FERRET NOISE『I looked down, there was a town(見下ろすと、街)』
2023-03-19

つしまみれのベーシストとして知られる奇才、
やよいのプロジェクトによる3年ぶりのセカンド・アルバム。
彼女の一昨日の誕生日にリリースされ、邦題は『見下ろすと、街』である。
BUTTHOLE SURFERSのベーシストを2000年前後に務めたネイサン・カルフォーンが、
前作『I Looked Up, There Was a Moon』に続き2曲でギターを弾いた他は、
ヴォーカルも含めてすべてのパートを自分で“プレイ”。
もちろん作詞作曲もやよいで、録音もやよい。
ミックスとマスタリングは中村宗一郎が手掛けている。
彼女が生まれた頃のニュー・ウェイヴをアップデートさせたかようなアルバムだ。
でもKILL ROCK STARSあたりの作品と違っていい意味でロック感が薄く、
オルタナティヴ・ロック以降の米国のいわゆるインディ・ロックと違っていい感じで内向的、
でも開かれている音楽。
“インディ・トレンド”みたいなものとも関係なく我流である。
80年前後のROUGH TRADE周辺のシングルやアルバムを思い出すニュアンスだ。
RAINCOATSやGIRLS AT OUR BESTも想起するが、
完全に後追いならではの自由な作りで、
バンド形態ではないからこそと言える音と声の重ねの面白さがいっぱい。
クールかつハードボイルド、
なのに感情たくさんである。
何の楽器等を使っているのかわからないシンプルなサウンド。
打ち込みっぽいビートやシンセサイザーみたいな音も聞こえてくる。
“ベッドルーム・ポップ”と書くとお手軽なモノと思われてしまうかもしれないが、
ローファイのスタイルに陥らず、
ひとつひとつの音を、ていねいに、ていねいに愛でた、手作り感覚にあふれている。
まさにDIYミュージック、
だからたいへん生々しい。
どの曲からも“やよい自身”が聞こえてくる。
シリアスなムードでダークなユーモアも滲む。
ほぼすべて歌ものと言ってもいいが、
反復基調で意外とゴス・テイストが漂う一方でディスコちっくな曲もチラホラ。
まさに“あの時代のニュー・ウェイヴ”だ。
どの曲のソングライティングもアレンジも素敵だが、
3月生まれの魚座の自分自身の切実な思いを綴っているような「りんごは落ちる」が特に名曲。
少年ナイフの暗い曲も想起した。
高い声域が中心のヴォーカルは“様々なカラーを見せてくれる映画”みたいだ。
やさしく凛々しく艶っぽく、トーキング・スタイルもありで多彩だが、
今回もポスト・パンク直系の突き放したような感覚がたまらない。
完成度を目指すというよりはあくまでも自分らしく、
だからとてもリアルに響く。
不可思議なジャケットもピッタリだ。
またまたオススメ盤。
★FERRET NOISE『I looked down, there was a town』(MOJOR FN-002)CD
二つ折り紙ジャケット仕様の約34分9曲入り。
英訳も併載してホチキスで綴じたハンドメイド20ページ歌詞本も付いている。
https://ferretnoise.thebase.in/
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Dave Gahan and Soulsavers『Imposter』
2021-11-23

