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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

洋書『Crossover the Edge: Where Hardcore, Punk and Metal Collide』

『Crossover


80年代のパンク/ハードコアとメタルの接点を探る洋書。
著者はAlexandros Anesiadisで、
本書と同じくCherry Red Booksから出た一連UKパンク/ハードコア本の著者の
Ian Glasperが序文を書いている。

タイトルにクロスオーヴァーという言葉が含まれてはいるが、
いわゆるそういうジャンルのバンドだけに留めず、
タイトルどおりにパンク/ハードコアとメタルのエッジが交わったパンク寄りのバンドを取り上げている。
発売元が作成したと思しき紹介文から引用すると、
以下のバンドを筆頭に500組以上が掲載されている。

Agnostic Front, Cro Mags, Crumbsuckers, Leeway, Gang Green, Nuclear Assault, Lethal Aggression,
D.R.I., Corrosion of Conformity, Impulse Manslaughter, Verbal Abuse, Attitude Adjustment,
Suicidal Tendencies, Excel, Beowulf, Dr. Know, Septic Death, Cryptic Slaughter, Accused,
Dayglo Abortions, Discharge, Broken Bones, English Dogs, Sacrilege, Warfare, Raw Power,
Rumble Militia, Lobotomia, Overkill L.A., Mentors, Void, Amebixなどなど。

基本的には前述のIan Glasperが書いたパンク本シリーズの流れをくむ作りで、
メンバー等の発言を盛り込んだバンドごとの紹介が基本である。
こういう音のバンドの宝庫だけに米国産がページ全体の半数以上を占めるが、
英国をはじめとする他の国のバンドもピックアップ。
終盤の50ページでは米英産も含めてバンド単体コーナーから漏れたバンドを国ごとにまとめ、
3ページ半のスペースながら日本のバンドもポイントを押さえて細かく紹介している。

かなりマニアックな内容ながら、
幅広く聴いている著者だから内向きにならずにわかりやすく書かれている。
ペーパーバックの本で524ページのヴォリュームだから文字量に圧倒されつつ、
バンドやフライヤーなどの写真も盛りだくさんだから取っつきやすい。

ここいらの動きに関心を持つ方なら買って損はない発見たんまりの力作だ。


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GHOUL、MOBS『極悪ツアー 1985 GHOUL&MOBS Live at 新宿LOFT』

GHOUL、MOBS『極悪ツアー 1985 GHOUL&MOBS Live at 新宿LOFT』


CDタイトルに偽り無しのイメージで80年代前半に活動を始めた日本の2バンドによる、
1985年の11~12月の日本ツアーの最終日である12月6日の東京ライヴを収録。
リマスタリング効果大でメリハリある音質のドキュメンタリー仕上がりの計約72分24曲入りだ。


東京を拠点にしていたGHOULが前半の10曲。
同年リリースの7”EPの『Jerusalm』の曲をはじめメタリックに移行しつつあった時期で、
同じくマサミ(vo)がフロントマンだったSQWADやGHOULⅢにつながる強靭な音だ。
ストレートの長髪をなびかせたテクニカルなプレイで以前のファンを幻惑した
新ベーシストのゴーストの加入の影響も大きく、
VENOM的な方向性で期せずしてBATHORYとも共振していた。
むろん初期EXPLOITEDをアレンジしたようにも聞こえるファーストEPの頃の曲や、
ELECTRO HIPPIESの代表曲「Sheep」の原型みたいな曲でOi!パンクっぽい「Oi! Oi!」も、
いいアクセントだ。

誰が発しているのかわからないが、
観客を煽って威嚇するような曲間のMCも真剣勝負の表われ。
現代に置き換えればライヴ中にスマホいじくっていたら血を見る緊張感に痺れる。
ハードコアだけでなくジャンル問わずライヴも、
日常生活と同じく一対一でしっかり向き合うことが大切だと張りつめた空気で知らしめる。


後半は神戸出身のMOBSが11曲披露。
メンバーはケンジ(vo)以外は84年発表のファーストEPの頃から入れ替わっている。
90年代から2000年代初頭に鉄アレイでギターを弾くジョータローも、
ドラムからヴォーカルにパート・チェンジしてCITY INDIANのフロントに立つシンもいない。
でも当時の最新作のセカンドEP『Projection Of Astral Body』の曲に代表される、
ダーク・ウェイヴ(ゴス)/ポスト・パンク風の要素も加味されたユニークなサウンドが新鮮だ。
それでもなおほとんどの曲がシンプルなハードコア・パンクであり、
それでも一本調子に聞こえないクール&フック十分の曲作りが光る。

MC無しで黙々と曲を続けるストイックなステージングも聴いていてカッコいい。
当時のハードコアやポスト・パンクに多かった突き放す感覚そのものだ。


最後の3曲はセッションで、
GHOULの1曲とMOBSの2曲を“再演”している。

ヴァイオレントな空気感が渦巻くだけに極悪イメージで語られがちな2バンドだが、
パンク/ハードコア/メタルのハイブリッドの音楽ももっと評価されてしかるべきと再認識しつつ、
胸騒ぎが止まらない一枚。


★GHOUL、MOBS『極悪ツアー 1985 GHOUL&MOBS Live at 新宿LOFT』(HOLD UP HOLD UP-002)CD
7”サイズの味のある紙質の二つ折り紙ジャケットで
(内側に両バンドの写真がちりばめられている)、
BLUE HEARTS時代にGHOULのマサミと親交があった甲本ヒロト(現ザ・クロマニヨンズ)と、
やはりマサミと交流が深かったAUTO-MODのジュネによる簡潔なコメントが表と裏に載った帯付。
限定で極悪ツアーのポスターの復刻版が六つ折りで封入されていた。


TOXIC HOLOCAUST『Primal Future:2019』

TOXIC HOLOCAUST primal


米国ポートランド出身の
スラッシュ・メタル/ハードコア・パンク・クロスオーヴァー・プロジェクトによる、
『Chemistry Of Consciousness』以来の6年ぶりの6作目のオリジナル・アルバム。
ライナーを担当させてもらいました。

既に色々書いたからここでは簡潔に紹介する。


もともとジョエル・グラインド(vo、g、b、ds、syn)のソロ・プロジェクトとして始まり、
最初の日本ツアーはABIGAILのメンバーがバックを務めていた。
ここ数年は固定メンバーのバンド形態でレコーディングしていたが、
TOXIC HOLOCAUSTスタートから20周年を迎え、
原点に立ち返ったかのように作詞・作曲、ヴォーカル・演奏を一人でやっている。

ヴォーカルも含めて重ね録りをして仕上げたわけだが、
録音、ミックス、マスタリングも一人でやっている。
完成品のCDで聴くと音のパーカッシヴなアタック感が格別だ。
ヴォーカルもギターもベースもドラムも音が前によく出たバランスも良く、
シリアスなムードの中でアメリカンならではの抜けのいい鮮烈かつ硬質な響きもピッタリ。
ジャケットからイメージできるシャープな近未来感を放つ音作りもたまらない。

ツボを突くフックばっちりのソングライティングが光り、
ミディアム・テンポのパートも絡めつつ加速度が絶えないスラッシュ・チューンの連発。
ギター・ソロも渋い。

40分弱のヴォリュームとは思えぬ聴き応え十分で核が凝縮され、
まさに満を持したクールなオススメ盤だ。


★トキシック・ホロコースト『プライマル・フューチャー:2019』(ビクター・エンタテインメント VICP-65556)CD
歌詞が載った8ページのブックレット封入の約40分10曲入り。
日本盤は歌詞の和訳も読みやすく載ったクールなデザインの8ページのブックレットも封入の
プラケース仕様だ。


STUPID BABIES GO MAD×ABIGAIL split CD

STUPID BABIES GO MAD×ABIGAIL split CD


日本の凶器パンク/メタル・サウンドのバンド同士のスプリットCD。
どちらも今夏レコーディングした音源で、
日本のバンドのカヴァーを一曲ずつ収録している。


静岡拠点のSTUPID BABIES GO MADは4曲提供。
いかにもの“MOTORHEAD meets DISCHARGE”なスタイルとは完全に一線を画し、
日本語ヴォーカルもいい。

まずは80年前後に活動していたシルバースターズの「ぶちころせ」をカヴァー。
謎の存在として知られるバンドで『Rape Noise』というアルバムに収めた曲だけに
STUPID BABIES GO MADにピッタリで、
ミディアム・テンポから加速していくハードコア・パンク・ロックに仕上げている。
2曲目は高速ノイジー・パンク・ロックだが、
中間部ではKING CRIMSONちっくな変則リズムを使っていてサビにはメタルなコーラスも。
3曲目は高速パンクで哀愁のコーラスも絡む。
そして6分半を越える4曲目はフリーキーに凝っているがこの曲でもスピード感をキープし、
ノイジーな中にメタルな“泣き”のギター・ソロも滑り込ませている。


一方の東京拠点のABIGAILは3曲提供。
今回もズバ抜けたセンスを発揮し、
パンク・ブラック・メタルなヴォーカルも冴えわたる。

1曲目は不穏な音色の高速メタル・パンクで飛ばし、
聴かせどころを設けても加速度が絶えない曲作りもさすがで、
キャッチーなフックもさりげない。
続くは米国のSHITFUCKERとのスプリットEP収録曲「Bloody Your Lovely Pussy」だが、
日本語ヴァージョンのリメイクでこれまたクールだ。
ラストはSIGHの「式神/Shikigami」のカヴァー。
日本出身ながら世界規模の活動でブラック・メタルもキーワードの一つという点も含めて、
近いフィールドのバンドの曲である。
しかもSIGHのリーダーのMiraiのフルート、ストリングス、ハモンド、ティンパニーの音も入れ、
じわじわと狂気が沸き立つカオティックなミディアム・テンポ仕上げでお見事なのであった。

オススメ。


★STUPID BABIES GO MAD×ABIGAIL(HELLO FROM THE GUTTER HFTG-044)split CD
薄手の二つ折りペーパー・スリーヴ仕様の計約24分7曲入り。


宗 AND THE NOWHERE GYPSYS『RIPPER』

宗


90年代の後半からPAINTBOXのヴォーカルを務めてきた宗(Mune)がフロントに立つ“バンド”が、
粗削りで仕上げた計8分弱の3曲入りの“デビュー”CD。
当初は、
宗以外の3人が在籍するTHEE CONTINENTAL KIDS名義で発表する予定だったらしい。
でもそのバンドの中心であるアキラが休養中に制作した楽曲のため、
THE CONTINENTAL KIDSの1988年のアルバム・タイトルが頭をよぎる
宗 AND THE NOWHERE GYPSYS名義でのリリースになったという。

1曲目のCDタイトル曲は、
STOOGESの「1970」とIggy and the STOOGESの「I Got A Right」が混ざったような調子で
突っ込んでいく“ハードコア・パンク・ロック”ナンバー。
KATSUTA☆とTETSU↓LOWが1曲ゲスト・コーラスで参加している。
2曲目の「Reborn」は
PAINTBOXを思い出すキャッチーなメロディのハードコア・パンクチューンながら、
泥臭いギターも高ポイント。
最後の「No More Trouble」はヴォーカルとギターのみでディープに勝負し、
スライド・ギターが鈍く光るカントリー・ブルース・サウンドと共振して渋く喉を震わせる濁声は
あくまでも天然である。

聴いて一秒で宗!とわかるワイルドな歌唱も健在だ。
ここ数年の宗の心境をイメージできる歌詞だからPAINTBOX時代以上に生々しく迫る。

次作はアルバム・サイズのヴォリュームで、是非。


★宗 AND THE NOWHERE GYPSYS『RIPPER』(MCR Company MCR-293)CD
二つ折りの歌詞カード封入の紙ジャケット仕様。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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