なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

drillman『vesa』(reissue)

drillman『vesa』(reissue)


京都拠点のパンク・バンドのHELLRISERを率いていたQ-ZOらが92年に結成したオルタナティヴ・ロック系バンドが、
2000年にTAG RAG Recordsからリリースしたサード・アルバムのリイシュー盤。
アートワークを新調し、
CONVEX LEVELの渡辺良が2012年にリマスタリングした音が使われ、
体温を感じる仕上がりだ。

ギター、ベース、ドラムスの他に、
キーボード、シンセサイザー、プログラミング、ジャンベなどのパーカッションなども使用。
エレクロトニカ、シューゲイザー、ドリーム・ポップ、ソフト・ダブ、クラウト・ロックの間も行きかう、
たおやかなサウンドのパワフルなゆらぎに包まれていく。
反復パートも多いが、
いわゆるトランスものよりはポスト・パンク寄りのやさしい弾力の質感の響きで、
ていねいに紡ぎ上げられた作りである。

時にスペーシーで、
曲によってはエレクトリック・ギターがうなりを上げてドラマチックにも展開するロック・ミュージック。
インスト主体ながら日本語のヴォーカルも音に溶け込んでいる。
曲が進むにつれて桃源郷が見えてくる。
ラスト・ナンバーの曲名でもある“floating sun”という言葉のイメージの木漏れ日の浮遊みたいなサウンドだ。

無機的ではなく人間のぬくもりを感じる一枚。


★drillman『vesa』(NASCA CAR Recordings NCR-004)CD
六つ折りペーパー・スリーヴ仕様の約57分7曲入り。
実際のジャケットは↑の画像よりも色が濃いです。


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The POP GROUP『Honeymoon On Mars』

The POP GROUP Honeymoon-On-Mars


英国のポスト・パンク・バンドのThe POP GROUP『Citizen Zombie』以来リリースした
オリジナル・アルバムとしては4作目。
語りたいネタがいっぱいのアルバムだが、
来月発売の某誌で記事を書かせてもらっているので、
今のところここでは客観的な事実中心に書かせていただく。


プロデューサーは二組。
79年のファースト・アルバム『Y』以来というか、
正確にはその次のリリースだったシングル「We Are All Prostitutes」以来のプロデュースの
デニス・ボーヴェルが8曲、
PUBLIC ENEMYとの仕事で知られるハンク・ショックリー+ニコラス・サンサノが3曲手がけている。
後者は“PRODUCED”ではなく“REDUCED”とクレジットされているのも興味深い。
“RECORDED”+“PRODUCED”という意味にも思えるし、
実際“REDUCED”という感じの作業で仕上げたようにも聞こえる。
ちなみにニコラスはSONIC YOUTHの『Daydream Nation』などのロックも手掛けているが、
マーク・スチュワート(vo)は彼に対しての関心はあまりなかったようである。

『Y』を思い出すアルバムのオープニングの音でいきなり目を覚まされる。
日本盤は1曲追加の計11曲が放たれる。

マーク・スチュワートはMAFFIAと作った83年の『Learning To Cope With Cowardice』で
ウィリアム・ブレイクを引用したが、
今回は米国のジェイムズ・ラッセル・ローウェルの詩を引用した曲が入っている。
そして日本盤のみ最後にアイルランドのトラッド・ナンバー「Stor Mo Chroi」が収録されており、
これが絶品。
ボーナス・トラックの追加がアルバムの余韻のブチ壊しになることも少なくないが、
本編のラスト・ナンバーで終わるより、
はっきり言ってこの曲で締める方が今回のアルバムの流れにそっている。

いつにもなくジャケットの色使いが鮮烈でポップだ。
アルバム・タイトルは“火星”だが、
裏ジャケットに土星がデザインされているのも謎である。
歌詞に関して今ここで書くのは自粛しておくが、
サンクス・リストに英国の団体CAMPAIGN AGAINST ARMS TRADEを挙げているのも納得の曲も含まれている。


もちろん決して“頑張れ!ソング”ではない。
けど個人的には、
またまた歌詞にも触発される。
しんどい時にマーク・スチュワートの言葉にインスパイアされるのは高校時代から変わってない。
サウンドと一緒に、何度も、何度も、浴びたい。

巨大な音像の作りも手伝い、
強靭な音楽の力に開かれていく自分を感じる。
守りに入ることはない。
ロックの可能性をあらためて知る。


★ザ・ポップ・グループ『ハネムーン・オン・マーズ』(JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント VICP-65423)CD
デジパック仕様。
日本盤は1曲追加の約47分11曲入りで歌詞付。


bloodthirsty butchers『kocorono』[最終盤]

ブッチャーズのココロノ


北海道出身で90年代初頭に拠点を東京に移した“ギター・ロック・バンド”、
bloodthirsty butchersが20年前の10月23日に出した4作目のオリジナル・アルバムの“最終盤”リイシュー。

艶消し黒の丁寧な作りの厚手の紙製ケースに、
通常のプラケース+ジャケットのCDと、
カヴァーを外した文庫本のようなデザインの表紙の80ページの右開き縦書き冊子が収納された豪華版である。
CDは今年リマスタリングされた音が使われ、
本編の11曲+静謐なギター・インストのシークレット・トラックに加え、
9分を越えるエレクトリック・ギター弾き語りのアシッド・フォーク調の未発表音源「kocorono」が加えられている。
冊子には射守矢雄(b)と小松正宏(ds)に加え、
当時吉村秀樹(vo、g)が掛け持ちしていたCOPASS GRINDERZの二人
(『kocorono』のジャケット等を担当した榎本是朗と“プロデューサー”の名越由貴夫)らの、
新規インタヴューなどで構成されている。