英国のDEPECHE MODEのフロントマン、
デイヴ・ガーンのプロジェクトによる約6年ぶりの4作目。
カヴァーを12曲収めている。
選曲がかなり渋い。
●The Dark End of the Street(ジェイムズ・カー)
●Strange Religion(マーク・ラネガン<元スクリーミング・トゥリーズ>)
●Lilac Wine(ジェイムス・シェルトン)
●I Held My Baby Last Night(エルモア・ジェイムス)
●A Man Needs a Maid (ニール・ヤング)
●Metal Heart (キャット・パワー)
●Shut Me Down (ローランド・S.ハワード<元バースデイ・パーティ>)
●Where My Love Lies Asleep (ジーン・クラーク<元ザ・バーズ>)
●Smile(チャーリー・チャップリン)
●The Desperate Kingdom of Love (P.J. ハーヴェイ)
●Not Dark Yet(ボブ・ディラン)
●Always On My Mind (エルヴィス・プレスリー)
スタンダード・ナンバーと呼ばれるようなカヴァーの定番曲はほとんどないし、
1990~2000年代発表の曲が半数近くなのも高得点で、
ノスタルジーに浸ることなく進む意識が表れている。
埋もれている名曲を取り上げている感じだが、
歌詞も考慮したセレクションと曲の流れにしてあるようだ。
エレポップではなくベーシックな編成のロック・バンド演奏をバックにしたヴォーカル・アルバムだが、
90年代以降のニック・ケイヴ&バッド・シーズをもっと素直にしたようで、
全曲ゆったりしたバラードのアレンジである。
もちろんデイヴはポーズ付けないまっすぐなストロング・スタイルのヴォーカルで勝負。
シンプルな曲を優雅な歌唱でスケール大きくドラマチックに聴かせる。
ほとんど小細工無しのストレートな音の仕上がりだが、
「I Held My Baby Last Night」はセピア色の音の質感でブルース色アップ。
さりげなく入るコーラスも特筆したい。
凛とした佇まいに惹かれる一枚。
★デイヴ・ガーン&ソウルセイヴァーズ『インポスター』(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル SICP6418)CD
メンバー写真とクレジットで構成した24ページのオリジナル・ブックレットに加え、
日本盤は歌詞/和訳などが載った20ページのブックレットも封入。
11月24日(水)発売。
PRIMAL SCREAM『Demodelica』
2021-10-27

1991年に出したサード・アルバム『Screamadelica』のデモ・トラックなどを収めたCD。
収録されているデモのほとんどをアンドリュー・イネス(g他)がプロデュースし、
一部の曲はバンドがプロデュースしている。
1990年の初の日本ツアーを渋谷クアトロで観てTシャツを買ったほど
僕はPRIMAL SCREAMのファンだった。
MC5やSTOOGESをUKニューウェイヴっぽく仕上げた作りの、
当時の最新作のセカンド・アルバム『Primal Scream』(1989年)を気に入っていたのも大きい。
分岐点になったアシッドなシングルの「Loaded」(1990年)も、
『Where The Pyramid Meets The Eye (A Tribute To Roky Erickson)』(1990年)で先行公開した
13TH FLOOR ELEVATORSの「Slip Inside This House」のカヴァーも大好きだ。
けど『Screamadelica』で一気に離れた人間でもある。
当時エクストリーム・メタルにのめりこみ、
灰野敬二をはじめとする日本のサイケデリック勢などにハマっていったというのもあったが、
よりハードなロックを求めていたから『Screamadelica』は受け付けなかった。
今あらためて聴くと、
MC5の『High Time』やSTOOGES『Fun House』あたりのグルーヴを感じなくもないから、
セカンドからの流れも多少くんでいたと言える。
でも『Demodelica』の方が好きだ。
試行錯誤の感覚が伝わってきて意外と生々しいから。
CDタイトルもデモ云々となっているが、
一般的なデモ・トラックとは一線を画してしっかり仕上げられている。
一つ一つどういう状態の音源なのかは、
ボビー・ギレスピー(vo他)とアンドリュー・イネスがライナー中で詳しく語っている。
『Screamadelica』はアシッド・ハウス云々という観点でも語られてきたが、
『Demodelica』はシンプルなサウンドの曲あり、
よりイケイケのサウンドの曲あり。
これがまた疲れた今の自分にとても気持ちいい。
サイケデリックとR&Bが溶け込んだ音に、
ヘタレた甘ったるいヴォーカルもハマっているのであった。
サウンドと共振した脳天気な歌詞も今ならOK。
こうありたい……と切に思う。
ブックレットの内容もバッチリの好リイシュー盤。
★プライマル・スクリーム『デモデリカ』(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル SICP 6403)CD
ボビー・ギレスピーとアンドリュー・イネスによる曲解説を盛り込んだ、
ジョン・サヴェージによる長文ライナーが載った16ページのブックレット封入。
日本盤はその和訳と『Screamadelica』の歌詞/和訳が28ページのブックレットも封入し、
2つの音源を追加した計約69分18曲入り。
映画『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』
2021-07-06

