なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ACID『Engine Beast』

ACID『Engine Beast』


女性シンガーを擁して80年代前半に活動した5人編成のベルギー産ヘヴィ・メタル・バンドACIDが、
85年の1月にレコーディングして同年に出したサード&ラスト・アルバムのリイシュー盤。

もともと速い曲をやっていたとはいえ、
METALLICAからの“フィードバック”にも聞こえるスラッシュ・メタルの音の混入で硬度が増している。
と同時に初期IRON MAIDENをはじめとする当時の新興ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル、
スピードを落としたパワー・メタル、
さらに少々ポップな歌ものの洗練された当時のメインストリーム・メタルの色も混在し、
あの時代のヘヴィ・メタルをバランス良く凝縮したような作りだ。
リズムを強化してパーカッシヴな音作りが成され、
張りのある声の歌で魅せるヴォーカルもより凛々しく強靭に鍛えられている。

勝負を懸けたようなアルバムである。
それだけに最終作というのが色々と切なくなる一枚だ。

ボーナス・トラックも興味深い。
ファーストに収めた曲のデモ中心に未発表曲も含む興味深い未完の6曲が追加されているのだが、
極初期の80年録音のデモの曲「Power」のイントロはNIRVANAの「Smells Like Teen Spirit」のリフとほぼ同じだし、
プリミティヴなロック魂でみんなつながっているってこともわかる。


★ACID『Engine Beast』(HNE HNECD059)CD
今年リマスタリングされた音が使われた計約65分16曲入り。
メンバー全員に行なった今年の長編インタヴュー(PART 3)と写真で彩った16ページのブッレットも含めて、
たいへん丁寧な作りのグレイト・リイシューだ。


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ACID『Maniac』

ACID『Maniac』


女性シンガーを擁したベルギー産ヘヴィ・メタル・バンドが、
ファーストから10カ月のインターヴァルで83年11月に出したセカンドのリイシュー盤。

やや長くなった曲作りやカッチリガッチリした音作りも含めて
ロックンロールというよりもメタル度がアップしている。
70年代のヘヴィ・メタルの曲で時折出会うまどろっこしい展開と違うとはいえ楽曲構成も凝ってきたのだが、
速さはキープしてスピード・メタルとスラッシュ・メタルのド真ん中を疾走するサウンドだ。
80年代初頭の英国のムーヴメントである、
“ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル(通称NWOBHM)”からの触発も大きい。
なかなかヴァラエティに富んでおり、
JUDAS PRIESTのスロー・メタル・チューンからの影響を感じさせる曲から、
AMEBIXが『Arise!』のオープニングで引用したのではないかとも邪推させるイントロの曲まで渋い。
はすっぱなヴォーカルもいい感じだ。

世界的にブレイクしてもおかしくなかった完成度で、
前作以上にピュア・ヘヴィ・メタル・ファンの心も体もくすぐる一枚。


★ACID『Acid』(HNE HNECD05)CD
このLPリリースの翌月で出した12”EPの3曲(本編未収録)が追加された約48分11曲入り。
今年リマスタリングされた音が使われている。
メンバー全員に行なった今年の長編インタヴュー(PART 2)と写真で彩った16ページのブッレットも含めて、
たいへん丁寧な作りのグレイト・リイシューだ。


ACID『Acid』

ACID.jpg


女性シンガーを擁して80年代前半に活動した、
5人編成のベルギー産ヘヴィ・メタル・バンドによる83年1月発表のファースト・アルバムのリイシュー盤。
念のために書いておくと80年代後半に活動した東京の同名ハードコア・パンク・バンドとは関係ない。

MOTORHEADVENOM meets 初期IRON MAIDEN with 速い曲の時のJUDAS PRIEST
といった様相のサウンドだ。
ツー・ビートがアップテンポのブルースとリンクして何気にロックンロールがベースにある楽曲だし、
オールド・ハード・ロック直系のギター・ソロも渋い。
メタル・パンクともパンク・メタルとも言えるラフ・プレイの連続もたのもしく、
メタルもパンクもまとめて引き受けたロックンロール以外のなにものでもない。
粗削りで金属臭プンプンのギターをはじめとして音の響きそのものが熱く、
体裁なんか気にせずに何かを創造せんとするエナジーにむせかえるばかりなのだ。
一方で静かなパートはバンド名にふさわしく初期UFOみたいにサイケデリックですらあり、
さりげなく深いのであった。

サタニック&ボンデージ+ガンベルトというパーフェクトな衣装でステージに立った、
女性シンガーの歌唱も妙な作為がなくてこそばゆい。
天然でやっているからこそほのかに漂う妖気と色気に肝っ玉がとろける。
歌詞は英語と思われるが、
“hell”“Demon”“Devils”“Satan”といった“暗黒ヘヴィ・メタル用語”を使った曲名からも、
気合がムンムン感じられる。

DISCHARGEの84年の7”シングル「Price Of Silence」の先を行っていたジャケットも微妙にクールだ。
なんとも言えない味わいでここにも熱情が溢れている。
外道メタルが好きなメタラーはもちろんのこと、
メタル大好きパンクスの120%がイケること間違い無しなんである。

メンバー全員に行なった今年の長編インタヴュー(PART 1)と写真で彩った16ページのブレットも含めて、
たいへん丁寧な作りのグレイト・リイシューだ。
メタル云々以前にロックとって音楽にとって表現にとって大切なことを思い起こさせもするほど、
新鮮な発見ありありで大スイセン。


★ACID『Acid』(HNE HNECD057)CD
本編の2曲の別ヴァーションがA/B面の82年のデビュー・シングルと、
本編の2曲のデモ・ヴァージョンが追加された約53分14曲入り。
今年リマスタリングされた音が使われている。


TRIVIUM『Silence In The Snow』

TRIVIUM『Silence In The Snow』


山口県岩国市生まれのマシュー・キイチ・ヒーフィー(vo、g)が90年代末に結成した、
米国フロリダ出身の新世代ヘヴィ・メタル・バンドのニュー・アルバム。
『Vengeance Falls』以来の2年ぶりの7作目である。

スラッシュ(元GUNS N' ROSES)の最新作『World On Fire』も手掛けた
マイケル・エルヴィス・バスケットがプロデュースを行ない、
LAMB OF GODのプロデューサーとして知られるジョシュ・ウィルバーがミックス。
視界が開けたクリアーな音の分離ばっちりの適度なメジャー感でコーティングされつつも、
いわゆるメジャー・レコーディングに慣れた方にはやっぱりキツそうな音の強度に貫かれ、
根が不変であることも叩きつけている。

イーサーンEMPEROR)が制作と録音を行なったインスト・オープニング・ナンバーが象徴するように、
これまで以上にリリカルなアルバムである。
エクストリーム・メタル通過後のエッジの立ったメロディアスかつヘヴィなメタルで、
KILLSWITCH ENGAGE以降のキャッチーなメタルコアとも重なるサビを設けたソングライティングで持っていく。
ほぼ無名のマット・マディーロにドラマーが変わったが、
適度に跳ねるタイトなリズム・セクションの音も抜けがいい。

印象的なフレーズをちりばめたツイン・ギターが核の音もヴォーカルと同等のバランスで前に出ているが、
これまで以上に歌が前面に出たアルバムだ。
川の中で転がり続ける石の尖がりの如く、
初期に披露していたスクリームやハードコア・ヴォイスは活動を続けていくうちに減っていき、
自然な流れでほぼ一掃されている。
かといってハイ・トーンというわけでもなく、
いわゆるナチュラル・ヴォイスの堂々たる歌いっぷりは包容力も十分だ。
これまでのアルバムのギター・プレイや作曲も含めて想像するに
熱くなりすぎないクールなキャラの人と思われるから、
キイチの歌い方はこういう方がよりオーガニックに聞こえる。
“ハーフ・ジャパニーズ”ならではと言える謙虚な持ち味も醸し出されている。

ある意味同じような転身の先輩METALLICAは90年代半ばにスラッシーな要素を捨て、
2000年代には妙に激烈で複雑なメカニカル・サウンドを打ち出しつつ王者の地位を固めた。
けどほとんどのファンが求めるのは結局迷走以前の『Metallica』までの曲である。
だがTRIVIUMは邪な“変身”をすることなく、
いわば漸進でポピュラリティを獲得してきている。
だから最新の曲が求められるのだ。

