なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

MAMMOTH GRINDER『Cosmic Crypt』

MAMMOTH GRINDER『Cosmic Crypt』


POWER TRIPではドラムを叩くクリス(b、vo)が2000年代後半からやっている
米国のデス・メタル・バンドが今年1月にリリースしたアルバム。
IRON REAGANのマーク(g)とライアン・パリッシュ(ds~元DARKEST HOUR)の加入後に録った、
4作目である。

むろんローファイな作りではなく音は分離されているが、
一般的なバンド・サウンドのバランス感なんか知ったこっちゃないとばかりに全パートの音がでかい。
特に傍若無人なほどドラムの音が大きくてリード楽器と化している。
ライアンの超絶ドラムはMAMMOTH GRINDERでもいかんなく発揮され、
このアルバムの異様なダイナミズムの核になり、
バス・ドラムが目立っていて巨大な四つ打ちみたいに響いてくる。
もともとメタルのタイト感とは一味違うドラムの人だが、
ある意味たいへん景気が良くて笑っちゃうほど混沌へと誘う蛮行のビートで押せ押せなのだ

AUTOPSYにCOFFINSが混ざったようなゆるい加速度と流れが絶えない死の大河のようである。
ギターは残虐一筋であり、
ヴォーカルも呪詛の念を感じさせる。
ブラスト・ビートを使わずいわゆるグラインドコアの道から外れた音楽スタイルだが、
まさに名は体を表す“マンモス・グラインダー”というバンド名と
このアルバム・タイトルとこのジャケットが非常にふさわしいサウンドだ。
小ぢんまりとまとまらずに行儀が悪くてやかましく、
どこをどう聴いてもデス・メタル以外の何ものでもないにもかかわらずメタルに聴こえない原始の響き。
こじゃれたハードコアの百万倍パンクな全身運動盤である。


★MAMMOTH GRINDER『Cosmic Crypt』(RELAPSE RR7381)CD
約28分11曲入り。


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ARCH ENEMY at EXシアター六本木 2月20日

ARCH ENEMY


スウェーデン出身の“メロディック・エクストリーム・メタル・バンド”ARCH ENEMYの東京公演の初日。
北海道や九州も回る約10日間の日本ツアーの2日目にあたる。

ARCH ENEMYのライヴとしては18回目の来日とのことだが、
観たのはそのうちの3分の1回分ほどとはいえ僕にとっては今までのベスト・ライヴで、
バンドとしてベストの状態をアップデートしていると確信した。


とにかくライヴ・ショウとしてグレイトだった。
別にカジュアルな格好でも動かなくてもいいのだが、
目と耳と体で同時に感じる事こそがライヴの醍醐味だとあらためて実感させられたしだい。


まずメンバー全員長髪のルックスが、
オールド・ロックからの流れをくむヘヴィ・メタル・バンドとしてクールだ。
しかもみんな太りすぎず痩せすぎずのボディで
他のメンバーはシャーリー・ダンジェロ(b)ほどではないにしろ全員大柄に見える。
もちろん堂々とプレイしていたからに他ならない。
リーダーのマイケル・アモット(g、バッキング・ヴォーカル)も
機材トラブル一つであたふたしていた初期とは比べ物にならないほど自信に溢れている。
あいかわらずギター・ソロは前かがみで弾くことが多いのだが、
そこから上体を起こした瞬間は内なるものを外に解き放ったように晴れやかな顔を見せてくれる。

そのマイケルが昔より見た目に気を使っていることも大きい。
最近も母国の伝説的なバンドのSKITSLICKERSをカヴァーしたようにハードコア・パンクも好み、
スタイリッシュでないところが彼らしいクラスティなファッションでキメていた。


やはり三代目シンガーのアリッサ・ホワイト-グルーズ(vo)が強烈だ。
ハリウッドのアクション映画の主役を張れるほど存在感十分だし、
何かのコスプレの如きストロングなヴィジュアルで、
たてがみのように髪を振り乱す様は女獅子のようだった。
ポイントを押さえて女王様みたいに立ち回ってダイナミックに動き、
ロック・バンドのフロント“ウーマン”としてカッコいい。
と同時にメタル・クイーンというより“メタル・ミューズ”であり、
“メタル・ディーヴァ”と呼びたいほど輝いている。

