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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

福岡英朗『ひ』

福岡英朗


バンド時代も含めれば20年以上マイペースで東京拠点に音楽活動を続けている、
“シンガーソングライター音楽家”の新作CD。

4曲で他のミュージシャンがドラムを叩き、
1曲の作詞でゲスト参加も仰ぎつつ、
ほぼ自作独演盤。
でもいい意味で職人肌には聞こえないライヴ映えする曲ばかりだ。
ギミック無し、妙な演出も無しの生音楽で、
収録曲が7曲でも聴きごたえありありの濃厚な“ポピュラー・ロック”の佳作である。


CD全体だけでなく一曲の中でもヴァラエティに富んでいる。
どういう音楽から影響されているのかあまり聞こえてこないブレンド具合がたまらない。
ソフト・ロックやブラジル音楽から、
PRIMAL SCREAMとかCreation Records周辺のロック・バンドまでイメージする
現在進行形のシティ・ポップだ。
ニック・ロウやデイヴ・エドモンズあたりのパワー・ポップ感覚に
“2019年のAORテイスト”のスパイスをピリリと利かせたような、
アレンジの妙味がこそばゆい。
音や声の重ねも適度でシンプルなサウンドだから、
都会の中の静かな公園や田園の香りがしてくる。

ヴォーカルが軸とはいえ歌ものと言い切れないのは、
耳にやさしい音作りの柔らかい響きの楽器も大きいバランスで仕上げられているからである。
バンド演奏に聞こえる作りで、
ギターはもちろんのこと曲によってはキーボードや管楽器っぽい音も聞こえてくるが、
ほとんどの曲をベースがぐいぐい引っ張っている足腰のしっかりしたポップスだ。

メジャー感バリバリ!とは言わないが、
いわゆるインディ・ロックによくある内向き感はなく、
ダイナミックな外向き志向の意識がサウンドから滲み出ている。
PAVEMENTの後期やスティーヴ・マルクマスの感覚とニアミスしつつ、
いい意味でもっとしっかりしている。
本人曰くラスト・ナンバーは、
ポール・マッカトニーが東京ドームでWINGSのナンバーを演奏しているのを観て、
「WINGSのダイナミクスを表現したい」ということで今回のアレンジにしたらしいが、
なんとなく伝わってくるニュアンスの仕上がり。
もしやエンディングの音声はそのライヴの生録りだろうか。

やさしげだが決して涼しげではない淡いヴォーカルである
多少ぐだぐだした静かな歌い口、
でもポップにゆっくり躍動している。
肉食音楽ではなくてむしろ草食イメージのCDだが、
ラスト・ナンバーとオープニング・ナンバーが“肉”でつながっている。
けど、確かに、意外と、こってりしている。
人称名詞をほとんど使わず、
日常的な光景の物語のようで意味深な内容の歌詞も飄々と深い。

表ジャケットにも帯にもプラケースの背中部分にも自分の名前を記してない。
パッケージ裏のクレジット部分で初めて“Hideo Fukuoka”のCDだとわかる。
そんなところにも密かに自信を感じさせるオススメ盤。


★福岡英朗『ひ』(BeatBet BBR-005)CD
しっかりした作りの30分強の7曲入りにもかかわらず、
購入してみたくなる税抜き1000円という販売価格の心意気も買いたい一枚だ。
“ひ”の文字がニコちゃんマークの口みたいなジャケットも渋い。


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佐藤幸雄『ライブ・アト・ニヒル牛(通常盤)』

佐藤幸雄『ライブ・アト・ニヒル牛(通常盤)』


すきすきスウィッチを80年代初頭等に率いていた佐藤幸雄(vo、g)が、
今年の2月23日から3月7日まで13日間連続で録音した曲をまとめた約70分のソロCD。
60歳の誕生日を迎えた頃に東京・西荻窪のニヒル牛で行なったライヴのようだ。

佐藤幸雄とわたしたちのメンバーでもあるPOP鈴木(ds他)が22曲に、
たまでの活動で知られ大谷氏とのホルモン鉄道のメンバーでもあり
本作録音場所のニヒル牛をプロデュースもしている石川浩司(per他)が5曲に参加。
もちろん大半の曲は佐藤のキター弾き語りの独演だ。

本作のリリース元でもあるTELEGRAPH Recordsから1983年に出した
すきすきスウィッチの37トラック入りソノシート5枚組『忘れてもいいよ』を思わせる怒涛の、
計99曲を時系列でまとめている。
ジャケットに記された本作のテーマと思しきフレーズに沿ったような内容だ。

99曲入りといっても一曲丸ごと収めた曲はほとんどないと思われ、
レコーディングした曲の一部(大半は30~50秒程度)を、
曲の始まりにフェイドイン~曲の終わりにフェイドアウトも使いながら抜粋して編集し、
ほぼ“ノンストップ・ミックス”でつなげている。
これがなかなか面白い。
曲や歌の肝や核がコンパクトに凝縮されていてCD全体がテンポよく進み、
佐藤ならではのポップ感も浮き彫りになっているのだ。

