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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

静かの海 at 東京Zher the ZOO YOYOGI 2月2日

静かの海


70年代後半から80年代初頭にかけてプログレッヴ・ロック・バンドの新●月で活動を共にした
花本彰(kbd)と北山真(vo他)によるユニットの静かの海が、
デビュー作『静かの海』の発売記念ライヴを行なった。
アルバム参加ミュージシャンの中から選抜された、
津田治彦(g/新●月、新●月Project)、村上常博(g/月兎)、
荻原和音(kbd、フリューゲルホルン/新●月Project)、石畠弘(b/新●月Project)、
谷本朋翼(ds/STELLA LEE JONES, taika, Muff, SeRafiL, 新●月Project)とのステージだ。

“オープニング・アクト”が2組登場。
まず北山と高津昌之(vo、g)の牛浜ブラザースがEVERLY BROTHERSなどのカヴァーを披露。
休憩挟まずに花本を含む3人がそのまま加わって一日だけの再編セレナーデのプレイが始まり、
MOODY BLUESの「Nights In White Satin(放題:サテンの夜)」の
カヴァーでスタートしたことが象徴するように
“どプログレ”だった。
共に静かの海の音楽性の源泉をそっとほのめかしたかの如き粋な“前座”である。


あまりインターバルを空けることなくスムーズに静かの海のプレイが始まったが、
『静かの海』の曲をCDどおりの曲順で“再現”するライヴと僕は勝手に思っていた。
それほどアルバムの曲順はパーフェクトで他のパターンの曲順はありえないと思っていたからだ。
でもいい意味で期待が裏切られた。
静かの海のライヴは“再現”ではなく何が飛び出すかわからないスリリングな流れで、
アルバムのアレンジを尊重しつつレコーディングした曲をそのままなぞりもしなかった。
イスに座って観るのが似合う曲だから
ライヴというよりコンサートという言葉がふさわしい音楽とも言えるが、
現在進行形の“~ing”で“生きている”まさにライヴ。
プログレを超える確かなロックを感じた。


マーチング・ドラム風のオープニングの静かな曲「テピラの里」で幕を開ける。
『静かの海』の構成をLPになぞらえればB面の1曲目にあたる曲で始めたところが心憎い。
続いて対照的に躍動する曲の「5人の天使」で、
テレビのドキュメンタリー番組『映像の世紀』のテーマ曲を思わせる勇壮なメロディと
ニューウェイヴ・テイストの疾走感がライヴでもたまらなかった。
3曲目は「マリア」。
MCが象徴するアットホームな雰囲気の核でステージ全体をプロデュースしていた花本によれば
かなり昔に作った曲でクラシカルなイントロに導かれるナンバーである。

前後の曲との“落差”で持っていく調子のセットリストで4曲目は、
『静かの海』だと最初のクライマックスのように用意されている「銀の船」だ。
元De-LAX(もちろんALLERGYの宙也がヴォーカルだったあのバンド)の京極輝男が
アルバムのレコーディングではドラムを叩いている曲で、
彼のパワー・ドラムも意識して作られたというのもうなずける躍動感にあふれ、
アルバムではリード・ギター・ソロは弾いてなかった村上が
エネルギッシュに麗しいソロ・プレイで痺れさせた。
花本がシングルにしたいほどの曲と言うのも納得で、
アルバムだと6分強だからシングル・エディションのヴァージョンも聴いてみたくなる名曲だ。

アルバムではオープニングを飾るキャバレー・ミュージック風のワルツの「調べ」が続き、
花本がチューリップの「魔法の黄色い靴」を聴いてコードが複雑な作曲を試みたと言っていた
新●月の「島へ帰ろう」もプレイ。
さらにヴォーカルとキーボードだけで「君と」、
もともと北山の実質的なソロ・アルバムで発表されていた曲「手段」、
そしてフリューゲルホルンも入った「光るさざなみ」で本編が終了した。


ボブ・ディランの「Like A Rolling Stone」は今でも歌えるけど、
(『静かの歌』の曲は)スイマセン、覚えられません」とのことで、
終盤までは歌詞を見ながら歌うシーンが大半を占めた北山。
だが“歌詞本”を広げて両手に持ってスタンディング・マイクを抱擁するように囲んで歌う姿は、
北山が本作の曲を称する言葉の“歌曲”を歌うのにふさわしかった。
北山の“正装”も北原白秋か山田耕筰かといった風情で、
明治~大正~昭和初期の香りもイメージしたからだ。

