なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ESKA『Eska』

ESKA2.jpg


ロンドン南東部のルイシャムで生まれ育ったジンバブエ移民の子であるシンガーソングライターの
エスカのファースト・アルバム。
本国イギリスでは昨春リリースされているが、
このたび2曲追加で日本盤化された。

90年代後半から外に向けた音楽活動を進めていたが、
ソロ・デビューEPを出したのは2013年のこと。
これがまた今まで溜めこんでいた思いがクールに発酵したかのような素晴らしい作品だ。

エスカは共同プロデュースもしている
(一緒に仕事をしたのはマシュー・ハーバート、デイヴ・オクム、ルイス・ハケット)。
彼らを含む多数の演奏者が曲によって参加していて摩訶不思議な“ポップ・ミュージック”を作り上げているが、
彼女自身もピアノをはじめとする各種鍵盤楽器、ハーモニカ、クラリネット、タンバリン、
グロッケンシュピール、ストリングス、プログラミングなどを手掛けている。
というわけで総合音楽家なわけだが、
やはりシンガーソングライターとしての魅力が特に光る。

エスカにとってもヒロインというケイト・ブッシュとジョニ・ミッチェルがブレンドされたかのようで、
ジョアンナ・ニューサム湯川潮音に通じるモダンなセンスも醸し出されている。
ただそこにアフリカ・ルーツと言うべきであろう濃密で“濃蜜”なR&Bの旨みが宿り、
いかにものソウルフル歌唱スタイルではないにもかかわらず、
艶っぽいソウルがたっぷりと震えている。
そこが現在進行形の“ソウル・ミュージック”ってやつで、
クールな音の連なりと確かに共振している。
音同様に彼女の歌声にもビートが鳴っているからこそ、
とってもキュートにもかかわらず、
とってもストロングなのである。

甘いラヴソングも含めてしっかりと人間に向き合った歌詞もシンプルでほんとうに深い。
「Rock Of Ages」という曲もやっていて、
基本的にはラヴソングの歌詞ながらタイトルをはじめとして色々な意味に解釈できるが、
僕には一種の“ロック・マニフェスト”にも聞こえるのであった。


オススメ。


★エスカ『エスカ』(Pヴァイン PCD-24477)CD
日本盤は、
歌詞とその和訳と平易な英文ライナーの和訳と曲ごとの詳細なクレジットが載った
丁寧な作りの20ページのブックレット封入。
ボーナス・トラック「Red」「Dear Evelyn(song version)」追加の計12曲入りのデジパック仕様だ。


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INNOCENCE MISSION『Hello I Feel The Same』

INNOCENCE MISSION『Hello I Feel The Same』


女性ヴォーカルを擁する米国東部ペンシルヴィニア州拠点のアコースティック・トリオ、
The INNOCENCE MISSIONが結成35年目にリリースした5年ぶりの新作。
11作目に数えられそうなアルバムである。


年齢不詳なほど若干舌足らずの愛らしいヴォーカルが綴るは、
“わたしとあなた”“わたしときみ”の情景。
初春、初夏、初秋、初冬の気温と日差しに包まれているような光景だ。
彼女が手掛けたジャケットどおりの淡い雰囲気だが、
彼女の歌声の響きそのものが鮮烈で目が覚める。

まったり加減はフォーク・ミュージックやカントリーの趣ながら、
ポップがころがっている。
60年代の“フォーク・ポップス”をアップデートしたみたいであり、
ところによってはソフト・ロックやフラジル音楽の色やリズムを応用したようにも聞こえる。
VELVET UNDERGROUNDのアコースティックなタッチの曲や
JOY DIVISIONの「Atmosphere」の雰囲気も漂い、
男性ヴォーカルが重なる曲ではDamon & Naomiも思い出す。

ほとんどの曲を一人で書いたシンガーの女性は
ギターやピアノ、フィールド・オルガン、ベース・ハーモニカ、タンバリンを演奏。
ときおりコーラスをとる男性はギターとドラム、
もう一人の男性はアップライト・ベースを演奏している。
そういう楽器群からイメージできる音だが、
ドラムはあまり入れてない。
弦楽器の“三重奏”でスウィングする曲がほとんどで、
曲によって鍵盤楽器がいいアクセントになったアルバムである。

何しろ3人の楽器もよく歌っている。
インスト・ナンバーをやっているほどで、
鮮やかな響きの音を織り成して淡い絵画を編み上げていくかのように、
ヴォーカルとハーモニーをとっている。