SEX PISTOLS脱退まもなく始めたPUBLIC IMAGE LTD.(PiL)の歴史を追いながら、
ジョン・ライドン(≒ジョニー・ロットン)の半生を丁寧に綴ったドキュメンタリー。
新規取材中心の本人と関係者の証言や過去映像と写真で進めるオーソドックスな作りで、
容赦のない発言もリアリティを高めていて“身内”などの狭いサークルを越えてアピールする。
SEX PISTOLSは大好きでもジョン自身やPiLをあまり知らない方にもわかりやすく、
真正面からPiLとジョン・ライドン(vo他)に向き合った佳作である。
字幕監修を担当させてもらったからいち早く何度も観させてもらい、
オフィシャル・サイトのイントロダクションだけでなく
“どこか”で使われる本作関連の長めの原稿も書かせてもらった。
その文章とあまりダブらないようにネタバレ少なく、
映画のポイントを紹介させていただく。

1978年1月の米国ツアー直後に抜けたSEX PISTOLSでの様々な経験を踏まえ、
PiLを始めるまでに至ったジョンの意識がまず描かれる。
会社を意味する“~LTD.”という名が象徴する初期PiLの特異な姿勢も示す。
そこからPilのヒストリーが綴られていくのだが、
歌詞も含めて早すぎた究極の拷問ドゥーム・チューンの「Theme」で幕を開けるファーストをはじめ、
未知の道を進んでいったがゆえの波乱万丈のリアル・ストーリーにぐいぐい引き込まれていく。
そうした中でPilの中核のジョンのヒストリーと“人間ぶり”が、
幼少期からじっくりと炙り出されていく。
率直なジョンの発言が実にイイ。
オープニング部分でのジョンの言葉の連打に、
しぶとく本音で勝負するジョンの本質の“結論”が表れている。
権力に対する理想と現実のバランス感に長けた発言も見落とさないでいただきたい。
SEX PISTOLS時代から現在まで右も左も関係ないジョンの
ヒューマニズムとリアリズムのブレンドが見て取れる。
ヒッピーを嫌う理由も伝わってくる。

もちろんジョン本人の発言は大切だし媚びることなく正直だからこそ物議を醸し続ける人なわけだが、
第三者の発言で炙り出されることも多いとわかる見事な編集も特筆したい。
程良くスピード感があってテンポもいいからスイスイ映画に入っていける。
ディテールにもさりげなくこだわっている。
たとえば初代ギタリストのキース・レヴィンがPiLが去る間際にステージで着ていたTシャツの言葉も、
ここでは書けないほど痛烈だから注意して観ていただきたい。
多数登場するとはいえ証言する関係者が厳選され、
冷静にしっかりPilとジョンに対峙したクールな発言で、
ホメるだけでなく馴れ合いを排しているから“人間模様”のリアリティを高めている。
ほとんどが登場している歴代PiLメンバーたちの秘話にやはり痺れる。
もちろんジョンも含めてだが、
特にジャー・ウォブル(b)、キース・レヴィン(g)、マーティン・アトキンス(ds)という
初期メンバーの現在のルックスの違いや変貌は“その後の人生”もリアルに伝えている。

The POP GROUPのブルース・スミス(ds~元SLITS、RIP RIG + PANIC)と、
1977年のセカンド『Music For Pleasure』の頃DAMNEDのメンバーだったルー・エドモンズ(g他)らの、
現メンバーの話も興味深い。
他界しているから新規インタヴューはないが、
MAGAZINEとSiouxsie and the BANSHEESでも活躍したジョン・マッギオーク(g)のことにも
“悲劇”含めて時間を割いているのも嬉しい。
以上の3人が揃っていたアルバムは1987年の6作目『Happy?』だけだが、
ジョンも含めてパンク~ポスト・パンクの歴史の流れが集約されているから、
80年代後半以降のPilを彩るメンバー構成にはちょっとした感動を覚える。
PiL加入前にジョン・マッギオークが提示した演奏は
その後のニュー・ウェイヴのギター・サウンドに影響が大きかったが、
マッギオークがPiLをコピーしていたことを知るに、
オリジナル・ギタリストのキース・レヴィンがポスト・パンクのデリケイトなギターのルーツともわかる。