佐藤の作詞・作曲のオリジナル・ナンバーのみで曲は多少ダブっているが、
同じようにはなっていない。
VELVET UNDERGROUNDの3作目『The Velvet Underground』ルー・リードのソロ初期作、
ジョナサン・リッチマン~MODERN LOVERS、
ボブ・ディランあたりの影がよぎるが、
あくまでも日本語の歌。
やさしい歌い口ながらパーカッシヴなヴォーカルで生々しくまったり曲が連発され、
フォークというよりロックンロールと言いたい疾走感に貫かれている。
そんな中で飛び出す70年代の歌謡ポップスみたいな味わいの曲も佐藤ならでは。

佐藤幸雄の“歌もの盤”ならではの小気味いい一枚。


★佐藤幸雄『ライブ・アト・ニヒル牛(通常盤)』(テレグラフ TGC-039)CD
歌詞(ほとんどがひらがな表記)と、
須川善行執筆のライナーが載った12ページのブックレット封入。
そのライナーと曲名の英訳も添えられている。


ScreenTones『孤独のグルメ season 7 オリジナル・サウンドトラック』

ScreenTones『孤独のグルメ season 7 オリジナル・サウンドトラック』


原作者の久住昌之を中心にした“スクリーントーンズ”による、
テレビ・ドラマ『孤独のグルメ』のサントラ盤の第七弾。
昨年放映のseason 7の13話と特別編の2話のドラマなどから30曲を抜粋してまとめている。


久住をはじめとする5人での録音ながら今回も曲によって演奏者が異なり、
バンド・メンバー全員から独演までと様々だ。
久住がアコースティック・ギターとプログラミングを担当した他に、
ソプラノ/テナー・サックス、ソプラノ・リコーダー、オルガン、シンセサイザー、
エレクトリック・ギター、マンドリン、ウクレレ、パーカッション、ドラムなどが使われている。
作曲者も曲によって異なり共作も多いが、
すべてがまさに“スクリーントーンズ”サウンドでぱらつきがまったくない。

番組の料理と同じく例によって色んなポピュラー音楽の雑食ながら、
統一感バッチリのスリリングな流れのアルバムに構成されている。

民俗音楽やジャズ、
タイトルどおりに「なんとなくメキシカン」な曲やブラジル音楽を含むラテンもたっぷりだ。
サッカーの応援歌っぽくもあるseason 7のテーマ曲の「Irish Spoon』をはじめとして、
快活デリケイトなアイリッシュ・テイストもチラホラ。
初の韓国ロケ編の曲「雨のソウル駅」は『冬のソナタ』系の韓流ドラマの甘い香りムンムン。
“京都チューン連発コーナー”も設けられ、
京都編3部作やDVD特典用に作られた曲の「この家に帰ってこよう」も含まれている。
「あんトースト」は名古屋出張編の曲で、
「五郎デンデケ」という曲は
神戸のモズライト・カフェから贈られたモズライト・ギターを使ったサーフ・チューン。
「鋼鉄のスプーン」という曲はタイトルどおりにScreenTones流のメタルだ。

ビートが効いている曲でも主旋律のしっかりした耳に馴染みやすい曲ばかりで、
ひとつひとつの楽曲クオリティの高さにもあらためて驚かされる。
もちろんアカデミックな臭いとはかけ離れているが、
明快なのに安っぽくもない。
大味とは真逆で、
おもてなしビシッ!とシンプルな素材の味を活かした確かな旨さが光る。

ふだんより
ちょい“ふんぱつ”して
食べ物屋さんで味わう大衆料理みたいな音楽だし、
“邦画”だけでなく欧州や中南米の映画にも似合いそうな音楽集である。
艶やかな響きの音のレコーディング仕上がりも高得点で、
こういう音楽にピッタリだ。


★スクリーントーンズ『孤独のグルメ season 7 オリジナル・サウンドトラック』(地底 B85F)CD
アルバム・カヴァーはseason 7の第一話に登場した埼玉県上尾市に実在する食堂の写真で、
スクリーントーンズの8年間を綴った8ページのブックレットと、
JASRACや著作権等に対して久住の考えをわかりやすく綴ったインサートを封入。
約61分30曲入り。


QUSDAMA『大きなくす玉』

QUSDAMA.jpg


『孤独のグルメ』のサントラで有名なSCREENTONESなどで多彩に活動する、
久住昌之の新バンドのファースト・アルバム。

メンバーは、
久住昌之(歌、ギター、ウクレレ、ハーモニカ、ベース)
醍醐弘美(歌、ピアノ、オルガン、アコーディオン、鉄琴、蚊とり線香)
宇賀まり(歌、ソプラノ・アルト・テナー・バリトンサックス・掃除機・包丁・まな板)
である。


