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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Crispy Camera Club『SWAG』

Crispy Camera Club『SWAG』


女性ヴォーカルとドラマーを擁して2016年の夏頃に京都で結成されたバンドが、
初の全国流通のCDとしてリリースした作品。
静かにドキドキしてくるほど“何か”が起こる予感と気配に包まれ、
僕みたいな“非ギター・ポップ・ファン”をも虜にする聴き応えありありの6曲入りだ。

メンバーは、
ミサト(vo、g)、
りんすけ(ds、コーラス)、
中根トモヒロ(b)。
サポート・ギター&コーラスとして稲本裕太(Pale Fruit)もクレジットされた。

やわらかい質感とパワフルなビート感のバランスがいいレコーディングの仕上がりも奏功し、
とても親しみやすいのにディープな魅力も引き出されている。
ジャケットどおりのカラフルな味わいを醸し出すアレンジも特筆したい。

確かにギター・ポップといえばギター・ポップなんだろうが、
不思議とロックを感じるサウンドだ。
ドラムとベースはエイト・ビートや“ボ・ディドリー・ビート”を応用したようなビートで弾み、
ポスト・パンクの流れをくむ骨っぽさを感じ、
アップテンポのパートはパワー・ポップの表情も覗かせる。
ギターには80年代半ば以降の英国の“ギター・ロック”からの影響がうかがえるが、
シューゲイザー系とは一線を画すユニークなフレーズ・ワークが聴きどころで、
大胆かつ繊細なニュアンスに貫かれつつポップなサイケデリック・フィーリングにも惹かれる。

クールで淡いヴォーカルの力にもゆっくりと射抜かれる。
ちょろっと英語のフレーズを混ぜつつ日本語が大半で
フレッシュな方向に走り出す心象風景を綴っていき、
まっすぐな発声に胸がすくばかりだ。

そんな歌声をはじめとして、
なにしろ生々しいのが素晴らしい。
ポーズとかを“作って”ない。
要はウソがない。

ジャンル問わずスタイルをお勉強してなぞったような完成度の高い音楽は感心はしても感動はしない。
体裁整えてるだけで中身がないからだ。
Crispy Camera Clubは優等生のようで、
たとえばギター・ポップを研究して“教科書”に沿ったモノを作ろうとはしてない。
ポップな音楽は洗練されてアク抜きされているイメージもあるが、
いい意味で粗削り。
だから天然の魔法にあふれている。

ライヴを観たくなる一枚。
大スイセン。


★Crispy Camera Club『SWAG』(KOGA KOGA-212)CD
歌詞が載った三つ折りジャケットのプラケース仕様の20分6曲入り。


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そこに鳴る『re:program』

そこに鳴る『reprogram』


2011年の夏に大阪で結成されたそこに鳴るが、
CDリリースとしては4ヶ月半のインターヴァルで発表した3曲入り。
ライヴ会場限定販売とのことだが、
空漠感をゆっくり突き抜ける切ない歌ものヴォーカルと
“シューゲイザー meets メタルコア”の音のブレンドに磨きをかけている。

メンバーは鈴木重厚(g、vo)と藤原美咲(b、vo)で、
“アディショナル・ミュージシャン”というクレジットながら
志雄(ds)もまたまたメンバー同然のパワフルな活躍ぶりだ。


オープニング・ナンバーのCDタイトル曲は、
『未完終戟のヒストーリア-夢幻覇神楽-』の主題歌になった曲。
『ギターマガジン』誌あたりで取り上げていただきたいギター・プレイがいきなり飛び出し、
テクニカル&メタリックなギターがアクセントになって変幻する曲を綴る一方で、
ポップ感を際立たせるストイックな音作りもポイント。
メイン・パートは鈴木が歌っていると思われるが、
やはり中性的な質感の適度な甘味がいい感じで、
曲の後半はほとんどデュエットだ。

2曲目の「tragic antinomy」はよりリリカルに迫る。
藤原のヴォーカルもよく聞こえてくるが、
彼女の歌声も中性的な味わいだから別々の歌で同時に攻めてくるところも面白い。
しっとりした静謐パートからシューゲイザー系ブラック・メタルのようなサウンドに突入して締める。

3曲目は「re:program」のデモ・ヴァージョン。
ちよっとしたデジタルな味付けも含めてデモといってもほとんど完成状態だが、
各パートがそれほど混ざり合ってなくて二人のヴォーカルがやや分離していて、
ベースが1曲目より骨っぽくいパーカッシヴな音の仕上がりも新鮮だ。


そこに鳴るは、
来年の1月29日には東京・下北沢シェルターで初のワンマン・ライヴが予定されている。

PS
先日お知らせしたヨーロッパ・ツアーの情報はまだ日程が確定してないとのことで、
ひとまず削除します。


★そこに鳴る『re:program』(KOGA KOGA-213)CD
4ページのブックレット内側に載った歌詞に加え、
厚手の紙の四つ折りインサートには鈴木によるセルフライナーも載っている。


突然段ボール『恋の波動』

突然段ボール『恋の波動』


埼玉県深谷市を拠点に活動を続けるバンドの突然段ボールが、
結成41年目に放った約4年半ぶりのニュー・アルバム。

唯一のオリジナル・メンバーの蔦木俊二(vo、g)、
ユキユキロ(b、syn、コーラス)、
中野善晴(ds)
でレコーディングされ、
このみぃる(コーラス)がゲスト参加している。


ジャケットにペインティングが使われた故・蔦木栄一の流れをくむヴォーカルも相まって、
結成当初からの和製ポスト・パンク・スタイルをキープしている。
ベースの音域を鍵盤楽器で鳴らしているらしく、
ニューウェイヴのニュアンスもハジけているサウンドだ。

つかもうとするとすりぬける。
メイヨ・トンプソン(RED KRAYOLA)のお気に入りバンドなのもうなずける。
飄々ポップでリズムがシンプルにもかかわらずキテレツに聴こえるのが“突段節”ってやつである。

『Love Surfin’』というアルバム・タイトルの“英題”も粋だが、
しょっぱなから“突段流”のサーフ・ロックか!?と思いきや
CLASHっぽいギターのカッティングも飛び出す。
ちょいオールド・ロック風味のギター・ソロ演奏も悠々自適にいい味で、
クリアーに乾いて気持ちいい鳴りである。

不思議と明るいから諦念が湧き、
“ぐだぐだ感”は日本のバンドならではでムズムズさせる。
けどほとんどの曲がアップテンポで生のビートと音のメリハリが効いていて、
腐ってばかりもいられない意志が徘徊する。
解き放たれた音の上で、
そこはかとなく悲哀が躍っている。

ヴォーカルが曲をリードする一種の歌ものとも言える。
日本語がはっきり聞き取れる歯切れのいいヴォーカルのリズムが目立つ。
漢字が多めで冷めたようにも聞こえる歌詞も卑屈を突き抜ける。
いつにも増して主張や思いの強さを感じさせるが、
禅問答みたいに自分自身を鼓舞激励しているかのようだ。
生活の様子が滲み出つつ、
タイトルからイメージできるラヴ・ソングっぽい曲も多い。
しんみり聴かせる「言葉が愛を超えられるかい?」もなかなか泣かせる曲だ。

このフレーズを吐くためにこのアルバムをレコーディングしたのか!?と思わるせるほど、
ラスト・ナンバー「酔っ払いの夢」のど迫力の最後の一言が胸に響く一枚。


★突然段ボール『恋の波動』(Pヴァイン PCD-26071)CD
歌詞が読みやすく載った12ページのブックレット封入の約50分12曲入り。


つしまみれ『NIGHT AND MORNING』

つしまみれ『NIGHT AND MORNING』


東京拠点にコンスタントに19年活動を続けている女性トリオのつしまみれが、
2度の欧州ツアーを経て10ヶ月ぶりにリリースしたスタジオ録音の約19分5曲入りCD。

今回もプロデュースと録音とミックスとマスタリングは中村宗一郎が担当し、
ますます相性ばっちりである。
各パートが生き生きと鳴り、
3人とも自分の音でしっかり自己主張していい感じでぶつかり混ざっている。
音にロックなパンチがあり、
前面に出たビートをはじめとして打ち込みに頼らず腕っぷが強くてたくましい。
その一方でギターはサーフ・ロックやシューゲイザーを絡めながらソロ演奏が麗しく、
ヴォーカルはたおやかにポップでクセになる。

タイプの違う5曲でひとつの作品が仕上げられていて聴き応え十二分だ。
ポスト・パンク~ニューウェイヴ~オルタナティヴ・ロックのポップな流れの中を
ユニークなリズムで走るサウンドと日本語の歌に磨きがかかっている。
終盤はTOM TOM CLUBを思い出すラップ+ファンカラティーナからロックしていく曲と、
1960年代の欧米ものや昭和40年代の日本のポップなフォーク・ミュージックも思い出す歌もの。
特に後者はシリアスの空気感でしんみり耳を傾けてしまう力がある歌心バッチリの新たな名曲だ。

歌詞は日常がモチーフと思われるが、
生活感漂う言葉を使いつついい意味で生活を感じさせずに音と共振し、
パステル・カラーのポップ感に覆われている。
ラヴ・ソング色を強く感じさせる曲が目立つのも目を引く。


なお購入店舗によっては初回分のみにボーナスCD『外タレまみれ(“GAITARE”MAMIRE)が付く。
オフィシャル・サイトによれば、
“つしまみれオフィシャル通販「いびつ屋」、つしまみれライブ会場と、
タワーレコード各店(オンライン含む)、ディスクユニオン各店でご購入の皆様を対象に配布されます。
店舗によって配布の有無が変わる場合がございますので、詳しくは直接店舗にお尋ねください。”
とのことだ。
9月1日から始まる“外タレまみれツアー2018”でつしまみれが対バンする
KIDS N CATS(オーストリア)、WE Are The Asteroid(テキサス)、EGO FUNCTION ERROR(韓国)
の曲を2曲ずつ収め、
つしまみれがその3組の曲を1曲ずつカヴァーした約30分9曲入りである。
これがまたたいへん興味深い出来で、
つしまみれのカヴァーに彼女たちのミュージシャンシップの高さを再認識させられ、
“外タレ”3組もみんな面白くて発見ありありだ。


★つしまみれ『NIGHT AND MORNING』(Mojor DQC-1615)CD
8月22日(水)発売。


球体のポー『Mosaïque』

球体のポー『Mosaïque』


GOLDEN SYRUP LOVERSやソラネコなどで活動してきた木村キリコ(vo、g)が中心になり、
2016年初頭に結成された関西拠点のバンドの2年ぶりのセカンド・アルバム。

木村以外のメンバーは
野村予メ(ds~ソラネコ、ミックスナッツハウス、表現太郎バンド)
水田+夢(b~ラリーパパ&カーネギーママ)、
キタサトシュウ(kbd、シンセサイザー、アコーディオン)。
サブ・メンバーのソニック・ユースケ(g)が過半数に曲で演奏し、
曲によってチェロやピアノやコーラスでゲストが参加している。


音と曲を発酵させながらこってり煮込んだかのように1年以上かけて制作した
濃厚な“ロック・ポップ・ミュージック”である。
歌ものと言えるテクスチャーだが、
爽やかなアレンジにすれば大ヒットJ-POPになりそうなメロディの曲にもかかわらず、
ストレンジなサウンド・メイキングのコテコテの音がヴォーカルを侵食していく。

雑食サイケ感に覆われている。
アルバムで言えば『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』『The Beatles』あたりの
1967~1968年頃のBEATLESもチラリと頭をよぎった。
曲によってはオールド・ロックの狂おしいギター・ソロも炸裂させつつ、
70年代のパンク・ロックや80年代のシューゲイザーも忍び込んでいる。
コーラスも含めてT REX、MOTT THE HOOPLE、SILVERHEAD系の
グラム・ロックンロールの“電飾サウンド”に包まれているのもチャーム・ポイント。
有毒植物が描かれているようなジャケットのイメージそのものの“モザイク・サウンド”だ。

もちろんノスタルジックな作りとは一線を画す。
作詞と作曲も手掛けるリーダー木村は
ISISCONVERGEを聴いてきて最近はMASTODONを愛聴しているリスナーでもあり、
そういうプログレッシヴなへヴィ・ミュージックの進取の感覚も漏れ聞こえてくる。

クセの強い音の中で甘く繊細な歌声が屹立し、
言葉でもストーリーを綴る。
“僕”と“君”の人称をメインに描く普遍的(universal)な視点の歌詞も意味深だ。
曲名だけでもイメージが湧き上がってくるから以下に列記しておく。

「機械仕掛けのデンドロカナリア」「太陽が沈む前に」「気狂いリリィ」「バラとアボガド」
「楽園行きの昇降機」「人体モザイクと8人の賢者」「球体」「生命の樹」「スイッチ!」「光」
「月の代わりに現れたミラーボールそれは神様だった」

洋画の邦題みたいな曲名が象徴するように、
日本語の字幕付きで欧米のちょいキテレツな映画を観ているようなムズムズした居心地が味わえる。
曲間にインタールードみたいな音が挟み込まれて
アルバム全体が一つの流れを成しているポップな力作だ。


★球体のポー『Mosaïque』(COCOON CCN-001)CD
9つ折りの丁寧な作りの歌詞カードが封入された二つ折り紙ジャケット仕様の約58分11曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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