たおやかな北山のヴォーカルは、はかなげでもある。
だが、はかないものほど実は力強い。
ステージでの北山の佇まいと同じく凛々しい。
そして『静かの海』の作詞のテーマの“消えゆく言葉たち”が、
北山も歌声によって“再生”されていく時間を僕は体験した。
ときおりタンバリンを手にしてここぞという時の“キメ”のアクションで魅了する北山は、
パフォーマーとしてもさすが見事であった。


アルバム発売記念ライヴにもかかわらず『静かの海』から「地図帳」だけやらなかったが、
新●月の「島へ帰ろう」と「せめて今宵は」(アンコール)はやった。
70年代末の新●月からの連続性とその頃の曲との融和性を、
さりげなく示しているかのようなセットリストでもあった。


トータル75分弱、
久々に晴れやかな気持ちになって僕は会場を後にした。
デビュー作を出したばかりで気が早いが、
満員の観客の前で早々と制作を宣言したセカンドも楽しみに待ちたい。


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そこに鳴る『ゼロ』

そこに鳴る『ゼロ』


ギタリストの男性とベーシストの女性のツイン・ヴォーカル体制で、
2011年夏に大阪にて結成されたバンドによる『METALIN』以来の6曲入りの新録CD。
現在正式メンバーは二人だけでドラマーはヘルパーだ。


レーベルの資料によれば、
“メンバーが14歳の時に聴いた凜として時雨と9mm Parabellum Bulletの音源の衝撃を、
現在の自らの作品で、
当時の純粋な音楽に対する感情を持った自らに衝撃を与えるべく
初期衝動のみを追求した作品に仕上げる事を目標とした”とのこと。
なるほどだが、その2バンドよりも断然好きだ。

メタリックな音が目立ってテクニカルな演奏も随所で聴かせ、
ところによってKILLSWITCH ENGAGEDRAGONFORCEDREAM THEATERすら思い出すが、
けっこうヘヴィな音でありながらやはりシューゲイザーにニアミスしている空気感がポイント。
流麗でもメタルとは一味違うギター・ソロも自然な形で挿入され、
ドラムはヘルパーとは思えぬほどパワフルでブラスト・ビートも飛び出す。

メロディは切ないが、
どの曲も一ひねり二ひねりされていて凝った展開にもかかわらず一気にクライマックスまで持っていく。
アップ・テンポのパートが中心で疾走し、
キーボードやエレクトロニクスっぽい音も聞こえてきて、
あくまでもポップ。
と同時にキャッチーでありながらダークで、
ジャケットのイメージのサウンドだ。

“J-POP ロック”ほど歌を前面に出してなくて楽器と拮抗している。
中性的な男声が歌うパートが多く、
女性ヴォーカルと合唱するパートも目立つが、
どちらも繊細な歌声をまっすぐ放っている。
歌詞は“Special Thanks:生きとし生けるもの”というクレジットが象徴する内容で、
音楽の中にいる自分たちも対象化して歌にしている。

テンポがいいし、
曲も歌詞も練られているにもかかわらず考えすぎずに意外と肉体派でもある。
だから音像が突き抜けていて胸をすくのだ。
6曲でも聴き応え十分。
全体の流れも含めてアルバムと言っていいほど一つの作品として完成しているCDだ。


★そこに鳴る『ゼロ』
8ページのブックレット封入の約22分6曲入り。


VELVET UNDERGROUND『Transmission Impossible』

VELVET UNDERGROUND『Transmission Impossible』


VELVET UNDERGROUND関連の音源を収めた3枚組CD。
権利関係的に“灰色盤”のようだが、
いわゆる一般の流通網で出回っていて比較的安価で売られているから紹介する。


約73分16トラック入りのディスク1が今回の目玉だ。
ラジオで流されたという1966年のリハーサル音源13曲と、
同じくラジオで流れた1966年2月6日の地元ニューヨークのライヴ3曲である。
ブートレッグを漁っている方なら聴いたことのある音源も含むだろうが、
比較的廉価でこうしてまとまって聴きやすくなっているのはありがたい。
ファースト・アルバム『The Velvet Underground & Nico』が出たのが1967年の3月で、
そのレコーディングが1966年の4月以降とされるから、
貴重さは推して知るべし。
革命前夜の“宴”であり、
嵐の前の静けさならぬ、嵐の前のやかましさである。