上記の担当パートはリリース・レーベルのオフィシャル・サイトに載っているものだが、
もちろんローファイな作りではない。
ヴォーカル、ギター、ピアノ、管楽器が基本の“本格派”だ。
ほとんどの曲を久住一人が書いていてリード・ヴォーカルをとっているが、
バンド全体でアレンジしたことがよくわかる多彩な音の仕上がりである。
いわゆる打楽器をほとんど使ってなくても
3人の奏でる音はメロディアスなだけでなくけっこうリズミカルで、
“心のビート”として鳴っている。

ジャズ、ロックンロール、R&B、世界各地の民謡、唱歌、カントリー、フォークなどなど
数え切れないポピュラー・ミュージックの旨みがいっぱいで、
アレンジ・ワークも光る滋味深い歌ものだ。
水前寺清子の「365日のマーチ」かと思ったオープニングで意表を突いて一気に持っていくが、
他の曲も“元ネタ”をわざと透けさせているかのような作りで、
“応用力”に長けた久住のバンドならでは。

ほのぼのした曲あり、
シリアスな歌あり、
くだけた歌あり。
穏やかな歌声の熱唱も聴き応え十分だ。

「QUSDAMAのテーマ」「線路つたい歩き」「自由の筈」「キミにあいたい」「11+31」「落ち武者」
「おにぎり持って」「キャベツになりたい」「豆腐の人」「ナットーソング」「味が落ちた」
「くす玉割れた」「長い道草」
といった曲名からもイメージが湧く情景の歌からは、
音と同じく洒落たユーモアが滲み出ている。
久住昌之/加藤千晶 with QUSDAMAの4曲入りCD『大根はエライ』で発表した3曲をはじめ、
飲食関係の曲が多い。
食べ物に対する感謝の気持ちがそれらの曲の丁寧な作りと歌唱から伝わってくるし、
おいしいアルバムってことがよく表れている。

NHKの番組『みんなのうた』で歌われても違和感のない曲が多いのもチャーム・ポイント。
もちろん無味乾燥な歌じゃなく、
さりげなくスパイスが効いて批評性もはらむ。
何の変哲もない歌のようで実は深く、
アルバム全体でドラマチックな流れになっている。

僕のようなヒガミ屋でも楽しめるが、
樹木希林が言っていたように面白がることが大切とも思わせる一枚。
久住の名字を引用したとも想像できるバンド名とアルバム・タイトル、
久住が描いたジャケット画もピッタリだ。


★QUSDAMA『大きなくす玉』(地底 B82F)CD
四つ折り歌詞カード封入の二つ折り紙ジャケット仕様の約49分13曲入り。


Elvis Presley『LOVE ME TENDER The Greatest Hits』

Elvis Presley『LOVE ME TENDER The Greatest Hits』


テレビ・ドラマ『高嶺の花』の主題歌にもなった「Love Me Tender」で幕を開ける
約80分30曲入りのベスト盤。
今日発売のCDである。


ファンクラブの“エルヴィス・プレスリー ソサエティ・オブ・ジャパン”の人が
レコード会社のスタッフと選曲したセレクションがまず素晴らしい。
バラードからロカビリーまで有名曲の連発である。
ほぼ時系列で曲が並べられているが、
CD全体でひとつの流れができているのもプレスリーの魔法ってもんだろう。

プレスリーは、
歌っている時の腰使いがワイセツとかその手の観点で
“politically correct”みたいな当時の連中にイチャモンをつけられたらしい。
それはともかく本能に忠実でひそかにクレイジーな歌とはいえ、
歌詞が“18禁仕様”じゃなくても音声だけで淫らなことをイメージさせるものがある。
わざわとらしくエロい歌い方しなくても素の歌唱が艶っぽいのだ。
いつも書くように一番大切なのは響きだってことをあらためて思わされる。

DEAD KENNEDYSがカヴァーした「Viva Las Vegas(邦題:ラスヴェガス万才)」も、
もちろん収録。
「A Little Less Conversation(かつての邦題は「おしゃべりはやめて」)を
68年のオリジナル・ヴァージョンではなく、
オランダのJUNKIE XLが2002年にリミックスしてヒットした
“JKLラジオ・エディット・リミックス”で収めて締める作りも特筆したい。
プレスリーの音楽がノスタルジックな存在ではなく現在進行形ということを示してもいる。


エピソード満載でわかりやすくポイントを押さえた全曲長文解説も読み応えあり、
同じく見やすいレイアウトで全曲の歌詞と和訳が載った44ページのブックレット封入。
ちょい厚めのプラケースで分厚いブックレットもすんなり収納できるパッケージで、
お値段も抑え目で至れり尽くせりである。

曲自体はネットを漁れば聞ける(≠聴ける)ものが多いのかもしれないが、
こうやって丁寧に作られたトータル・パッケージで歌詞や曲解説を眺めながら耳を傾けると、
より深く味わえる。
気軽に楽しめる曲ばかりながら、
じっくり向き合いたくもなるブツだ。


★エルヴィス・プレスリー『ラヴ・ミー・テンダー~グレイテスト・ヒッツ』(ソニー・ミュージック SICP 31174)CD[一般のCDプレイヤー等で再生可能な-specCD2]


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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