なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DIZZY MIZZ LIZZY『Livegasm!』

DIZZY MIZZ LIZZY『Livegasm!』


デンマークの国民的ベテラン・ロック・トリオの最新ライヴ盤。
デンマークでの2回とノルウェーでの1回という、
2016年夏の3回分のフェスのステージから15曲を抜粋編集して仕上げられている。

スタジオ録音盤でもそれほど凝ったことはしてないとはいえ、
やっぱりライヴだとストレートにバンドの肝が伝わってくる。
“BEATLES meets LED ZEPPELIN”とも言うべき曲とサウンドの中に、
ブログレやスラッシュ・メタルのスパイスも少々の“パワー・ポップ・ハード・ロックンロール”だ。

過半数の8曲が2016年の復活最新サード・アルバム『Forward in Reverse』の曲というところに、
懐メロ・バンドとは一線を画す現在進行形の心意気が表れている。
何しろ元気元気。
適度に洗練されていて、
適度に泥臭く、
ツボを突く曲を連発する。
ソングライターがティム・クリステンセン(vo、g)一人で曲がキャッチーだろうが、
メンバー全員のケミストリーがハンパなければロック・バンドとしてのダイナミズムも生まれ得るのだ。

歌詞は英語だからヴォーカルの響きにもクセはなく、
曲によっては合唱も自然発生の観客のリアクションも程良くで入って、
ステージの様子をイメージさせる。
ほとんどが母国でのライヴだから時おり入れるMCが英語じゃないところも面白い。

策を弄した底の浅い作品にウンザリすることが多い昨今、
真正面から生のコミュニケーションに挑むポップなストロング・スタイルに胸がすく一枚。


★ディジー・ミズ・リジー『ライヴガズム!』(ソニーミュージック SICP 5640)CD
日本先行発売の約78分15曲入り(海外では12月8日にLPとデジタル・データでリリースらしい)。
CDのフォーマットでのリリースは日本のみとのことで、
歌詞/和訳やライヴ写真などで彩った28ページの日本特製ブックレット封入。
初回限定の二つ折り紙ジャケット仕様だ。


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Bob Dylan『Trouble No More The Bootleg Series VoL.13 / 1979-1981』

Bob Dylan


ボブ・ディランの1979~1981年のライヴをまとめた計153分30曲入りの2枚組CD。
“ブートレッグ”というタイトルながら、もちろん今回もオフィシャル・リリースである。
デラックス版(8CD+DVD)やアナログ版(4LP+2CD)も発売中だが、
ここでは“スタンダード・エディション”を紹介する。

様々なライヴからの曲を抜粋で録音日はほとんどバラバラながら、
緻密な編集でひとつの流れができあがっている。
音質調整もバッチリだ。

日本以外でも有名な『Bob Dylan At Budokan』(1978年)の録音/発売の翌年からという
時代的な流れも興味深いライヴ集である。
ただしグレイテスト・ヒッツな選曲だったそのライヴ盤とはまったく違い、
本作にはディランの有名曲がほとんど入ってない。
この3年の間にリリースした『Slow Train Coming』『Saved』『Shot Of Love』の曲が大半を占め、
特に『Slow Train Coming』からは全曲収録されている。
曲のダブりは3曲だけで、
「Ain't Gonna Go To Hell For Anybody」と「Ain't No Man Righteous, No Not One」という
未発表曲も含む。

R&B色の濃いグルーヴィなロックンロールが肝でソウルフルな女性コーラス陣が目立ち、
大半の曲で二人の演奏者を配したキーボードの比重が高い。
ディランの歌声もバンドの音もノリノリでけっこう軽快な佇まいだ。

「Solid Rock」という曲の“rock”を音楽の“ロック”とも解釈できるなど
歌詞は例によって幾重もの意味を匂わせる。
とはいえディランの“ゴスペル時代”と呼ばれるのも納得の色合いに染め上げられ、
政治性も絡んだ宗教色の濃い歌詞はなかなかヘヴィ。
それでも、さらっと歌いつづっている。
スピリチュアルとか神がかっているとかの風情ではなくソウルフルなとも違う、
クールな歌い口がディランならでは。
福音とまでは言わないが“伝道”するにはこれぐらいのヴォーカルの重さがいいのかなとも思った。
声からはそれほど深刻なニュアンスが感じられないから、
そういう歌詞を面白がりながらまずか瞬間瞬間のサウンド全体を楽しむのがライヴってもんである。

