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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

KILLSWITCH ENGAGE『Atonement』

KILLSWITCH ENGAGE『Atonement』


2000年代以降のUSメタルコア・スタイルを決定づけたバンドが
『Incarnate』から約3年ぶりのリリースした8作目。
フォロワーとは別次元で歌と音が広がり轟くディープな快作である。


“KILLSWITCH ENGAGE節”みたいなものができあがっているバンドだけに、
進化というより確かな深化をまた遂げている。

ミックスとマスタリングは、
90年代後半以降の“メタル・サウンド”を創り出した一人で、
ここ数年JUDAS PRIESTのツアー・ギタリストも務めているアンディ・スニープが担当して万全。
プロデュースとエンジニアはもちろんバンドの核のアダム・デュトキエヴィッチ(g)である。
単なるギタリストではなく音楽家と呼びたい人だけに今回もさすがの仕事ぶりだ。
キャッチーなサビのメロディが安っぽくならない曲作りや目の覚める音作り、
どの曲にも聴かせどころを設けたアレンジも仕切っているだろうし、
ドラムとベースを大きめに鳴らしてアタック感を強めつつ各パートの楽器のバランス感も絶妙である。

ドラマチックな展開でありながら1曲平均3分台のハイ・クオリティの楽曲を揃え、
アルバム全体も簡潔で約39分11曲に凝縮しつつ、
いい意味で長く感じる濃厚な仕上がり。
緩急織り交ぜた楽曲の中にツイン・ギター体制も活かし、
厚みのあるハード/スラッシーなリフだけでなく、
リリカルなフレーズとメロディアスなハーモニーでも感情を加速させる。
シンプルなようでリズム・チェンジが激しく、
曲によってはブラスト・ビートやLED ZEPPELIN風のグルーヴ、
ブラック・メタルちっくなトレモロなどのスパイスを利かせてもいる。

2000年代以降の米国のメタル/ハードコア系のバンドに目立つ
“聴き手がどう思おうとゴリ押し”するアティテュードのアルバム作りとは対極だ。
むろんファンに媚びているわけではなく、
リスナーと“交感”する意識に貫かれている。
代表作の一つである2002年のセカンド『Alive Or Just Breathing』のような
ある種の“ポップ感”は薄めながら、
ポピュラリティの高い楽曲構成に磨きをかけ、
その上で90年代のメタル・ハードコア以降の強度を高めてもいるのだ。

ジェシー・リーチ(vo)によるシャウト/スクリーム混じりのハードコア歌唱は、
ソウルフルでありスピリチュアル。
エクストリームを気取ったメタル/ハードコア系バンドに目立つ、
ただ声がでかいだけでメロディアスな歌い方もなぞっているだけみたいな無機的ヴォーカルとは違う。
歌い上げるパートでは歌の上手さも際立つが、
巧いだけでなく“旨い”。
アダムとジョエル・ストレッツェル(g)の“バッキング・ヴォーカル”もいい感じで、
ジェシがバンドを離れていた時にシンガーを務めていたハワード・ジョーンズと、
USスラッシュ・メタルのベテランTESTAMENTのチャック・ビリーが、
1曲ずつヴォーカルで参加している。

歌詞はこれまで以上に政治的な事象がモチーフになっていると思しき表現が目立つ。
人称名詞は例によって“俺”“俺たち”“おまえ”が多いが、
“ヤツら”も目立つアルバムだ。
だが馬鹿の一つ覚えの無邪気な“反体制ソング”と一線を画すのは言うまでもない。
おのれの非から目をそらすべく免罪符を求めて他者非難ばかりしてる人間の醜さは世界共通。
だからおのれに向き合い、
“償い/罪滅ぼし/贖罪”といった意味合いのあるハム・タイトルのニュアンスも滲み出ている。
やっぱりそういう意識は歌詞だけでなく声や音にも表れるのだ。

“ファック・ユー!”アティテュードの放射からストロングな自問自答まで、
パンク・ロックから派生したハードコアの最も研ぎ澄まされた表現がここで響き、
閉塞を突き抜けんと輝ける美すら感じる。

胸のすくオススメ盤だ。


★キルスウィッチ・エンゲイジ『アトーンメント』(ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP 6188)CD
MASTODONの『Cold Dark Place』(2017年)も描いたリッチー・ベケットによるイラストの、
ジャケットの絵柄の八つ折りミニ・ポスター(表に歌詞印刷)封入の約39分11曲入り。
初回分は四面デジパック仕様でステッカーが封入され、
日本盤は歌詞の和訳が載った12ページのブックレットも封入。


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CALIBAN『Elements』

CALIBAN『Elements』


20年強コンスタントに活動しているドイツのメタルコア・バンドの11作目。

2000年代前半ぐらいまではニュースクール・ハードコアに括られることも多かったバンドだが、
その呼称があまり使われなくなったと同時に彼らの音楽性の進化に伴い、
ドイツを代表するメタルコア・バンドの一つと呼ばれるようになっている。
もちろんここで言うメタルコアは2000年代以降の米国産メタルコアが基本のスタイルである。

ただやはり最初からキャッチーなメタルコアを狙ったバンドとは違い、
ヴォーカルも音も根の響きが激烈なところにハードコア上がりであることが表れている。
ツボを心得て作られた楽曲は緩急織り交ぜてヴァラエティに富むが、
いくらサビの部分をメロディアスに歌おうと骨っぽいのだ。

と同時にゲストが挿入するキーボードの音も相まって、
エレクトロニクスの装飾も薄っすらと施されている。
ニュー・メタル(nu metal)のグルーヴ感が全体的に濃いところも興味深く、
KORNのギタリストのヘッドが1曲ゲスト・ヴォーカルと一部の作詞を担当したのも納得だ。
2000年代後半には古臭く聴こえたニュー・メタルが一周してフレッシュになったようでもあるが、
もともと音楽的にな接点が大きかったニュースクール・ハードコアが取り込んでブレンドし、
アップデートして再生されたかのようなサウンドなのだ。

ラップとは言わないまでもそれっぽいヴォーカルも飛び出すが、
おのれの外とおのれの内に向き合っている歌詞を見るとやはりハードコアと思わずにはいられない。
タフ・ガイ系と似て非なるヒリヒリしたスクリームと歌唱で、
ほとんどの歌詞を英語で歌う。
母国語で歌っている一曲も、
たとえクセの強い響きのドイツ語であろうとCALIBANの音楽として消化している。

“メタルコア通過後のモダン・ヘヴィネス”とも言うべきコンパクトに凝縮された約51分13曲入り。


★キャリバン『エレメンツ』(ソニー・ミュージック SICP 5812)CD
歌詞が載った16ページのオリジナル・ブックレット封入。
日本盤は歌詞の和訳等が読みやすく載った12ページのブックレットも付き、
言葉数の多いバンドだけにありがたい。


BETWEEN THE BURIED AND ME『Automata I』

BETWEEN THE BURIED AND ME『Automata I』


カリフォルニア出身の“ハードコア系メタル・プログレ・バンド”が、
オリジナル・アルバムとしては『Coma Ecliptic』以来約3年ぶりに出した8作目。


最近のアルバムはプログレ色がやや強めだったが、
彼らの“お里”のメタル・ハードコアの色が今回はわりと多めだ。
アルペジオから始まるも、
まもなくメタル・ハードコアの名残がヴォーカルと音に炸裂し、
さらにヘヴィ・ロックへと突入。
メタル・リフでツー・ビートのパートを絡めつつ自然な流れで展開していき、
場面転換もスムーズに滑らかな推移でリズムを変えつつ加速度をキープしながら、
リリカル&パワフル&ドリーミーに音楽そのもので物語を紡ぎ編んでいく。

いわゆる演奏テクニックは十分ながら、やっぱりテクニカルに聞こえない。
いい意味でDREAM THEATERほどカッチリしてないのは、
拘束度の高いメタルのテクスチャーに縛られてないからだ。
音の抜けが良く不思議とポップな感覚に包まれている。
ブリティッシュ・プログレ全般が頭をよぎり、
基本的には70年代のKING CRIMSON系だが、
ところどころで70年代後半以降のGENESISやYESやPINK FLOYD、
さらに後期UKも想起するマイルドなニュアンスが滲み出ている。

MUSEあたりに通じるキャッチーなメロディ・センスが光る一方で、
シタールっぽい音も聞こえてくる呪術的なパートは新境地。
適宜キーボードやピアノも使い、
曲によってはトランペットやトロンボーン、バリトン・サクソフォンもゲストが挿入している。
ヴォーカルは色々な歌い方をしていてナチュラル・ヴォイスではまろやかな歌唱も多く、
“恫喝系”とは一味違う太い声のパートが
今年3月に事故で他界したケイラブ・スコフィールドを思い出すというのもあって、
全体的にCAVE INがもうちょいプログレ寄りになったようでもある。

ブレイクには至らないにしても独自のポジションで支持を集め、
地道にコンスタントな活動を続けてミュージシャンシップも自然と高まっている。
クレジットによればバンドで行なっている作曲がいい意味でこなれてきたというか、
曲作りの術が肉体化されているのだ。
メタル・ハードコアなサウンドの米国産はお国柄かゴリ押しバンドが目立つが、
どの曲にも聴かせどころをしっかり設け、
楽曲クオリティも高い。
6分台、8分台、10分台の曲と
3分台、4分台、1分台の曲の計6曲で、
トータル35分強というバランス感とヴォリューム感も一つの作品として的確。
一気に聴かせるのに一役買っている。

今年中に出るらしい“Ⅱ”も楽しみだ。


★BETWEEN THE BURIED AND ME『Automata I』(SUMERIAN SUM930)CD
8ページのブックレット封入のデジパック仕様。


AGRIMONIA『Awaken』

AGRIMONIA『Awaken』


女性ヴォーカルを擁して2000年代の半ばから活動している、
スウェーデンのネオ・クラスト系バンドの4作目。

ポリティカル・クラストDIYレーベルのSKULD RELEASESやPRAFANE EXISTENCEから
初期にリリースしていたことで、
どういうシーンから出てきたバンドかわかるし、
その両方ともメタリックなバンドを90年代の頭から出していたレーベルだけに違和感はなかった。
と同時に最近SOUTHERN LORDからリリースしていることも違和感のないバンドだ。


約58分6曲入りというヴォリュームで、
15分以上はないにしろ10分前後の曲がほとんどだ。
いわゆるネオ・クラストのドラマチックな展開は変わらないが、
もっとメタル寄りの構成美を内包し、
2000年代以降のNEUROSISをはじめとするポスト・メタルや
ポスト・ブラック・メタルの質感の音でもある。
熾烈な音ながらメタルというよりシューゲイザー系の耽美性も漂うが、
やっぱりサウンドがヒリヒリしていてメタル・クラストの最新型といっても過言ではない。
メランコリックな旋律でプログレとドゥーム・メタルをブレンドもしている。

大半のパートはポントス(g、kbd他)がレコーディング。
ドラムはスウェーデンのDIVISION OF LAURA LEEのパーらが録音し、
AT THE GATES『At War With Reality』を録ったヘンリック・ウッドがミックスしている。

AGRIMONIAがゴセンバーグ(イエテボリ)出身のバンドということで、
AT THE GATESらの同郷の“先輩”をはじめとする
スウェーデンのメロディック・デス・メタル勢との接点も見えてくる。
実際5年前の前作はそのシーンの主のフレドリック・ノルドストロームがミックス等を手掛けていたし、
前作に引き続きベースは今回もAT THE GATESのギタリストのマーティン・ラーソンが弾いている。
もちろん比べるとパンク/ハードコアとヘヴィ・メタルという核の違いは明らかだし、
AGRIMONIAの方がずっと緻密だが、
ARCH ENEMYともダブる。
ヴォーカルの迫力で特に現在のARCH ENEMYを思い出す。

AGRIMONIAのクリスティーナのヴォーカルは、
CARCASSのジェフ・ウォーカー直系の胸のむかつきを解き放つスタイル。
歌詞は英語で、
ストレートな政治表現はないにしろ意識が変わってないこともしっかりと伝わってくるのであった。

オススメ。


★AGRIMONIA『Awaken』(SOUTHERN LORD LORD 251)CD


DARKEST HOUR『Godless Prophets & The Migrant Flora』

DARKEST HOUR『Godless~


95年結成の米国ワシントンDC出身のメタル・ハードコア・バンドが約2年半ぶりに出した9作目。
2000年のファースト・フル・アルバム『The Mark Of The Judas』を最初に再発したことがある、
SOUTHERN LORD Recordingsから今年3月にリリースされたアルバムだ。

前作『Darkest Hour』が今一つピンと来なくて“もう聴かないかも”と思って後回しにしていたが、
ブログでコメントしていただいた方の言葉に触発されて買ってみて大正解。
僕としては起死回生作であり、
ゲットしてからへヴィ・ローテーションである。

エンジニアとミックスと共同プロデュースを、
いつかはやると思っていたカート・バルー(CONVERGE)が担当。
音の個性の薄いバンドをカートがレコーディングすると彼の色に染まって同じような感触になりがちだが、
これは相性最高で確固とした個性を炸裂させて突き抜けた傑作だ。


AT THE GATESが限りなくハードコア・パンクに近いメロディック・デス・メタルであるとしたら、
DARKEST HOURは限りなくメロディック・デス・メタルに近いハードコア・パンクだ。
メタルコアと呼ばれがちだが、
ハードコア・パンクと言い切りたい。
DARKEST HOURのフェイスブックのジャンルのところに書いてある
“Thrash,Metal,Punk”という言葉も的確で、
彼らがパンクを意識しているというのも嬉しいし納得なのだ。
自己保身に余念がなく意識が止まった旧態依然のパンク・ロックやハードコア・パンクの間を中央突破し、
2000年代以降の進化形に磨きをかけている。
ほとんどの曲がツー・ビートで疾走し、
ツボを突くストレート&ドラマチックなソングライティングも冴えわたっている。

IRON REAGANの前ドラマーが大好きだったから
レコーディングでは前作から参加している新ドラマーをなかなか受け入れられなかった僕だが、
小回りの効いたドラミングがハマっている。
ベースと共にDARKEST HOURの強靭な足腰を築き上げ、
緻密なリズムをギターと刻み絡み合っている。
メロディも噴き出しているが、
とにかく各パートの音のアタック感が強力でひたすらパーカッシヴ。
ちょいと80年代のMETALLICAの静かな曲みたいなインスト・ナンバーもよろしい。

2000年代にDARKEST HOURに在籍してSCAR THE MARTYRの一員でもあったクリス・ノリスと、
SEVENDUSTのジョン・コノリーも一曲ずつギター・ソロを弾いている。

ジョン・ヘンリーのヴォーカルは相変わらずつんめる勢いで素晴らしい。
こういう声に耳を傾けると、
体裁気にしてわざとらしくポーズつけた演出過剰の歌い方のヴォーカルのウソ臭さが見えてきてしまう。
前にも書いたように、
90年代以降のメタル・ハードコア界のみならずハードコア系バンドのヴォーカルで、
VISION OF DISORDERのティムやEARTH CRISISのカールと並んで吐血しそうなほど強烈に生々しい。
まさに本気の喉の震えだし、
タフ・ガイ気取りとは真逆のヲタなヴィジュアルでリアリスティックな言葉を吐き叩きつける。

目の覚める強力盤。


★DARKEST HOUR『Godless Prophets & The Migrant Flora』(SOUTHERN LORD LORD239)CD
読みやすく歌詞が載った味のある紙質の8ページの“四つ折りブックレット”封入。
約45分12曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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