なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

MARMOZETS『Knowing What You Know Now』

MARMOZETS『Knowing What You Know Now』


女性ヴォーカルを擁した1組の“きょうだい”と1組の兄弟から成る、
英国のオルタナティヴ・ロック系バンドによる約3年ぶりのセカンド。

ヴォーカル、ギター2本、ベース、ドラムという5人編成で、
曲によっては男性のバッキング・ヴォーカルも入り、
ところによってはプログラミングも使っているようだ。
オルタナティヴ・ロックに分類されそうだが、
しいて言えば90年代のではない2010年代のオルタナティヴ・ロックである。

ポップでヘヴィな雑種サウンドが曲によって様々な表情を見せていく。
本作をプロデュースしているギル・ノートンがかつて手掛けたPIXIESとFOO FIGHTERSに、
QUEENS OF THE STONE AGEとMUSEとRADIOHEADをミックスし、
さらにたっぷりGARBAGEをブレンドしたかのようだ。
シンプルなエイト・ビートでドライヴするパートも多く、
スピード感が絶えないドラマーのリズム・センスも良い。

女性シンガーは時に妖女の表情も覗かせる魔性のヴォーカルだが、
エキセントリックに見えて
しっかり歌える。
しっとり濡れた声で静かに歌い上げる曲もしんみり聴かせてくれるのだ。

今後も楽しみな一枚。


★マーモゼッツ『ノウイング・ホワット・ユー・ノウ・ナウ』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-17973)CD
日本盤は1曲追加の計約48分13曲入りで、
本編の歌詞とその和訳が載った24ページのブックレットも封入。


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The SMITHS『The Queen Is Dead』[3CD + DVDリイシュー]

The SMITHS『The Queen Is Dead』


86年のオリジナル・サード・アルバムの新装リイシュー盤。
ここでは3CD + DVDの仕様のものを紹介する。

当人らはそうでもないようだが、
多くのThe SMITHSファンと同じく僕も一番好きなアルバムだ。
1年後に分裂するのもうなずけるほどメンバー4人がギリギリのところで成り立っている。
うなりを上げて加速するアルバム・タイトル曲はもちろんのことまったりした曲でも張りつめっぱなしで、
歌詞を分析するのもいいが、
美しいメロディが湧き上がるサウンドの軋みから軋轢も聞こえてくるのだ。


ディスク1は『The Queen Is Dead』の本編の10曲の2017年リマスタリング版。
モリッシー(vo)の「Satellite Of Love」『Your Arsenal』の2014年のリイシュー盤も手掛けた
“D2 Mastering”の2人のリマスタリングだから間違いない!とは思っていたが、
期待をはるかに上回る仕上がりでビックリした。
初めてCDで聴いたが、
LPからはほとんど聞こえてこなかった音がガンガン迫ってきて身震いする。
ビートは生々しく脈動し、
ギターとべースの弦の動きやドラム・セットの位置も見えてくるほどだ。
ヴォーカルの色艶も光り、
ほんと目が覚める。

ディスク2は、
『The Queen Is Dead』の曲の別ヴァージョンやデモ等で構成した13曲入り。
9曲目までは曲順ほぼそのままで「Vicar In A Tutu」を抜いた別の音源で
『The Queen Is Dead』を“再現”している
「The Queen Is Dead (Full Version)」はオープニングのSE無しながら1分近く長い7分越えヴァージョン。
9曲目までの他の曲のほとんどはデモながら音質良好で、
ホーンを入れるなど色々と試して曲が長くなっている曲もあり、
アルバムとして完成させるまでいい意味でいかに曲を研ぎ澄ましていったかがよくわかる。
10~13曲目は当時のシングルのB面曲だ。

ディスク3は、
86年8月の米国ボストンでのライヴを収めた13曲入り。
リリースまもない『The Queen Is Dead』の曲はもちろんのこと、
83年のデビュー・シングル「Hand In Glove」まで披露し、
安定したパフォーマンスを聴かせてくれる。

