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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Måneskin『Rush!』

maneskin.jpg


2010年代半ばにスタートしたイタリアのロック・バンド“マネスキン”の新作。
サード・アルバムと言えそうな痛快盤である。

ここ数年、日本でも話題の絶えない4人組だが、
フェイクでもポーザーでもない。
日頃メイン・ストリームものに疎い僕も、
何かの際にたまたま目にした映像で“これは!”と引っかかり、
初めてちゃんと向き合ったこのアルバムも見事にハマった。

やっぱりイタリア出身のバンドというのが大きい。
このアルバムで母国語の歌詞は3曲のみだが、
英語で歌われる曲もイギリスやアメリカのバンドとは一味も二味も違う。
子どもの頃から馴染みのイタリア語の響きやリズムで英語が基本のロックを解釈しているサウンドで、
カンツォーネっぽくも聞こえる。


下品というわけではないしダーティを気取っているわけではないが、
自然と滲み出た程良くsleazyな匂いも大好き。
スノッブはあっちいけ!ってな調子なんである。

デイヴッド・ボウイの全キャリアをフォローしたような曲!と書いたらホメすぎだが、
そんな佇まいのポップなアルバムだ。
やっぱりオルタナティヴ・ロック以降の音楽的ヴォキャブラリーを感じるし、
今時のダンス・ミュージックの要素も上手く活かしてもいる。
でも“ロックンロール”がテーマの一つと思しきサウンドだし、
僕にはロック讃歌に聞こえる。
粉川しの執筆のライナーにも納得させられた。

エロいことばかり歌っているわけでもないが、
音楽そのものが妙にセクシャルで色っぽい。
女性ベーシストをはじめとしてメンバーのルックスにも持っていかれる。
アーティスティックであると同時に刺激的・・・それがいい感じで適度に下世話なところも大好きだ。


という流れでアルバム・カヴァー(表ジャケット)も興味深い。
一見なんてことのないようでアブないという点でKORNのファーストを思い出す。
裏面を見てさらにビックリ。
表ジャケットの別角度ヴァージョンである。
SCORPIONSの『Virgin Killer』の発禁ジャケットが頭をよぎるほど、
これって大丈夫なのか?って写真なのだ。
CDディスクもアソコに穴が空いているデザインだし、
ちなみにLPのLPのレーベル面の真ん中には
G.I.S.M.の『M.A.N.』のLPレーベル面みたいに穴が空いていて、
レコード・プレイヤーにLPを置いたら“貫かれる”作りである。
そういうアートワークのCDが大メジャーのレコード会社から発売されたこともまた、
やたらコンプライアンス云々がやかましい世の中だけに快挙だ。

全部ひっくるめてプリミティヴなほどロックなリリースなのである。


日本盤は、
昨年サマーソニックとは別に
8月18日に東京・豊洲PITで行なった初の単独来日公演の模様を10曲収めたCDを
初回限定生産でプラス。
オーディエンス超盛り上がりのパフォーマンスが音質良好のサウンドで楽しめる。


★マネスキン『ラッシュ!』(ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP-6503 ~ SICP-6504)2CD
16ページのオリジナル・ブックレット封入。
日本盤は、
本編の歌詞と和訳が載った44ページのブックレットが付き、
ボーナス・トラック「Touch Me」追加の18曲入り。
日本盤の初回限定生産盤は
昨年8月18日の東京・豊洲PITで行なわれた初の単独来日公演の模様を10曲収めたCD付。
日本で撮影されたと思しき厚手の紙の32ページのスペシャルフォトブックも
スリップケースに封入されている。


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HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS『You’re either standing facing me or next to me(きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか)』

HARS.jpg


灰野敬二が英語で“カヴァー”を歌うべく2016年に始めたバンドのスタジオ録音のデビューCD。
メンバーは、
灰野敬二 HAINO KEIJI vocal, harp
川口雅巳 KAWAGUCHI MASAMI guitar
なるけしんご NARUKE SHINGO bass
片野利彦 KATANO TOSHIHIKO drums

