なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

鈴木恵TRIO『恋は水色』

鈴木恵TRIO『恋は水色』


パワー・ポップ・バンドのEXTENSION58のフロントマンで
最近はRYUTistに楽曲提供もしている新潟拠点の男性シンガーソングライターの鈴木恵による、
2007年スタートのプロジェクト・バンドが約4年ぶりに出した2枚目のCDの5曲入り。

鈴木恵(ヴォーカル、ギター、サックス、フルート、オルガン、パーカッション)、
おおのただし(ヴォーカル、ベース)、
青木宏美(ヴォーカル、ドラムス、グロッケンシュピール、メロディカ、パーカッション)がメンバーだ。

基本的にロック・バンド編成で演奏しているが
シンプルな作りながら彩り豊かなアレンジも相まって一曲一曲が短編映画みたいなCDである。
ブラジル音楽、ソフト・ロック、R&B、AOR、ネオアコなどなどのスペシャル・ブレンドで、
パワー・ポップ通過後のメロウなポップスが生き生きと息をしているサウンドだ。
女性ドラマーならではと言えるやわらかいビート感と適度にゆるいリズムも甘酸っぱい旋律の楽曲にピッタリで、
パンチの効いたパワフルなポップスが空間に広がっていく。
曲によってゲストが
ペダル・スティール・ギター、エレクトリック・ピアノ、トランペット、トロンボーンを加えているのも効果的だ。
奥行きと広がりのあるレコーディングの仕上がりも申し分無し。
みずみずしい響きに“耳が奪われる”のだ。

借りてきた猫みたいに上品な歌い方ではなく多少英語混じりの日本語で歌うヴォーカルもナチュラルで、
“ポーズ”を付けてないから滑らか。
CDタイトルやジャケット画のイメージのドラマが歌詞でも繰り広げられ、
タイプは違えどSHE & HIMあたりとも接点を持ち得る“地方都市のシティ・ポップス”と言いたい。

収録曲は5曲ながらトータル約19分でなかなか濃く聴き応えありありの作品だ。
誠実な音楽にジャンルは関係ないのです。


★鈴木恵TRIO『恋は水色』(SONG CYCLE KOSC-002)CD


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スクリーントーンズ『昼のセント酒 オリジナル・サウンドトラック』

スクリーントーンズ 昼のセント酒


ドラマ『孤独のグルメ』シリーズでもお馴染みの久住昌之が率いるスクリーントーンズのCD。
同じく久住が“原作者”であるテレビ東京系列のドラマ『昼のセント酒』のサントラ盤だ。
スクリーントーンズ自体はバンドだが、
ほとんどの曲をメンバーやゲストが一人で作曲し、
ほとんどの曲がメンバーやゲストの独演か2~3人の編成で入れ替わり立ち代わりレコーディングしている。

久住昌之、Shake、フクムラサトシ、栗木健、河野文彦といったメンバーが、
アコースティック・ギター、ハーモニカ、ウクレレ、鼻笛、ヴォイス、シンセサイザー、アコーディオン、
エレクトリック・ギター、プログラミング、ソプラノ&テナー・サックス、ホウィッスル、
ソプラノ&テナー・リコーダー、パーカッション、バンジョー、マンドリンを担当。
えりんぬ(アコーステイック・ピアノ、作曲)、田島朗子(ヴォイオリン、作曲)、
直場友紀恵(クラリネット)らのゲストも参加している。

民俗音楽、ジャズ、ニューウェイヴ、AOR、ブルース、カントリー、レゲエなどなど
“音楽食材”は無数ながら、
やっている人間が同じだけに音楽の“持ち駒”は『孤独のグルメ』と基本的に同じだが、
こちらはもっとほのぼのしている。
銭湯にピッタリの親しみやすい雑種のポピュラー・ミュージックで、
ほとんどがパンク・ロックっ気のないインスト・ナンバーだが、
それこそOLEDICKFOGGYに近い“昭和大衆”の匂いを感じたりもする。
和食に洋食や中華やエスニックをちょこちょこ混ぜたよう風味の音楽で、
曲によってはSF映画みたいな神秘の光を放っているところも侮れない。

