なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DRAGONFORCE『Reaching Into Infinity』

DRAGONFORCE.jpg


日本でも支持の厚いロンドン拠点のメロディック・スピード・メタル・バンドが、
約3年ぶりに出した7作目のスタジオ録音アルバム。


最近わかりやすくて吹っ切れていてシンプルなロック・パワーで走るこういう音楽に弱い。
いわゆるメロディック・ハードコア・パンクと紙一重ながらテクニカルなギターが炸裂し、
血沸き肉躍りロマンあふれる曲を展開していく。


前作『Maximum Overload』に引き続きイェンス・ボグレンがプロデュース。
水しぶきのように音をハジけ飛ばすすばしっこい二人のギターはあちこちで聴かせどころを設け、
執拗なギター合戦でも嫌味に聞こえないほど突き抜け、
音の掛け合いで加速度を高める。

演奏陣は10年近くメンバー・チェンジしてなかったバンドだけに、
2004年のセカンド『Sonic Firestorm』から叩いてきたドラマーが変わったことは大きい。
イタリア生まれの新ドラマーは
ライヴ盤『In The Line Of Fire... Larger Than Live』でもお披露目していたが、
2年ほどツアーを重ねてきてDRAGONFORCEに馴染みつつある。
“ドラムで遊べる隙間のない曲”が大半にもかかわらず手数足数まずまずでバンドの足腰を支えている。

現シンガーがハイ・トーンというより中音域寄りの発声のためか
大半の曲の歌メロがよりマイルドに聞こえ、
よりキャッチーで親しみやすくなったのではないだろうか。
コーラス・ハーモニーもバッチリだから、
聖と俗の間を行くメロディは乃木坂46あたりにもハマりそうだ。
歌詞はいわゆるラヴソングではなく、
暗喩を多用して暗黒現実世界を描いていく感じで、
楽曲の流れも含めて映画的な手法でアルバム全体がストーリー性を帯びている。

というわけで
“DRAGONFORCE節”全開のメロディック・スピード・メタル・ナンバーに磨きをかけつつ、
なかなか多彩なアルバムだ。
ブラスト・ビート込みの曲あり、
メタル・バラードあり、
途中まで『Troops Of Tomorrow』以降のEXPLOITED風のハードコア・パンク・チューンありだ。
もちろん全体的には2000年代のアルバムの曲ほど長くはないが、
DRAGONFORCE史上最長の11分近いシリアスな大作にもチャレンジ。
その作曲者であるフレデリク・ルクレール(b)の
IRON MAIDENのアルバム『Seventh Son Of A Seventh Son』をこの一曲に詰め込んだ感じ」
という言葉も納得できる。
デス・メタリックなアレンジも施されているし、
ヴォーカルの咆哮も聴ける点でもレアな曲だ。
ファンの戸惑いにDRAGONFORCE自身が刺激を受けている様子も目に浮かぶ。

日本盤は、
海外盤の“スペシャル・エディション”に入っている2曲のボーナス・トラックに加え、
さらにもう1曲追加されている。
前者にはDEATHの87年のデビュー・アルバムの曲である「Evil Dead」のカヴァーを含み、
後者はEXILEのTAKAHIROも歌った日本のZIGGYの「Gloria」のカヴァー(一部日本語)。
その2曲のカヴァーがハマるところがDRAGONFORCE!なんである。


通常盤と同時にリリースされた限定盤には、
昨年7月の“ウッドストック・フェスティヴァル・ポーランド”でのライヴを収めた
“3曲分の6トラック”入りDVDが付いている。
3曲を、
いわゆる通常の一つの画面の映像と、
四分割した画面のマルチ・アングルで見せる作りだ。
後者も四つの映像各々の中で多少カメラが切り替わり、
一曲プレイする中でステージ上や観客フロアーで色々なことが起こっていることが一目でわかる。

開放的なサウンドのバンドだけに野外フェスの昼間というシチュエーションも似合い、
シンガーだけでなく二人のギタリストもステージ中央の“お立ち台”の上でも演奏し、
見せ方もさすがだ。
クラウドサーフの女性中心に適度に映す観客の様子も楽しい。


★ドラゴンフォース『リーチング・イントゥ・インフィニティ』(ワーナーミュージック・ジャパン WPZR-30755/6)CD+DVD
↑のカタログ・ナンバーは限定盤のもの。
16ページのオリジナル・ブックレットに加え、
日本盤は歌詞の和訳(+「Gloria」の英詞)も載った16ページも封入の計約75分14曲入り。
三面デジパック仕様。


スポンサーサイト

ACID『Engine Beast』

ACID『Engine Beast』


女性シンガーを擁して80年代前半に活動した5人編成のベルギー産ヘヴィ・メタル・バンドACIDが、
85年の1月にレコーディングして同年に出したサード&ラスト・アルバムのリイシュー盤。