アルバムに収めた曲の“原曲”のアーティストは以下のとおりである。
1. Down To The Bones~城卓矢(「骨まで愛して」)
2. Blowin’ In The Wind~ボブ・ディラン
3. Born To Be Wild~STEPPENWOLF
4. Summertime Blues~エディ・コクラン(灰野が大好きなBLUE CHEERヴァージョンも有名)
5. Money (That’s What I Want)~バレット・ストロング(BEATLESヴァージョンが有名)
6. Two Of Us~Kとブルンネン(「何故に二人はここに」)
7. (I Can’t Get No) Satisfaction~ROLLING STONES
8. End Of The Night~DOORS
9. Black Petal~水原弘(「黒い花びら」)
10. Strange Fruit~ビリー・ホリデイ
11. My Generation~The WHO


HARDY ROCKS”という名でライヴをやってきたバンドだが、
今回のCDは“HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS”名義になっている。
灰野+バック・バンドとは言わないが、
ヴォーカル入りの灰野のアルバムとしてはかなりヴォーカルが際立つ仕上がりだから納得。
自身の多くのプロジェクトで演奏しているギターを灰野が弾いてないのもポイントの一つで、
数曲でブルース・ハープを吹いている以外は“歌手”に徹している。

誤解を恐れずに言えば、
プロデューサーでもある灰野が原曲をモチーフに全曲“作曲”もしているようなアルバムだ。
日本語で歌われていた3曲も英語でやっているし、
みんなオリジナル曲に聞こえほどである。
例によって誰にも支配されない我流のリズムで歌っているヴォーカルが
曲に自分の血と肉を注ぎ込んでいる。
一瞬一瞬にケリをつける灰野だけに、
煩悶とも慟哭とも言いかねる一声一声でケリをつけるような発声の“気”のヴォーカルも健在だ。

僕としては“解体”という言葉は使いたくない。
“聞く”というより“聴く”、そして一つ一つの曲にしっかり向き合って耳を傾ければ、
HARDY ROCKSが原曲のテクスチャーを尊重し、最大限の敬意を表して歌い、
演奏していることがビンビン伝わってくる。
原曲に宿るヴァイブレイションを2022年のエナジーで“再生”している。
<曲の“本性”がむき出しになった>というリリース元のサイトの言葉に付け加えるとすれば、
<曲の“本能”をむき出しにした>アルバムでもある。

今回の「(I Can’t Get No) Satisfaction」を聴くと、
灰野がギターを弾いて90年代後半中心に歌っていたトリオ・バンドの哀秘謡を思い出す。
やはり“カヴァー・バンド”だったが、
そちらは原曲が英語の曲も日本語で歌うことがコンセプトの一つであった。
「(I Can’t Get No) Satisfaction」は哀秘謡でもやっていて、
“うまくできない!”と日本語で歌う灰野の声が今も耳から離れない。
ちなみに今回の「(I Can’t Get No) Satisfaction」は哀秘謡ヴァージョンに近い。

その哀秘謡でベーシストを務めていたのがHARDY ROCKSではギタリストの川口雅巳である。
本作のサウンドなどに関しては“灰野P”の意向も強そうだが、
灰野を吸収消化してアップデートした川口のギター・プレイは特筆すべきだ。
中低音が目立つアルバムだからリズム隊二人の演奏もしっかり耳に残り、
いい意味でヴォーカルを立てる演奏でわかりやすい。

エイト・ビートの曲をやっている時の不失者みたいなアレンジでドゥーム・ロック風が多いのも、
ヘヴィ・ロックとしてHARDY ROCKSを楽しむ僕としては大歓迎。
もちろん、灰野ならではの、つんのめる曲も随所に入れているが、
何よりアカペラの曲が絶品だ。

60年代までの曲で固めているのは灰野のルーツだからであろうか。
灰野が好きなONLY ONESやCHAOS UKの曲のHARDY ROCKSヴァージョンも
聴いてみたいものである。


『きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか』というフレーズが、
“邦題”のようにCD盤の表に刻まれている。
ジャケットの表と裏の文字はすべて英語/アルファベット。
“洋楽”を意識して海外盤のLPみたいな体裁でリリースしたかったのかとも想像できるし、
厚手の紙ジャケット自体の作りも昔のメジャー・レーベルの米国盤LPっぽい。
ちなみにインサート等も無しだ。