ドラマのサントラ盤という性格上やはり小曲がほとんどだが、
開かれたイメージがゆっくりとゆっくりとふくらんでゆく。
デリケイトな音の仕上がりもたいへん特筆したいところだし、
その中にさりげなく頓智が効いている。
ユーモアは曲名ひとつひとつにも表れているが、
音そのものに“微笑みのダシ”が効いていてるから日本語タイトルの意味がわからない外国の方の頬がゆるむ。
血のめぐりと頭のめぐりが良くなり、
音楽のちょこっとした力をあらためて思う。

“明るいうちに銭湯に行って、湯上がりにビール!”といったことがテーマの音楽のようで、
お湯につかりながら一杯(もちろんビア推奨)やって料理をつつくみたいな庶民贅沢モードののんびりムード。
もちろん呑まない方も、
なんとなく呑んだみたいに炭酸がハジけて苦味バッチリしあわせになれる。
今回も間違い無し!の一枚。


★The ScreenTones『昼のセント酒 オリジナル・サウンドトラック』(地底 B69F)CD
“第十二湯”までのドラマに登場したものと思しき銭湯と食事の写真が内部に載ったジャケットの
約51分38曲入り。


ScreenTones『孤独のグルメ シーズン5 オリジナルサウンドトラック』

2ScreenTones『孤独のグルメ シーズン5 オリジナルサウンドトラック』


テレビ東京系で放映されているシリーズ・ドラマ『孤独のグルメ』のサントラの第五弾。
昨秋から今年の元旦にかけてオンエアされた“シーズン5”の音楽を、
原作者の久住昌之(g、syn、vo)が率いるThe ScreenTonesがやっている。

今回も曲によって作曲者と演奏者が異なりバンド・メンバー全員での曲はほとんどないが、
“大衆グルメ”の味わいは健在。
アコースティック/エレクトリック・ギター、シンセサイザー、ヴォイス、ソプラノ/テナー・サックス、
ホウィッスル、リコーダー、プログラミング、ウクレレ、バンジョー、パーカッションなどが使われ、
ゲストの田島朗子がヴァイオリンを演奏している。

サントラという性格上小曲も含む彩り豊かな流れで、
サーフ、童謡、ジャズ、R&B、スカ、ブラジル音楽、民俗音楽、ファンクなどなどが
ちょっとずつCDの“弁当箱”を賑わし、
古き良きポピュラー・ミュージックのオリジナル曲で色とりどりだ。
人間が食べられるために命を止められた動植物に対する敬意に基づく食事のマナーみたいに、
ちゃんと品がある。
和洋中華など色々と日本風に調理した料理と同じく音楽も日本の味でアレンジ。
斬新な音楽ではないかもしれないが応用力に舌つづみである。

「五郎のラグタイム」「夕焼けカントリー」「大陸ンマヤ」「西荻モロッカン」「ペルシャ絨毯」
「台北ストレンジャー」「台北快晴」「茉莉花茶」「さびれたブルース」
といった曲名からもイメージできる味が体の中に広がる。
四つ折りジャケット/“インナーシート”には、
当該ドラマで扱われたと思しき料理の写真がモノクロで載っている。
ほとんどは東京近辺のお店の料理ながら台湾と北海道で撮られた料理も収め、
その大半はいわゆる大衆食堂の料理ではないかもしれないが、
庶民がちょぴっと奮発して食べるそういう料理同じく、
庶民がちょぴっと頑張って洒落たような音楽なのだ。

ほのぼのと鼻をくすぐってリリカルながら快活で、
音の仕上がりは迫力あり、
クリアーな音の仕上がりでアタック感バッチリ。
スタイルは全く違うが、
ポピュラーな雑食性と肉食性がジョン・ゾーンの色々なアルバムも思い出す一枚だ。


★スクリーントーンズ『孤独のグルメ シーズン5 オリジナルサウンドトラック』(地底 B65F)CD
約56分31曲入り。
“ボクはJASRACによる著作権管理に関して疑問をもち~”という、
『孤独のグルメ オリジナルサウンドトラック』のシリーズの楽曲使用に対する考え方を久住が綴った紙片が
今回も封入されている。


