なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

WALK WITH THE PENGUIN『Charm』

WALK WITH THE PENGUIN『Charm』


90年代後半から多彩な活動を展開中のスティールパン奏者として知られる町田良夫が、
旧ユーゴスラビアのセルビアのCINCのメンバー(シンガーとギタリスト)と組んだバンドの
セカンド・アルバム。


いわゆるネオアコに、
ボサ・ノヴァをはじめとするブラジル音楽をブレンドしたようなサウンドである。
ファンクやダブ、ヒップホップもさりげなく溶け込んでいるように聞こえる。

HIGH LLAMASを思い出すが、
やっぱりスティールパンが入っているところがポイントだし、
歌詞は不掲載ながら英語、セルビア語、フランス語、日本語で歌うヴォーカルの語感もチャーミング。
語りの曲も含むとはいえあくまでもポップな佇まいで、
バッキング・ヴォーカルもいい味を出している。
穏やかながら、
今回「Regret」をカヴァーしたNEW ORDERの80年代後半以降のメロウな曲に近い
ささやかな緊張感で引き締まった作品である。

町田はスティールパンの他にヴォーカル、ギター、ターン・テーブル、トイ・ピアノ、
グロッケンシュピール、シンセサイザー、パーカッション、プログラミングも担当している。
半数近くの曲でドラムを叩いている山本達久をはじめとして、
8人のゲストがラップ、バンジョー、ハーモニカ、バリトン・ウクレレ、チェロなどで参加。
でもシンプルに作られていて愛らしいサウンドが瑞々しく光る。

まったりしているだけでなく躍動しているし、
どの曲もさりげなく疾走しているフレッシュな一枚。


★WALK WITH THE PENGUIN『Charm』(Amorfon amorfon017)CD
淡いポップ・アートな味のある画が描かれた丁寧な作りの12ページのブックレット封入の
約53分16曲入りの二つ折り紙ジャケット仕様。


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MADAME EDWARDA『Illuminé(イリュミーヌ)』

illumine_disc.jpg


“ダーク・ウェイヴ”の枠に収まらない表現を続けている、
東京のバンドのMADAME EDWARDAが1986年の1月にリリースした“第一期”の最終作のCDリイシュー。
現在もMADAME EDWARDAを率いるZIN(vo)のメール・インタヴューの回答も盛り込みながら、
ライナーを書かせてもらいました。


『ヒステリックな侯爵夫人』に続く実質的なセカンド・アルバムのヴォリュームで、
今回が初のリイシュー/初のCD化である。
当時インディーのロックに注目していてサブカル雑誌だった『宝島』で知られるJICC出版局が、
遠藤ミチロウの『ベトナム伝説』やP-MODELの『SCUBA』、
日本の6つのパンク・バンドを収めた『The PUNX』に続いてカセット・ブックで発売した。


曲の切れ目がわかりにくかったカセットとは違い、
曲ごとにトラック・ナンバーが表示されるCDのフォーマットで曲の区切りがはっきりわかる。
オリジナル・カセットよりも音の分離とパンチが増したCDながら、
本作の魅力の一つである骨董感が醸し出された生々しいアナログな音に仕上がっている。

音楽的にはそれまでのMADAME EDWARDAの流れをくむ“ゴシック”ポスト・パンクの曲も含みつつ、
チェンバー・ロック、プログレ、トラッド、クラシックの要素もたっぷり。
4人のメンバー全員が参加したいわゆるバンド形態にこだわらず、
ZINがキーボード類を演奏した小曲も含み、
架空のサウンドトラックとも言うべきコンセプチャルな仕上がりだ。