特に昔はいわゆるライヴが元のアルバムが多かった人だけに
灰野関連のスタジオ録音盤は今も貴重だ。
東京・吉祥寺のGOK SOUNDならではの、
灰野の音源にしてはまとまりのいい録音の仕上がりも本作にピッタリ
灰野が90年代後半によくライヴをやっていた、
吉祥寺のライヴ・ハウスのマンダラⅡで聴いているような音の質感である。

灰野がこれまでリリースした作品の中でも最も取っつきやすい一枚だし、
メリハリの効いたアレンジと音作りで一般のロック・ファンの方にも比較的入っていきやすい。
これから灰野を聴き始める方にもオススメだ。


★HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS『You’re either standing facing me or next to me(きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか)』(P-VINE PCD-28048)CD
約51分11曲入りの厚手の紙ジャケット仕様。


the GOD『Quill』

the GOD『Quill』


80年代の前半から活動しているパンク/ロックンロール・バンドの新譜。
全9曲で44分強の堂々たるフル・アルバムで、
中村宗一郎の録音とミックスとマスタリングもバッチリとハマった佳作だ。

メンバーは、
バンドの顔のNON(vo、ag)、
バンドをずっと支えてきたRYOJIO(g)、
LAPIZ TRIOでも活動中のNAKAMURA KIYOSHI(ds)、
そしてHAGAL(b、cho)とKAZUHIDE KIN(g、12ag、cho)である。

ジョニー・サンダースのHEARTBREAKERSに、
アコースティックな曲も含めてところどころでROLLING STONESとT. REX、
あとボブ・ディランが混ざり、
侘び寂びが効いたようなサウンドだ。
緩急織り交ぜたフック十分の“ロックンロール”が繰り出されるが、
すべてパンク・ロックに聞こえるのは僕だけではないだろう。

ところどころでブルースからブラジル音楽までのテイストが聞こえてくるギターを筆頭に、
楽器の響きが実に味わい深い。
元気なサウンドだが、
そこはかとなく哀愁も滲み出ている。
LPにしたらA面のラストになりそうな5曲目の「september」と
B面ラストになりそうな9曲目の「鐘」は6分近くじっくり聴かせるスロー・チューンで、
前者はアコースティック・ギターが効果的で胸が締めつけられ、
後者は反復する構成でじわじわ高まっていく名曲だ。

「lights」「明日は明日の明日が来るから」「hot blue」「ギターショップのあの娘」「september」
「ブルースをやりましょう」「gray zone」「route99」「鐘」
といった曲名だけでもイマジネイションが無限にふくらむ。

歌詞も“NON節”健在だ。
もちろん正義を振りかざしたり説教じみたことを歌ったりせず、
マイペースで説得力たんまりの歌がナイスなリズムで躍り、
いつのまにかポジティヴである。
あらためて思う。
とろける声してる。

ドラムを核に根っこのリズムはタイトだし、
目が覚めるほどすべての音が歯切れ最高!の一方で、
飄々とキュートなヴォーカルをはじめとしていい塩梅のルーズ感に持っていかれる。
声も音も曲も演奏も歌詞もさりげなく深い。

ほぐしてくれる一枚。
オススメ。


★the GOD『Quill』(Gottheit Own Drive GODR-0004)CD
歌詞が読みやすく載った8ページのブックレット封入のペーパー・スリーヴ仕様。


オトナリ(うつみようこ+藤掛正隆)『OTONARI Ⅱ』

オトナリ


うつみようこ(元MESCALINE DRIVE/SOUL FLOWER UNIONほか)と
藤掛正隆(渋さ知らズほか)によるユニット、
オトナリの約8年半ぶりの発表となるセカンド。
未発表のオリジナルの7曲にボーナス・トラックとしてライヴ3曲を加えたCDである。

うつみがヴォーカルとギター、
藤掛がドラムを担当。
パンク・ロック以前のR&B色の強いロックンロールが基本で、
1970年前後のROLLING STONESやボブ・ディランを思い起こす曲もある。
とはいえ一筋縄ではいかない。
率直な日本語が飛び込んでくるシニカルな歌詞や
シンプルなようで屈折した曲展開/ギター・フレーズをはじめ、
いい意味でクセが強い。

歌詞を載せてないのは声と音だけで感じてほしいからかもしれないが、
言葉の意味を分析しなくても生硬なギターも含めて響きからフラストレイションが滲む。
うつみ自身が20年ぐらい前にインタヴューで言っていたような“ひがみ”のテイストが肝。
でも、ときおり聞こえてくる寂しがり屋さんなメロディがまた切ない。
もちろんダイナミックな歌唱も健在で、
繊細なバラードや
ミニマルな曲におけるフリーキーなヴォーカル・パフォーマンスも聴きどころである。

一方で藤掛はここ何年もジャズ系のミュージシャンとプレイすることが多いだけに、
#9などで披露していたあのドライなロックンロール・ビートが楽しめるのも嬉しいCDだ。


★オトナリ(うつみようこ+藤掛正隆)『OTONARI Ⅱ』(FULLDESIGN FDR-2045)CD
紙一枚のジャケットが封入された薄手のプラケース仕様の約37分10曲入り。
12月25日発売。

<収録曲>
1. でたらめミュージック
2. Independent
3. つった
4. ADCC
5. Superguy
6. ときめくおひとりさま
7. くものうた
8. うらのまたうら
9. 過去であれ
10.ギラッとGO!


コーガンズ『悪い冗談』

コーガンズ


福岡県拠点の4人組の“日本語ロックンロール・バンド”が
結成20年目の年にリリースした10年ぶりで4作目のアルバム。
個人的には前作をミュージック・マガジン誌の当時の連載で紹介させてもらって以来だが、
そういう縁でこういう形で関係がつながって新作がまた聴けることに感謝したい。
もちろん内容もバッチリのキャッチー&深い快作である。


1本のエレクトリック/アコースティック・ギター、
1本のエレクトリック・ベース、
1台のドラムスが基本楽器構成で、
ところによってヴォーカル専任のシンガーがブルースハープを吹く。
過半数の曲でキーボード、
曲によってトロンボーン、テナー・サックス、トランペット、ボンゴ、コーラスを
ゲストが入れている。

いい意味でエゴを感じさせずに優しげな表情をたたえるヴォーカルが
ていねいに歌うから歌メロはまったりしていて、
ロックンロールといってもヴァラエティに富むアルバムだ。

ジャケットどおりにTALKING HEADSの『Remain In Light』風・・・というか、
歌詞も含めてJAGATARAっぽいアフロ・ファンク・ロックンロールもやっている。
“フォーク・ロックンロール”と呼びたくなるゆったりした曲あり、
EDDIE and the HOT RODSが頭をよぎる“パブ・パンク・ロック”とも言うべき曲あり、
モータウンなどのソウル・ミュージックからの影響を感じさせる曲あり。
スカみたいなリズムや、
ブラック・メタルのブラスト・ビート紙一重にも聞こえる疾走パートも込みだ。
メロディはけっこう吉田拓郎を思い出したりもするが、
VELVET UNDERGROUNDの繊細な曲の旋律もちょろりと紛れ込んでいる気がする。

もちろん日本語の歌が前面に出た日本語ロックによくある“歌+伴奏”みたいなバンドじゃない。
太い楽器の音もてぐいぐい前に出ている。
ヴォーカルはもちろんのこと、
ギターもベースもドラムも歌心が転がっている。
まっすぐなヴォーカルと音の魅力が伝わるように、
各パートがはっきり生き生きと聞こえる録音とミックスとマスタリングも抜群の仕上がりだ。

バンド名の由来は謎だが、
ラスト・ナンバーの「ゴールデンソウルマン」の歌詞から察するに、
やはり“男ならみんな持ってる”“ぶら下げてる”“二つの魂”のことだろうか。
歌詞も全曲パンチが効いていて、
ラヴ・ソングから社会性を帯びた曲まで“life”を歌い抜いている。

包容力たんまりのナイス!なアルバムだ。


★コーガンズ『悪い冗談』(KOUZUKA 6960-07)CD
約46分11曲入りCD。
https://cogans-hp.jimdofree.com/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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