Tim Christensen & Mads Langer『Side Effects』

Tim Christensen Mads Langer『Side Effects』


デンマークの国民的ロック・バンドDIZZY MIZZ LIZZYのリーダーのティム・クリステンセン(vo、g他)が、
2006年デビューで一世代下になるデンマークの人気シンガーソングライターのマッズ・ランガー(vo、g、kbd)
と組んだ5曲入り。
海外では“Mads Langer & Tim Christensen”名義でのリリースだが、
日本盤は名前の順番が入れ替わっていてジャケットのデザインもそのように多少変更されている。

DIZZY MIZZ LIZZYは、
まもなく日本先行発売で20年ぶりのサード『Forward In Reverse』(既に聴かせていただいたが佳作)を出して、
来月日本ツアーを行なうが、
このCDはハード・ロック色がほとんどない。
すべての曲が共作でティムのソロ活動に近いポピュラリティ抜群の歌ものだ。

曲によってはアダルトなムードも漂っているが、
AORと呼ぶにはシャープ&パワフルな音作りで迫る。
生ドラムとプログラミングの音がニューウェイヴ/ポスト・パンクのアップデート版なのも特筆すべきで、
当時“ブリティッシュ・インヴェンション”と呼ばれて80年代のアメリカで人気を博した
イギリスのアーティストの洗練された曲を思い出す。

「Fact – Fiction/Silverflame」という曲名通りにお互いの代表曲のバラードを一つにリメイクした
アコースティック・チューンで締めるのも心憎い。


★ティム・クリステンセン&マッズ・ランガー『サイド・エフェクツ』(ソニー・ミュージック・エンタテインメント SICP-4766)CD
初回限定デジパック仕様の約22分5曲入り。
日本盤は歌詞(英語)/和訳やクレジットが読みやすく載った丁寧な作りの16ページのブックレット封入。


Jeff Buckley『You And I』

Jeff Buckley『You And I』


父親のティム・バックリィ直系のアシッド・フォークのニュアンスをモダンに展開しつつ、
97年に30歳で水死したカリフォルニア生まれのシンガーソングライターの未発表音源集。
全曲アコースティック・ギター弾き語りの独演である。

94年リリースの唯一のアルバム『Grace』と同様にアンディ・ウォレスがプロデュースや録音やミックスを手がけた
93年11月レコーディングの曲で幕を開けるが、
それ以外の9曲はメジャー契約直後の93年の2月にスタジオで録音されている。
後者は時おり“MC”も挿入しているから観客のいないスタジオ・ライヴの様相で、
未加工ながら後者もプロデューサーの名がクレジットされていて音質良好だ。

自作自演歌手とはいえ本作は、
デビュー・シングル曲「Grace」の別ヴァージョンと未発表曲「Dream Of You And I」以外はカヴァーである。
ボブ・ディランの「Just Like A Woman」、
Sly & the FAMILY STONEの「Everyday People」、
ルイ・ジョーダンの「Don’t Let The Sun Catch You Cryin’」、
ジェヴェッタ・スティールの「Calling You」(映画『バグダッド・カフェ』のテーマ曲)、
The SMITHSの「The Boy With The Thorn In His Side」と「I Know It’s Over」、
ブッカ・ホワイトの「Poor Boy Way from Home」、
LED ZEPPELINの「Night Flight」
をやっている。

父親の影響でもしかしたらリアル・タイムで聞いた曲が多いのかもしれないが、
ジェフが物心からついてから聴いたのはThe SMITHSとジェヴェッタ・スティールと言える。
特に前者は渋い選曲も興味深い。

どの曲もじっくりじっくり歌い紡いでいる。
コピーで終わってはいないが、
各々の曲のオリジナル・シンガーの歌い方のクセを活かしたアレンジ・センスも楽しい。
色々な点で振り幅の広いこれらの曲を強靭に歌い倒していることで、
艶やかな喉の魅力にあらためてとろけるのであった。

ギター・プレイの妙味も聴きどころの一枚。


★ジェフ・バックリィ『ユー・アンド・アイ』(ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP 4751)CD
約53分10曲入り。
日本盤は、
8ページのオリジナル・ブックレットに載ったジェフの母親のメアリー・ギバートによるライナーの和訳、
「Poor Boy Long Way From Home」以外の歌詞とその和訳、
個々の平易な曲解説も含む萩原健太執筆のライナーが載った20ページのブックレット封入。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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