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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない』

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北朝鮮の金正恩の“腹違いの兄”である金正男(キム・ジョンナム)が、
2017年の2月にマレーシアの空港で暗殺された事件を追ったドキュメンタリー映画。
“犯人”とされたインドネシアとベトナムの二十代の女性の数奇な数年間を追った佳作である。

ミステリー&サスペンス・タッチで進められる映画だから、
事件の概要しか知らない方は事の推移などをあまり調べないで観ることをオススメする。
予備知識がなくても入っていける素晴らしい編集で仕上げられているから。
もちろん“結果”を知っていても引き込まれる映画だ。

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1992年インドネシア生まれのシティ・アイシャと、
彼女より3つ年上でベトナム生まれのドアン・ティ・フォンが“主演”。
とある縁で二人は別々にイタズラ動画
(見ず知らずの人に行なったイタズラの瞬間をアップするネット動画)
の仕掛け人になることを承諾し、
同じ日に同じ空港内で数秒ズラしてイタズラを決行。
“首謀者”が渡した液を指定された男性の顔に塗って逃げ去るが、
その男性が政治的に大物で液がオウム真理教も使った必殺神経剤VXと二人が知ったのは、
空港の監視カメラにより“暗殺犯”として捕えられてマレーシアの警察などの話を聞いてからだ。

ヘヴィな映画だが、
テンポ良く進行するからパワフルな映画でもある。
金正男の暗殺のために数人の工作員をマレーシアに派遣した北朝鮮の手口は、
手慣れているとしか思えないほど“プロフェッショナル”だ。
自分たちで直接的な手を汚さずに事を進めた。
小金を稼げてあわよくば有名人にもなれるエサをちらつかせ、
色々な意味で“飢えている”好奇心旺盛な若い女性に狙いを定めたようである。

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“実行犯”の二人に真正面から向き合って内面にもカメラのレンズをズームアップし、
“普通の女性”であることも丁寧に明かす。
日本の基準からするとプライバシーに踏み込みすぎと思われるのかもしれないが、
恵まれた環境で生まれてない女性がいかにいいように利用されてしまうかということを
描くためにも必要な綴り方と言える。

共に貧しい家庭で育ったから“外で何か”しないと道が開けない紆余曲折の人生だったとはいえ、
二人の女性のキャラや意識は対照的だ。
シティは素朴な性格ゆえか生きるために“地道な苦労”を重ねていき、
女優になる夢を追い続けるドアンは目立ちたがり屋さんで成り上がり志向が強い。

そんな彼女たちが直接関係ない一国家の“粛清”のために利用され、
国家間の政治的な駆け引きで処刑に進む流れがじっくりと描かれている。
インドネシアもベトナムも地理的にマレーシアと近く、
インターネット/SNS時代ならではのフットワークで国外に活路を見出す二人だった。
とはいえ北朝鮮の情勢に関心を持つ誰もが知っている重要人物の暗殺に手を貸すなんて、
夢にも思わないだろう。

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二人の解放のために尽力したジャーナリストや弁護士、二人の家族の証言を盛り込みながら、
シティとドアンを追う。
二人の様子は、
事件前の写真等や裁判中を描いた画、
事件の時の防犯カメラの映像、
裁判所に入る時と出る時の映像、
“その後”の映像のみ。
だが二人の心象がしっかり伝わってくる。
特に捕えられた後は、
“取り残された時”のドアンの悲痛な表情をはじめとして、
終始精神的拷問で極限まで追いつめられた二人の底無しの絶望が生々しく迫ってくる。

二人の孤独が重い。
“罪人”の象徴のブツである手錠をかけられて世界中のメディアの前にさらされる。
首吊り死刑の可能性も高い中で
非母国語で進められる裁判に臨む二人を見てきた監督たちは、
とにかくシティとドアンのデリケイトな心情を丁寧に深く映画に刻み込んだ。
単なるドキュメンタリー記録作品に留まらない人間ドラマに仕上がったポイントである。