未発表のカラー写真多数と長文英文ライナー(一曲ごとの曲解説含む)とクレジットで彩った
68ページのオリジナル“小冊子”と、
歌詞・語り+それらの和訳や英文ライナーの和訳が載った76ページの日本版ブックレットが、
プラケースと一緒に紙ケースに収納されている丁寧な作りのリイシューだ。


★ボブ・ディラン『トラブル・ノー・モア(ブートレッグ・シリーズ第13集)1979 - 1981』[スタンダード・エディション](ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP31099-100)
一般のCDプレイヤー等で再生可能なBlue-Spec CD 2の2枚組。
ジャケットの内側には当時のチケットの半券と思しき写真がズラリと並べられている。


長見順『在庭坂(ZAINIWASAKA)』

長見順『在庭坂(ZAINIWAZAKA)』


山形県に近い福島県福島市在庭坂が拠点のシンガーソングライターである、
長見順(うた、ギター、ほか)の新作。
80年代から活動を始めてから多彩な展開を続け、
98年にファースト・アルバムをリリースして以来ソロ作品も多数発表してきた。
セカンド・アルバム『OYAZI』(2003年)をリリースした際には忌野清志郎も賛辞を寄せていたが、
それも納得のおおらかな佇まいが本作では深化している。


彼女とともに近藤達郎がプロデュースし、
ワダマコト、土生"TICO"剛、浦朋恵、小森慶子、早川岳晴、芳垣安洋、かわいしのぶ、GRACE、西尾賢、
岡地曙裕、向島ゆり子、高橋香織、ジュジュ井上、会津マスクワイア、ブラウンノーズ1号、
タカノシンジ、ランブリン前田らも参加。
いわゆるロック・バンドの楽器構成を核にしつつ彩り豊かな仕上がりで、
曲によってスティールパン、バリトン/アルト・サックス、ウッド・ベース、ヴァイオリン、
ヴィオラ、バンジョーなどの楽器が入り、
さらにたくさんの人がユニークなコーラスをとっている。

まさに楽しみながらみんなでレコーディングしたような空気感を真空パック。
みんなが盛り立てて具がいっぱいのホーム・パーティみたいなアルバムだが、
渋く和らいだ長見のギターもさることながら、
近藤が弾くエレクトリック・ピアノ、ピアノ、オルガンを潤滑音にして上手くまとめている。

音楽的にはR&B・・・しかもけっこうモダンでメジャー感のあるR&Bが大半の曲のベースだが、
あくまでも音はやわらかく、
ジャズやレゲエなどもフリーギーかつキャッチーにブレンド。
曲ごとに凝っており、
長見が役者になってセリフのようなトーキング・ヴォーカルで演じるシアトリカルな曲もあり、
ゆったりと自由に曲が進む。

とにかく全編元気である。
“私”より“あたし”が似合う一人称の歌はユーモラスでオチャメ。
けど豪快なようで歌声はなかなかキュート&繊細で、
舞い踊った後にしっとり歌うヴォーカルが特にすっぴんだ。

こういう歌ものの人のCDにしては珍しく歌詞カードが付いてないところも特筆すべきだろう。
言葉尻をとらえて一喜一憂したり、称賛したり、ディスったりして喜ぶ世の中、
色々と人生をくぐってきて今があるような多幸感をアルバムの歌とサウンドの全体で味わいたい。


三味線や太鼓も入るボーナス・トラックはライヴの打ち上げか余興のプレイにも聞こえるが、
“御愛嬌”で済ませるにはもったいない生のレコーディングである。


★長見順『在庭坂(ZAINIWASAKA)』(Nyon NJ-006)CD
約65分13曲入り。
味のある紙質とデザインで曲ごとの参加者もクレジットされた四つ折りインナー封入の、
カードボード状の二つ折りペーパー・スリーヴ仕様。


NUDGE'EM ALL『GO』

ナッヂエムオール


94年に東京で結成された“ポップン・ロール・バンド”の
NUDGE'EM ALL(ナッヂエムオール)が6年ぶりに出した新作。
約19分7曲入りのヴォリュームながら聴き応えありありだ・


歌詞が全曲日本語になり、
いい意味で濃くなった。
甘いヴォーカルで歌われる日本語がはっきり聞き取れるだけに、
音とのケミストリーが五割り増しなのだ。
寅さんとは関係ない曲と思われるが、
「オトコはつらいよ」ってタイトルの曲まで堂々と歌い抜くなんて
スカしたパワー・ポップ・バンドにはできない芸当である。
ここまでベタなラヴソングの連発も最近のバンドは意外とあまりないような気がするし、
てらいなく堂々と歌い倒しているところも好きだ。

