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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CALIBAN『Elements』

CALIBAN『Elements』


20年強コンスタントに活動しているドイツのメタルコア・バンドの11作目。

2000年代前半ぐらいまではニュースクール・ハードコアに括られることも多かったバンドだが、
その呼称があまり使われなくなったと同時に彼らの音楽性の進化に伴い、
ドイツを代表するメタルコア・バンドの一つと呼ばれるようになっている。
もちろんここで言うメタルコアは2000年代以降の米国産メタルコアが基本のスタイルである。

ただやはり最初からキャッチーなメタルコアを狙ったバンドとは違い、
ヴォーカルも音も根の響きが激烈なところにハードコア上がりであることが表れている。
ツボを心得て作られた楽曲は緩急織り交ぜてヴァラエティに富むが、
いくらサビの部分をメロディアスに歌おうと骨っぽいのだ。

と同時にゲストが挿入するキーボードの音も相まって、
エレクトロニクスの装飾も薄っすらと施されている。
ニュー・メタル(nu metal)のグルーヴ感が全体的に濃いところも興味深く、
KORNのギタリストのヘッドが1曲ゲスト・ヴォーカルと一部の作詞を担当したのも納得だ。
2000年代後半には古臭く聴こえたニュー・メタルが一周してフレッシュになったようでもあるが、
もともと音楽的にな接点が大きかったニュースクール・ハードコアが取り込んでブレンドし、
アップデートして再生されたかのようなサウンドなのだ。

ラップとは言わないまでもそれっぽいヴォーカルも飛び出すが、
おのれの外とおのれの内に向き合っている歌詞を見るとやはりハードコアと思わずにはいられない。
タフ・ガイ系と似て非なるヒリヒリしたスクリームと歌唱で、
ほとんどの歌詞を英語で歌う。
母国語で歌っている一曲も、
たとえクセの強い響きのドイツ語であろうとCALIBANの音楽として消化している。

“メタルコア通過後のモダン・ヘヴィネス”とも言うべきコンパクトに凝縮された約51分13曲入り。


★キャリバン『エレメンツ』(ソニー・ミュージック SICP 5812)CD
歌詞が載った16ページのオリジナル・ブックレット封入。
日本盤は歌詞の和訳等が読みやすく載った12ページのブックレットも付き、
言葉数の多いバンドだけにありがたい。


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BETWEEN THE BURIED AND ME『Automata I』

BETWEEN THE BURIED AND ME『Automata I』


カリフォルニア出身の“ハードコア系メタル・プログレ・バンド”が、
オリジナル・アルバムとしては『Coma Ecliptic』以来約3年ぶりに出した8作目。


最近のアルバムはプログレ色がやや強めだったが、
彼らの“お里”のメタル・ハードコアの色が今回はわりと多めだ。
アルペジオから始まるも、
まもなくメタル・ハードコアの名残がヴォーカルと音に炸裂し、
さらにヘヴィ・ロックへと突入。
メタル・リフでツー・ビートのパートを絡めつつ自然な流れで展開していき、
場面転換もスムーズに滑らかな推移でリズムを変えつつ加速度をキープしながら、
リリカル&パワフル&ドリーミーに音楽そのもので物語を紡ぎ編んでいく。

いわゆる演奏テクニックは十分ながら、やっぱりテクニカルに聞こえない。
いい意味でDREAM THEATERほどカッチリしてないのは、
拘束度の高いメタルのテクスチャーに縛られてないからだ。
音の抜けが良く不思議とポップな感覚に包まれている。
ブリティッシュ・プログレ全般が頭をよぎり、
基本的には70年代のKING CRIMSON系だが、
ところどころで70年代後半以降のGENESISやYESやPINK FLOYD、
さらに後期UKも想起するマイルドなニュアンスが滲み出ている。

MUSEあたりに通じるキャッチーなメロディ・センスが光る一方で、
シタールっぽい音も聞こえてくる呪術的なパートは新境地。
適宜キーボードやピアノも使い、
曲によってはトランペットやトロンボーン、バリトン・サクソフォンもゲストが挿入している。
ヴォーカルは色々な歌い方をしていてナチュラル・ヴォイスではまろやかな歌唱も多く、
“恫喝系”とは一味違う太い声のパートが
今年3月に事故で他界したケイラブ・スコフィールドを思い出すというのもあって、
全体的にCAVE INがもうちょいプログレ寄りになったようでもある。

ブレイクには至らないにしても独自のポジションで支持を集め、
地道にコンスタントな活動を続けてミュージシャンシップも自然と高まっている。
クレジットによればバンドで行なっている作曲がいい意味でこなれてきたというか、
曲作りの術が肉体化されているのだ。
メタル・ハードコアなサウンドの米国産はお国柄かゴリ押しバンドが目立つが、
どの曲にも聴かせどころをしっかり設け、
楽曲クオリティも高い。
6分台、8分台、10分台の曲と
3分台、4分台、1分台の曲の計6曲で、
トータル35分強というバランス感とヴォリューム感も一つの作品として的確。
一気に聴かせるのに一役買っている。

今年中に出るらしい“Ⅱ”も楽しみだ。


★BETWEEN THE BURIED AND ME『Automata I』(SUMERIAN SUM930)CD
8ページのブックレット封入のデジパック仕様。


AGRIMONIA『Awaken』

AGRIMONIA『Awaken』


女性ヴォーカルを擁して2000年代の半ばから活動している、
スウェーデンのネオ・クラスト系バンドの4作目。

ポリティカル・クラストDIYレーベルのSKULD RELEASESやPRAFANE EXISTENCEから
初期にリリースしていたことで、
どういうシーンから出てきたバンドかわかるし、
その両方ともメタリックなバンドを90年代の頭から出していたレーベルだけに違和感はなかった。
と同時に最近SOUTHERN LORDからリリースしていることも違和感のないバンドだ。


約58分6曲入りというヴォリュームで、
15分以上はないにしろ10分前後の曲がほとんどだ。
いわゆるネオ・クラストのドラマチックな展開は変わらないが、
もっとメタル寄りの構成美を内包し、
2000年代以降のNEUROSISをはじめとするポスト・メタルや
ポスト・ブラック・メタルの質感の音でもある。
熾烈な音ながらメタルというよりシューゲイザー系の耽美性も漂うが、
やっぱりサウンドがヒリヒリしていてメタル・クラストの最新型といっても過言ではない。
メランコリックな旋律でプログレとドゥーム・メタルをブレンドもしている。

大半のパートはポントス(g、kbd他)がレコーディング。
ドラムはスウェーデンのDIVISION OF LAURA LEEのパーらが録音し、
AT THE GATES『At War With Reality』を録ったヘンリック・ウッドがミックスしている。

AGRIMONIAがゴセンバーグ(イエテボリ)出身のバンドということで、
AT THE GATESらの同郷の“先輩”をはじめとする
スウェーデンのメロディック・デス・メタル勢との接点も見えてくる。
実際5年前の前作はそのシーンの主のフレドリック・ノルドストロームがミックス等を手掛けていたし、
前作に引き続きベースは今回もAT THE GATESのギタリストのマーティン・ラーソンが弾いている。
もちろん比べるとパンク/ハードコアとヘヴィ・メタルという核の違いは明らかだし、
AGRIMONIAの方がずっと緻密だが、
ARCH ENEMYともダブる。
ヴォーカルの迫力で特に現在のARCH ENEMYを思い出す。

AGRIMONIAのクリスティーナのヴォーカルは、
CARCASSのジェフ・ウォーカー直系の胸のむかつきを解き放つスタイル。
歌詞は英語で、
ストレートな政治表現はないにしろ意識が変わってないこともしっかりと伝わってくるのであった。

オススメ。


★AGRIMONIA『Awaken』(SOUTHERN LORD LORD 251)CD


DARKEST HOUR『Godless Prophets & The Migrant Flora』

DARKEST HOUR『Godless~


95年結成の米国ワシントンDC出身のメタル・ハードコア・バンドが約2年半ぶりに出した9作目。
2000年のファースト・フル・アルバム『The Mark Of The Judas』を最初に再発したことがある、
SOUTHERN LORD Recordingsから今年3月にリリースされたアルバムだ。

前作『Darkest Hour』が今一つピンと来なくて“もう聴かないかも”と思って後回しにしていたが、
ブログでコメントしていただいた方の言葉に触発されて買ってみて大正解。
僕としては起死回生作であり、
ゲットしてからへヴィ・ローテーションである。

エンジニアとミックスと共同プロデュースを、
いつかはやると思っていたカート・バルー(CONVERGE)が担当。
音の個性の薄いバンドをカートがレコーディングすると彼の色に染まって同じような感触になりがちだが、
これは相性最高で確固とした個性を炸裂させて突き抜けた傑作だ。


AT THE GATESが限りなくハードコア・パンクに近いメロディック・デス・メタルであるとしたら、
DARKEST HOURは限りなくメロディック・デス・メタルに近いハードコア・パンクだ。
メタルコアと呼ばれがちだが、
ハードコア・パンクと言い切りたい。
DARKEST HOURのフェイスブックのジャンルのところに書いてある
“Thrash,Metal,Punk”という言葉も的確で、
彼らがパンクを意識しているというのも嬉しいし納得なのだ。
自己保身に余念がなく意識が止まった旧態依然のパンク・ロックやハードコア・パンクの間を中央突破し、
2000年代以降の進化形に磨きをかけている。
ほとんどの曲がツー・ビートで疾走し、
ツボを突くストレート&ドラマチックなソングライティングも冴えわたっている。

IRON REAGANの前ドラマーが大好きだったから
レコーディングでは前作から参加している新ドラマーをなかなか受け入れられなかった僕だが、
小回りの効いたドラミングがハマっている。
ベースと共にDARKEST HOURの強靭な足腰を築き上げ、
緻密なリズムをギターと刻み絡み合っている。
メロディも噴き出しているが、
とにかく各パートの音のアタック感が強力でひたすらパーカッシヴ。
ちょいと80年代のMETALLICAの静かな曲みたいなインスト・ナンバーもよろしい。

2000年代にDARKEST HOURに在籍してSCAR THE MARTYRの一員でもあったクリス・ノリスと、
SEVENDUSTのジョン・コノリーも一曲ずつギター・ソロを弾いている。

ジョン・ヘンリーのヴォーカルは相変わらずつんめる勢いで素晴らしい。
こういう声に耳を傾けると、
体裁気にしてわざとらしくポーズつけた演出過剰の歌い方のヴォーカルのウソ臭さが見えてきてしまう。
前にも書いたように、
90年代以降のメタル・ハードコア界のみならずハードコア系バンドのヴォーカルで、
VISION OF DISORDERのティムやEARTH CRISISのカールと並んで吐血しそうなほど強烈に生々しい。
まさに本気の喉の震えだし、
タフ・ガイ気取りとは真逆のヲタなヴィジュアルでリアリスティックな言葉を吐き叩きつける。

目の覚める強力盤。


★DARKEST HOUR『Godless Prophets & The Migrant Flora』(SOUTHERN LORD LORD239)CD
読みやすく歌詞が載った味のある紙質の8ページの“四つ折りブックレット”封入。
約45分12曲入り。


KILLSWITCH ENGAGE『Incarnate』

KILLSWITCH ENGAGE『Incarnate』


2000年代以降の米国産メタルコアの一スタイルを築き上げた米国マサチューセッツ州出身の5人組が、
『Disarm The Descent』以来約2年半ぶりにリリースした7作目。

まさに真打ち登場である。
1秒で場の空気が変わる。
意識が研ぎ澄まされた鳴りが違う。
だから視界が開かれていく。
進化と深化が止まない素晴らしいアルバムだ。

いい意味でワンパターンな“KILLSWITCH ENGAGE節”をキープしつつ、
こっそりブラック・メタルを忍ばせるなどのヴァラエティに富むアレンジと構成力の“脚本”が見事で、
曲間をあまり空けず一気に聴かせる。
ブックレットのメンバー写真でも見せる程良く田舎臭く垢抜け切れぬ味わいが息づいて
アメリカン・ロックの伝統をさりげなく感じさせる作曲は、
キャッチー&ドラマチック&コンパクト。
映画でもなんでも言い訳じみた“無駄”なパートが多くてダレる作品が多いが、
どの曲も聞かせどころをしっかり設けつつ何気にストイックに贅肉を削ぎ落としている。
エッジとグルーヴの音のブレンド具合もクールだ。

プロデューサー、エンジニア、ミキサーとしてクレジットされている“Trash D.”なる人物は、
遊び心を忘れないアダム・デュトキエヴィッチ(g他)ならではの命名ではないか。
これまでの自分たちのアルバムだけでなく他のバンドもよくプロデュースしているアダムは
昔はドラマーとしてもレコーディングしていたわけだが、
ドラムができるミュージシャンが中心のバンドのアルバムは必ずしも歌やギター主導にならない。
ライヴ中にステージの後ろから前のメンバーを見ているように、
どうやってリスナーに届かせるかというバランスを頭の中で描きながらレコーディングもしている。
ステージでのオチャメすぎる素行からは想像がつかないレコーディングでの仕事ぶりとも言えるが、
彼の“ポップ気質”は隠し味として本作でも顔を覗かせ、
デス・メタリックなバッキング・ヴォーカルは彼がメインだと想像できる。

こういう系統の音楽のバランス感ということで言えば、
アメリカのハードコア/エクストリーム・メタル系のバンドは、
USAの伝統的な国家体質に通じるほど相手のことを考えないゴリ押しスタイルが目立つ。
馬鹿の一つ覚えの単細胞ハードコア・ヴォーカルやスクリーモ・ヴォーカルもその典型だが、
これまでのKILLSWITCH ENGAGEのアルバム以上に本作は
メロディアスな歌唱と怒号の“ハーモニー”も冴えわたっている。

というわけで、
みんなと同じ敵を対象にした悪口を言って悦に入っている満ち足りたドヤ顔が思い浮かぶヴォーカルではない。
あえて言えば敵は世界中に無数存在する。
もちろん自分自身の中にも無数存在する。
そんなふうに“免罪符”を葬り去った歌詞である。
個人的レベルと現況世界に対峙したかのようでもある。

これぞハードコア!な歌詞だが、
声にも音にもウソがない。
響きは正直だ。
アルバム・タイトルやアートワークに表れているように、
これまでになくスピリチュアルな命が息づいている。
ヴォーカルはもちろんこと楽器の音の一つ一つに歌心が確かに宿り、
わざとらしいエモみたいなのじゃなく感情濃度が高い。

音楽に対する誠実さ。
表現に対する誠実さ。
そんなことをあらためて思い知らされる。
たとえキャッチーなフックのサビを設けた音楽だろうと深いものは深い。
こういう系統の音楽では珍しく感動してしまった。
迷わずグレイト!と言い切れる。


★キルスウィッチ・エンゲイジ『インカーネイト』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-17105)CD
16ページのオリジナル・ブックレット封入。
日本盤は、
本編12曲+本編の曲とは微妙に違う“スペシャル・エディション”に収録のボーナス・トラック3曲に
前作収録曲「In Due Time」の一昨年10月録音の音質良好ライヴ・テイクを追加した約57分16曲入りで、
全曲の歌詞の和訳が載った12ページのブックレットも封入。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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