なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

球体のポー『Mosaïque』

球体のポー『Mosaïque』


GOLDEN SYRUP LOVERSやソラネコなどで活動してきた木村キリコ(vo、g)が中心になり、
2016年初頭に結成された関西拠点のバンドの2年ぶりのセカンド・アルバム。

木村以外のメンバーは
野村予メ(ds~ソラネコ、ミックスナッツハウス、表現太郎バンド)
水田+夢(b~ラリーパパ&カーネギーママ)、
キタサトシュウ(kbd、シンセサイザー、アコーディオン)。
サブ・メンバーのソニック・ユースケ(g)が過半数に曲で演奏し、
曲によってチェロやピアノやコーラスでゲストが参加している。


音と曲を発酵させながらこってり煮込んだかのように1年以上かけて制作した
濃厚な“ロック・ポップ・ミュージック”である。
歌ものと言えるテクスチャーだが、
爽やかなアレンジにすれば大ヒットJ-POPになりそうなメロディの曲にもかかわらず、
ストレンジなサウンド・メイキングのコテコテの音がヴォーカルを侵食していく。

雑食サイケ感に覆われている。
アルバムで言えば『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』『The Beatles』あたりの
1967~1968年頃のBEATLESもチラリと頭をよぎった。
曲によってはオールド・ロックの狂おしいギター・ソロも炸裂させつつ、
70年代のパンク・ロックや80年代のシューゲイザーも忍び込んでいる。
コーラスも含めてT REX、MOTT THE HOOPLE、SILVERHEAD系の
グラム・ロックンロールの“電飾サウンド”に包まれているのもチャーム・ポイント。
有毒植物が描かれているようなジャケットのイメージそのものの“モザイク・サウンド”だ。

もちろんノスタルジックな作りとは一線を画す。
作詞と作曲も手掛けるリーダー木村は
ISISCONVERGEを聴いてきて最近はMASTODONを愛聴しているリスナーでもあり、
そういうプログレッシヴなへヴィ・ミュージックの進取の感覚も漏れ聞こえてくる。

クセの強い音の中で甘く繊細な歌声が屹立し、
言葉でもストーリーを綴る。
“僕”と“君”の人称をメインに描く普遍的(universal)な視点の歌詞も意味深だ。
曲名だけでもイメージが湧き上がってくるから以下に列記しておく。

「機械仕掛けのデンドロカナリア」「太陽が沈む前に」「気狂いリリィ」「バラとアボガド」
「楽園行きの昇降機」「人体モザイクと8人の賢者」「球体」「生命の樹」「スイッチ!」「光」
「月の代わりに現れたミラーボールそれは神様だった」

洋画の邦題みたいな曲名が象徴するように、
日本語の字幕付きで欧米のちょいキテレツな映画を観ているようなムズムズした居心地が味わえる。
曲間にインタールードみたいな音が挟み込まれて
アルバム全体が一つの流れを成しているポップな力作だ。


★球体のポー『Mosaïque』(COCOON CCN-001)CD
9つ折りの丁寧な作りの歌詞カードが封入された二つ折り紙ジャケット仕様の約58分11曲入り。


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FUGAZI、The MESSTHETICS ■2018.05.24 DOMMUNE

The MESSTHETICS『The MESSTHETICS』


5.24のDOMMUNEに出演します(19時~21時)。
http://www.dommune.com/
DVD『FUGAZI INSTRUMENT』『SALAD DAYS』のことをゲストとトークする予定。
The MESSTHETICSも日本ツアー直前に出演して他の方とやり取りする予定です。
よろしくお願いします。


LIZARD『Babylon Rocker』

LIZARD.jpg


70年代後半の“東京ロッカーズ”の中核として知られるバンドが80年に出したセカンド・アルバム。
厚手の二つ折り紙ジャケット仕様で新装リイシューされている。

ライナーを書かせてもらいました。


ジャケット内側の左右には、
オリジナルLPだとインナー・スリーヴに載っていた歌詞とクレジットを見やすい感じで印刷。
三つ折りのインサートが入っていて、
その表には表ジャケットとLP時代のインナー・スリーヴの表裏が極力手を加えずにプリントされ、
裏には曲目とライナーが印刷されている。