ドラマーが作詞でヴォーカル/ギターが作曲というソングライティング・チームは、
たとえは乱暴でホメすぎだが、
レノン/マッカートニーやジャガー/リチャーズもイメージするほど相性バッチリである。
ところによってはシティ・ポップスの旨みもハジけているし、
シュガー・ベイブ周辺が好きなポップス・ファンも楽しめそう。
モータウンや初期のBEATLESのビート感やエッジも感じる。
2010年代に加入したキーボードとベースのメンバーも目立っていて、
特にキーボードはかつてのNUDGE'EM ALLとは別のリズミカルな新しい疾走感を生み出している。

ドラマーのビートがパワフルだから曲によってはパンクっぽく聞こえるが、
パンク・ロックと呼ぶのは抵抗がある。
パワー・ポップとも微妙に違う気もするしで、
“パワー・ポップス”と強引に言ってしまいたくもなる。

いや、ここはひとつ、
敬意をこめてクールなポップス!と言い切りたい一枚だ。


★NUDGE'EM ALL『GO』(KOGA KOCA-95)CD
ジャケットも兼ねた三つ折りの歌詞カード封入。


SpecialThanks『Anthem』

SpecialThanks『Anthem』


ギターを弾きながら歌う女性がフロントに立ち、
2000年代半ばに愛知県でスタートした“メロディック・ギター・ロック・バンド”の新作。

コンスタントにリリースを続けてきたバンドで、
これは作品としては『heavenly』以来の1年ぶり、
オリジナル・フル・アルバムとしては約2年ぶりで3作目にあたる。
ギタリストとドラマーが新メンバーの4人編成でのレコーディングだ。

Joan Jett & The BLACKHEARTSで知られる「I love Rock n`roll」を思い出す曲で始まるが、
アルバム全編いい感じでJ-POPっぽい切ないメロディ・ラインに覆われている。
もちろんメジャーなJ-POP特有の押しつけがましさはない。
洗いざらしのシャツみたいな佇まいの歌とサウンドなのだ。

メロディック・パンク風あり、
グランジ・ロックとメロディック・パンクとUSインディ・ロックのブレンドみたいな曲あり、
まったりしたポップスあり、
メロディック・パンク/インディ・ロック以降のAORといった風情のシティ・ポップスあり、
クリスマス・ソングっぽい旋律のレゲエからメロディック・パンクで走る曲あり、
フォーク・ロックありで、
彩り豊かだ。
ときおりメタリックなギターが飛び出すのは、
パワー・ポップやガール・ポップへの造詣が深くメタルへの愛も深い本作リリース元のオーナーである
古閑のエグゼクティヴ・プロデュースの影響かもしれないが、
歯切れのいい音が胸をすく。

英語のフレーズを入れつつも遂に全曲日本語メインの歌詞で勝負を挑んでいる。
母音の響きが支配する日本語の語感とリズムが曲をリードする形になったわけだが、
日本語の言葉がちゃんと聞こえてくるにもかかわらず、
ヴォーカルと楽器がブレンドしたSpecialThanksならではのサウンド全体のやわらかい質感は変わってない。

全曲作詞作曲している唯一のオリジナル・メンバーのMisaki(vo、g)のヴォーカルもますます冴えている。
甘酸っぱい歌声ながら
たおやかなで裏声が微妙に色っぽく、
息を吐くように解き放つナチュラルな肯定性の歌が木漏れ日のように光っているのだ。

SpecialThanksのゆっくりした進化と深化の歩みをずっと追ってこられて僕は幸運だとあらためて思ったし、
あらためて大器晩成だと思った。
オススメ。


PS
テレビ東京の土曜日の『おしゃべりオジサンと怒れる女』の5月度EDテーマで「happy』が使われ。
HTB北海道テレビ放送は、
『NO MATTER BOARD』で「white lover」をOPテーマ、
『おにぎりあたためますか』の2017年1月度EDテーマに「snow town~雪の降る街に~」を使っている。


★SpecialThanks『Anthem』(KOGA KOGA-205)CD
プラケースに収まった微妙に変形の特殊ジャケットに、
手書き書体の四つ折り歌詞カードが封入されている。
約35分12曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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