ミニマルな音の会話みたいなリズム・アレンジとブレンド具合で、
音を鳴らすタイミングや音を入れるタイミングの絶妙の呼吸感、
そして音の重なり方は息を呑むほどだ。
デリケイトながら音がしっかり立っている。
おくゆかしく、つつましやかな佇まいにもかかわらず、
ぐいぐい押していく様はグルーヴィとすら言える。
ゆっくりと疾走するほどひとつひとつの音が躍動している。

弦の動きまで見えてくるデリケイトな音質も奏功し、
一瞬にして場の空気を変える。
ポーズがなく音が生きているからだ。

30年活動していても産まれたばかりみたいに瑞々しい。
ソフト・サイケデリックの“舌触り”もたまらない魔法の一枚。


★ジ・イノセンス・ミッション『ハロー・アイ・フィール・ザ・セイム』(Pヴァイン PCD-24455)CD
日本盤は、
ポップすぎて本編と合わずに外したかのような1曲(歌詞和訳無しだが捨て曲ではない)追加の約37分12曲入りで、
同じ英単語でも日本語を使い分けて歌声のニュアンスを日本語に表した喜多村純による歌詞の和訳が載った、
丁寧な作りの四つ折りインナー・シート封入。


plum『I am me.』

plum.jpg


ヒップホップ・グループの風利銃恐竜の元メンバーで、
岐阜県在住の81年生まれの“自作自演アーティスト”によるピアノ弾き語りの独演盤。
これまで数タイトルをリリースしているが、
彼女が音源の自主出版のために2011年に設立したレーベルからのリリースである。


今年の2月24日の一日で全17曲をレコーディング。
気合系の音楽とは対極だが、まず集中力で“気”がゆっくりと渦巻いている。
静謐な音楽が持ち得る穏やかなヴァイブレイションの“ちから”に、
ひっそりと打ちのめされる。
レコーディングやマスタリングも緻密に行なわれたようで、
彼女が弾いているピアノの鍵盤の並びがそのまま聞こえてくるほど、
ピアノの音が出てくる位置にも気を使われた立体的な音像にハッとさせられる。
たとえば二つの音の繰り返しで進む曲は、
その二つのピアノの音が左右交互にはっきりと繰り出されてくる仕上がりなのだ。

アカペラと呼ぶには生々しくメロディを逸脱した声で
オープニング・ナンバーの「ひかれ ひかれ 小さな星よ!」を、
ミヒャエル・エンデ著の『モモ』の前書きの言葉を引用して発する。
以降はゆっくりとゆっくりとしたピアノ弾き語りが続くのだが、
とってもミニマルなテクスチャーでピアノの音数はとても少ない。
反復を多用していてピアノ演奏だけなら現代音楽にもジャンル分けされそうな曲で、
歌ものと呼ぶにはとても短い曲も多く、
いわゆるサビを用意した曲でもない。
すべてが気持ちのおもむくままに始まって気持ちのおもむくままに終わっているような曲である。

大半の曲は歌詞も簡潔きわまりない。
それこそRAMONES、いやDISCHARGE以上に飾りがない。
そもそも歌詞と言っていいのかもわからない。
曲名を何回か繰り返すだけの歌詞の曲が過半数なのだ。
年齢不詳に聞こえる初心(うぶ)な声が生のままレコーディグされ、
揺らぎが屹立していて目が覚める。

彼女が本名の小関千恵の名でMAHER SHALAL HASH BAZに参加(トロンボーンやリコーダーなどを演奏)
しているからでもないが、
本作のインナーフォトも撮影しているそのリーダーの工藤冬里や、
くどうなみおを思い出す。
ピュアだが、
滅菌漂白された清楚なイメージとは違うこまやかな息遣いが震えている。

手作りペーパー・スリーヴもたいへん丁寧な作りのパッケージも含めてすべてが彼女の表現である。
歌詞と英訳が載った12ページのブックレットが取り外しできる形で綴じ込まれ、
滋賀県の“サケデリック・スペース 酒游舘”の西村明らによるライナーや工藤冬里の一筆が載った
四つ折り“インナーシート”が貼り込まれている。
たいせつに たいせつに したい こわれもののだ。


★plum『I am me.』(KURON”R”ECORDS KRNC-004)CD
約35分17曲入り。
↑の画像の中の正方形のものがジャケットです。
http://kuronecords.tumblr.com/