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いまだ独裁体制の国は世界中に存在するが、
北朝鮮は世界一クレイジーな国家で恐怖政治が続く。
役職に就いていた叔父もあからさまに消した金正恩は親族だろうが“敵”に対して容赦しない。
父親の金正日以上の冷酷合理主義者である。
この事件も自分の権力基盤を脅かすことを口走ったから異国に住む“兄”を消した。
手口は現代的で“右クリック削除”みたいな調子だが、
緻密に計画を立てて自国の被害はゼロ以下にする完全犯罪の手口は、
日本で拉致を繰り返した祖父・金日成の時代から引き継がれている。

国家間の政治力学や政府の役割など色々と考えさせられた。
二人の出身国のインドネシアとベトナム、
事件の現場のマレーシアの東南アジア3国と北朝鮮の関係は各々異なる。
強く出れる国あり、そうでない国あり。
北朝鮮は論外として、
マレーシアは二人を2年以上も生き地獄の状況に置いて政治的な生贄にしたとしか思えない。
一方でインドネシアのジョコ大統領は一人の女性を救うべく“政治的な力”を行使。
ジョコ大統領、Tシャツを着用するほどのNAPALM DEATHの大ファンというだけはある。
この映画では“ほのめかす”描き方になっているが、
ベトナム政府も重い腰を上げてもう一人の女性のために努力したとも推測できる。

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The STALINの名曲「泥棒」の歌詞のように“加害者”は簡単に“被害者”に成り得る。
人間にとって利用されるだけの存在になることほど悲しいことはない。
前に進むために体裁を気にすることなく考え方が異なる相手に対しての現実的な交渉術や、
決めつけて切り捨てずに他人の話に耳を傾けて様々な角度から物事を見ることの重要性も教えられる。

そして何よりあらためて人と人とのつながりの大切さを知る。

事件が起きる前はまったくの他人だったが、
同室ではなかったにしろ頑張れば会話ができる距離で“収監”された時から始まった
2年以上の拘留の間に培われた二人の友情も見どころの一つだ。
別々の処遇を受けた後の非情極まりない状況になってからも絶えることのない友情である。
そして他人の痛みを知る。

必見。


★映画『わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない』
/2020年/アメリカ/英語ほか/104分/英語題:ASSASSINS/
© Backstory, LLC. All Rights Reserved./ 配給:ツイン
監督:ライアン・ホワイト『おしえて!ドクター・ルース』『ジェンダー・マリアージュ 全米を揺るがした同性婚裁判』
10/10(土) 東京渋谷・シアター・イメージフォーラム ほか全国順次公開。
https://koroshitenai.com/


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映画『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』

ジョウブレイカー


エモやインディ・ロックの色もある米国のパンク・トリオJAWBREAKERのドキュメンタリー。
『ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ』(2005年)を手掛けた人たちが
監督とプロデュースを行なっている。

1986年に結成する前の個人的な状況も含めて3人のメンバーの話を中心に、
過去のライヴや写真、関係者の証言も挟み込んで話を進めるが、
ほろ苦いバンド・ストーリーである。

JAWBREAKERの音楽性は歌ものパンク・ロックと言える。
CLASHとREPLACEMENTSを引き合いに出す人の気持もわかる一方で、
CCRのような伝統的アメリカン・ロック風味や、
JESUS LIZARDみたいなオルタナティヴ・ロックのビート感も内包してた。
ポップな曲も多いとはいえポップ・パンクとは言いがたいほどクセが強く、
映画の中でメンバーが言っているように“エモ”のテイストも彼らの魅力である。