“Remastered by KOTARO KOJIMA at FLAIR”ともクレジットされている。
僕はLPしか持ってなかったが、
今回のCDは一つ一つの音がくっきりしていてタイト&シャープな仕上がりで、
LIZARD史上最もカラフルなポップ感も際立つ。
エノケンでお馴染みの「月下価千金」のカヴァーもハマっている。
その曲も含めて民俗音楽の要素のミックスもわかりやすい感じで伝わってきて、
数曲で施されているダブの音作りの部分もよりヴィヴィッド。
ディテールに気を使った色々な部分がLPより聞こえてくるのだ。

『To The Outside Of Everything - A Story Of UK Post Punk 1977 - 1981』
全世界からセレクトされていたなら、
本作の曲も入ってしかるべきポスト・パンク・アルバムである。


★リザード『バビロン・ロッカー』(SS Recordings SS-107A)CD
約39分11トラック入り。
オリジナルLPのもののデザインを再現した帯が付いている。


V.A.『To The Outside Of Everything - A Story Of UK Post Punk 1977 - 1981』

To The Outside Of Everything - A Story Of UK Post Punk 1977 - 1981』


英国拠点のアーティストのポスト・パンク・ナンバー111曲を
タイトルの時期の音源でまとめた5枚組CD。
もちろんポスト・パンク系バンドがほとんどで、
5枚ともCD収録制限時間とされている80分近く曲を詰め込み、
昨年12月に発売されたものである。

持っている音源が多いオムニバスCD等はあまり買わないようにしているが、
安価で売られていて単なるサンプラーではなく哲学を感じる作品だから購入してしまった。


収録アーティストは以下のとおりである。
https://www.cherryred.co.uk/product/to-the-outside-of-everything-a-story-of-uk-post-punk-1977-1981-deluxe-5cd-box-set/


こういうブツは「なんで~~~が入ってねーんだよ!」ってな調子で、
重箱の隅をつつくように文句たれながら聴くのもお楽しみだ。
諸事情で入れられなかったアーティストも多いと思われる。

さすがに立ち位置が微妙だからかPOLICEは入ってないが、
有名どころでは、
Siouxsie and The BANSHEES、XTC、SIMPLE MINDS、CURE、CABARET VOLTAIRE、BAUHAUS
A CERTAIN RATIO、YOUNG MARBLE GIANTS、DELTA 5が外されている。
アナーコ・パンク/デス・ロック系ではMOBとUK DECAYは入れてもいいと思った。
もちろんThe POP GROUPは必殺ナンバー「We Are All Prostitutes」で聴けるが、
関連バンドでGLAXO BABIESとMAXIMUM JOYはあってもRIP RIG & PANICとPIG BAGはない。

けど、よくぞまとめた!と言いたい。


英国のポスト・パンクというと80年代前半のイメージが強いし、
僕もそんな感じでハードコア・パンクやOi!パンク等と並走していたように捉えてもいる。
でも実際は70年代後半にポスト・パンクの大半の原型ができあがっていたことが、
1981年までの音源に留めた構成でよくわかる作りだ。

当時のリーダーのジョン・フォックスがポスト・パンクと自覚していた
ULTRAVOX!から始めるところに選者の認識の確かさが表れているが、
あえて彼ら随一の“パンク・ロック・ソング”の名曲「Young Savage」をセレクトしたところに、
制作者のこだわりが感じられる。
2曲目はMAGAZINEだが、
これまたNO FUN AT ALLがカヴァーしたのも納得の
彼ら随一の“パンク・ロック・ソング”の名曲「Shot By Both Sides」をセレクト。
ハード・ロックやプログレなどをオールド・ウェイヴと呼ぶ一方で
当時はニューウェイヴと呼ばれていたが
(一部のバンドは90年前後の米国勢よりも早くオルタナティヴ・ロックとも呼ばれていた)、
ジャンル名どおりにポスト・パンクがパンク・ロックの流れにあることを表しているのだ。
‘O’LEVEL、PUNISHMENT OF LUXURY、ADICTS、NOTSENSIBLESといった、
パンク・ロックとみなされることも多いバンドのポスト・パンク・チューンが聴けるのも象徴的である。

一方でいわゆるアグレッシヴな曲ではなく、
ポスト・パンクならではのアイデア重視で創意工夫がポイントの曲も多数選ばれている。
KILLING JOKEをダブっぽい「Turn To Red」で収めたのもその一例だ。
FLYING LIZARDSの「Summertime Blues」のカヴァーなんざ、
エディ・コクランやBLUE CHEERのヴァージョンと続けて聴くと腰砕けぶりに痺れる。
数年後に大ブレイクしたTHOMPSON TWINSが80年のデビュー・シングルで入っているのも渋い。
ニコが入っているのは、
80年代初頭は英国の若い子のポスト・パンクの音にバックから攻められながら歌っていたからだ。
THIS HEATの「Radio Prague」で締めるところも心憎い。

シングルの曲が大半を占める選曲もポイントで、
シングルしか出してないバンドも少なくない。
かなり“重箱の隅”にまで手が届いていて無名のバンドも多く、
主要バンドの大半をフォローしつつマニアックでもある仕上がりだが、
それが当時のポスト・パンクの真実でもある。

ブックレットは収録された曲を収めた作品のジャケットとアーティストごとの丁寧な解説、
長文ライナー、選抜されたアーティスト写真、ライヴのフライヤーの写真で構成され、
とても丁寧な作りだ。
そのページをめくりながらこうやってまとめて聴くと再発見も多々ある。

僕がロックにのめりこんだのはこのへんのバンドたちがきっかけだから言いたいことだらけで
ポスト・パンクの重要性も含めて最初はここで書いてみたが、
アレコレ思いが先走って途中まで書いてえらく長くなってしまったから、
今回のブログでは削除。
またの機会に。


★V.A.『To The Outside Of Everything - A Story Of UK Post Punk 1977 - 1981』(CHERRY RED CRCDBOX44)5CD
ハードカヴァーのブック仕様で48ページのブックレットが綴じ込まれている。

HOT SNAKES『Jericho Sirens』

HOT SNAKES『Jericho Sirens』


ROCKET FROM THE CRYPTのフロントマンとして知られるジョン・レイス(g)を含む、
南カリフォルニアのサンディエゴ出身のオルタナティヴ・ロック系“パンク”バンドによる
約14年ぶりの4作目のオリジナル・アルバム。

ジョンとはPITCHFORKやDRIVE LIKE JEHUでも
活動を共にしてきたリック・フロバーグ(vo、g)と、
ガー・ウッド(b)といった90年代末からの不変の3人の他に、
同じくオリジナル・メンバーのジェイソン・カーコウニス(ds)と、
元CLIKATAT IKATOWIで現EARTHLESS/OFF!/ROCKET FROM THE CRYPTの
マリオ・ルバルカバ(ds)が今回のメンバーだ。
曲によってドラマーを分けてレコーディングしたようである。


ここいらの人たちのやることにハズレはないわけで、
このアルバムもまさに!である。
真似しようとしても決して真似できない。
この人たちにしかできないサウンドは健在だし、
しかも現在進行形の響きで鳴っている。

ホット&クールな“オルタナティヴ”ロックンロール全開である。
哀愁ヘヴィ・ギター・ロックあり、
ちょいブルースの曲あり、
DISCHARGE直下型”のハードコア・パンク・チューンあり、
BLACK FLAGがさらに炸裂したようなパンク・ロック・ナンバーあり、
サーフ・ロックから変質していく曲あり。
多彩ながらも陰鬱な軋みと微妙に屈折したリズム、ヒリヒリした金属質のサウンドに貫かれている。

インテリジェンスに富む人たちだと思うが、
頭デッカチなんかあっちいけ!とばかりのたいへんフィジカルなプレイだ。
どこかイカれた調子で、
ハートにシールドを直でぶっこんで出しているみたいである。
いわゆる激情系ハードコアやカオティック・ハードコアともリンクするサウンドだが、
彼らの心臓のところでウソのないパンク・ロックがしっかり鳴っているから胸に響く。

とにかく音がハジけている。
ダークな色合いだとしても躍動している。
奥行きのあるレコーディングの仕上がりも実にパーフェクトである。
トータル30分ちょいという尺も潔い。
これぞまさにグレイト。


★HOT SNAKES『Jericho Sirens』(SUB POP SP 1224)CD
二つ折り紙ジャケット仕様の約30分10曲入り。
SUB POPのロゴの“透かし”で埋め尽くされた紙袋にCDが収納されている体裁も粋だ。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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