アレンジを変えれば歌ものポピュラー・ミュージックとして通用する曲で構成されたアルバムだが、
もちろん綺麗事の歌詞そのままでクリーンに整えた体裁だけのやつとは別次元である。
邪悪なヘヴィ・メタルが精神的にも根っこであることに変わりはなく、
歌のテーマは軽くない。
音と共振して葛藤みたいなものが最初から最後までアルバムに沈殿している。
切り口や言い回しを変えながら幾度となく“救い”が歌われていることにも注意したい。
さらに戦いと死と終末が交錯して歌い込まれる。

聴きやすい。
だが、あなどれない一枚。


★トリヴィアム『サイレンス・イン・ザ・スノー』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-16887)CD
イメージ写真集仕様の12ページのオリジナル・ブックレット封入。
日本盤は2曲のボーナス・トラックが追加された約53分13曲入りで、
マシュー・キイチ・ヒーフィーの2ページのライナー(和訳のみだが興味深いエピソード満載)や
全曲の歌詞とその和訳などが載った28ページのブックレットも封入。
実際のジャケットは↑の画像よりも全体がやや白っぽい。


IRON MAIDEN『The Book Of Souls』

IRON MAIDEN『The Book Of Souls』


約5年ぶりで16作目にあたるIRON MAIDENのニュー・アルバム。

計約93分10曲入りの2枚組CDで13分台の曲や10分台の曲も含み、
ブルース・ディッキンソン(vo他)のピアノの調べで始まるラストは18分に及ぶ大作だが、
強引な“腕っぷし”に頼らずアルバム全編を一気に聴かせる力に静かなる感動すら覚える。
プロデューサーは『Brave New World』(2000年)以来手掛けているケヴィン・シャーリーだ。


BURRN!誌最新号のIRON MAIDEN特集の中で語っているNAPALM DEATHのバーニーと同じく、
僕もIRON MAIDENは最初の2作が別格という人間だが、
80,年代にLPを売ってしまったサード以降も頭がやわらかくなった今なら楽しめる。
本作の曲も、
80年のファースト『Iron Maiden』から根が変わってないGENESIS風味のプログレ性に痺れるのだ。
全体的にまったりしていようが関係ない音のアタック感も健在。
トリプル・ギター・ソロの順繰りした連なりにも、
“こう来る!”とわかっているスタイルならではの気持ち良さであらがえないのである。

民謡っぽいメロディも頻発するし、
なにしろ全編に漂うイングランド臭さがたまらない。
国民的ヘヴィ・メタル・バンドを超えて国民的ロック・バンドと言っても過言ではない包容力のサウンドだし、
普遍的な表現だからこそ国外にも響く。

古代エジプトの『死者の書』や『チベット死者の書』も思い出すアルバム・タイトルだが、
ブルース・ディッキンソンがソングライティングに関わったのは4曲のみではある。
だが彼が98年の5作目のソロ・アルバム『The Chemical Wedding』で、
マーク・スチュワートThe POP GROUP)の実質的ソロ・デビュー・シングルと同じく、
英国のロマン派芸術家であるウィリアム・ブレイクの詩「Jerusalem」を取り上げていただけに、
不思議はないディープな歌詞だ。
単細胞のマッチョ・バンドとは一味違うインテリジェンスに富む表現は、
知的な雰囲気が好きな人間の頭を確実に撃ち落し、
ヘヴィ・メタルの表面的な“デザイン”にしか関心のない人間の心臓をも確実に撃ち落す。

と同時に、あらためて思う。
中東やアフリカやアフガニスタン~パキスタンなどで子供たちも惨殺している無感情な者たちのみならず、
自分自身がなく流されて過剰に感情的な者たちも含めて理性的な話が通じない人間にも、
政治的なメッセージとは違う意識に働きかけるこういう表現が響くと。


ふつふつとちからがわいてくる。
ずっとIRON MAIDENを追っかけてきている方々の興奮ぶりもなんとなく理解できるし、
僕みたいな“途中離脱組”にもゆっくりと首を振らせる威風堂々の快作である。


★アイアン・メイデン『魂の書~ザ・ブック・オブ・ソウルズ~』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-16750/1)2CD
24ページのオリジナル・ブックレットに加え、
日本盤は歌詞の和訳などが載った20ページのブックレット封入。


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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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