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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

中屋浩市×藤掛正隆『BETELGEUX』

中屋浩市×藤掛正隆『BETELGEUX』


非常階段に参加することもあるナスカ・カーの中屋浩市と
EDGEや渋さ知らズなどで多彩な活動をしている藤掛正隆による
初のコラボレート盤。
CD-R作品だが、
自家製ではなく業者が製作してシールドで完全密封されたパッケージで、
もちろん音楽の方もしっかりした作りの計21分32秒の6曲入りである。

中屋がプログラミングとエレクトロニクス、ミックス、エディットを担当し、
藤掛がドラムを叩き、
二人でエンジニアを行ない、
確かなケミストリーが生まれている。
怪しくポップ、
それでいて肉体的。
ナスカ・カーがシンプルかつダイナミックになったかのようでもある。

「密林魔界村(電気風呂mix)」「カリフォルニア・オーバーイート」
「ソウル・イレイザー(Soul Erasure)」「密林魔界村」
「電撃のハードロック」「お祭り最高」
という曲名からイメージできる世界観の音楽と思っていただいて間違いない。

全体的にスペース風味でダブっぽい張りのある中低音が際立ち、
ほぼインストながら、
ところによって正体不明のヴォイスや歌声も聞こえてくる。
ジャーマン・エレクトリック・ミュージックやジャーマン・ニュー・ウェイヴも思い出すが、
“ゆとり”に貫かれている。
「ソウル・イレイザー(Soul Erasure)」はヘヴィなエレポップの趣きで、
DEPECHE MODEやYAZOOなどの後にヴィンス・クラークが組んだERASUREも想起。
クラウト・ロックやトランス・ミュージックとは一味違う反復効果も絶妙で、
終盤は怪奇音が飛びかうヘヴィ・ファンキー・チューン、
そして東南アジアの歓楽街の空気も漂うゆったりした宴の音楽で締めだ。

相性バッチリの快作である。


★中屋浩市×藤掛正隆『BETELGEUX』(FULLDESIGN FCDR-2040)CD-R
計21分32秒の6曲入り。
薄手のプラケース仕様で帯付き。


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FERRET NOISE『見上げると、月』

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つしまみれのベーシストの“やよい”が昨年始めたソロ・ユニットのデビュー・アルバム。
つしまみれのイメージをいい意味で裏切る、とんでもない佳作だ。

ベースはもちろんのことすべての曲の作詞・作曲、ヴォーカル、キーボードを一人でやり、
3曲でドラムも叩いている。
つしまみれのドラマーの“まいこ”が3曲に参加し、
BUTTHOLE SURFERSのシンガーのバンドの
Gibby Haynes and HIS PROBLEMに参加していた
ネイサン・カルフーンがギターで2曲に参加してデザインも担当。

やよいが全曲の録音もして2曲のミックスも行ない、
6曲のミックスと全曲のマスタリングを中村宗一郎が手がけ、
生々しくデリケイトなヒリヒリした響きの仕上がりも万全だ。

音楽的にはポスト・パンク/ニュー・ウェイヴからの流れを感じさせるサウンドだが、
もちろん80年代初頭の音の焼き直しなんかじゃなく、
現在進行形の研ぎ澄まされた手作り感覚で迫る。
エレクトロニカ、ハウス・ミュージック、パンク・ロック、アンビエント音楽の表情をたたえつつ、
ダブが音の肝と言える。

ところによっては、
RAINCOATSの『Odyshape』、
SLITSの『Return Of The Giant Slits』、
さらにMASSIVE ATTACKやAPHEX TWINを思い出すと言っても過言ではない音作りだ。
それでいてさりげなくポップなのがチャーム・ポイントである一方、
AFTER DINNERとG-SCHMITTの間で佇むようなヴォーカルは
ポスト・パンクの突き放し感そのものである。

リアリスティックなホラー映画のイメージや
リアルな世界状況が映し出されたイメージが混ざり合ったような言葉と、
「Jin & Coke」「酩酊ウォーク」という曲名どおりのスウィートな酔い心地のサウンドが
絶妙にブレンドされている。
オススメ。


★FERRET NOISE『見上げると、月』(MOJOR FN-001)CD
米国テキサスの女性画家フランシス・ウォッシュバーンが描いた画が彩る、
二つ折りペーパー・スリーヴ仕様の計28分弱の8曲入り。
紙質まで気を使った六つ折りの歌詞カードが、
シュリンク包装されたジャケットの裏面にテープで貼り付けられている“手作り”仕様
タイトルには英語の表題も添えられている。
歌詞カードは購入する際に日本語のものか英訳のものかを選択できるようだ。
https://www.ferretnoise.com/


WIRE『Mind Hive』

WIRE『Mind Hive』


70年代後半にポスト・パンクの道を切り開いた英国のバンドのWIRE
17作目と言えそうなオリジナル・アルバム。
最近こればっかのへヴィ・ローテーションCDである。


変わってない。
今回はハードコア・パンクみたいな曲こそないが、
70年代の3作や80年代後半~90年代初頭の作品のニュアンスやメロディをキープしながら、
さらに深化している。

ヘヴィ・ロック風のオープニングで驚かせつつまったりした曲で始まり、
軽快でポップな曲に続き、
アップ・テンポの曲やドリーミーな曲へと連なる。
穏やかな前半からいつのまにかヘヴィな後半へと流れ、
混沌とした風情の8分近い曲を経て、
静かな叙情の調べのゆったり曲で締めるWIRE流のドラマチックな展開が見事だ。

簡素極まりない“オカズ”無しのこの飄々としたドラムあってこそWIREと再認識する一方、
あのビートが聴こえてこなくてもWIREとも知らしめる。
過半数の曲で使われるシンセサイザーが本作の色を決定づけているのに加え、
アコースティック・ギター、スタイロフォン、テナー・ギター、オルガン、
そしてゲストによるハーディ・ガーディが優雅な彩りを添える。

ミニマルなテクスチャーの曲をふくらませる緻密に研ぎ澄まされた音作りに惚れ惚れとする。
高音も中低音も非常にクリアーに響いてきて、
鳴らした音がヘッドホンを使わなくてもすべて聞こえてきそうだし。
スピーカーで聴いたら特にベースとドラムの音に全身で痺れるほかない。

ポスト・パンクというよりニューウェイヴという言葉が似合う佇まいの麗しの音色と旋律の中に、
WIREならではの諧謔が息づいている。
プロデュースとミックスも行なったコリン・ニューマン(vo、g)は
シニカルとデリケイトが背中合わせの歌声が光る。
本作の肝となる後半の2曲でリード・ヴォーカルをとったグラハム・ルイス(b他)は、
グロテスクと繊細が背中合わせの喉を震わせる。
二人とも芝居がかったヴォーカルではないからこそ歌心がじんわり溢れ出ている。

こぢんまりとまとまらずにスケールが大きく広がりがあり、
やっぱり深い。
クセになるさすがの一枚。

グレイト!


★WIRE『Mind Hive』(PINK FLAG PF25CD)CD
クールなデザインも音にピッタリの三面デジパック仕様の35分弱9曲入り。
実際のジャケットの文字部分は↑の画像よりやや上の方にデザインされている。


INNOCENCE MISSION『See You Tomorrow』

INNOCENCE MISSION『See You Tomorrow』


米国のアコースティック・グループのThe INNOCENCE MISSIONが1年半ぶりに出した新作。
通算で11作目に数えられそうなアルバムである。

ペンシルヴァニア州に在住して共に歌う夫婦が中心で、
女性の方はギター、ピアノ、バンプ・オルガン、アコーディオン、メロディカ、ロウ・ハーモニカ、
エレクトリック・ベース、ストリングス・キーボード、メロトロンを演奏し、
男性の方はギター、ドラムス、ティンパニーを演奏。
もう一人の男性が4曲でアップライト・ベースを弾き、
3人編成のバンドとしてクレジットやメンバー写真が載っている。


何年も前に“INNOCENCE MISSION節”ができあがっている人たちだから深化あるのみで、
歌も音楽もその時々の普遍的な“日記”のような作品に仕上がっており、
バンド名どおりの“イノセンスなミッション”のアルバムだ。
活動の流れと本作の肝がわかりやすく綴られた村尾泰郎執筆のライナーから引用させてもらうと、
まさに“無垢の伝道団”のアコースティックな調べである。

ほとんどの曲を書いた女性のカレン・ペリスがほとんどのリード・ヴォーカルをとる。
年齢不詳の瑞々しい輝きの歌声は
60年代のフォーク・ミュージックのような佇まいも呈し、
まったりというより凛とした静かなる躍動と律動でゆっくりとドライヴ。
木漏れ日みたいな光が射し込んでくる。

夫婦の自宅の地下室やリヴィング・ルームでレコーディングしたらしく、
宅録っぽいちょっとした“雑音”もいい味を出しているが、
もちろんいわゆるローファイではない。
必要な音だけを丁寧に重ねて編み上げた緻密なレコーディングである。
どの音もどの声も研ぎ澄まされている。

本作の英国でのディストリビューションを行なっているBELLA UNIONレーベル主宰者の
サイモン・レイモンドが在籍していたCOCTEAU TWINSの80年代も思い出す空気感だ。
彼女ほどクセは強くないが、
色々な面でジョニ・ミッチェルがスタート地点というのも納得の深みである。
豊穣、そして芳醇な響きに包まれてゆく。

日常生活を注意深く観察したことで生まれた歌かもしれないが、
小ぢんまりした内向きの歌には聞こえない。
聴いていると視界が開けてくるスケール感にうっとりさせられ、
さりげなくポジティヴなアルバム・タイトルがピッタリの佳作だ。


★ジ・イノセンス・ミッション『シー・ユー・トゥモロウ』(Pヴァイン PCD-25289)CD
歌詞が内側に載った三面デジパック仕様。
日本盤は、
1999年の4作目『Birds Of My Neighborhood』収録曲で
スフィアン・スティーヴンスがカヴァーした曲「The Lakes Of Canada」の再録音版を追加し、
本編の曲の歌詞の和訳が載った丁寧な作りの六つ折りインサート封入の計40分弱の12曲入り。


そこに鳴る『complicated system』(通常盤)

そこに鳴る『complicated system』


男性ヴォーカル/ギターと女性ベース/ヴォーカルを核に2011年からコンスタントに活動中の、
そこに鳴る”の全国流通盤としては6枚目になるCD。
本編3曲にボーナス・トラック扱いの2曲を加えた計18分14秒の5曲入りである。
最初の3曲で『complicated system』という一つの作品が完成されているのかもしれないが、
ボーナス・トラックも捨て曲どころか佳曲でどちらも3分以上の曲の長さだ。


今回も“Additional Musician”扱いながらライヴと同じく大活躍のドラムを含む、
実質トリオ・バンド体制でのレコーディング。
クリアーな音質だから曲のテクスチャーやメロディ、演奏の小技も楽しめる仕上がりだ。

静と動を織り交ぜた2000年代以降の米国産のメロディアスなメタルコアに
シューゲイザーの耽美性をポップにブレンドしたような曲と音の中で、
クールな日本語の歌で押しながら疾走する音楽性は健在。
パッと聴けばわかるほど
“そこに鳴る節”の曲と“そこに鳴るサウンド”の音が確立されていて、
コロコロ音楽性を変えるバンドではないだけに進化というより深化が似合う作品だ。

変わらないといっても楽曲の中にさりげなく色々ちりばめていて、
数秒間レゲエ…いやスカが入っていたりするし、
最後の5曲目はけっこうメロディック・パンク・ロックっぽい。
とっても無理やり取って付けるわけはなく、
ますます凝ったアレンジの妙味で楽曲全体の流れはますます滑らかだ。

もちろん聴かせどころいっぱいのテクニカルな演奏にも磨きをかけ、
ギターとベースの絡みがこれまで以上に際立つ。
と同時の二人のヴォーカルもよく絡み合って歌の存在感も高い。
繊細な男性ヴォーカルがメインと言えるが、
重なり合いながら時にリードする女性ヴォーカルのより丁寧な歌唱も光る。

「complicated system」「楔の先」「孤高」「善略」「迷い子」という収録曲からも
歌の空気感が伝わってくる。
人称名詞が出てこない舞台設定の曲もあるが、
使われるのは“僕”と“君”。
日本語のみということも相まって日本の情趣が滲み出ている歌が、
こういう音とブレンドして“そこに鳴る”の世界が生まれる


来年3月には約1年ぶりの2度目のヨーロッパ・ツアーを決行。
ドイツ、オランダ、スイス、フランス、ベルギー、オーストリア、イタリアの
12ヶ所でライヴを行なう。
そこに鳴るの日本語の歌のリアクションも気になるところだが、
今回のツアーでまわる国が日本と同じくいわゆる英語圏ではないところもポイントで、
そこに鳴ると欧州の融和性が高そうなことは音楽性でも想像できる。

あちこちで鍛えられて、
より深くなってほしい。


★そこに鳴る『complicated system』(KOGA KOGA-217)CD
櫻ノ宮萬のイラストと歌詞が載った8ページのブックレット封入。
3曲入りCD+ライヴDVDの仕様の限定版も発売中とのことだ。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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