そしてDVDには、
『The Queen Is Dead』の“96kHz / 24-bit PCM stereo”版(オーディオ・トラックのみ)と、
3曲のミュージック・ヴィデオを収めている(日本製のDVDプレイヤー等で再生可能)。
前者は同じマスタリングと思しきディスク1以上に
レコーディング・スタジオで聴いているかの如きむ鮮やかでパーカッシヴなサウンドに腰を抜かす。
より芯が強くて官能的な響きになっているのだ。
ほとんどが曲/音で占めるDVDは不要と思われるかもしれないが、
『The Queen Is Dead』を愛聴してきている方は迷わずこのDVD付を購入することをオススメしたい。
デジタル/DVDならではの音の生命力の“再生”も実感できる。
かたやミュージック・ヴィデオの方はデレク・ジャーマンが手がけた映像で、
「The Queen Is Dead」と「There Is A Light That Never Goes Out 」に加え、
アルバム本編未収録の85年のシングル曲「Panic」も収録。
いずれもThe SMITHSのメンバーは登場しない映像作品だが、
“口パク”やられるよりこういうのの方が好きだしバンドに合っている。


ディスク1+ディスク2、ディスク3、DVDが、各々別デザインの二つ折り紙ジャケットに収納され、
The SMITHらしくシンプルなデザインで歌詞が載った12ページのブックレット封入の、
小箱ボックス仕様だ。


★The SMITHS『The Queen Is Dead』(Warner Bros.  0190295783372)3CD + DVD


MADAME EDWARDA『WEIRD TAILS』

MADAME EDWARDA『WEIRD TAILS』


東京拠点のダーク・ウェイヴ/ゴシック・ロック系ポスト・パンク・バンド、
MADAME EDWARDAによる『Reve Desir』(2015年)以来の新録アルバム。
ライナーを書かせてもらいました。


1981年に結成され、
1986年の8月に“第一期MADAME EDWARDA”が完全に解散するも、
2009年に“第二期MADAME EDWARDA”を唯一のオリジナル・メンバーのZIN(vo)が中心になって始め、
2016年の1月から現在の4人のメンバーでコンスタントに活動している。


今回の音源を初めて通して聴いた後、
活動歴の長いバンドが2年のインターヴァルでこれだけの曲を創り上げてアルバムとして仕上げたことに、
僕は少なからず感動を覚えた。
色々聴きすぎているだけに新作でそういう気持ちになることはもうあまりないが、
これは宣伝文句に使われている“渾身”という言葉が偽り無しの力作だ。

全曲フック十分で楽曲クオリティが高いから曲単位で楽しむも良し、
ストーリー性のあるドラマチックなアルバムの流れをの中で曲のつながり楽しむも良し。
グレイトな映画のすべてがセリフだけでなく映像美などでも持っていくように、
個々のパートの輝きとちょっとした“仕掛け”も見事。
歌詞は日本語中心ながら他の作品以上に英語やフランス語などがナチュラル・ブレンドされ、
それぞれの語感やリズムや響きも音楽のひとつとして音に溶け込んでいる。
いわゆるロマンチックな感覚が醸し出されていることは言わずもがな、
ヨーロッパのロマン主義を2017年の日本で体現しているかのような空気感がたまらない。

中低音が際立つバランスで生のアナログ感に覆われた音の仕上がり生々しい。
もちろんステレオ・ミックスだが、
いい意味でモノラルのような音像がヘヴィであり、
リリカルな曲でも威力を発揮している。
80年代から変わらず一つ一つの言葉をしっかりと発声するヴォーカルの歌いっぷりも良く、
楽器もパワフルに歌っている。

制作の内情はわからないが、
表現活動を何年も続けてきたバンドが体験する生みの苦しみを感じさせないほどパワフルだ。
いや我が道を何年を進んできた者たちだからこそ突き抜けるべく、
レイドバックとは百万光年かけ離れたサウンドを放射。
トレンドもノスタルジーもへったくれもない。
これがMADAME EDWARDAだ!という揺るぎ無き自信に満ち溢れている。