平昌五輪スピードスケート女子500メートルで金メダルに輝いた小平奈緒選手のインタヴューで、
テレビ・アナウンサーが彼女の滑りを“獣のよう”と表現したことが最近話題になったが、
アリッサのヴォーカルはまさに獣である。
迷いがない。
そんな中でこの夜の僕のハイライトは、
ノーマル・ヴォイス主体で歌い抜く「Reason To Believe」。
昨秋リリースした10作目のオリジナル・アルバム『Will To Power』に収録の新境地の曲だが、
生で体験してさらに可能性を感じて痺れたのである。


ダニエル・アーランドソン(ds)のビートだけでなく
スタジオ録音アルバムよりもサウンド全体がパーカッシヴに迫ってきた。
いい意味でメロディが前面に出てなくて滲み出る音のバランスで、
曲がアグレッシヴにアップデートされていた。
適度に挿入した“泣き”のインスト・ナンバーはもちろんのこと、
研ぎ澄まされたギターの掛け合いと絡みが速い曲でも絶妙で、
4年前に加入のジェフ・ルーミス(g、バッキング・ヴォーカル)の彩り豊かな魅力を
マイケルは引き出してもいた。

最低限に抑えたアリッサのMCを適度に入れつつ数曲続ける進行で、
適度にアリッサが短時間ステージ袖に引っ込むところもいいアクセント。
起伏がありながらライヴ全体の流れがスムーズでゆっくりずっと加速していたから、
ダレることなく緊張感もキープされて最後まで突き抜けていったのである。
毎回違うライヴもいいが、
ストイックなほどプロフェッショナルなステージ・パフォーマンスにひたすら目が覚めた。


“メタル”という言葉が軽くなってしまっているからこう言おう。
ARCH ENEMY史上最強のメンバーで
現在進行形の“ヘヴィ・メタル”を深化させ続けていると確信した一夜だった。


KABANE『Kabane』

KABANE.jpg


政治的なパンク・バンドのREALで80年代にドラムを叩いていたケイイチ・マスダがギターを弾く、
東京拠点のエクストリーム・メタル・バンドの5曲入りのデビューCD。
MEBAEを母体にしてヴォーカル専任メンバーを加えた形のようである。

“煩悩から解き放たれ、覚醒するデスメタル”というキャッチー・コピーがハッタリではないほど、
ほど良くフリークアウトしている。
「morphine」「ketsuzoku」「shinpu」「gyakuzoku」「yamio」という収録曲のタイトルも象徴的だ。

ベースとバス・ドラムの音が大きめのバランスで仕上げられていてゴツゴツしたビートが際立ち、
リフはゴリゴリ骨に響いてくる感触で、
整合感のあるデス・メタルとは一線を画している。
かといってローファイとscumを気取る音作りではなく、
天然でこうなってしまった様相である。
パンク・メタルというジャンルが確立されているが、
“パンク・デス・メタル”とでも言いたくなるサウンドなのだ。

ときおりブラスト・ビートをブチ込みながら一曲の中でのユニークな展開が多めで、
スロー~ミディアムのリフの反復でMETALLICAやドゥーム・メタル、グルーヴ・メタルの色も感じさせ、
いい意味でアウトサイダーなデス・メタルになっている。
OBITUARYCANNIBAL CORPSEらがホラー映画を体現しているのと同じように、
謎のギター・ソロが“和製”ホラー映画のムードを高め、
全編とにかく不穏で怪しく妖しい。

ヴォーカルは基本的にシャウトとデス・ヴォイスの組み合わせながら、
その様式を軽々と逸脱。
奇声と紙一重の雄たけびもいい味を出している。
芝居がかっているというより、いい意味で演技派だ。
歌詞は不掲載だが、
日本語らしき言葉も漏れ聞こえてくる。

どこか変態気質のソングライティングをはじめとしてフリーキーなところがチャーミングだが、
エキセントリックなデス/グラインドとは一線を画す。
ストレンジなアートワークもピッタリの一枚。


★KABANE『Kabane』(MBE MBE-003)CD
約25分5曲入り。
https://www.facebook.com/KABANE666


GOATWHORE『Vengeful Ascension』

GOATWHORE1.jpg


米国南部ルイジアナ州ニューオリンズ拠点の“エクストリーム・メタル・ロックンロール・バンド”が、
『Constricting Rage Of The Merciless』以来約3年ぶりにリリースした7作目。
ヴォーカルのベンは
EYEHATEGODのブライアン・パットンがギターを弾くSOILENT GREENの一員でもあるが、
そっちはずっとリリースがないからここ数年はGOATWHOREに集中しているようだ。

13曲入りのCDが追加されている限定版2枚組CD版を買った。
妖しくデザインで古びた感触の紙に凝った字体(でも読みやすい)で歌詞などがプリントされた
呪文書みたいな40ページのブックレット綴じ込み仕様で、
エンボス加工のハードブックカヴァー体裁パッケージである
(ちなみに非限定盤のジャケットはまったく別のデザイン)。


アルバム本編は、
サードからずっと手掛けていたエリック・ルータン(元MORBID ANGELHATE ETERNAL)の手を離れ、
デス・メタル・バンドのEULOGYでギターを弾いていたジャレット・プリッチャードのプロデュース。
ヴォーカルも含めて
デス・メタルとブラック・メタルのevil&mean(邪悪で卑しい)アメリカン“ロックンロール”ブレンドで、
ブレがない。
大きすぎない音でミックスされた小回りの利いたドラムをはじめとして一段と抜けがいい。
ドゥーム・メタルなスロー・パートも盛り込みつつあちこちで疾走するが、
スラッシュ・メタルというよりはクラスト・パンクの音のつぶれ具合だし、
メタル・パンクとも大いに接点があるサウンドだ。
HELLHAMMER、MOTORHEAD、後期DISFEAR、GENOCIDE SS(GENOCIDE SUPER STAR)あたりの
黒い疾走感が、
イイ意味でアメリカンのドライな感触で焼き上げられていてビールが美味い。
なんだかんだ言って根がロックンロールだからである。

歌詞も地獄や神を歌い込んでいて“それっぽい”が、
ウソ臭いメッセージ・ソングの百万倍リアルに世界状況をシビアに暗示した深い表現で示唆に富む。

約42分10曲入りというコンパクトなヴォリュームも潔い。

GOATWHORE.jpg

約51分13曲入りのボーナスCDの方はあちこちで細かく発表してきた音源+αだ。
2015年12月録音の2曲+2017年3月録音の4曲+1曲のダイナミズム溢れるライヴの他に、
スプリットEPやデジタル配信、日本盤のボーナス・トラックで発表した音源などで構成されている。
その中でもMOTORHEADの「(Don't Need) Religion」、DARKTHRONEの「Under A Funeral Moon」、
CELTIC FROSTの「Into The Crypt Of Ray」の渋いカヴァー群は、
ベタながらバンドの本質がよく表れている。
“逆時系列”で昔の音源にさかのぼっていく曲の並びで、
一番古いのがセカンドを出した2003年の録音だ。
こっちを聴くと進化なんか知ったこっちゃないが深化はしている姿勢を再認識する。


全曲ノリノリ、
いい意味でアメリカン。
メタル以前にロックとしてクールな作品だ。


★GOATWHORE『Vengeful Ascension』(METAL BLADE 3984-15510-0)2CD


OBITUARY『Obituary』

170502 OBITUARY『Obituary』


80年代の半ばに活動を始めて大メジャーな存在にはならないにしても常に第一線で活躍している
米国フロリダ出身のデス・メタル・バンド、
OBITUARYによる『Inked In Blood』以来の約2年半ぶりのオリジナル・アルバム。
マイペースで活動を続けてスタジオ録音アルバムとしてはこれが記念すべき10作目だが、
節目に付けたセルフ・タイトル作にふさわしい自信満々のアルバムである。


デス・メタルの中でも特にスローでシンプルな曲が光るバンドで、
だからこそ意外とフォロワーが存在しない。
たやすくマネできそうで決してできないグルーヴ感がはらわたから湧き出ているからだ。
ドラマーとヴォーカリストが兄弟で不変というのも大きいのかブレのない音楽性で、
MOTORHEADRAMONESやAC/DCみたいにいつも同じでいつも違う。
そういう点でもやっぱりこのアルバムも“ロックンロール”である。
INCAPACITANTSと同じく、
進歩もヘッタクレもなくてもいつも生き生きしているのは何気に精進を怠らずに意識が走っているからだ。
アメリカンな豪快ぶりもたのもしい。

メンバーが前作と同じというところにもバンドの状態の絶好調ぶりが表れている。
近作同様に録音もプロデュースも自分たちでやって粘着感とドライなテイストのブレントも申し分無し。
貫禄の超重量級サウンドで不変でありながら、
例によって今までにないことをさりげなく盛り込んでもいる。
ミディアム~スロー・テンポ主体のOBITUARYにしては珍しく、
スラッシーな曲で始まり次もツー・ビート・ナンバーという畳みかける曲が続いていきなりねじ伏せる。
OBITUARYの真骨頂であるスロー・チューンのテクスチャーの根っこにブルースのフォーマットがあると、
納得させられる曲もやっている。
シャウト・スタイルのヴォーカルが基本だけに今まであまり聞かせなった、
クリス・バーンズ(元CANNIBAL CORPSE、現SIX FEET UNDER)ばりの超デス・ヴォイスを挟み込む曲も心憎い。
もちろん“OBITUARY節”というべき“なぶり殺しスロー・チューン”に磨きをかけ、
巨大な刃を首に当ててゆっくり斬って処刑していくみたいなリフが恐ろしいスロー・ナンバーにも、
ドゥーム・メタルとも言える陰鬱曲にも燃える。

楽曲クオリティも高く、
シンプルながらさりげなくツボを突くアレンジ・センスも言うこと無し。
ドゥーム・メタルと違ってスローな曲だろうとドラムの手数が多くてビートの抜けがいいところも、
ゆっくりしたドライヴ感と躍動感に一役買っている。
すがすがしいギター・ソロもキラリと光る。
深刻な死の表現というよりは、やっぱりホラー映画みたいに現実と空想が入り混じった表現である。
デス・メタルなのに爽快ですらあるのは突き抜けているからだ。
間延び底上げ増量みたいなことをしてダラダラせず、
ボーナス・トラック付のCDでもトータル・タイム36分31秒で潔いところもさすがである。

デス・メタル以前に“これがロックだぜ!”とも言いたくなるアルバムだ。
頭デッカチの“ロック”に用はない。
初期から基本的に歌詞を公表しにないバンドだけに今回も歌詞カードの類は無しだが、
能書きなんていらねえからこの響きに感じてくれ!と言いたげな表裏のないサウンドだ。
曲名が十分キーワードにもなっている。
「Brave」「Sentence Day」「A Lesson In Vengeance」「End It Now」「Kneel Before Me」
「It Lives」「Betrayed」「Turned To Stone」「Straight To Hell」「Ten Thousand Ways To Die」
といったイマジネイションをくすぐるタイトルばかり。
30年以上活動しているにもかかわらず、
「Straight To Hell」なんてベタな曲名を付けてしまうところがまた素晴らしいではないか。

OBITUARYには「Back From The Dead」という名曲があるが、
これで死の淵から再生できる。
たとえ死に体でも生きていけると確信させられる。
まさにグレイト。
新たなる最高傑作の誕生だ。


★OBITUARY『Obituary』(RELAPSE RR7370)CD
僕が買ったCDは「No Hope」(むろん捨て曲じゃない)というボーナス・トラック追加の11曲入りで、
表ジャケットにエンボス加工が成された三面デジパック仕様。
“掛け帯”付き。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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