メジャー契約してから1年で解散したJAWBREAKERの切なくヘタレな歩みを見ていくと、
“エモ”そのものの人生に思えてならない。

当初の拠点はニューヨークで、
まもなくLAに移り、
サンフランシスコ/ベイエリアを拠点にしてから活動が本格化。
確かにベイエリアのシーンで刺激を受けたことによりバンドは成長しただろうが、
ニューヨークやLAに残っていたらバンドがもっと続いていたのではとも邪推できる。
ポリティカルなコテコテDIY志向の強い北カリフォルニアのベイ・エリアのパンク・シーンの
特異性も浮き彫りにする映画だ。

精力的な活動とソングライティングの魅力でJAWBREAKERは注目度が高まっていき、
まもなくNIRVANAのツアーに呼ばれて参加したことで、
ベイ・エリアのパンク・シーンからは少なからず叩かれる。
まもなくメジャー契約でさらに激しいバッシングを受ける。

アルバム・デビューが同じ1990年とはいえ、
1年遅れのメジャー・デビューをはじめ何かとGREEN DAYの後を追う形の活動になったことは、
不運だったとも言える。
GREEN DAYのビリー・ジョー・アームストロングが複雑な表情で証言しているのも興味深い。
メジャーのレコード会社に進んだことでGREEN DAYは
拠点にしていたベイ・エリアのパンク・シーンの“仲間たち”の多くから猛攻撃されたが、
ある意味JAWBREAKERへの反発はGREEN DAY以上だった。
ライヴのMCにおける“失言”がそのへんの政治家以上の痛い“ウソ”だったからである。
裏切られたファンからもまもなく目の前で強烈な“抗議行動”を起こされる。

ベイ・エリアのパンク・シーン周辺のマニアックな懐かしの人たちが証言者などで登場するのも、
この映画のちょっとした見どころだ。
盟友のECONOCHRISTやSTRAWMANのメンバーなど笑顔で話す人もいる。
一方でベイ・エリア・パンク・シーンのライヴ拠点のギルマン・ストリートの中心人物や、
ベン・ウィーゼル(SCHRRCHING WEASEL)らは嫌悪感を隠さぬ顔で露骨に批判。
「いまだ許さない」といった表情で熱弁を振るう音楽ジャーナリストも登場する。

JAWBREAKERの3人はとある事情でレコーディング・スタジオに入るのだが、
セカンドの『Bivouac』(1992年)のプロデューサーのビリー・アンダーソンが同席。
ビリーはストーナー・サウンドの仕事師として知られているエンジニアだが、
JAWBREAKERのアルバムの後にビリーが手掛けたSLEEPNEUROSIS
元々ベイ・エリアのパンク・シーン出身だからJAWBREAKERともつながる。
ベイ・エリアのパンク・シーン“強硬派”の不機嫌そうな顔とは対照的に、
3人のメンバーの次に登場時間が長くて笑顔を絶やさないビリーの存在はこの映画の“救い”だ。

インディ最終作のサードの『24 Hour Revenge Therapy』(1994年)を
レコーディングしたスティーヴ・アルビニも、
似たネーミングの某バンドの名前をユーモラスに挙げながら語っている。
ちなみに『24 Hour Revenge Therapy』のリリースは
アルビニが手がけたNIRVANAの『In Utero』のちょい後だから、
つくづくタイミングの悪いバンドである。

けどそもそもJAWBREAKERはメジャー云々以前に仲良しバンドとは言いがたかった。
少なくてもこの映画を観る限り活動当初からバンド内で確執があったようだが、
それが人間味ってもんで軋轢はエナジーにも成り得る。
気に食わなければバンドから脱退することもできたにもかかわらず
メンバーが変わらなかったがゆえに摩擦と葛藤と嫉妬が続いたとも想像できる。

でも顔も見たくないほどの険悪な関係ではない。
一人一人個別収録の部分では愚痴っぽい言葉も吐きつつ、
メンバーのほとんどの談話は
2017年に3人全員が揃ったときの場での発言というところがポイントだ。
時々あーだこーだ言い合いながら3人が一緒にしゃべっている。
演奏してなくても歌ってなくてもバンドをやっているようなもんで、
“腐れ縁”も悪くないとも思わされる映画だ。