プレイ・ラウド。


★マダム・エドワルダ『ウィアード・テイルズ』(WEIRD TAIL WEIRD-6)CD
歌詞やライナーもアーティスティックなデザインの中に溶け込んだ12ページのブックレット封入の
約53分17曲入り。



なお、
■日時:2017年12月12日(火) 集合 20:30 START 21:00
■場所:タワーレコード渋谷店4F イベントスペース
で発売記念イベントが行われます。
こちらの方も、よろしくお願いします。
http://towershibuya.jp/2017/11/21/110541


つしまげる『TSUSHIMAGERU』

つしまげる


つしまみれのまり(vo、g)とやよい(b、コーラス、キーボード)が、
つしまみれのライヴ・サポート・メンバーを務めたしげる(ds~元・嘘つきバービー)と
組んだバンドの約22分7曲入りのデビューCD。
こちらも中村宗一郎のプロデュースだ。

つしまみれに近いが、
しげるがオリジナル曲のすべての曲作りに関わり、
作詞に参加している。

つしまみれが、
もっとわかりやく、
もっとダンサブルに、
原始的にミニマルになったような調子だ。
曲によっては部分的にエクストリーム・メタルちっくな要素もちりばめられ、
遊び心が躍っている。

歌い上げる曲はなく、
トーキング&語りをちりばめてヴォーカルもリラックスしている。
メンバーのしげるのことを歌っているのかどうか定かではないが、
オリジナル曲は“しげる”がテーマで半分ナンセンスである。
つしまげるのデビュー・ライヴの3曲も収め、
そのうち2曲はつしまみれのカヴァーだ
(2013年の『つしまみれ』に収録の「嘘そうそう」と
2007年の『脳みそショートケーキ』のタイトル曲)。

つしまみれのイメージに近いのは、
もしかしたらこちらかもしれない。
つしまみれも楽しくやっていると思うが、
まりとやよいが、さらにハメを外してやっていることが伝わってくる。
つしまみれ“本体”が、
ふざけているように見えてメチャメチャ真面目に取り組んでいて、
さりげなくシリアスでヘヴィで苦闘と苦悩の末に毎回アルバムを生み出していることも、
この“別動隊”のCDを聴くとあらためてわかる。
深読みすれば、ああ見えて、つしまみれには背負っているものが少なくないんだなと。
そういう点でも彼女たちにとっていい意味で息抜きのリラックス・タイムにもなっていて、
リスナーも一緒に楽しめる作品になっている。

別ユニット的なポジションと思われるが、
もちろんちゃんとレコーディングされていて全パートが生き生きと響いているCDである。
音の最終的な仕上がりに失敗していて死んだ音になっている作品とよく出会うだけに、
そういう基本的なところは大切なのだ。


★つしまげる『TSUSHIMAGERU』(MOJOR DQC-1583)CD
ジャケット兼用の三つ折り歌詞カード封入。


つしまみれ『NEW』

つしまみれ new


千葉大学のサークル内で結成されて東京拠点にコンスタントな活動を続ける、
女性トリオ・バンドが『人間放棄』以来2年ぶりにリリースした13作目のアルバム。

1999年の結成してからずっと不変だったメンバーに異変が起こった。
今年2月10日のライヴでみずえ(ds)が脱退したのである。
それでもつしまみれは、
まいこ(ds、コーラス、パーカッション)をサポート・メンバーに迎えて4月に本作を録音。
以前から精力的にやってきた海外ツアーも5月以降に続け、
スイスではASIAN DUB FOUNDATIONのオープニング・アクトを務めて歓待されたという。
7月からまいこが正式メンバーとなり、
さらなる日本/海外ツアーを経て本作のリリースに至ったのである。


売れっ子・中村宗一郎(元WHITE HEAVEN)が、
つしまみれの近作でずっと担当している録音とミックスとマスタリングに留まらず、
プロデュースも手掛けているのがポイントだ。
甘味だけでなく辛みの効いた音作りのアイデアや録音技法も施してもらったのかは謎だが、
音のダシやトッピングやスパイスをさりげなくプラスしてデコレーションしたと思われる。
ポップ感とシャープ感、なめらかさバッチリの音が歌を引き立て、
彼女たちの思いがしっかり伝わってくるビシッ!とした仕上がりだ。