もともと速い曲をやっていたとはいえ、
METALLICAからの“フィードバック”にも聞こえるスラッシュ・メタルの音の混入で硬度が増している。
と同時に初期IRON MAIDENをはじめとする当時の新興ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル、
スピードを落としたパワー・メタル、
さらに少々ポップな歌ものの洗練された当時のメインストリーム・メタルの色も混在し、
あの時代のヘヴィ・メタルをバランス良く凝縮したような作りだ。
リズムを強化してパーカッシヴな音作りが成され、
張りのある声の歌で魅せるヴォーカルもより凛々しく強靭に鍛えられている。

勝負を懸けたようなアルバムである。
それだけに最終作というのが色々と切なくなる一枚だ。

ボーナス・トラックも興味深い。
ファーストに収めた曲のデモ中心に未発表曲も含む興味深い未完の6曲が追加されているのだが、
極初期の80年録音のデモの曲「Power」のイントロはNIRVANAの「Smells Like Teen Spirit」のリフとほぼ同じだし、
プリミティヴなロック魂でみんなつながっているってこともわかる。


★ACID『Engine Beast』(HNE HNECD059)CD
今年リマスタリングされた音が使われた計約65分16曲入り。
メンバー全員に行なった今年の長編インタヴュー(PART 3)と写真で彩った16ページのブッレットも含めて、
たいへん丁寧な作りのグレイト・リイシューだ。


ACID『Maniac』

ACID『Maniac』


女性シンガーを擁したベルギー産ヘヴィ・メタル・バンドが、
ファーストから10カ月のインターヴァルで83年11月に出したセカンドのリイシュー盤。

やや長くなった曲作りやカッチリガッチリした音作りも含めて
ロックンロールというよりもメタル度がアップしている。
70年代のヘヴィ・メタルの曲で時折出会うまどろっこしい展開と違うとはいえ楽曲構成も凝ってきたのだが、
速さはキープしてスピード・メタルとスラッシュ・メタルのド真ん中を疾走するサウンドだ。
80年代初頭の英国のムーヴメントである、
“ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル(通称NWOBHM)”からの触発も大きい。
なかなかヴァラエティに富んでおり、
JUDAS PRIESTのスロー・メタル・チューンからの影響を感じさせる曲から、
AMEBIXが『Arise!』のオープニングで引用したのではないかとも邪推させるイントロの曲まで渋い。
はすっぱなヴォーカルもいい感じだ。

世界的にブレイクしてもおかしくなかった完成度で、
前作以上にピュア・ヘヴィ・メタル・ファンの心も体もくすぐる一枚。


★ACID『Acid』(HNE HNECD05)CD
このLPリリースの翌月で出した12”EPの3曲(本編未収録)が追加された約48分11曲入り。
今年リマスタリングされた音が使われている。
メンバー全員に行なった今年の長編インタヴュー(PART 2)と写真で彩った16ページのブッレットも含めて、
たいへん丁寧な作りのグレイト・リイシューだ。


ACID『Acid』

ACID.jpg


女性シンガーを擁して80年代前半に活動した、
5人編成のベルギー産ヘヴィ・メタル・バンドによる83年1月発表のファースト・アルバムのリイシュー盤。
念のために書いておくと80年代後半に活動した東京の同名ハードコア・パンク・バンドとは関係ない。

MOTORHEADVENOM meets 初期IRON MAIDEN with 速い曲の時のJUDAS PRIEST
といった様相のサウンドだ。
ツー・ビートがアップテンポのブルースとリンクして何気にロックンロールがベースにある楽曲だし、
オールド・ハード・ロック直系のギター・ソロも渋い。
メタル・パンクともパンク・メタルとも言えるラフ・プレイの連続もたのもしく、
メタルもパンクもまとめて引き受けたロックンロール以外のなにものでもない。
粗削りで金属臭プンプンのギターをはじめとして音の響きそのものが熱く、
体裁なんか気にせずに何かを創造せんとするエナジーにむせかえるばかりなのだ。
一方で静かなパートはバンド名にふさわしく初期UFOみたいにサイケデリックですらあり、
さりげなく深いのであった。

サタニック&ボンデージ+ガンベルトというパーフェクトな衣装でステージに立った、
女性シンガーの歌唱も妙な作為がなくてこそばゆい。
天然でやっているからこそほのかに漂う妖気と色気に肝っ玉がとろける。
歌詞は英語と思われるが、
“hell”“Demon”“Devils”“Satan”といった“暗黒ヘヴィ・メタル用語”を使った曲名からも、
気合がムンムン感じられる。