★映画『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』
2019年|アメリカ映画|77分|原題:DON’T BREAK DOWN:A FILM ABOUT JAWBREAKER
/© 2019 Rocket Fuel Films/監督:ティム・アーウィン、キース・スキエロン


9月11日(金)から東京と大阪で開催されるロック・ドキュメンタリー映画祭
“UNDERDOCS”の中で公開。
http://underdocs.jp/

イベントの上映作品は以下のとおりだ。
『ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション』
『デソレーション・センター』
『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』(以上4作品は日本初公開)
『D.O.A.』
『悪魔とダニエル・ジョンストン』
『AMERICAN HARDCORE』
『ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ』
『ジ・アリンズ/愛すべき最高の家族』
『めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー』
『フェスティバル・エクスプレス』
『地獄に堕ちた野郎ども』
『ザ・デクライン』
『FILMAGE:THE STORY OF DESCENDENTS/ALL』
『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』
『END OF THE CENTURY』
『FUGAZI:INSTRUMENT』
『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』
『ザ・メタルイヤーズ』
『ギミー・デンジャー』
『ザ・スリッツ:ヒアー・トゥ・ビー・ハード』
『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』
 さらに“番外編”として以下のロック劇映画も上映される。
『ジャームス/狂気の秘密』
『スパイナル・タップ』
『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』


映画『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』

レディオ・バードマン


1974年結成でオーストラリアを代表するパンク/ロックンロール・バンドの一つの、
RADIO BIRDMANのドキュメンタリー映画。

関係者の話や貴重な映像と写真、それらを補う漫画で綴るオーソドックスな作りだ。
前身バンド結成前後のオーストラリアの状況から丁寧に追っていくが、
彼らと同じくメンバーが長髪で影響を受けたバンドの一つであろうRAMONESの傑作映画
『END OF THE CENTURY』以上にシビアな内容だ。

RADIO BIRDMANの音楽性は、
リーダーのデニス・テック(g)が米国ミシガン州で生まれ育ったことを抜きには語れない。
ミシガン州デトロイトが実質的な活動拠点だったMC5やSTOOGES
同時代に同じ地域の空気を吸っていたからだ。
MC5だったらセカンドの『Back In The USA』、
「T.V. Eye」をカヴァーしているとはいえSTOOGESなら
Iggy and the STOOGESの『Raw Power』がRADIO BIRDMANに近い。
RADIO BIRDMANが活動停止した80年代初頭にデニスはメンバー2人を引き連れ、
STOOGESのロン・アシュトンや元MC5のデニス・トンプソンとNEW RACEで活動。
2000年代の半ばには、
鍵盤楽器の導入などRADIO BIRDMANからの影響大のHELLACOPTERSを率いる
ニッケ・アンダーソン(IMPERIAL STATE ELECTRICLUCIFER)らと共に
デニスはMC5の再編プロジェクトに参加し、
そのMC5(D,K,T)の一員として2004年のサマーソニックで来日公演も行なっている。

話を戻すと、
主要メンバー2人が医大生だったことをはじめするメンバーの背景から、
どういうライヴをやっていたかなどをじっくりと細かく綴っていく。
オーストラリアのパンク系アンダーグラウンド・シーンとの関係も描き、
BIRTHDAY PARTYの前身でニック・ケイヴ在籍のBOYS NEXT DOORや、
RADIO BIRDMANと双璧を成したSAINTSとの微妙な関係も興味深い。
The STALINの先を行くユニークなライヴ・パフォーマンスも繰り広げていたとはいえ、
エキセントリックな立ち振る舞いが売りのバンドではないだけに、
立ち位置の難しい孤高のバンドだとあらためて思わされもする。