まり(vo、g)が大半の歌詞を一人で書き、
やよい(b、コーラス、キーボード)とともに作曲して仕上げた11曲。
居心地がいいから自己保身の温床になる特定のスタイルに逃げることはない。
けどCDを鳴らして2秒でつしまみれ!と断言できる空気感が満々である。
ポップ寄りのポスト・パンク/ニューウェイヴ・ロックが基本だろうが、
明るく見えて“影”も“陰”もある。
へんてこポップともドリーム・ポップとも言いかねるサウンドで、
四つ打ちに近いリズムも導入しているが、
スカとハードコア・パンクが混ざったような曲やパンク・ロック・チューンもやっている。
あくまでも人力プリミティヴなのだ。

息苦しいほど潔癖症の社会そのままで滅菌された響きと言葉のJ-POPは気持ち悪い。
パンクでもそうだが体裁だけ整えて無味無臭なやつは人間が見えてこない。
つしまみれは新作『NEW』も、おかしい。
曲調がヘンテコというより人間が現れるサウンドそのものがポップでもstrange & weirdなのである。
妖しいメロウな匂いに包まれている。
女性からしか出てこない発想と演奏と言葉でスウィートなパンチを食わらす。
ガチガチのオトコ的な頭デッカチ教条主義を、くすぐりとろけ倒す。

ローファイやズッコケを売りにすることはなく、
決めるべきところはビシッ!と決めているから引き締まっている。
キワモノに見えてやっぱり実はシリアスだ。
ドラマチックな曲の「Crazy for you」に至っては感動的ですらある。

わざとらしいパンクな歌い方と真逆のまっすぐな歌唱は正直な気持ちそのままだ。
あえてJ-POPロックと呼びたくなるヴォーカルだし、
それこそ高校生ものの映画の主題歌にでも使っていただきたいほどポピュラリティが高い。
それこそNHKの老舗番組『みんなのうた』で歌われていても不思議はない曲もいっぱいだ。
トーキング・ヴォーカルもありで炸裂する。
小悪魔の佇まいで凛とした歌心を震わせ、
きらきら光る甘美な毒を漂わせている。
まろやかな英国トラッドや60年代のガール・ポップの風味もチラリだし、
ホメすぎ承知でやっぱりケイト・ブッシュがポップにパンクしたような歌い方なのだ。


歌詞は「Girl’s Talk」という曲につしまみれの意識が凝縮されている。
他の曲もこれまでの曲以上にリアルな歌詞が目立ち、
覚悟を決めてつしまみれの活動を決行していることが滲み出ている。

実際問題、真面目じゃなきゃこれだけコンスタントな活動は続けられない。
少年ナイフは別格の存在だが、
リリースとライヴをコンスタントに続けている女性オンリーのバンドは世界的にも激レアだ。
続けることは肉体的にも精神的にも女性は男性とは違う大変さがあると想像できる。
何に関しても言えることで何が一番大切かって続けることだし、
つしまみれみたいにずっと動いて新曲をと新作を創り続けて人前に出ているバンドには
僕も特にインスパイアされる。

落ち着くことなく、
なんかおもしろいことをしでかしてやる!ってな気持ちを忘れていない。
どこまでいってもポップなのに実は軽薄じゃなく地に足が着いている。
そんでもって何気にかなりデリケイト。
トレンド関係なく我が道を行くセンスゆえに色々と“ハズしている”と感じることも多いが、
そこもまた憎めない。
いつまでたってもいい意味で洗練されずオシャレじゃない。
けどそんなことはロックと対極のものだ。

彼女たちのイメージから程遠い言葉だし死語かもしれないが、
つしまみれには根性がある。
筋金入りのステキなアルバムだ。


★つしまみれ『NEW』(Mojor DQC-1582)CD
16ページのブックレット封入の約36分11曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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