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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『許された子どもたち』

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殺人を犯した少年と家族に対する“罪と罰”を問うような日本映画。
集団によるイジメも題材に含むとはいえ一人の少年と親を軸に、
加害者の立場中心に描いていく。
前作『ミスミソウ』(2018年)も衝撃的だった内藤瑛亮監督が、
再び世界に放つ問題作である。


とある地方都市。
中学一年生で不良少年グループのリーダー市川絆星(いちかわ・きら)は、
同級生の倉持樹(くらもち・いつき)を日常的にいじめていた。
いじめはエスカレートしていき、絆星は樹を殺してしまう。
警察に犯行を自供する絆星だったが、
息子の無罪を信じる母親の真理(まり)の説得によって否認に転じる。
そして少年審判は無罪に相当する「不処分」を決定する。
絆星は自由を得るが、決定に対し世間から激しいバッシングが巻き起こる。
そんな中、樹の家族は民事訴訟により、
絆星ら不良少年グループの罪を問うことを決意する。

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以上はオフィシャル・サイトに載っているあらすじだ。
実行現場が河原で被害者が中一ということで2015年の川崎市中1男子生徒殺害事件を思い出す。
でも殺しまでの時間が短くてあまりイジメがエスカレートしたようには見えず、
殺しも遊びの延長で当たり所が悪かった感じにも“業務上過失致死”にも見える。
でも、そういう“あっけなさ”“軽さ”が怖いとも言える。
他のイジメ側の少年たちを同調圧力みたいな調子で従っていたことを示唆するかのように、
ほとんどリーダーの絆星のみをクローズアップする。

131分あっても細かい説明をあまりせず、
適度に顔と心をカメラがクローズアップして人物たちの内面に迫る手法が今回も見事だ。
行動と表情で絆星の心象風景を丹念に追っていく。
主役を務めた上村侑のナチュラルな演技力も相まって、
とにかく何を考えているのかわからず得体の知れない絆星が終始不気味だ。
ちょっとませた素朴な子どもといった感じで僕には不良に見えない。
動機もヘッタクレもない。
何も考えてないように映るからこそまた怖い。

_上村侑【許された子どもたち】_convert_20200428114115

父と母との三人暮らしだが、
溺愛とまでは言わないまでも母親は周りを見てないヒステリックな“逃避”の人間だ。
殺しを疑われた子どもに対して
すべての親が「ヤってないよね!」と言い聞かせるわけではない。
中東でテロを起こした子どもの親が「罪をつぐなってこい」と言って送り出した話を僕は思い出す。
子どもに真正面から向き合っているがゆえのことである。

世間からバッシングを受けて家の外壁などは中傷の落書き等の嵐で家に居られなくなって
引っ越しを余儀なくされるも、
ネット社会は容赦せずにまたたくまに移住先が突き止められてまた引っ越しの準備。
ネット上で名前がさらされているから転校先では改名して授業を受ける主人公の絆星だが、
当然のごとく顔写真も出回っている。
そんな生活が続いて絆星は自暴自棄にもなるが、
すべてに対して冷めているようにも映る。
ある意味、大人だ。
たび重なるバッシングで鍛えられたのか目がすわった大人の佇まいになっていく。
そんな中で転校先でイジメられている同級生の少女との出会いが一つの転機になる。
絆星の中で眠っていた良心が目を覚まし始める。

サブ_1

(罪を認めなかった)加害者とその家族が
いかに大変な生活を送るかを描くことがメインにも思える映画だ。
誤解を恐れずに言えば状況によっては立場が入れ替わって加害者が“被害者”にも成り得て、
ある意味“アンチヒーロー”にも成り得るようにも見えてくる。

軽んじられているかのようにも映るほど被害者側にはあまり焦点が当たらない。
でもそれは結局世間は被害者やその家族などのことに対して実はあまり関心がなく、
加害者を叩くことにエンタテインメントを見出していることを示唆しているようにも見える。
あまり登場しないだけに映ったシーンの被害者側の様子が強烈だ。
加害者側ほどメチャクチャではないにしろ殺された子どもの両親の家の外壁なども、
“訴訟はお金目当て!”みたいな落書き等で荒らされている。
特に加害者側と場を共有する場面でのコントラストは、
被害者側の死ぬほどの痛みと傷みを炙り出す。