話が進むにつれて映画中盤以降に“火花”が激しくなるメンバー間の軋轢が凄まじい。
エゴと非情と不信感と疑心暗鬼が渦巻く“骨肉の争い”で、
一触即発の冷戦状態がずっと続いている様相だ。
再始動のたびにトラブルが起こっているようにも見える。
そういう状態を生々しくハードコアに伝えることを意識したのか、
メンバー以外の談話をほとんど挟み込んでないのもこの映画の特徴だ。

“仲良し倶楽部”みたいなバンドがウソ臭く見えることがあるし、
バンドに限らず“身内”が最大の敵とも思う僕にとっては真実味たっぷりの映画だが、
ここまでくると色々考えさせられて切なくなる。
「バンドメンバーといると家族のようだった。
その関係がおかしくなると余計つらく感じた。
家族や信頼への裏切りだからだ。
本当に傷つく経験だった」
という一メンバーの言葉は、
普遍的な人間ドラマでもある本作のポイントを突き刺す。

リーダーのデニス・テックによる締めの言葉もリアルだ。

★映画『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』
2018年|オーストラリア映画|109分|BD|
原題:DESCENT INTO THE MAELSTROM © LIVING EYES PTY LTD 2018
監督・製作・編集:ジョナサン・セクエラ


9月11日(金)から東京と大阪で開催されるロック・ドキュメンタリー映画祭
“UNDERDOCS”の中で公開。
http://underdocs.jp/

イベントの上映作品は以下のとおりだ。
『ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション』
『デソレーション・センター』
『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』
『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』(以上4作品は日本初公開)
『D.O.A.』
『悪魔とダニエル・ジョンストン』
『AMERICAN HARDCORE』
『ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ』
『ジ・アリンズ/愛すべき最高の家族』
『めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー』
『フェスティバル・エクスプレス』
『地獄に堕ちた野郎ども』
『ザ・デクライン』
『FILMAGE:THE STORY OF DESCENDENTS/ALL』
『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』
『END OF THE CENTURY』
『FUGAZI:INSTRUMENT』
『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』
『ザ・メタルイヤーズ』
『ギミー・デンジャー』
『ザ・スリッツ:ヒアー・トゥ・ビー・ハード』
『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』
 さらに“番外編”として以下のロック劇映画も上映される。
『ジャームス/狂気の秘密』
『スパイナル・タップ』
『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』


映画『デソレーション・センター』(SONIC YOUTH、EINSTURZENDE NEUBAUTEN、MINUTEMEN、MEAT PUPPETS、RED KROSSらが登場)

『デソレーション・センター』


砂漠など普段催されないLA周辺の場所で80年代前半にライヴを決行していたイベントの
“デソレーション・センター”のドキュメンタリー映画。
本作を上映する映画祭“UNDERDOCS”のパンフレットで原稿を書かせてもらったから、
あまり内容がダブらないように紹介する。

映画の序盤でハードコア前夜のLAパンクからポスト・パンクへの流れや
高圧的な警察に脅かされるライヴ・シーンといった、
デソレーション・センターが立ち上がった80年前後のLA周辺の状況が描かれる。
それから数回分のイベントの様子が映し出されるのだが、
オフィシャル・サイトの映画説明文に細かいことが載ってないからネタバレは最小限にしておく。
一つ書いておくと会場に到着するまでの時間もライヴならではの非日常的な体験が約束されている。
もう一つイイ話だから書かせてもらうと、
砂漠ライヴの発想はヘルツォーク監督の映画『フィッツカラルド』を観てひらめいたとのことだ。

もちろんライヴ・パフォース自体も見どころである。
場というよりまさに“現場”の空気や環境がどれほど観客に影響を与えるかも伝わってくるし、
アーティスト側もいつもと同じパフォーマンスをなぞるだけでしかないライヴとは別次元で勝負。
犯人がわかっている推理小説を読むような一般的なフェスとは一線を画し、
時にスピリチュアルで何が起こるかわからない異次元の“宴”の興奮でいっぱいだ。