アートワークも丁寧な作りになっている。
オリジナルのカセット・ブックは、
B6サイズに近い大きさの三つ折り状のプラスチック製のケースに
カセット・テープ+ケースとほぼ同じサイズの68ページのブックが収納されたパッケージだった。
今回の二つ折り紙ジャケットのアルバム・カヴァーはそのケースの表裏のデザインに準じている。
24ページのブックレットは左開きながら元々のブックのデザインを尊重し、
右開きだったがゆえにオリジナル版のブックでは縦書きになっていた歌詞/詩の一部を横書きに組み替え、
画/コラージュも含めてのアート部分は漏れなく凝縮レイアウトされている。
オリジナルのブックから削除されたのは、
一部のバンド写真と巻末に載っていたメンバーの自己紹介コーナーとバンドのプロフィールぐらいである。


当時リリース数か月後に(一時)解散したためか評価が立ち切れてしまった印象もあるだけに、
今一度評価されてしかるべき作品だ。


★マダム・エドワルダ『イリュミーヌ』(WEIRD WEIRD-4)CD
約51分19曲入りの厚手の二つ折り紙ジャケット仕様。


ele-phant『ele-phant』(7"レコード)

ele-phant.jpg


元BUCKET-T、KING GOBLIN、ABNORMALSのメンバーから成る、
東京拠点のギターレス・トリオele-phantがリリースした2曲入りの7”レコード作品。
これがまた物理的にも重み十分の逸品である。

7分近い大作曲の「かくす」はポスト・パンク風の空気感ながら、
NEW MODEL ARMYを想起したパワフルに跳ねる熱いプリミティヴ・ビートで疾走しながら展開。
やはりBORISを思い出す切ないメロディ・ラインにも引き込まれるが、、
丁寧な繊細歌唱だけでなくベースとドラムの音にも宿る歌心の力が大きい。

もう片面の曲の「針を落として」もタイトルからして意味深だ。
凝った体裁の本作にふさわしく、
パッケージからレコードを取り出してターンテーブルに置いて針を落として聴くことが
一種の儀式と思い起こすような歌のようで、
二重三重の意味を引っ掛けた物語がゆっくりと静かに5分を越えて綴られる。
日本の抒情と情趣が、
これまたヴォーカルだけでなくベースとドラムでも描かれていく曲だ。

呼吸しているほど生々しい仕上がりも含めて音楽的に一皮剥けて突き抜けた感もあるが、
音楽と共振して呼吸しているような蓋付き木箱仕様の匠の手作りパッケージの存在感にも圧倒される。
こわれものであり、
頑丈でもある、
ele-phantそのものだ。

限定50枚でパッケージの製作にも手間や時間等をかけているだけに高めの値段設定だが、
それだけの価値のある前代未聞のトータル・アート作品。
やはりすべてで表現なのである。


★ele-phant『ele-phant』(HELLO FROM THE GUTTER HFTG-019)7”
https://hftg.thebase.in/


WIRE『Silver/Lead』

WIRE SILVER LEAD


70年代後半から活動を続ける英国のポスト・パンク・バンドのWIRE
アルバム・デビュー40年目の年に放った約1年ぶりの16作目。

リリースもコンスタントで、
特に2度目の再編後の2000年代に入ってからは精力的だ。
しかもブレ無し駄作無しなのだから恐れ入る。


ファーストの『Pink Flag』収録の「12XU」の流れと言えるWIRE流のハードコア・パンク・チューンが、
復活盤の10作目『Send』(2003年)以降のアルバムのアクセントになってきたが、
近作と同じく今回もそういう曲はない。
それどころかパンク・ロックっぽいアップ・テンポ・ナンバーすらほとんどない。

一度聴いたら耳から離れないロバート・グレイの“あのビート感”のドラムと
グラハム・ルイスのベースとコリン・ニューマンのエレクトリック・ギターは全曲に入っているし、
2010年加入のマシュー・シムズのエレクトリック・ギターも1曲以外の全曲に入っている。
一方で、
4曲でアコースティック・ギター、
1曲で12弦ギター、
1曲にラップ・スティールも使われている。
キーボードやシンセサイザーも効果的だ。
そのへんの楽器のバランスが近い前作『Nocturnal Koreans』の路線を深く推し進めたようにも聞こえる。