モヤモヤ感がたまらない。
あまり凝ってない音楽も相まってもさりげなく観る者を突き放す。
はっきりした結論を示してない映画にも思える。
でも僕には、
ラスト・シーンの“二人”の笑顔が無邪気なヒューマニズムに対する嘲笑にも見えた。


★映画『許された子どもたち』
2020年/日本/カラー/1.90:1/5.1ch/131分
©2020「許された子どもたち」製作委員会(PG12)
公開日が変更になりました。
5/9(土)からでなく、
6月1日(月)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー。
<大阪・テアトル梅田>、<京都・出町座>、<愛知・名古屋シネマスコーレ>、<兵庫・元町映画館>の
公開日も変更となりますが、
詳細が決まり次第あらためてオフィシャル・サイト等で告知するとのことだ。
http://www.yurusaretakodomotachi.com/


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映画『罪と女王』

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中年女性が少年の虜になる普遍的なネタを超えて迫り、
人間の暗部を炙り出して家族の“在り方”も問う北欧恐るべしな2019年の映画。
女性監督(1977年デンマーク生まれ)で脚本も執筆した作品ならではとも言うべき、
生々しくシビアな筆致に息を呑む“心理的ホラー映画”の佳作である。
製作総指揮は『ヒトラーの忘れもの』『ある戦争』を手掛けたヘンリク・ツェインだ。

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児童保護を専門とする弁護士のアンネは、
医者の夫と幼い双子の娘とデンマークの邸宅でしあわせな家庭を築いていたが、
前妻との間にもうけていた夫の息子のグスタフが問題行動で退学になって引き取ることに。
当初グスタフはアンネの家庭に馴染もうとしなかったが、
家庭問題で苦しむ子供たちを普段仕事で相手にしているアンネは根気良く家族として迎えて接し、
グスタフは娘二人とも仲良く遊んで穏やかな性格になっていく。
だがアンネは17才のグスタフと性的関係を持ってしまう。

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以上は前半のあらすじで、
ネタバレを最小限にすべく中盤以降のストーリー等は最小限書くに留めておく。

LGBTが認知されつつあるが、
いつの時代も女と男は基本こうなのかもと思わされるし、
中年女性と少年の性愛はいつの時代も変わらぬ永久不滅の物語なのかとも思わさせる。
男性監督の妄想映画もいいが、
女性監督の夢想と肉欲が入り混じった末路のような非情のリアリズムに震撼するのみだ。
切り口や描き方が“生”なのである。

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強烈なセックス・シーンにこの映画の覚悟が示されている。

フランス映画と双璧を成す大胆な描写が多い北欧映画らしくポルノ紙一重だ。
ぼかしがないとスクリーンを正視するのに覚悟が要るような息を呑むシーンには、
理性を失ったアンネのねっとりとした性欲に観ている側も飲み込まれていく。
もちろんダラダラした見せ方もせず、
エロが売りの映画ではないからこそ
“初めての交わり”の時間以外はポイントを押さえて“厳選”されている。

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適材適所の音楽とともに、
カメラは性行為以上に人物たちに迫り、
レンズは登場するすべての人物の底意地も容赦なくえぐり出す。

少年グスタフはあえてベタなキャラにしたかのようで、
“崩壊家庭”の犠牲者ならではの問題児だからこそピュアな心が開かれていく様は、
アンネの娘たちとの微笑ましい交流場面に象徴される。
クールな演技が見事だ。

その娘たちの父親でもあるアンネの夫もこの映画のキー・パーソンで、
アンネを“目覚めさせ”て物語を展開させる女友達も同じく好演だ。

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もちろん主人公のアンネに尽きる。

凛々しい弁護士で仕事ができる女性の顔と、
妻であり母親でもある良妻賢母な家庭人の女の顔と、
若いオトコのカラダに溺れ狂うギラギラしたオンナの顔を
ナチュラルに見せるギャップが見どころだ。
17才の男子との性行為は法的にどうなのか、
そもそも義理の息子との関係だから不貞ではないかなんて、
法律を駆使した弁護士であろうが夢中になっている最中は頭にない。

だからこそ我に返った時が怖い。
いわゆるしっかりした社会的地位の人間ほど怖い。
人としての責任感なんて簡単に葬り去る。
そして信じがたい精神的な虐待を始める。

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家庭を持つと自己保身の“本能”が無限大に強化される人間がいる。
たとえ血がつながっていようが自分が家族とみなさない“面倒”な人間は排除する。
自分が大切と思う子どもにとっては良き親としてふるまう一方で、
自分にとって足手まといの“子ども”は利用できる道具でしかない“親”もいる。
仕事で大切な人たちや“自分の地位のために必要な身内”に対しては人格者でも、
その人間を深く知る極々限られた者にとっては万死に値する人間だったりもする。
自分のダーク・ゾーンから目を背けたいばかりに調子よく正義の味方や善人ぶって、
他者の非難ばかりしておのれを省みない。

そしてこの映画は虚栄と虚飾で武装されたナイーヴなヒューマニズムの急所を突き、
体裁を取り繕った欺瞞を冷酷なまでに炙り出す。

“女は、守るために、残酷になる”。
この映画の宣伝コピーで間違ってないとは思う。
だが、“男も、守るために、残酷になる”というフレーズも付け加えたい。
アンネの夫でもあるグスタフの父親を見ていると誰しもそう想うのではないだろうか。

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引き起こした動機を詳しく説明した作りになっていないところも特筆したい。
たとえば理性を崩したのは欲求不満か嫉妬か愛情か、
観る人それぞれの想像力にゆだねられている。
ある意味“女王的な権力者”と言えるかもしれない女性からの少年に対する性的虐待か、
気持ちが高まった中年女性とやりたい盛りの若い男性が意気投合したのか、
観れば明らかだとしても僕はコメントを避けさせてもらう。

サスペンスの要素も含むネタバレ厳禁映画だからここで多くは書けないが、
観た後に“あの人はなぜああいう行動をとったんだろうね?”という話で一晩語り明かせるような映画。
あえて夫婦や恋人同士で観に行くにもピッタリと断言する。

いつもと変わらないように見えるだけに寒々としたラスト・シーンがあまりも怖い。

必見。

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★『罪と女王』
2019年/デンマーク=スウェーデン/デンマーク語・スウェーデン語/127分/シネスコ/
原題:Dronningen(英題:Queen Of Hearts)/(映倫区分R15)/
監督・脚本:メイ・エル・トーキー/共同脚本:マレン・ルイーズ・ケーヌ/製作総指揮:ヘンリク・ツェイン/製作:キャロライン・ブランコ、ルネ・エズラ/撮影:ヤスパー・J・スパンニング/音楽:ヨン・エクストランド
出演:トリーヌ・ディルホム、グスタフ・リン、マグヌス・クレッペル、スティーヌ・ジルデンケルニ、プレーベン・クレステンセン
配給:アット エンタテインメント
5/8(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、
5/29(金)よりシネ・リーブル梅田、他全国順次公開予定。
©2019 Nordisk Film Production A/S. All rights reserved
www.at-e.co.jp/film/queen/


映画『白い暴動』期間限定レンタル配信

白い暴動チラシ


映画『白い暴動』が4月17日(金)~5月15日(金)に動画配信サービスにてレンタル配信される。
映画館での鑑賞が困難な状況でも自宅で観られるのだ。
要所を押さえつつ敷居低くシンプルに伝えている映画だけにありがたい。

4月3日に東京などで公開されるも1週間も経たないうちに上映劇場が休館を余儀なくされ、
目下全国的に上映劇場が休館中。
休館になった劇場での上映再開も目指す方向とのことだが、
現時点では先が見えない状況ゆえの今回の決行である。

以下は今回の配信に関する配給会社のツインのコメントだ。
“今後、順次公開を予定している劇場もありますが、外出自粛地域にお住いのお客様にも楽しんで頂きたく、
また本作の監督ルビカ・シャーの言葉
「混沌とした世の中でこそ、自身で考え、声をあげることの大切さを知ってもらいたい。
たとえ自分一人だったとしても、声をあげることで仲間を見つけることが出来る。共に行動し、
乗り越えられるから。」を受けて、
今できる事を考えて実施をする事に 致りま した。
ツインとしては今回が史上最速のレンタル配信となり、劇場との同時配信は初の試みとなります。”

【配信プラットフォーム】
アップリンク・クラウド、Amazon プライムビデオ、 GYAO! ストア、クランクイン!ビデオ、
COCORO VIDEO (ココロビデオ)、
TSUTAYA TV 、 DMM 動画、 dTV 、ひかり TV 、ビデオマーケット、ビデックス JP 、
ムービーフル plus 、 music.jp 、 U NEXT 、Rakuten TV 他 。

【レンタル可能期間 】 4月17日 金 ))-5月15日 金 ))(約 1 カ月間)
※配信開始日、価格は配信サービスによって異なる場合があり、詳しくは各配信サービスへ確認とのこと。
※レンタル配信については『白い暴動 』 のTwitter@shiroibodo、
Facebook( https://www.facebook.com/shioribodo4.3 )、
配給会社ツインのTwitter@movietwin2


僕はこの映画にまつわることを1万字でも2万字でも書ける。
ロック・アゲインスト・レイシズム(RAR)の運動に関する映画とはいえ、
単なる人種差別反対ものに留まらない人間ドラマとしても味わえる映画だからである。
RARのメンバーたちの物事の捉え方やロック観/パンク観、
色々な形で登場したミュージシャンたちの意識までもが炙り出されている。
関わったバンドたちも一つにまとまっているようで決して一枚岩ではない。
だからこの映画のクライマックスになっている“カーニバル”が終わった翌79年以降、
CLASHが『London Calling』『Sandinista!』『Combat Rock』でブレイクしていく一方で、
英国のパンクはThe POP GROUPCRASSEXPLOITEDDISCHARGENAPALM DEATHという具合に
苛烈細分化した。
そういうところまで深く感じていただけるとさいわいです。


映画『白い暴動』

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Photograph by Ray Stevenson


有色人種排斥の動きが強まりつつあった70年代後半の英国で起こった運動の、
ロック・アゲインスト・レイシズム(以下、RAR)を描く2019年のドキュメンタリー映画。

デイヴィッド・ボウイの短編ドキュメンタリー
『Let's Dance: Bowie Down Under』(2015年)を手がけた、
アジア系英国人の女性のルビカ・シャーが監督である。
当時の映像や写真、記事などをアニメも使いつつ交えながら、
RARのメンバーをはじめとするインタヴューで綴っていく。

色々と触発されるし色々と考えさせられる映画だ。

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『白い暴動(映画の原題も『White Riot』)』というこの映画のタイトルは
RARがCLASHのライヴにインスパイアされて始めた運動だからで、
特にこの映画のテーマ曲みたいになっている「White Riot」の歌詞に刺激を受けたようである。

そうやって1976年にスタートしたRARは1982年まで続いたが、
この映画はRARが生まれた社会的/政治的背景を視覚要素重視でわかりやすく説きながら、
RARの黎明期から
8万人以上が集まったクライマックスの1978年4月の自主野外ライヴに至るまでを描く。

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あくまでもRARの活動を追ったドキュメンタリーで音楽映画とは言えないが、
パンクとレゲエが深くリンクした当時の英国音楽シーンとRARが
共振しながら盛り上がっていたこともよくわかる作りになっている。
レイシズムに限らず政治/社会的問題を扱うだけでなく
旬のパンク/ポスト・パンク・バンドのインタヴューもたっぷり載った
『Temporary Hoarding』というファンジンの発行も含めて、
DIYな活動も当時のパンク・ムーヴメントと連動していた。

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極右団体のイギリス国民戦線(ナショナル・フロント、NF)が勢いを増していた状況が、
RARを後押しもしていた。
学校にまで敢行した“情宣”や排他思想の若いスキンヘッズによる厚い支持など、
敵を知るべくNFの活動を細かく紹介しているところもポイントだ。
NFが政界に進出して勢力を伸ばすことに対する危機感を持っていたのがRARだけではなかったことで、
運動は短期間で熱を帯びてデモやライヴなどで英国中に広まっていく。
同じくデモを行なうNFとの小競り合いや衝突、
警察との軋轢、
さらに暴行や脅迫を受けていたことなども丁寧に描かれる。

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音楽映画ではないとはいえ、
RARのエネルギーになったバンド/ミュージシャンがこの映画でも絶妙のスパイスになっている。