MINUTEMENは再編STOOGESでベーシストを務めたマイク・ワット在籍で、
デソレーション・センターの支柱バンドならではの存在感のライヴだ。
MEAT PUPPETSはサイケデリック色濃厚のパフォーマンスで、
RED KROSSもパリパリのパンク・プレイである。

EINSTURZENDE NEUBAUTENは西ドイツからの参戦(↑の画像がライヴ・シーン)。
“廃墟求む”という広告も打たれた1985年の伝説的な初来日公演
(結局東京は当時プロレス会場として知られていた後楽園ホールで開催)の1年前のライヴで、
一般的なステージが似合わない当時の彼らならでは原始的苛烈パフォーマンスに酔える。
SONIC YOUTHはセカンド・フル・アルバム『Bad Moon Rising』(1985年)を出す前で、
当時のSONIC YOUTHのカオティック・サウンドの要だったドラミングのボブ・バートはこの後、
ジョン・スペンサーが率いてメタル・パーカッションも使ったPUSSY GALOREに加入する。
NAPALM DEATHが最近カヴァーしたことでまたひそかに盛り上がってもいるバンドだ。

SAVAGE REPUBLICが観られるのもうれしい。
SONIC YOUTHやSWANSと並ぶジャンク/ノイズ・ロックながら埋もれた名バンドだ。
もう一人デソレーション・センターで欠かせないのがマーク・ポーリーンで、
音楽ではないテロリスティックなパフォーマンスで場を震撼させた。

デソレーション・センターは
BLACK FLAGのグレッグ・ギン主催のSST Recordsとの関係も深かったようだ。
アルバムをリリースしたSONIC YOUTHやMINUTEMEN、MEAT PUPPETSらの出演の他、
元BLACK FLAGのチャック・ドゥコウスキや
レーベルの作品を多数プロデュースしたスポットが談話を寄せている。
BLACK FLAGの曲「Slip It In」にコーラスで参加したスージー・ガードナー(L7)も、
現場にいた一人としてイベントを振り返っている。

コーチェラ・フェスティバルやバーニングマンのルーツであるだけでなく
オルタナティヴ系フェスのロラパルーザにも直結している。
その主催者の一人であるペリー・ファレル(本作ではライヴと談話で出演)が、
JANE'S ADDICTIONやPORNO FOR PYROSで活動する前の時期に
デソレーション・センターの現場にいた事実でも明らかだ。

たやすくライヴができない今だからこそライヴの在り方について触発されるところが多い映画だ。

★映画『デソレーション・センター』
2018年|アメリカ映画|93分|原題:DESOLATION CENTER/© 2018 MU PRODUCTIONS


9月11日(金)から東京と大阪で開催されるロック・ドキュメンタリー映画祭
“UNDERDOCS”の中で公開。
http://underdocs.jp/

イベントの上映作品は以下のとおりだ。
『ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション』
『デソレーション・センター』
『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』
『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』(以上4作品は日本初公開)
『D.O.A.』
『悪魔とダニエル・ジョンストン』
『AMERICAN HARDCORE』
『ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ』
『ジ・アリンズ/愛すべき最高の家族』
『めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー』
『フェスティバル・エクスプレス』
『地獄に堕ちた野郎ども』
『ザ・デクライン』
『FILMAGE:THE STORY OF DESCENDENTS/ALL』
『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』
『END OF THE CENTURY』
『FUGAZI:INSTRUMENT』
『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』
『ザ・メタルイヤーズ』
『ギミー・デンジャー』
『ザ・スリッツ:ヒアー・トゥ・ビー・ハード』
『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』
 さらに“番外編”として以下のロック劇映画も上映される。
『ジャームス/狂気の秘密』
『スパイナル・タップ』
『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』


映画『ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション』

JOAN.jpg


70年代後半に日本でも旋風を巻き起こしたRUNAWAYSを率い、
80年代以降はJoan Jett & the BLACKHEARTSを率いて活動を続ける、
女性ロッカーのパイオニアのジョーン・ジェットのドキュメンタリー映画。
ジョーンをはじめ関係者の証言と貴重な映像や写真で進め、
その時々の彼女を取り巻く状況を描きながら
子どもの頃から丁寧にわかりやすくポイントを押さえて綴られた傑作である。

映画全体の3分の1近くを割いたRUNAWAYS時代が見どころの一つなのは言うまでもない。
女性が楽器を手にして歌いロックすることに偏見が多かった時代に登場し、
革命的な活動を繰り広げた生々しい記録が収められている。
BEATLES級のファンの歓待ぶりに戸惑った日本での様子もバッチリだし、
16~17才の女性のみのバンドならではのメンバー間の軋轢や
プロデューサーでソングライターのキム・フォウリーとの確執も包み隠さずだ。

その後のジョーンの“闘い”が実はさらに見どころである。
プロデューサー/ソングライターのケニー・ラグナとの絶えることのないパートナーシップは、
人と人とのつながりの大切さをあらためて実感させられる。

レコード会社との摩擦、
GERMSのアルバム『(GI)』(1979年)のプロデュース秘話、
映画『愛と栄光への日々』(1987年)などでの女優活動、
BIKINI KILLをはじめとする 90年代のRiot Grrrlムーヴメントとの関わりとフェミニズム、
Thr GITSの女性ヴォーカルのミアが殺害された事件に伴うプロジェクトのEVIL STIG、
単細胞な左翼とは一線を画した母国に対する思い、
2015年のロックの殿堂入りなど、
ジョーンの半生と魅力がホントあますことなく伝えられている。

ジョーンとケニー・ラグナ以外と撮り下ろしと思しき主なインタヴュー出演者は以下のとおりだ。
シェリー・カーリー(元RUNAWAYS)
ビリー・ジョー・アームストロングGREEN DAY
デビー・ハリー(BLONDIE
クリス・シュタイン(BLONDIE)
マイケル・J・フォックス(映画『愛と栄光への日々』の共演俳優)
ドン・ボールズ(元GERMS)
イアン・マッケイ(元MINOR THERAT、FUGAZI
イギー・ポップ(STOOGES)
ピート・タウンゼンド(THE WHO)
キャスリーン・ハンナ(BIKINI KILL、LE TIGRE、JULIE RUIN)、
アリソン・モシャ―ト(The KILLS)
マイク・ネス(SOCIAL DISTORTION

時に弱さを覗かせつつ、
全編にジョーンの覚悟と自信がみなぎる。
必見。

★映画『ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション』
2018年|アメリカ映画|95分|BD|原題:BAD REPUTATION
© 2018 Bad Reputation LLC


9月11日(金)から東京と大阪で開催されるロック・ドキュメンタリー映画祭
“UNDERDOCS”の中で公開。
http://underdocs.jp/

イベントの上映作品は以下のとおりだ。
『ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション』
『デソレーション・センター』
『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』
『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』(以上4作品は日本初公開)
『D.O.A.』
『悪魔とダニエル・ジョンストン』
『AMERICAN HARDCORE』
『ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ』
『ジ・アリンズ/愛すべき最高の家族』
『めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー』
『フェスティバル・エクスプレス』
『地獄に堕ちた野郎ども』
『ザ・デクライン』
『FILMAGE:THE STORY OF DESCENDENTS/ALL』
『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』
『END OF THE CENTURY』
『FUGAZI:INSTRUMENT』
『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』
『ザ・メタルイヤーズ』
『ギミー・デンジャー』
『ザ・スリッツ:ヒアー・トゥ・ビー・ハード』
『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』
 さらに“番外編”として以下のロック劇映画も上映される。
『ジャームス/狂気の秘密』
『スパイナル・タップ』
『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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