もちろんクリアーな音質ではないが、
ヴォーカルが小さめのバランスながらエレクトリック・ギターをはじめとして恐ろしく生々しい。
リラックスした練習みたいな佇まいで、
R&Bがベースであることもよくわかり、
ニコも数曲で歌っている。
フリーキーにジャムっているようなプレイだが、
「Venus In Furs」、「Run Run Run」、「Heroin」「There She Goes Again」[2テイクあり]
「I’ll Be Your Mirror」はほぼ完成したヴァージョンで、
「European Son」も一応やっている。

カヴァーも多く、
ルー・リード(vo、g)が比較されるのを終生嫌がっていたボブ・ディランの曲で
ニコが1967年のファースト・ソロ作『Chelsea Girl』で歌った「I'll Keep It With Mine」も披露。
一瞬だけながらこれまたルーが嫌っていたBEATLESの「Day Tripper」もやっている。

エキセントリックであることを狙わず、
底が見える頭デッカチとは対極のまさにワイルドな“ロックンロール”だ。
得体のしれない熱情が全編ほとばしっている。


ディスク2は1968年10月2日のライヴを収めた約77分12曲入り。
多少曲順が入れ替わっているが、
『La Cave 1968 (Problems In Urban Living)』というタイトルのCDと同日のプレイのようだ。
ジャケット写真には写ってないダグ・ユール(b、kbd、vo他)が加入してまもない頃で、
オシャレから程遠い粗削りのパフォーマンスがいい。
これもラジオでオン・エアされた音源とのことだ。


約67分のディスク3は、
ルー・リード、ジョン・ケイル(vo、kbd、g、ヴィオラ)、ニコ(vo、ハーモニウム)という
『The Velvet Underground & Nico』のメンバーのうちの3人が同じステージに立った、
1972年1月29日のパリでのライヴ
これも『Le Bataclan '72』等のタイトルでリリース済みの公演で
ここいらの人たちのファンにはお馴染みなわけだが、
ボーナス・トラック2曲を含む16曲入りヴァージョンがCDに入っている
(このCDにも“FMで放送されたライヴ”というクレジットあり)。
まさに極北の歌を聴かせるニコのベスト・パフォーマンスをはじめとして、
各々のソロ・コーナーを含みつつ確執ありまくりの3人が一緒にもやっている奇跡の名演。
こういうものに向き合うと空っぽだから策を弄する者が幼稚にしか聞こえなくなるし、
本物だけが持ち得る凄味にあらためて痺れる。


★VELVET UNDERGROUND『Transmission Impossible』(EAT TO THE BEAT ETTB092)3CD
3面デジパック仕様。


STOOGESの映画『ギミー・デンジャー』のDVD/BD

『ギミー・デンジャー』


『トレインスポッティング』の冒頭の曲「Lust For Life」でも知られるイギー・ポップが率いた、
STOOGESの映画『ギミー・デンジャー』のDVDとBDが日本盤でもリリースされている。

映画のプレス用の資料/パンフレット用の原稿などを書かせてもらった縁で発売元から送っていただいた
Blu-Ray Disc(キング・レコード KIXF 547)の方を観てみた
(DVDの方も同内容と思われる)。


全部ひっくるめて映画として何度でも楽しめるとあらためて実感させられた。
昔の映像のところも彫りの深い画質で仕上げられ、
トークの一つ一つの声もパーカッシヴに迫ってきてスピーカーから鳴らすと劇場の音響に近い
(BDの音声はDTS-HD Master Audio[2.0ch]とリニアPCM[5.1ch]の2種類)。

キャリアが違うと言ってしまえばそれまでだが、
ジム・ジャームッシュ監督の編集センスにもあらためて舌を巻いた。
センセーショナルなネタに頼らず、
伝えたい思いをしっかり伝えるために贅肉を削ぎ落としつつユーモラスな遊び心を忍ばせている。
善人気取りをしないからこそ自虐的かつ内省的で本音もバッチリの“金言”の数々も含めて、
イギーをはじめとする原始パンク・アティテュードのヴァイブレイションが躍り続けている。

あらためて断言する。
ロック・ドキュメンタリーを超越して普遍的にグレイトな人間ドラマだ。


約108分の本編は日本語字幕と英語字幕が表示できる。
約17分映像特典(日本語字幕表示可能)の内容は以下のとおりだ。
①観客がステージ上を埋め尽したIggy and the STOOGESのライヴ(曲は「Shake Appeal」)。
②自家用機”に関するイギーのインタヴューとアニメのアウト・テイク。
③“アナーバー観光”というタイトルの泣ける映像
(他界したギタリストのロン・アシュトンの話をイギーがステージで語った後、
Iggy and the STOOGESの『Ready To Die』(2013年)に収録の
ロンに捧げた曲「The Departed」をバックにした故郷アナーバーの映像が続く)。
④一転してお馬鹿な“Noises”というタイトルが付けられた映像集
(本作用に撮られたインタヴュー中にイギーが“奇声ノイズ”を発した数々のシーンを2分強に凝縮。
ここにも日本語字幕が付いているところに日本盤制作者のパラノイアなこだわりが感じられる)。
⑤オリジナル版の予告編。
⑥日本版の予告編(永瀬正敏のナレーションもシンプルに挿入)。


むろんBuy or Die.


STONE TEMPLE PILOTS『Stone Temple Pilots』

STONE TEMPLE PILOTS『Stone Temple Pilots』


南カリフォルニアのサンディエゴ出身のロック・バンドが、
アルバム・デビュー25周年の年にリリースした8作目のフル・アルバム。
約8年前の前作と同じくセルフ・タイトルで、
セルフ・プロデュースだ。


弦楽器隊の兄弟とドラマーは80年代末の結成から不変ながら
ヴォーカルが数回交代するなど活動は断続的だったが、
めでたく新作のリリースとなった。
三代目シンガーとして元DRY CELLのジェフ・グートが加入後の初の作品でもある。

長年バンドの顔だったオリジナル・メンバーのスコット・ウェイランドが2015年に“中毒死”、
2013年頃に歌っていてEPも録音したLINKIN PARKのチェスター・ベニントンが昨年7月に自殺、
というシンガーを務めていた二人を立て続けに亡くした後の新作。
二人とも既にメンバーではなかったとはいえ、
彼らの死の影響はゼロではないだろう。

再生の意気込みに溢れ、
突き抜けている。

疾走するオープニング・ナンバーをはじめとして、
LED ZEPPELINをオルタナティヴ・ロック以降の感覚で旨く消化したようなアルバムだ。
もちろん個々のメンバーが自分の音を出せるバンドだからコピーみたいなのではなく、
STONE TEMPLE PILOTS流のナチュラルなサウンドなのだ。

グルーヴィな曲あり、
嫌味のないサイケ・テイストの曲あり、
アコースティック・ギターを活かした曲あり、
ブルースのテクスチャーの曲あり、
まったり切ない歌ものあり。
ブリティッシュ・ロックとは違うことをわきまえ、
CRAZY HORSEとやっている時のニール・ヤングのようなアメリカン感覚も正直に醸し出している。

デビュー当初からグランジと呼ばれてきたが、
足腰がしっかりしていて音が太いヘヴィな王道ロックである
いい意味でメジャー感に覆われていてスケールが大きくバランスが取れていて、
歌を軸にしつつギター、ベース、ドラム、ヴォーカルの全パートが前によく出ている。
コンパクトにまとめてフック十分の楽曲はポピュラリティが高く、
全曲メンバー4人全員での共作クレジットになっているのもうなずけるバンド感の高さも特筆したい。

彼らに対して思い入れのないリスナーをも引き込む能書き無しの潔いアルバム。
普遍的な物語を綴る歌詞もクールだ。


★STONE TEMPLE PILOTS『Stone Temple Pilots』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-17985)CD
二つ折り紙ジャケット仕様で8ページのブックレット封入。
日本盤は1曲追加の約52分13曲入りで、
そのボーナス・トラック「Already Gone」の分も含めて歌詞の和訳付。
初回生産分には、
東京のハードコア・パンク・バンドのPAINTBOXの『Trip, Trance & Travelling』を思い出す
アルバム・カヴァーと同じデザインのステッカーが封入されている。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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