時間軸を少し戻すと5作目の『Album』(1986年)は、
90年代以降のポスト・メタル・サウンドの質感を導いたと言っても過言ではない。
メンバーになったわけではないが、
『Album』にプロデュースと作曲とベース演奏で貢献したビル・ラズウェル(談話のみ)と、
そのアルバムでドラムを叩いた元CREAMのジンジャー・ベイカーも登場する。
ドン・レッツやヴィヴィアン・ゴールドマン、マネージャーも生の声を伝えているが、
サーストン・ムーア(SONIC YOUTH)、フリー(RED HOT CHILI PEPPERS)、
アダム・ホロヴィッツ(BEASTIE BOYS)、MOBYが
“外部ミュージシャン代表”として発言。
米国のポスト・パンク/オルタナティヴ・ロックへのPiLの影響を物語るが、
今回もツボを突くトークが冴えるサーストンはもちろんのこと、
フリーが“決断”によってはロックの歴史が違ったものになっていた衝撃!の証言もしている。

日本関連の映像が随所で使われているところも嬉しい。
特にライヴ盤『Live In Tokyo』にもなった1983年の初の日本ツアーは
PiLとジョンの活動のターニング・ポイントになっただけに時間を割き、
ポール・マッカートニーを引用したところにも当時の外タレ来日事情が表れていて面白い。
新規インタヴューはもちろん鮮明な映像だが、
画質イマイチでもポイントになる昔のライヴやインタヴュー映像をガンガン織り込んだことで
生々しい仕上がりに一役買っている。
ファッション等の違いから察するにジョンに対しては数回取材撮影を行なったと思われるが、
幼少期も含めてジョンと家族との関係性が本作の“裏の肝”である。
ジョンとかなり年上の“妻”のノラの娘がSLITSのアリ・アップだったことなど、
色々と運命を感じさせる。
とにかく、気難しいイメージのジョンの人間味が滲み出している映画なのだ。

1978年のデビュー・シングル「Public Image」をはじめとして
書いた時のジョンの心情が表れている曲が多いから、
日本語字幕で表示される歌詞の和訳も映画の流れをとらえるのにありがたい。
数曲ピックアップして歌詞のモチーフが説明されるのもジョンの意識理解の手助けになる。
ほんと見どころ満載。
この映画で1万字でも2万字でも楽勝で書ける。
稀代の皮肉屋ほど、いや、だからこそ純な人間ということもよくわかる。
観たらジョン・ライドンとPiLをますます好きになり、
過去のアルバムやシングルを引っ張り出して聴き直したくなること間違いナシだ。

(c) PiL Official Ltd (photography_ Tomohiro Noritsune left to right_ Lu Edmonds John Lydon Scott Firth Bruce Smith)
<現メンバー>
これまたエンドロールが始まっても席を立たないように。
全体の流れから外れそうで本編から外されたとも想像できる対面シーンがあり、
ワシントンDCハードコア・シーンの某“親玉”にジョンが話しかけた言葉にも爆笑だ。
あ、そうそう、インタヴュー中にジョンが飲んでいるビールの銘柄にも注目。
これは2017年の映画だから“先見の明”があった。
さすがである。

★映画『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』
2017年/アメリカ/英語/105分/カラー・モノクロ/5.1ch
監督:タバート・フィーラー
出演:ジョン・ライドン/ジャー・ウォブル/キース・レヴィン/ジム・ウォーカー/
マーティン・アトキンス/サム・ウラノ/ピート・ジョーンズ/ルイ・ベルナルディ/
ジェビン・ブルーニ/ジンジャー・ベイカー/ルー・エドモンズ/アラン・ディアス/
ブルース・スミス(ザ・ポップ・グループ/ザ・スリッツ)/ジョン・マッギオーク/
ドン・レッツ、ヴィヴィアン・ゴールドマン、ジュリアン・テンプル、
スコット・ファース/ジョン・ランボー・スティーヴンス/モビー/
サーストン・ムーア(ソニック・ユース)/アダム・ホロヴィッツ(ビースティ・ボーイズ)/
フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、他。
© 2017 Follow The Motion LLC All Rights Reserved.
http://www.curiouscope.jp/PiLdocumentary/
8月14日(土)より東京・新宿K’s cinemaにて公開。以降、全国順次公開。
シンクロナイズ、ザ・スカーレッツ『An afterimage- Synchronize to The Skarlets』
2021-02-10