代表作というだけでなくバンドとして節目になったアルバムだ。
米英の激情パンク・ロック/ポスト・ハードコアの音ながら絶叫トーンが薄れ、
日本のフォークの流れをくむわかりやすいテクスチャーの日本語ロックとも言えるようになり、
それまでの作品よりも日本の情趣が五割増になったアルバムなのである。
でもエゴ丸出しで押しつけがましいハキハキした発声のヴォーカルの日本語フォーク/ロックとは一線を画し、
ヴォーカルだけでなく楽器もすべてひっくるめてオリジナルの“歌もの”であり、
研ぎ澄まされた音で息が詰まるほどの“もやもや感”に覆われて空漠の歌が漂泊している。

前述の冊子には、
『kocorono』のリリースに伴って96年の9月に僕が行なったインタヴュー原稿
DOLL誌96年12月号/№112掲載)も含まれている。
米国のDRAG CITY Recordsの話も飛び出すその記事を読んでこういうアルバムに仕上がったのも納得できたが、
“着地点”を探り続けるかの如く一つの質問に対していつまでたっても話が終わらない吉村の回答ぶりも思い出し、
物理的にも精神的にも重いブツである。


★bloodthirsty butchers『kocorono』[最終盤](キング KING 93432)CD


アレルギー(ALLERGY)『El Dorado』[LPリイシュー]

アレルギー


85年リリースのファースト・フル・アルバムのLPリイシュー盤。

“WAX GREAT REISSUE 2016”というタイトルで、
徳間ジャパンコミュニケーションズ内のWAX Recordsから日本のバンドの名盤がLPでリイシューされているが、
その一環の発売だ。
CDはWAX Recordsからリリースされていたものである。
180グラム重量盤のレコードで、
ジャケットは英国アナログ盤を意識したというE式PP貼りと呼ばれる手触りがつるつるの光沢仕様。
新デザインの帯の裏には、
昨年の紙ジャケットCDリイシュー盤で僕が書いたライナーの抜粋が載っている。
制作関係者によれば昨年CDリイシューされた際のリマスタリングの音を使っているとのことだ。


今回のLPリイシュー・シリーズの中では、
少なくても僕が聴いた中だと一番オリジナルLPに近い音の感触で出来上がっている。
ゴスからファンクまでをフォローした“日本語ポスト・パンク”の集約形だが、
しめっぽくなく、
「Tokyo Frustration」という曲のタイトルが象徴するように都会的でしなやかなサウンドが楽しめる。

オリジナルLPにかなり近い紙質と色合で復刻した歌詞カード封入だ。


★アレルギー『El Dorado』(徳間ジャパンコミュニケーションズ TKJA-10092)LP


MAMIFFER『The World Unseen』

DYMC-255.jpg


元ISISのアーロン・ターナーが、
プライヴェイトでもパートナーのフェイス・コロッチャとやっている米国のMAMIFFERの新作。
EARTHの近作でお馴染みのランダル・ダンがプロデュースとミックスを行ない、
彫りの深い音の仕上がりだ。

正確に言うとフェイスが始めたレコーディング・プロジェクトで、
アーロンが加わってからライヴもコンスタントに続けている。
フェイスがピアノ、ヴォーカル、オルガン、シンセサイザー、テープ、作曲、
フィールド・レコーディングなどを担当し、
アーロンがギターやループなどを担当し、
二人ともエフェクツ、ノイズ、サウンド・コラージュ、作詞、録音も手掛けている。

とはいえフェイスがピアノ弾き語りで作ったことが想像できるパートが多く、
そこに二人で音を重ねていったような音像だ。
穏やかな耽美テイストの歌ものの時間がアルバムの大半を占める。
もちろんサイケデリックに研ぎ澄まされたアンビエント・サウンドも溶け込み、
後半にはドローン・ノイズ・チューンも挟み込み、
ドラマチックな構成で仕上げられている
ゴスともリンクする厳粛なムードながら過剰な演出はなくナチュラル。
英国の4ADレーベルが80年代半ばから90年代頭にかけて3タイトル・リリースした
名プロジェクトのTHIS MORTAL COILも思い出す。

ヘヴィ・ロックにも通じるアンビエント・ドローンの音圧と
たおやかで伸びやかな女声が肌に焼けつくアルバムだ。
ジョー・プレストン(MELVINS~EARTH~THRONES~HIGH ON FIRE)が1曲でベースを弾いているのも
なんかうれしい。


日本盤はもう一枚CDがプラスされている。
どの曲もリミックスの類いではなく本編とダブらない3曲で、
まったく捨て曲ではない。
BLONDE REDHEADを思わせるキュートなヴォーカルが聴ける曲も含むから要注意。


★マミファー『ザ・ワールド・アンシーン』(デイメア・レコーディングス DYMC-255)2CD
薄手の二つ折り紙ジャケット仕様。
本編の歌詞が載った四つ折りのインナー封入で日本盤は本編の歌詞の和訳付だ。
ディスク1は本編の約48分8曲入り、
日本盤のみのディスク2は約15分3曲入り。


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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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