歌ものと言ってもいいかもしれない。
しかもやさしいまなざしの歌ものだ。
コリン・ニューマンがリード・ヴォーカルをとる曲は、
いくつになっても青い歌声でマイルドになってきているというのもあってどれもポップな佇まい。
3曲でリード・ヴォーカルをとっているグラハム・ルイスの苦み走ったヴォーカルは渋い。


いくらオリジナル・メンバー3人が還暦を越えようが、
ポスト・パンクの先駆バンドだけに哀愁なんて似合わない。
やっぱり冷めているし、
そんでもってへヴィ。
WIREにはふさわしくない言葉かもしれないが、
これは歌心と言ってもいいのではないか。
ポスト・パンクのオリジネイターならではのクールな歌心がさりげなくあふれ、
無機的な世の合理主義にこっそり抗うかのようだ。
心に染み入る佳作である。


★WIRE『Silver/Lead』(PINK FLAG PF 24)CD
デジパック仕様の約36分10曲入り。


BOSS HOG『Brood X』

BOSS HOG


JON SPENCER BLUES EXPLOSIONのフロントマンのジョン・スペンサー(g、vo)と
その奥さんのクリスティーナ・マルティネス(vo)が中心になった米国のバンドが、
フル・アルバムとしては17年ぶりにリリースした4作目。

日本でも盛り上がった90年代の状況が噓のように
JON SPENCER BLUES EXPLOSIONの方も地味な存在感になっているが、
ジョン・スペンサーはヴィジュアル的にスター性十分で
やってきた音楽が鮮烈だったから目立っていただけである。
彼自身はロッカー!というより地味なミュージシャン気質の強い人だし、
クリスティーナも超美人ながら野心めいたものをあまり感じさせない。
そんな悠々自適ぶりがイイ感じで表れている。

録音とミックスは、
FUCKED UPやKILLSも手掛けてきた人で、
GRAVITY Recordsから2001年にアルバムも出したSEA OF TOMBSを
マリオ(CLIKATAT IKATOWI~ROCKET FROM THE CRYPT~OFF!~EARTHLESS他)
とやっていたビル・スキッベ。
こういう人脈も、
アメリカのパンク/オルタナティヴ・ロックの地下シーンの流れとつながりが見て取れて興味深い。

“おしどり夫婦”バンドとも言えるが、
鍵盤楽器奏者を除いて95年のセカンド・フル・アルバム『Boss Hog』からメンバーは不変である。
リズム隊の2人のウェイトも高く、
5人で曲を作ったことが伝わってくるバンド感バッチリのヴァラエティに富むアルバムだ。

夫唱婦随ならぬ“婦唱夫随”バンドだけに、
“アイク&ティナ・ターナーのオルタナティヴ・ロック解釈路線”を推し進めている。
一回聞いたら忘れないオープニングのオチャメな変態フリーキー・ギターだけで勝負は決まった。
全体的に楽曲は多彩ながら“ガレージR&B”と呼びたくなるサウンドで、
80年代後半のPUSSY GALORE時代にジョン・スペンサーがカヴァーしていたBLACK FLAG
ちょい思い出すパンク・ロック・チューンも楽しい。
もちろん音はシンプルながら練っていて、
ギターの音数は少なく中低音域が協調された音作りでまったりとグルーヴし、
適度に腰が砕けたスリージー&クールな音の色気もバッチリだ。

デュエットのパートももちろん聴きどころだが、
さりげなく深みを増したクリスティーナのヴォーカルにもびっくりした。
いかにも歌が上手い人!の調子で歌い上げるわけではにないが、
“インディ・ロック女子”とは一線を画す本格派志向も顔を覗かせ、
特にラストのブルース・ナンバーが白眉である。

見直した。
というか惚れ直した。
お見事。


★BOSS HOG『Brood X』(IN THE RED ITR 311)CD
ジャケットの現物は↑の画像より黒色が強めでステッカーは外ビニールに貼られている。
LPヴァージョンのアルバム・カヴァーが内側にプリントされた二つ折りカードボード仕様の
約34分10曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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