なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

VELVET UNDERGROUND『Boston Tea Party, July 11th 1969』

Boston Tea Party, Jul 11th 1969


これまた非オフィシャル・リリースながら権利関係はクリアしていると思しきライヴ盤。
タイトルどおりの内容で、
ディスク1が34分56秒、
ディスク2が52分11秒である。

言うまでもなくクリアーな音質ではない。
全パートが混ざり合っていて、
やや音が膨張しているが、
歪みも穢れも許さない潔癖症の浮き世にふさわしい。
ステージが遠めながらリマスタリング効果か比較的ヴォーカルは聞こえやすいサウンドのバランスだ。
いわゆるオーディエンス録音と思われるが、
アンコールを求める部分以外は観客の歓声等はほとんど聞こえないし、
中身の濃さも考慮すれば重度のVELVET UNDERGROUNDファンなら問題なく楽しめるだろう。

ルー・リード(vo、g)が死ぬまでほぼ欠かさずステージで披露していた「Heroin」がない点で、
なかなかレアなセットリストだ。
その代わり「Run Run Run」を15分もやり、
ややスロー・モーションの「White Light/White Heat」もやかましくって素ん晴らしい。

むろんすべてがなまめかしいメタル“サイケデリック”ミュージックである。
エレクトリックで毛穴から感電する。
ラストは「Sister Ray>The Murder Mystery」と曲名がクレジットされたトラックで約22分。
「Sister Ray」の中に「The Murder Mystery」が混じっていると思われ、
基本的には「Sister Ray」だ。
セカンド・アルバム『White Light/White Heat』収録のヴァージョンに近いが、
後半でかなり加速していてドロドロしている。

底無し沼からこそ泉が湧く。
わざとらしい歌とオシャレなノイズにウンザリしてロックンロールでブッ飛びたい時の心の友。
と同時に「I’m Set Free」と「Beginning To See The Light」に救われる。


★VELVET UNDERGROUND『Boston Tea Party, July 11th 1969』(SPY GLASS SPY2CD3002)CD
ライナーが載った8ページのブックレット封入。


スポンサーサイト

キキミミズ『トランスファー』

キキミミズ


久しぶりに“純な自主制作盤”に出会った。
裏ジャケット等のどこにもにバーコードが印刷されていないところも自主制作らしい。
アートワーク的にマイナスという点でもバーコードを拒絶するリアルDIYパンク・レーベルと同じく、
キキミミズのワダとシンガーソングライターの亀山純輝が立ち上げた、
リアル・インディペンデント・レーベルからのリリースである。

静岡県焼津市を拠点に活動している男性シンガーソングライターのワダが中心になった、
キキミミズ(Kikimimizu)のセカンド・フル・アルバムだ。
デビュー盤と言える2010年の『バランサー』はUP-TIGHTの青木智幸が録音し、
2009年には望月冶孝(サックス)とスプリット7”レコードを出したことが象徴するように、
サイケデリック系やフリー・ミュージック系の音楽家とも交流している人ならではの
フリー・フォームの“ロックンロール”と言いたい作品である。


曲によってワダ以外は多少参加メンバーが異なるが、
ロック・バンド形態でレコーディングされていると言ってもいいだろう。
楽器はエレクトリック/アコースティック・ギター、ベース、ドラム、パーカッション、
シンセサイザー、サックス、ピアノ、ハーモニカが使われている。
シンガーソングライターのソロ・アルバムっぽく、
曲の表情を引き出すべく適宜5人の演奏者が参加。
静岡市のライヴ・ハウス騒弦のオーナーである針谷総一が録音とミックスを手掛け、
すぐ目の前で歌っているみたいな生々しい録音状態も特筆したい。
すきまの多いシンプルな音作りで一曲一曲ていねいに仕上げたことが伝わってくる。

基本的には歌を前面に出したロックでオーソドックスといえばオーソドックスだが、
どういうものから影響を受けたか見えてこない。

歌い方が似ているわけじゃないし一声でねじ伏せる迫力とは対極の佇まいだが、
感情の揺れと自由形の曲作りとアレンジはルー・リードの様々なソロ作を思い出すし。
エレクトリック・ギターの軋みもルーっぽい。
疾走する曲あり、
フォーク調の曲あり、
レゲエ/ラテン音楽を溶かし込んだような曲あり、
9分を越える曲が2曲あり、
7分近くの曲もありで、
多彩な光景を見せる張りつめた空気感にゆっくりと飲み込まれていく。

