれたSLITSのサウンドが、
オトコ的なロックンロールのフォーマットから逸脱していたことが必然だったこともわかる。

女性でバンドを始めるというパンク・ムーヴメントの最良の影響を受けた“クラシック・メンバー”たちが、
いわゆる女としてのしあわせを手にしたことも興味深い。

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メンバー一人一人のキャラがトークや映像から滲み出てくるところもファンとしてはうれしい。
いわゆるパンク・ファッションとは一線を画し、
女性ならではの柔軟かつ鮮烈センスのパンクなヴィジュアルも高ポイントである。

SLITS再編に積極的ではなかったパリマリヴ(ds)とヴィヴ・アルバータイン(g)が
それぞれ筋を通した人生を続けていることを伝える映像と話も、
SLITSらしくて納得させられる作りだ。
テッサ・ポリット(b)がバンド結成前夜から作っていたSLITSのスクラップ・ブックも、
この映画に大きく貢献したようである。

THE_SLITS_SUB2_convert_20181123161305.jpg

結成当時14歳だったアリ・アップ(vo)の奔放ぶりにメンバーが手を焼いていたことも、
映画の中で使っても問題ないと厳選されたと思しき発言群から伝わってくる。
けど生意気盛りで怖いもの知らずのアリがフロントに立っていたからこそ、
あの頃のSLITSは何もかも知ったこっちゃないリアル・パンクだった。
と同時に再編後の終盤で鑑賞できる生理現象に忠実なアリの屋外でのオチャメな“お下劣行為”は
歳を重ねても変わらない奔放ぶりがよく表れているからお見逃しなく。

THE SLITS_SUB1

★映画『ザ・スリッツ:ヒア・トゥ・ビー・ハード』
2017年|イギリス|86分|カラー|G|原題 HERE TO BE HEARD: THE STORY OF THE SLITS
監督・脚本・撮影・編集:ウィリアム・E・バッジリー
© Here To Be Heard Limited 2017
【公式サイト】 THESLITS-L7.COM
【『ザ・スリッツ:ヒア・トゥ・ビー・ハード』 twitter/facebook】 @theslitsmovie
12月15日(土)より、新宿シネマカリテにて〈3週間限定〉公開。
ほか全国順次公開。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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