DISCHARGEの84年の7”シングル「Price Of Silence」の先を行っていたジャケットも微妙にクールだ。
なんとも言えない味わいでここにも熱情が溢れている。
外道メタルが好きなメタラーはもちろんのこと、
メタル大好きパンクスの120%がイケること間違い無しなんである。

メンバー全員に行なった今年の長編インタヴュー(PART 1)と写真で彩った16ページのブレットも含めて、
たいへん丁寧な作りのグレイト・リイシューだ。
メタル云々以前にロックとって音楽にとって表現にとって大切なことを思い起こさせもするほど、
新鮮な発見ありありで大スイセン。


★ACID『Acid』(HNE HNECD057)CD
本編の2曲の別ヴァーションがA/B面の82年のデビュー・シングルと、
本編の2曲のデモ・ヴァージョンが追加された約53分14曲入り。
今年リマスタリングされた音が使われている。


TRIVIUM『Silence In The Snow』

TRIVIUM『Silence In The Snow』


山口県岩国市生まれのマシュー・キイチ・ヒーフィー(vo、g)が90年代末に結成した、
米国フロリダ出身の新世代ヘヴィ・メタル・バンドのニュー・アルバム。
『Vengeance Falls』以来の2年ぶりの7作目である。

スラッシュ(元GUNS N' ROSES)の最新作『World On Fire』も手掛けた
マイケル・エルヴィス・バスケットがプロデュースを行ない、
LAMB OF GODのプロデューサーとして知られるジョシュ・ウィルバーがミックス。
視界が開けたクリアーな音の分離ばっちりの適度なメジャー感でコーティングされつつも、
いわゆるメジャー・レコーディングに慣れた方にはやっぱりキツそうな音の強度に貫かれ、
根が不変であることも叩きつけている。

イーサーンEMPEROR)が制作と録音を行なったインスト・オープニング・ナンバーが象徴するように、
これまで以上にリリカルなアルバムである。
エクストリーム・メタル通過後のエッジの立ったメロディアスかつヘヴィなメタルで、
KILLSWITCH ENGAGE以降のキャッチーなメタルコアとも重なるサビを設けたソングライティングで持っていく。
ほぼ無名のマット・マディーロにドラマーが変わったが、
適度に跳ねるタイトなリズム・セクションの音も抜けがいい。

印象的なフレーズをちりばめたツイン・ギターが核の音もヴォーカルと同等のバランスで前に出ているが、
これまで以上に歌が前面に出たアルバムだ。
川の中で転がり続ける石の尖がりの如く、
初期に披露していたスクリームやハードコア・ヴォイスは活動を続けていくうちに減っていき、
自然な流れでほぼ一掃されている。
かといってハイ・トーンというわけでもなく、
いわゆるナチュラル・ヴォイスの堂々たる歌いっぷりは包容力も十分だ。
これまでのアルバムのギター・プレイや作曲も含めて想像するに
熱くなりすぎないクールなキャラの人と思われるから、
キイチの歌い方はこういう方がよりオーガニックに聞こえる。
“ハーフ・ジャパニーズ”ならではと言える謙虚な持ち味も醸し出されている。

ある意味同じような転身の先輩METALLICAは90年代半ばにスラッシーな要素を捨て、
2000年代には妙に激烈で複雑なメカニカル・サウンドを打ち出しつつ王者の地位を固めた。
けどほとんどのファンが求めるのは結局迷走以前の『Metallica』までの曲である。
だがTRIVIUMは邪な“変身”をすることなく、
いわば漸進でポピュラリティを獲得してきている。
だから最新の曲が求められるのだ。

アレンジを変えれば歌ものポピュラー・ミュージックとして通用する曲で構成されたアルバムだが、
もちろん綺麗事の歌詞そのままでクリーンに整えた体裁だけのやつとは別次元である。
邪悪なヘヴィ・メタルが精神的にも根っこであることに変わりはなく、
歌のテーマは軽くない。
音と共振して葛藤みたいなものが最初から最後までアルバムに沈殿している。
切り口や言い回しを変えながら幾度となく“救い”が歌われていることにも注意したい。
さらに戦いと死と終末が交錯して歌い込まれる。

聴きやすい。
だが、あなどれない一枚。


★トリヴィアム『サイレンス・イン・ザ・スノー』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-16887)CD
イメージ写真集仕様の12ページのオリジナル・ブックレット封入。
日本盤は2曲のボーナス・トラックが追加された約53分13曲入りで、
マシュー・キイチ・ヒーフィーの2ページのライナー(和訳のみだが興味深いエピソード満載)や
全曲の歌詞とその和訳などが載った28ページのブックレットも封入。
実際のジャケットは↑の画像よりも全体がやや白っぽい。


 | HOME |  古い日記に行く »

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (289)
映画 (243)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (42)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (407)
EXTREME METAL (128)
UNDERGROUND? (93)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (120)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (82)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん