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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

TRIVIUM『What The Dead Men Say』

TRIVIUM『What The Dead Men Say』


山口県岩国市生まれのマシュー・キイチ・ヒーフィー(vo、g)らが、
米国フロリダで1999年に始めた新世代へヴィ・メタル・バンドのニュー・アルバム。
『The Sin And The Sentence』以来の2年半ぶりの9作目で、
2000年代以降のメタル・サウンドで売れっ子のジョシュ・ウィルバーが今回もプロデュースし、
最高傑作の一枚と言い切れる素晴らしい出来だ。


斬新なサウンドで歴史を切り開いたバンドとは言わないが、
既に確立している“TRIVIUM節”とも呼ぶべき自分たちのスタイルを研ぎ澄まし、
さりげなく進化を覗かせながらさらなる深化を遂げている。

クールなアルバムのすべてがそうであるようにオープニングの2秒で引き込まれる。
初期のような激しさが前作以上に際立ち、
メロディアスなメタルコアのテイストが高い。
そこにブラック・メタルのブラスト・ビート、
ベイ・エリア・スラッシュ・メタルのリフ、
デス・メタルのギター・フレーズ、
nu metalのグルーヴなどを絶妙にブレンド。
ツイン・ギター体制を活かした流麗なギター・ソロも簡潔に挿入し、
ベースとドラムも歌を引き立てながら突っ込んできて、
緩急織り交ぜながら疾走する曲をふくらませている。

起伏に富む展開ながら聴かせどころを設けた楽曲クオリティが高い。
6分を越える2曲も長さをまったく感じさせず、
ある意味どの曲もキャッチーなのだ。
聴いているといつのまにか脚でリズムを取っている・・・そういうアルバムに間違いはない。
程良い湿り気を含む抜けのいい音作りも気持ちいい。

ヴォーカルの歌心もさらにアップ。
メロディアスな歌唱のパートはもちろんのこと、
咆哮も90年代以降の米国のハードコア系に多いゴリ押し単細胞スクリームとは一線を画す。
すべての気持ちが錯綜する感情の解放である。
だからフィリップ・K・ディックの小説と同タイトルのアルバム・タイトル曲を筆頭に、
リアリスティックな歌詞が心に迫ってくる。
6作目の『Vengeance Falls』(2013年)からずっと担当している、
マシュー・キイチ・ヒーフィーの奥さんがデザイン等を手がけたアートワークもピッタリだ。

日本盤は本編の2曲の別ヴァ―ションが、
アコースティック・ギター弾き語り+コーラスで追加されている。
これがまたファン絶対必聴であると同時に、
メタルの音が苦手なポピュラー・ミュージック・ファンの方々も
TRIVIUMの魅力に打たれること必至のグレイトなボーナス・トラックだ。

世界中が内向きの今だからこそなお深くパワフルに響くアルバム。
視界が開けてくる。
オススメ。


★トリヴィアム『ホワット・ザ・デッド・メン・セイ』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-18333)CD
日本盤は本編の2曲のアコースティック・ヴァ―ション追加の約54分12曲入りで、
歌詞や写真等が載った16ページのカラー・ブックレットに加え、
歌詞の和訳も載った12ページのブックレットも封入


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DIZZY MIZZ LIZZY『Alter Echo』

DIZZY MIZZ LIZZY『Alter Echo』


90年代から北欧デンマークを代表するメロディアスなハード・ロック系トリオ、
DIZZY MIZZ LIZZYが約4年ぶりにリリースした4作目のオリジナル・アルバム。
壮大なストーリー性をはらんだ流れでありながらポピュラリティ十分の佳作だ。

ハード・ロックと呼ぶには繊細で、
歌ものと呼ぶにはハードなリフが光る絶妙のバランスのサウンドに持っていかれる。
曲間がほとんどなく、
後半の組曲は一続きでも弛緩しない作りが見事だ。
作曲もアレンジもシンプルなのに程良く起伏を設け、
ゆっくりとじっくりと物語を綴っていく。

彼らが好きなBEATLESからの影響がいい意味であまり出ていない。
日本盤に付いている伊藤政則執筆のライナーによれば、
全曲書いてプロデュースもしているティム・クリステンセン(g、vo)は
ポスト・ロック/ポスト・メタルのバンドの作品をよく聴き込んでいたそうである。
特に近年はMONOやPELICANなどのインスト主体のバンドに入れ込んでいたらしい。
なるほど・・・といった感じで、
幻想的なオープニングとリリカルなエンディングのインスト・ナンバーだけでになく、
ヴォーカル入りの曲にもその影響が感じられる。

もちろん取って付けたメッセージなんか歌わず、
物語性の高い歌詞にはさりげなく思いが溶かし込まれている。
曲名どおりの“fucked up”な思いが滲む「Boy Doom」が特に素晴らしい。

デリケイトなニュアンスをたたえるヴォーカルも含めて押しつけがましくない。
しっかりした足腰の音と確かなソングライティングに裏打ちされ、
何にも動じず、揺るがず、
そこはかとなく凛々しい。

地に足の着いた胸のすく一枚。


★ディジー・ミズ・リジー『オルター・エコー』(ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP 31352)CD
初回仕様デジパック。
日本盤はマスター納品直前録音の佳曲「Madness」を追加した50分強の計11曲入りで、
その曲以外の歌詞の和訳付。
一般のCDプレイヤー等で再生可能なBlu-spec CD2仕様。


Rob Halford with family & friends『Celestial(邦題:メタル・クリスマス)』

Rob Halford with family friends『Celestial』


JUDAS PRIESTのシンガーを務める英国の“メタル・ゴッド”、
ロブ・ハルフォードが家族や友人と作ったクリスマス・アルバム。

ロブのクリスマス・アルバムとしては
HALFORD名義で出した『Halford Ⅲ: Winter Songs』以来10年ぶりの作品である。
今回は欧米でよく知られているクリスマスの讃美歌が過半数を占め、
クリスチャンの家庭で生まれたロブならではの作りになっている。


ロブの15歳年下の弟のナイジェル・ハルフォード(ds)、
妹のスー(jingle bell)、
そのスーとJUDAS PRIESTのイアン・ヒルの息子でロブの甥のアレックス・ヒル(b、vo)など、
7人が演奏で参加。
プロデュースはマイク・エクセタ―(kbd)が
JUDAS PRIESTの『Redeemer Of Souls』(2014年)に続いて手がけた。

以下の曲をカヴァーしている。
「God Rest Ye Merry Gentlemen(世の人忘るな)」
「Away In A Manger(飼い葉の桶で)」
「Deck The Halls(ひいらぎ飾ろう)」
「Joy To The World(もろびとこぞりて)」
「O Little Town Of Bethlehem(ベツレヘムの小さな町で)」
「Hark! The Herald Angels Sing(天には栄え)」
「The First Noel(牧人ひつじを)」
「Good King Wenceslas(ウェンセスラスはよい王様)」

ロブが今回の参加メンバーと書いたオリジナル曲の
「Celestial(天界)」
「Donner and Blitzen(ドナーとブリッツェン)」
「Morning Star(明けの明星)」
「Protected By The Light(守護の光)」も、
言われなければトラディショナルなクリスマス・ソングに聞こえる。


既成のクリスマス・ソングも大半は程良くドラマチックなヘヴィ・メタル・アレンジだが、
ガチガチの硬度の音ではなくシンプルでリラックスした趣き。
日本でも有名な「Joy To The World(もろびとこぞりて)」はキャッチーで、
「Hark! The Herald Angels Sing(天には栄え)」はパンク・ロック風にハジけた音だ。
一方で「Away In A Manger(飼い葉の桶で)」は穏やかなヴォーカルから歌心が滲み、
オリジナル曲の「Morning Star(明けの明星)」もフォーク・ロック調で迫る。
「The First Noel(牧人ひつじを)」とオリジナル曲「Protected By The Light(守護の光)」は、
賛美歌そのもののトーンでグッとくるのであった。

JUDAS PRIESTの曲・・・特に70年代の曲を思い出しもするし、
ロブがやってきた音楽が伝統的な“神聖音楽”と接点が多いことをあらためて知る。
クリスマス・ソングらしく、
ロブが気心の知れた人たちとレコーディングし、
純粋に音楽を楽しんでいる様子もじわじわ伝わってくる一枚だ。


★ロブ・ハルフォード・ウィズ・ファミリー&フレンズ『メタル・クリスマス』(ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP 6208)CD
約45分12曲入り。
日本盤は、
8ページのオリジナル・ブックレットに載ったロブのコメントの和訳と
インストと言えるオープニング・ナンバー以外の3曲のオリジナル曲の歌詞と和訳が載った、
12ページの日本特製ブックレットも封入。


GRAND MAGUS『Wolf God』

GRAND MAGUS『Wolf God』


SPIRITUAL BEGGARSの二代目シンガーだったJBがギターを弾きながら歌う、
スウェーデンのヘヴィ・メタル・トリオが今年4月に発表した目下の最新作。
セルフ・タイトルで出した2001年のデビュー作をはじめコンスタントにリリースを続け、
本作は『Sword Songs』以来の約3年ぶりの9作目である。


不変だからこそアルバムを創るたびにおのれを更新していき、
今回は特に男が男に惚れる感覚のクール極まりない作品だ。

バンドとともにプロデュースしたステファン・カールソンは、
ARCH ENEMYのヴォーカル録りも何度か行なってもいる。
GRAND MAGUSの2014年の『Triumph And Power』のドラムのレコーディングをした人で、
その経験も起用のポイントになった。

基本的にはスタジオ・ライヴで演奏を録音し、
そのあとヴォーカルやギター・ソロなどを重ねたという。
むろんわざとらしいrawな音作りとは対極で、
各パートの分離がよくてクリアーに音が響いてくる。
“クリアー≠クリーン”であり、
無頼、ゆえに切ないヘヴィ・メタルが全身を震わせる。

“一発録り”ならではの絡み合いのナマの立体感が刻まれた仕上がりが感涙もので、
特にラドウィッグのドラムは重い音で録られて以前にも増してビートに血が通っている。
音の息遣いまでもが伝わってくる生々しいダイナミックなレコーディングから、
無限の情感とソウルが湧き上がる。

静かでリリカルなインストのオープニング・ナンバーからして殺られる。
前4作のプロデューサーでENTOMBED A.D.のメンバーでもあるニコ・エルグストランドが
サンプラーなどを使ったオーケストレーションを作り、
ベーシストのフォックスがチェロを弾いて仕上げた曲である。
BURRN!誌の今年の5月号に掲載されたJBのインタヴューによれば、
前作『Sword Songs』ツアーのライヴのオープニング用にニコが書いた曲だという。
まさに曲名の「Gold And Glory」の輝きをたたえる曲だ。

2曲目以降はトリオ編成のロック・バンドならではのギリギリ感で緩急織り交ぜ、
狼の遠吠えや水音などを適宜挿入しつつ音も曲もつつシンプルに仕上げられている。
ストイックなほど贅肉を殺ぎ落して40分弱10曲入りというコンパクトな作りに感情を凝縮し、
通して聴いても疲れない音作りも見事だ。
時にアップ・テンポで走って加速して程良く勇壮ドラマチックな展開をしつつ、
世界で何が起ころうが揺るがない悠々と泰然とした佇まいの雄大な構成に引き込まれていく。
DEEP PURPLEやBLACK SABBATH、URIAH HEEP、DIOなどの
英国の伝統的なバンドたちからも彼らがインスパイアされていようが、
ハードコア以降のアタック感とアグレッションに通じる響きで覚醒する。

JBの歌唱はいわゆるハイ・トーンではないが、
濁声でもない。
落ち着き払ってストロング・スタイルを極めた鋼の喉を震わせる。
いくらメタルちっくな音を出していてもヴォーカルが強靭でないとメタルではない。
だがもちろんJBはゴリ押しの歌い方でもない。
デリケイトな感情のひだも震わせる歌唱なのだ。
ヴォーカルは言わずもがな、
ギターからもベースからもドラムからも歌心が横溢して命の息吹をたたえている。

ヘヴィ・メタルの厳選の神話的な魔力も大切にしてきたバンドだが、
今回は2005年の3作目『Wolf's Return』からの連続性も感じるアルバム・タイトルだ。
平易な単語と言い回しの英語の歌詞で、
音や曲と同じくシンプルな表現だからこそ深いところを突く。
音と相まってロマンとリアリティがブレンドした世界観が広がって神経が昂る。

何事でも“省略形”になると肝が消えて変質するように
食いつきやすい“上澄み”だけすくいとっただけのモノが横行して
“メタル”という言葉も軽くなってしまっている今、
やはりしっかりとシンプルにただ“ヘヴィ・メタル”と呼びたい深いアルバムだ。
“様式美”という言葉はいらない。
“正統派”という言葉もいらない。

もっと言えばヘヴィ・メタルとして云々を超え、
ロックとして素晴らしく、
一表現として素晴らしい。
自己表現に対する責任に誠実だからだ。
スタイルより何より大切なのは意識で、
そういうのは映画でも文章でも映像や言葉に表れる。
音楽なら意識に耳を傾ける。
『Wolf God』は“本物”ならではの一声一音の重みが響きに貫かれ、
胸が熱くなり、
出口無しの袋小路の視界も開けてくる。

ライヴが観たい。
ウルトラ・グレイト。


★GRAND MAGUS『Wolf God』(NUCLEAR BLAST NB 4917-2)CD
歌詞が読みやすく載った16ページのブックレット封入の約39分10曲入り。


IRON REAGAN/GATECREEPER『Iron Reagan/Gatecreeper』

IRON REAGAN/GATECREEPER


ヴァージニア州リッチモンド出身のクロスオーヴァー・バンドIRON REAGAN
アリゾナ州のデス・メタル・バンドのGATECREEPERという、
米国東西のバンドによるスプリット盤。
両バンドともミックスはカート・バルー(CONVERGE)が手がけている。


日本でもファンが定着してきているIRON REAGANは5曲提供。
昨年の快作サード『Crossover Ministry』に引き続き絶好調である。
ミディアム・テンポもブラスト・ビートもお手の物!とばかりのリズムの“勘”がハンパない。
ジャストなコーラスもひっくるめてポイントを押さえた曲作り、抜けのいい音作り、
メタリックな中に忍ばせるロッキンなフレーズの作り方、楽曲の適度な練り込み方、
すべてパーフェクトに勢いの中に凝縮して5曲で一つの流れを作り出している。
ちょい甲高いヴォーカルはシンプルな歌詞で日常の中の真実を吐き出し、
いわゆるシュレッダーをネタにした「Paper Shredder」など目の付け所も楽しい。


かたや3曲提供のGATECREEPERはオールド・スクールのデス・メタルとでも言おうか。
ブラスト・ビートを使わずに緩急を織り交ぜ、
BOLT THROWERに通じる重戦車スタイルで押す。
1曲目の「Daybreak (Intro)」はタイトルどおりに今回の彼らのイントロで、
「Dead Inside」では世の中に苦悩し、
「War Has Begun」では最近のシリアの底無し沼をイメージもする。
陰鬱フレーズもたまらない。


本物は策を弄する必要がないこともあらためて知る。
ウルトラ・パワフルな肉体サウンドで“出口無し”を突破する好スプリット盤だ。


★IRON REAGAN/GATECREEPER『Iron Reagan/Gatecreeper』(RELAPSE RR7391)split CD
掛け帯付きの計約18分8曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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