やさしげながらまっすぐで骨っぽくたいへんデリケイトな歌声の震えは、
昨日今日歌い始めた人みたいなヴォーカルに聞こえるほど初々しく瑞々しく不器用で硬い表情をたたえ、
エキセントリックな歌い方をしてない天然だからこそ一度聴いたら忘れない。
「荒野のおおかみ」「クレイジー・サマー」「サイン」「自由」「ありふれた日々」「連続する世界」
「ステージ」「待ち続ける」「トラフィック」
といったタイトルの曲で構成されているが、
歌詞からは音楽をやり続けている自分に対する自問自答と意思表明みたいなものを感じる。
穏やかなトーンの曲でも響きはどれもヒリヒリしていて意志の音楽にも聞こえる。

貴重なほど研ぎ澄まれた音空間に目が覚める力作。


★キキミミズ『トランスファー』(DEAD COMPUTER DCPT-001)CD
三つ折り歌詞カードが封入された丁寧な作りのペーパー・スリーヴ仕様の約50分9曲入り。
http://axxe.cart.fc2.com/ca6/36/p-r-s5/
https://youtu.be/JYRFtRk5NPE


VELVET UNDERGROUND『Boston Tea Party, Jan 10th 1969』

Boston Tea Party, Jan 10th 1969


これまた非オフィシャル・リリースながら権利関係はクリアしていると思しきタイトルどおりのライヴ盤。
ディスク1が49分51秒、
ディスク2 が39分14秒の2枚組CDである。
ヴォーカルは遠いが、
リマスタリング効果か楽器の音は各パートよく聞こえ、
ある程度のマニアならば問題ない音質だろう。

サードの『The Velvet Underground』のレコーディング終了直後でリリースする2か月前のステージ。
「I'm Gonna Move Right in」や「I Can’t Stand It」といったアルバム未収録曲をやっているほどだから、
発売前のオリジナル・アルバムの曲をやることは当たり前のバンドだった。
新しくできた曲をすぐ観客に聴かせるバンドだったし、
しかも現在進行形のアレンジで披露するバンドだった。

VELVET UNDERGROUNDはジョン・ケイルが去って過激な音が薄らいだともされるが、
少なくてもライヴは荒々しかったことがわかる。
モーリン・タッカーのドラム/パーカッションが目立つ音のバランスも相まって、
かなりパーカッシヴなサウンドなのだ。
ゴツゴツしている。

最後は約21分の「Sister Ray」で、
セカンドの『White Light/White Heat』のヴァージョンに比較的近いアレンジなのも興味深い。
元気になる。
いまだ“ヒント”になるネタがあちこちだと気付かされた実況録音盤である。


★VELVET UNDERGROUND『Boston Tea Party, Jan 10th 1969』(SPYGLASS SPY2CD3001)2CD
ライナーと写真が載った8ページのブックレット封入。


Lou Reed『American Poet』

170430 Lou Reed『American Poet』


2001年にリリースされたライヴ盤の新装版。
権利関係はクリアーされていると思しきルー・リードの非オフィシャル・リリースの中でも
一番知られていると思しきもので、
何度か再発されているが、
これは昨年の11~12月にジャケットを微妙に変えて2枚組CDで発売されたものだ。

2枚ともリリースしたばかりのセカンド・ソロ・アルバム『Transformer』のツアーで、
もちろんVELVET UNDERGROUNDの曲も半数を占める。
ルーはヴォーカルに専念し、
ツイン・ギターを擁する4人編成のバンドとのステージだ。
『Transformer』に参加したミュージシャンも有名なミュージシャンも演奏してないし、
ルーがソロ・ツアーを始めた頃だと思うが、
グッド・パフォーマンス。
共に音質まずまずだ。

CD1は72年の12月26日のライヴが11曲で、
6トラック目にインタヴューが入っている計約62分のCD。
以前のCDにも入っていた音源である。
スローな「I'm Waiting For The Man」をはじめとして、
もちろんスタジオ録音ヴァージョンそのままではやってないが、
基本的にソロ初期2作の路線のけっこうストレートなロックンロール・アプローチだ。