Nina Simone『The Essential Nina Simone』

Nina Simone『The Essential Nina Simone』


米国ノース・カロライナ州生まれのシンガー、
ニーナ・シモン(1933~2003年)の計約113分29曲入りの新装ベスト盤。
一般的なCDプレイヤー等で再生できる伸びやかな音のBlu-spec CD 2の2枚組でのリリースだ。
1951~1959年の録音の曲がほとんどとはいえ
時系列の曲順だから意識の微妙な流れが伝わってきて、
最後の2曲は1978年と1993年のレコーディングである。

ジャズや現代音楽やインプロヴィゼイション主体のミュージシャンの多くと同様に、
ライヴ盤もスタジオ録音アルバムと同等のウェイトの人だからライヴ・テイクもビシッ!と収録。
R&Bが基本ながらジャズのリズムやサイケデリック・ロックのトーンも聞こえてきて、
自身のルーツと言えるアフリカの民俗音楽の躍動感にも貫かれている。

挑発的に映る歌詞も魅力だ。
黒人問題や女性であることがモチーフになった曲も含めて必ずしもナイーヴではないが、
根が肯定的なアプローチで愛を歌い抜く。
スケールがでかい。
包容力もでかい。
そしてあくまでもクールだ。
感情を静かに震わせる。

もちろん歌が上手いのだが、
巧いのではなく美味い、そして旨い。
コクのある喉にとろける。
やっぱり歌心の為せるわざである。

ピアノも弾いて曲も書いた人だが、
他のソングライターに提供された曲もたくさん歌っていた。
ANIMALSや尾藤イサオ(邦題は「悲しき願い」)のカヴァー・ヴァージョンで知られる曲の、
「Don't Let Me Be Misunderstood」はニーナ・シモンが最初にレコーディングしている。
もちろん本作にも収録だ。

たくさんのカヴァーも聴きどころである。
ビリー・ホリディで知られる「Strange Fruit」、
スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの「I Put A Spell On You」、
アル・ウィルソンの「Do What You Gotta Do」、
ボブ・ディランの「Just Like A Woman」、
Ike & Tina Turnerの「Funkier Than A Mosquita's Tweeter」、
BEE GEESの「To Love Somebody」、
BEATLESの「Here Comes The Sun」、
Daryl Hall & John Oatesの「Rich Girl」も魅惑の響きだ。

ラスト・ナンバーはラスト・スタジオ録音アルバム(1993年)のタイトル曲「A Single Woman」だが、
曲名から伺える独り身の女の寂しさも歌いつつも楽観的なトーンに包まれている曲だから、
本作のシメにふさわしい。


★ニーナ・シモン『エッセンシャル・ニーナ・シモン』(ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP 30843~4)2CD[Blu-spec CD 2]
日本盤は、
8ページのオリジナル・ブックレットに載った英文ライナーの和訳と、
出田圭執筆の曲解説中心の平易なライナーと、
ライヴ・テイクのMCも含む歌詞/和訳が載った44ページのブックレットも封入。
彼女を聴き始めるのにありがたい作りの日本盤だ。


アンナ・マリア・ヨペック カルテット feat. ミノ・シネル etc.(“14th TOKYO JAZZ FESTIVAL~MY MUSIC, YOUR MUSIC”)at 東京国際フォーラム 9月5日

14th TOKYO JAZZ FESTIVAL


日本語表記だと“第14回 東京ジャズ”という名称になるらしいジャズ・フェスティヴァル。
会場の屋外広場でも次々と演奏が行なわれていたが、
“MY MUSIC, YOUR MUSIC”と題された9月5日の昼の部で3組を大ホールで観てきた。

まずは、
“ボブ・ジェームス & 東京フィルハーモニー交響楽団(指揮者 : ケヴィン・ローズ
featuring スティーヴ・ガッド、 カリートス・デル・プエルト special guest 渡辺香津美)”。
ゴージャスな御馳走のような面々のコラボレーションながら結構プログレみたいで、
DREAM THEATERがオーケストラとの合体演奏も収めたライヴDVD『Breaking The Fourth Wall』も思い出し、
なかなか興味深かった。
今年のクリスマスで76歳になる米国の御大ボブ・ジェームスが見られたのも有難いことである。

続いては一昨年結成の“ニュー・センチュリー・ジャズ・クインテット”。
大林武司(p)と中村恭士(コントラバス)を擁する5人組で、
ニューヨーク拠点ならではの洗練された都会的そのもののジャズは
日頃“やさぐれ外道ジャズ”以外に馴染みのない僕にとってはたいへん新鮮である。
人種混交バンドならではの味わいとユーモアも隠し味だった。

Anna Maria Jopek

僕のお目当てはトリの、
“アンナ・マリア・ヨペック カルテット feat. ミノ・シネル”であった。

アンナ・マリア・ヨペック(Anna Maria Jopek)は70年ワルシャワ生まれで、
大統領から今年ポーランド復興勲章が贈られるほどの存在で国民的シンガーと呼んでも差し支えない人だが、
親日家としても知られている音楽家である。
そんな彼女がフロントに立つ4人編成のバンドに、
80年代にはマイルズ・デイヴィスやWEATHER REPORTと活動していたミノ・シネル(per)が加わったステージだ。

ポーランド恐るべし、とあらためて思った。
映画と同じく音楽も、
いわゆる白人圏であろうとアメリカはもとより他のヨーロッパ諸国とも違う、
ポーランドならではの“交わり”の歴史が研ぎ澄まされたポップかつ圧巻のライヴだった。
ナチスに凌辱された第二次世界大戦中は元より80年代まで自由どころじゃなかった国だからこそ、
自由にやることの大切さを身体でわかっている音楽だ。

アンナはクラシック~ジャズを学んできた人で実際そういう色も出ているが、
少なくてもこの日のライヴはいい意味でほとんどジャズじゃない。
ジャンル名を付けられない音楽スタイルの魂のこもったハイブリット(混血)がロックであるならば、
間違いなくロックだ。
曲によって彼女が奏でたシンセサイザーと思しき電子音もそうだし、
何より見とれるほどホット&クールだった。

アンナ以外のミュージシャンの演奏が個性的で自由型というのもナイスな作用していた。
ベーシストこそ一つのベース・ギターのみとはいえあまり見ないタイプの六弦だったし、
ピアノやアコーディオンの他に見たことのない手のひらサイズのユニークな楽器も鍵盤楽器奏者は使い、
もう一人のメンバーはアコースティック・ギターも管楽器もやりつつサイド・ヴォーカルも取っていた。
色々な種類の打楽器でステージを彩ったフランス出身のミノ・シネルの存在も大きい。
ロック畑とも絡んでいて調べたら、
デイヴィッド・アレン不在でアラン・ホールズワース在籍の“GONG別動隊”の『Gazeuse!』(76年)に参加している。
特にパーカッシヴな曲で際立っていた。

育ちの良さを隠せない凛とした品格を醸し出しながらアンナ自身も言葉本来の意味でwildそのものだった。
ポーズつけているやつじゃなくてもっと根源的なパワーが静かに渦巻いていた。
テクニックを学んだシンガーならでの発声だからというだけでなく、、
声を出すことに意識的で日頃から鍛えているからこその伸びやかで張りのある歌声のパワーが格別だった。
たとえシャウト(らしいシャウトはほとんどなかった)でなくても、
わざとらしいヴォーカルとは別次元の針が振り切れた声が持ち得るちからこそが本物だ。
もちろんシンガーとして上手いのだが、
単に巧いのともまったく違うフリー・フォームな喉の震えに殺られた。

1時間弱の間に披露した楽曲すべてのタイプが全部違っていたことも特筆すべきだろう。
フレンチ・ポップからシャンソンやカンツォーネまでもが透けて聞こえてきたし、
もちろんポーランドの民俗音楽っぽいメロディやリズムも溶け込んでいた。
母国などでは有名人のアンナだが、
商業主義のカケラすら感じさせないステージだったことが僕には何より驚きだった。
ポピュラリティ十分ながら米国の大味ポップ・ソングみたいな曲ではない。
前衛的なアレンジが敷居低く施されていてひそかに効いていたのも心憎く、
気取った意味ではなくアート/芸術であり表現として音楽なのである。

アンナと男性メンバーとのデュエットも粋で、
膝上丈スカートのタイトなワンピースでキメた艶っぽく熟な佇まいもカッコよかった。
たくさんの敬意をリスナーに払いつつ、
フェスということで自分のファン以外も多いであろう観客に媚びないステージにも胸がすく。
さりげなさに痺れる。
もっと聴きたい・・・もっと観たい・・・そう思わせるグレイト・ライヴだった。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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