新たに行なわれたインタヴューで登場するのは、
元CLASHのトッパー・ヒードン、
SELECTORのポーリーン・ブラック、
RARの中核バンドだったTOM ROBINSON BANDのトム・ロビンソン、
同じくRARの中核バンドだったSTEEL PULSEのデイヴィド・ハインズ、
RARのレーベルからシングルを出したアジア系のバンドのALIEN KULTURE、
MATUMBIのリーダーとしてRARの初期から協力していて
The POP GROUPSLITSなどのプロデューサーとして知られるデニス・ボーヴェル。
以上の発言をかなり厳選して盛り込んでいる。

当時CLASHのジョー・ストラマーとポール・シムノン、
当時SHAM 69のフロントマンだったジミー・パーシー、
X-RAY SPEXのポーリー・スタイリーンは、
懐かしの映像からインタヴュー・シーンなどを使っている。

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残されてなかったのか挿入されるライヴ映像も厳選され、
クライマックスの野外イベントで完奏されるのは
CLASH with ジミー・パーシーの「White Riot」だけだが、
その両者の存在がこの映画のアクセントになっている。

CLASHは政治的なパンクの先頭を切っていたバンドだ。
でもイベントのトリでプレイする/しないの問題だけでなく
RARやこういうアクティヴィズムの運動に対する彼らの微妙な気持ちが、
彼らの行動やRARのメンバーの発言からうかがえるのが興味深い。

RARに深く関わっていなかったにもかかわらず本作で一番露出度の高いミュージシャンが、
SHAM 69のジミー・パーシーである。
リベラルなパンクスからも右寄りのスキンヘッズからも支持されたバンドのリーダーならではの
静かなる苦悩と葛藤がうかがえ、
“同調圧力”に流されない正直な人だなとちょっと惚れ直した。

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パンク・ロックのスピード感のテンポのいい作りの編集も特筆したい。
と同時にRARのメンバーが語る運動の反省の言葉や
当時のイギリス国民戦線のメンバーによるRARへの思いなど、
“ネガティヴな側面”も含んでいたらベターな仕上がりになっていただろう。

40年前の出来事ながら世界的に“今”だからこその温故知新のタイムリーな制作なわけだが、
“そういうこと”は他の方々が述べるだろうから、
今回“音楽字幕監修”などで関わらせてもらったため何度も観て気づいたところも書く。

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短時間ながら目立つから最初に観た時点で目が点になったのが、
シド・ヴィシャス(SEX PISTOLS)とスージー・スー(Siouxsie and The BANSHEES)が
イギリス国民戦線のシンパと解釈されること必至の映し出し方の部分だ。
二人ともナチスのロゴのカギ十字をファッションに取り込んでいたからだろうが、
危険な誤解を与える。

ミュージシャンの発言に対するRARの反応の
いくつかは過敏で捉え方が表面的と言わざるを得ない。
デイヴィッド・ボウイを叩くにしてもインタヴューで抜粋された発言だけでなく、
『Diamond Dogs』『Low』『Heroes』あたりのアルバムの意識も踏まえてほしかった。

そういうことは最近のモリッシーTAU CROSSの問題にもつながる。
もともとロックは正義の味方ではなく波紋を投げかけるものだし、
そもそも音楽は“正解”がないから深く成り得るものだから。

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とはいえ細かいところをチェックしているとまた楽しめる。

RARの最初のライヴに出演したパンク・バンドの一つである999を紹介するところに注目。
スキンヘッズともリンクするOi!パンク・バンドのCOCKNEY REJECTSの中核メンバーが混ざり、
短時間ながら999のメンバーと誤解されること必至なほど目立っている。

何よりRARのリーダーのレッド・ソーンダズが新規インタヴューで話す際の服装が粋だ。
バッチリ映ることを意識した黒ブチ眼鏡と白アゴ髭の彼が、
スキンヘッズが伝統的に愛好しているサスペンダー・ファッションでキメているのだ。

というわけで一見の価値あり。

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★映画『白い暴動』
2019年/イギリス/84分/動画部分のほとんどはカラー
出演:レッド・ソーンダズ、ロジャー・ハドル、ケイト・ウェブ、
ザ・クラッシュ、トム・ロビンソン、シャム 69、スティール・パルスほか。
監督:ルビカ・シャー『Let‘s Dance: Bowie Down Under』※短編
4月3日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺他にて公開。全国順次ロードショー。
http://whiteriot-movie.com/


映画『高津川』

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島根県の西部を流れる高津川の周辺で暮らす人たちを描いた劇映画。
久々にいい日本映画を観たなぁ・・・・って感じである。

原作・脚本・監督は、
島根県出身の錦織良成[『たたら侍』(2017年)、『僕に、会いたかった』(2019年)他]。
主演は岡山県出身の甲本雅裕。甲本ヒロトの弟としても知られる俳優だ。

こぢんまりした家族映画ではないし社会派映画と誤解されても困る。
ふるさとに思い入れのない僕みたいなヒガミ屋をも包容してゆっくりと引き込み、
“ゆるくて確かな人と人とのつながり”の大切さをゆっくりと描いていく佳作である。

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ダムが一つもない高津川の流域で牧場を経営している斎藤学(甲本雅裕)。
妻を亡くし、母絹江(奈良岡朋子)、娘の七海(大野いと)、息子の竜也(石川雷蔵)の4人暮らし。
地元の誇りである「神楽」の舞いは歌舞伎の源流ともいわれて代々舞手が受け継がれてきたが、
学は今年舞手の舞台を踏む竜也が稽古をさぼってばかりいることや進路のことを危惧する。

地方ならではの問題の「都会への若者の流出による人口減」や「祭りや技術の伝承の存続」を、
のどかに見える高津川流域で暮らす人々も抱えていた。
そんな時、母校の小学校が閉校になる知らせや、高津川上流にリゾート開発の話が舞い込み、
学の同級生が集まった。

母親の介護をしながら老舗の和菓子屋を継いだ陽子(戸田菜穂)、
寿司屋を継いだ健一(岡田浩暉)、高津川の清流で農業・養蜂をしている秀夫(緒形幹太)、
市役所勤めの智子(春木みさよ)、主婦の久美子(藤巻るも)、
そして父親(高橋長英)を地元に残して東京で弁護士をしている誠(田口浩正)。
みな自分の人生があり生活がある。

そして催された。

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フィルムを使った撮影が人間臭い仕上がりに一役買っている。
やわらかいトーンの映像は鮮やかすぎずにナチュラルで、
高津川周辺の空気がスクリーンから漂ってくるほどだ。
自然の景色が適宜上手く織り込まれているのはもちろんのこと、
この映画の心の柱である伝統芸能の石見神楽を大きくフィーチャーしているのもポイント。

地元のボランティアやエキストラの協力によりリアルな仕上がりになったことも特筆すべきで、
そういう方々もたくさん映り込んでいる。

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登場人物が多いにもかかわらず“悪人”が登場しないだけに
いぶかりの気持ちも湧いてくる僕だが、
実際は“微妙な人物”もいる。
彼らが悔いるシーンも見どころで、
おのれを省みることで人間は素晴らしくも成り得るとあらためて思った。

結婚して子供を持つと自分の家庭の中だけが家族と考えて保身に努めるようになるのか、
もともとの家族の親やきょうだいを頭から遠ざける人はこの映画にも存在する。
だからこそ善人が目立つこの映画の中でその一人の男性はいいアクセントになっている。

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緻密な脚本も見事だ。
おっとりした流れの中で濃密な仕上がりになっている。

過疎や後継ぎ、介護、地域開発、環境問題なども炙り出される映画だが、
すべてがつながっている。
切っても切れない人と人とのつながりがと一緒である。
山積みの問題がさりげなく溶かし込まれ、
ほのめかす手法に舌を巻く。

もちろん告発系の映画とは別物である。
これは普遍的な“心の映画”だ。
地方で暮らす方々に対しては言わずもがな
都会で生活している人にも沁みる映画であり、
それこそ外国にもアピールするほど日本の息遣いが確かに伝わってくる。

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あさましい底意地が透けて見える“正義の悪口”が世界中で飛びかう今だからこそ、
みんなえらく謙虚に見える。
こういう系統の作品に多い人情の押しつけもない。
なにしろ映画そのものにエゴがない。
それでいて出演者全員の意思が静かに伝わってくる。
目が覚めるほどだ。

“次の展開”を観た人にゆだねるラスト・シーンも粋である。
すがすがしい余韻を残す。


★映画『高津川』
113分
4月3日(金)より全国公開。
https://takatsugawa-movie.jp/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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