1978年に結成して東京拠点に活動したポスト・パンク系バンドのSYNCHRONIZEと、
“後身バンド”のSKARLETSの音源を収録した計223分強の3枚組CD。
80年リリースのオムニバス・アルバム『都市通信』に提供した3曲が
そのヴァージョンのみならずライヴ・テイクでも収録されてないが、
未発表曲たっぷりである。
スタジオ録音はもちろんのことライヴ録音も音質問題無しの全43曲入りだ。
14曲入りのディスク1には、
当時の7”シングルの「訪問者」(1981年)と「PRIEST」(1983年)に加え、
1980~1984年の4回分のスタジオ録音が収録されている。
ミニコミ「ニュー・ディスク・リポート」の付録ソノシート用に録音された3曲と、
アルバム『ポーラー・ソング』用に録音された5曲も含まれているようだが、
それらの曲は言わずもがな他のスタジオ録音の曲も音質良好。
“ファースト・アルバム”とも言いたくなる仕上がりだ。
ほとんどの曲は日本語の歌をはっきり聴かせるヴォーカルが前面に出ているから
“日本語ロック”のイメージも強いが、
ところによって歌い方が突然段ボールを思い出すなど一筋縄ではいかない。
1980年の録音はネオ・サイケがかったポスト・パンク・スタイルだが、
アップテンポの曲はけっこうパンク・ロックっぽい。
とはいえ高揚感とは距離がある意気揚々とクールな佇まいで一貫している。
鍵盤楽器等を演奏するメンバーも在籍して83年以降は生ドラムではなくドラム・マシーンを多用。
曲によっては中期以降のJOY DIVISIONや初期NEW ORDERが頭をよぎり、
DURUTTI COLUMNがもっとロックしているような曲もあり、
けっこう英国マンチェスターのFACTORY Records周辺の感覚にも通じる。
インディペンデントなポジションならではの凝ったスタジオ録音なのだ。
ディスク2は
1980~1986年の11回分のライヴから抜粋した14トラックにデモ1曲を加えた構成。
やはりライヴはラフなプレイでパンク・ロックの感触も強い。
もちろんパワー・コードで押すサウンドではないし、
そもそもギターで押していくスタイルないが、
キーボードを入れようがドラム・マシーンを使うようになろうがパワフルだ。
日本語をしっかり発音してもヴォーカルはいい感じで粗削りに迫り、
MIRRORSをはじめとする70年代末~80年代初頭の東京ロッカーズ周辺バンドを想起。
ネオサイケ~ポスト・パンクと呼ぶには無骨なのだ。
ディスク3は、
末期SYNCHRONIZEのメンバー4人が“結成”したSKARLETSの音源集。
1987年のカセット作品『Skarlets』の4曲、
ベーシストが変わって作った1989年のカセット作品『Liverpool』の4曲、
1990年1月の福生チキンシャックでのライヴ6曲で構成されている。
メンバーがダブっていたとはいえ改名したのがうなずける音楽性だ。
よりドラム・マシーンらしいビート感の曲も多いとはいえ、
よりヒューマンなぬくもりを感じさせる。
メロウな歌ものとも言いたくなるが、
鍵盤楽器が寄り添ってSYNCHRONIZE時代よりもバンド感が増したようにも思える。
日本語をはっきり発音するヴォーカル・スタイルをキープしつつ、
もともとのまっすぐ歌唱が自然な進化と深化を繰り返してまろやかな旨味も呈し、
スケールが大きいのだ。
カセットでのリリースだったにもかかわらずこちらもスタジオ録音はかなり凝っていて、
メジャーのレコード会社からリリースされてしかるべき音楽・・・・
いやインディ・ブームの時代だったから逆にメジャーの会社だと丁寧に仕上げられず雑に扱われそうで、
こんなにデリケイトなアレンジや音作りはできなかったとも想像できる。
ライヴ・テイクはやっぱりパワフルでヴォーカルも力強い。
すべてラヴ・ソングに聞こえる歌詞も特筆したい3枚組だ。
★シンクロナイズ、ザ・スカーレッツ『An afterimage- Synchronize to The Skarlets』(いぬん堂 WC-095~097)3CD
歌詞等が載った16ページのブックレットと、
コサカイフミオ執筆のライナーが載ったインサート封入の
四面デジパック仕様。