CD2は今回の追加CDで73年1月27日のライヴが約74分14曲入っている。
「Rock ‘n’ Roll」は曲の途中からだが、
CD1に未収録の「Wagon Wheel」「New Age」「I Can’t Stand It」「Sister Ray」も聴ける。

本作のアート・ワークの写真を撮ったミック・ロックにインタヴューした際に
レコード・コレクターズ誌5月号に掲載)、
彼曰く「(様々な意味で)ルーは人を試す」とも言っていた。
それは絶対的な本気のコミュニケーションを求めていたからだとあらためて思うライヴ盤である。


★Lou Reed『American Poet』(EASY ACTION EARS119A)2CD
CD盤は2枚とも無地の紙袋に収納されていて、
ミック・ロックが72年の夏に撮影した写真が彩りライナーが付いた16ページのブックレット封入の
二つ折り紙ジャケット。


藻の月『inframince -アンフラマンス-』

藻の月


70年代末から自殺、コックサッカーズ、ウィスキーズ、CANON、WAXで活動してきたジョージ(vo、g)が
2000年代初頭に東京で結成したロック・バンドの藻の月(MONOTSUKI)の新作。
CDとしては『Tum』以来の約1年ぶりでフル・アルバムとしは約2年半ぶりの4作目だ。

メンバーは、
ジョージ - Vocal, Guitar、
竹中邦夫 - Guitar、
ムーン安井 - Bass、
KRITER - Drumである。

なかなか多彩で“ロックンロール”と呼ぶことにためらいも覚えるロック・アルバムだ。
もちろんほとんどを藻の月が作った曲自体が細かいジャンルから自由だからでもあるが、
メンバーがプレイしてない曲を含むほどゲスト陣の演奏等の影響も少なくない。
その面々は以下のとおりだ。

HOL-ON(meroro records) - Electronics+1曲の作曲
柴田エミ(稲生座) - Piano
芝井直実(N-unit) - Alto Sax
村上雅保(THE FOOLS) - Percussion
桑原延享(DEEPCOUNT) - Trumpet
川崎知 - Tenor Sax
pocopen(SAKANA) - Vocal+1曲の作詞
高八 - Strings, Guitar
松井亜由美(PASCALS) - Violin

意外なミュージシャンも参加しているが、
きらきらした音楽性と表現の広がりと深みを象徴している。

エレクトロニクスよるアンビエント・チューンで幕を開け、
シスコ・サウンドっぽい透明感あふれる開かれた音でゆっくり疾走しながら
ちょっぴりトランス感覚で反復する曲が続く。
エッジが効いてピアノもハジけるROLLING STONES風のロックンロール・ナンバーあり、
パーカッション入りのファンク・グルーヴの上でトーキング・ヴォーカルが歌う曲あり、
ジャズ・ファンク調の曲あり、
フリー・ジャズっぽいバックとポエトリー・リーディングの曲あり、
透明感いっぱいの音のやさしいR&Bチューンあり、
ヴァイオリンが光る穏やかな曲ありだ。
とにかくいい具合に力の抜けたヴォーカルも含めてデリケイトだし、
静かなパートを大切にした彩り豊かで芳醇なサウンドが“スウィング”している。

さりげなく社会性も帯びて毒を含む意味深長な歌詞はほぼすべて日本語だが、
曲名が「Faune ファウネ」「Black Kite ブラックカイト」「Satanael サタナエル」「D2」
「Fantomas ファントマ」「Peri ペリ」「Khamma カンマ」「Simourgh スィームルグ」
「Même メーム」といった具合に、
日本語ではなく、英語もほとんど使ってないところがユニークだ。
どことなくマジカルな音楽を暗示しているようでもあり、
古代イタリアの神格やイラン神話などの様々なキーワードにも思えるし、
音と相まって想像力をふくらませる。


ジョージが描いたジャケットにも表れたアーティスティックな情趣が滲む一枚。


★藻の月『inframince -アンフラマンス-』(Messer Works MW-004)CD
約45分9曲入り。


 | HOME |  古い日記に行く »

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (290)
映画 (247)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (409)
EXTREME METAL (128)
UNDERGROUND? (93)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (82)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん