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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CATTLE DECAPITATION『Death Atlas』

Cattle Decapitation ‎– Death Atlas


アメリカ南カリフォルニアのサンディエゴ出身のデス・メタル・バンド、
CATTLE DECAPITATIONが約4年ぶりにリリースした新作。
初期はEPともミニ・アルバムとも言い難いリリースも多かっただけに数えにくいが、
9作目のオリジナル・アルバムと言えそうな作品だ。

1996年にEPでレコード・デビューした頃は
奇天烈パンクハードコア・バンドのLOCUSTのメンバーの別プロジェクトと認識していただけに
(そのメンバーは2000年代前半には脱退)、
これほど長期間コンスタントに活動を続けるとは思いもしなかった。
確実に自分たちのポジションをシーン刻み込んでいるにもかかわらず、
守りに入ることを潔しとせずにここで挑戦的な進化を試みた。


カナダ出身のCRYPTOPSYの現ベーシストが加わり、
そのうえ本格的なツイン・ギター体制になった。
レコーディングなら音を重ねればいいだけだが、
ギタリストが2人だとリフもハーモニーも強化される。
でも余計なことをやり過ぎることなく、
エクストリーム・メタル道をさらに突き進んでいる。

ストレートに言えばブラック・メタルの導入だ。
今さら感もあるが、
一種のブームが一段落した今だからこそ
トレモロ・ギターや金切りスクリームを“わかりやすく取り入れた”とも言えるし、
ブラスト・ビートも従来のグラインドコア系にブラック・メタルがブレンドされている。

メンバーの変動で音楽性の幅を広げられるようになったからか、
いい意味で取っつきやすくなった(彼らのサウンドにしてはだが)。
タイトに引き締まって小気味いい音作りも起伏のある展開の曲作りもメリハリがある。
程良くシンセサイザーやSEの音声も使われ、
オーストラリアのDEAD CAN DANCEのカヴァーを追加した盤もあるらしく、
本作全体にも民俗音楽の要素が入ったゴス/ダーク・ウェイヴ系の色がうかがえる。
数人のゲストがキーボードや女声などで適宜参加し、
その中でも米国のジャム・ロック系バンドであるPHISHのドラマーのジョン・フィッシュマンが
メロディアスなアンビエント・チューンでヴォイスを披露しているのも驚きだ。

以前よりキャッチーなメロディも導入。
多彩なヴォーカリゼイションも特筆すべきで、
デス・ヴォイスはもちろんのこと、
ビックリするほど比重が高くなったノーマル・ヴォイスも自然な形で曲に溶け込んでいる。

もちろんスウェーデンの“エコ・アジテイター”のグレタ・トゥーンベリが生まれる前から
動物問題に重きを置いたリアルな残虐筆致で環境問題も表現してきただけに、
筋金入りの歌詞もさらなる深化を遂げている。
全身でサウンドを浴びながら彼女にも聴いていただきたい。

ドラマチックなアルバム全体の流れもよく練られ、
歌詞も含めて考えるとリアリスティックなSF映画を思わせる渾身の一枚。
オススメだ。


★CATTLE DECAPITATION『Death Atlas』(METAL BLADE 3984-15683-2)CD
20ページのブックレット封入の55分強の14曲入り。
実際のジャケットは↑の画像より色が濃いです。


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NILE『Vile Nilotic Rites』

NILE『Vile Nilotic Rites』


90年代前半から活動を続けている米国サウス・カロライナ出身のデス・メタル・バンドが、
『What Should Not Be Unearthed』から約4年ぶりに出した8作目のフル・アルバム。

リーダーのカール・サンダース(vo、g他)と20年近くやってきたダラス(g、vo)は不在だが、
15年近く一緒にやっているジョージ(ds)は今回も叩いており、
新しいギター/ヴォーカルとベース・ヴォーカルとの4人体勢でのレコーディングである。
程良く音の抜けがよく、程良く粘着質の音作りがピッタリで、
痛快ですらあるほど胸がすく快作だ。


メンバーが変わろうが、
このバンドも既に“NILE節”の曲と“NILEサウンド”の音が確立されていて、
変わった、変わらないのレベルにはならない。
やればこうなる“バトルフィールド・サウンド”健在である。
だが自己保身で守りに入ることなく着実に進んでいることは、
停滞を潔しとしないサウンドそのものの生き生きとした響きでわかる。
“ピラミッド・パワー”とでも言いたくなるほど、
エジプト史の血を精気にして狼煙を上げ続けるのだ。

たとえば多少ジャンルは違うが
TOXIC HOLOCAUSTが核の被曝や生物/化学兵器による血の出ない殺戮だとしたら、
こちらは肉体破損を伴う原始的な殺戮。
戦闘シーン、拷問シーン、処刑シーンなどなど、色々とイメージできる佇まいのアルバムだ。

ブラスト・ビート多用のせわしないリズムのテクニカルな演奏であっても、
聴かせどころをバッチリ設けている。
いつにも増して楽曲クオリティが高く、
スロー・パートを織り込んでも9分近い曲でも弛緩することなく、
フックを忍ばせたアレンジ・センスにも磨きをかけている。
曲も音もメリハリ十分で一気にブッ飛べてカッコいい。

複雑怪奇なテクスチャーを絡ませていても緩急織り交ぜた曲でスペクタクル映画の如く構成し、
たとえデス・メタルであろうとリスナーとの交感で音楽をさらなる高みに持っていく。
アコースティックなインストの小曲をはじめとして
中東ちっくなロマン溢れるメロディもほのかに香り、
残虐音とブレンドされて無数の死者を弔う。
神話を現代にリライトしたような旋律で彩る。

むろんヴォーカルも無味無臭没個性デス・ヴォイスではなく、
いい意味で円熟味を帯びながら凄味を増し、
苦渋と苦汁のハーモニーが苦悶の調べとなって押し寄せてくる。
ところによって披露する詠唱も堂々たるもんだ。

グレイトな音楽すべてがそうであるように理屈抜きにサウンドだけでイケるアルバムだが、
歌詞を見るとまた一段と深みにハマる。
もちろん(古代)エジプトのネタ満載のモチーフながら、
歌詞自体にそういう言葉があまり使われてないから普遍的な解釈も可能だ。
いわゆる政治的な歌詞ではないが、
「Seven Horns Of War」の曲解説のところでカールが使っている“political chaos”という言葉で、
現代の世界情勢もイメージできる。

歌詞の字数もかなりのものだが、
執念を感じる曲解説の文章量が膨大で音楽同様に今回もトゥー・マッチだが、
固有名詞はともかく文体は平易で英語だからちょっと頑張ればどうにかなる。
曲に耳を傾けながら読んでいって少しずつでも理解を深めていきたい力作だ。

さすがの大スイセン盤。


★NILE『Vile Nilotic Rites』(NUCLEAR BLAST 5147-0)CD
写真に加えて歌詞とカールによる長文曲解説がビッシリ載った28ページのブックレット封入の、
三面デジパック仕様の55分弱の11曲入り。


DARKTHRONE『Old Star』

DARKTHRONE『Old Star』


ノルウェー拠点に30年以上コンスタントに活動を続けるブラック・メタル系デュオが、
ファーストからの付き合いのPEACEVILLE Recordsから今年5月に出した目下の最新作。
オリジナル・アルバムとしては
『Arctic Thunder』以来の約3年ぶりで17作目になりそうだ。


全6曲中で6~8分の曲が4曲占めて重厚な聴き応えに圧倒される。
ヘヴィ・メタルであることに間違いはないが、
もちろんメタルの上澄みだけを利用したヤツとは別次元のリアル・サタンの轟きである。

特定のスタイルをやろうって意識はとうの昔に消え失せているだろうし、
どんな曲をやってもDARKTHRONEになる。
フック十分で楽曲クオリティの高いクールなソングライターとしてだけでなく、
演奏者としてもヴォーカリストとしても自分たち自身の“鳴り”を持っているからだ。

AMEBIXの流れは感じさせるしネオ・クラストとも接点を持つ曲だが、
2000年代半ばからしばらく目立った初期UKスタイルのハードコア/クラスト・パンク色は薄め。
でもツー・ビートやエイト・ビートでドライヴするパートがとにかくカッコよく、
スロー・リフを挿入してもアルバム全体の加速度は止まない。
言うまでもなくドゥーム・メタルやスラッジ・メタルの様式からも解き放たれている。
ブラック・メタルの色合いが強いのは、
ありがちな楽曲スタイルではなく殺伐とした邪悪な匂いに包まれているからだ。
心に染み入るほどロマンを感じる旋律の疾走には胸がすく。
研ぎ澄まされて鋭い美麗メロディが琴線を切り刻んでいく。

ヒリヒリした質感で戦慄のトーンが浮かび上がるデリケイトな音像の仕上がりも素晴らしい。
重苦しくもパワフルなドラム・ビートのずっしりしたアタック感も
ブラック・メタルを濃縮したギターの音色も言うこと無しである。
録音とエンジニアを務めたのはノクターノ・カルト(vo、g、b)。
ミュージシャンとしてもBURIED AT SEAやMINSKなどで活動してきて
エンジニアとしても売れっ子のサンフォード・パーカーがミックスし、
ジャック・コントロール(元WORLD BURNS TO DEATH)がマスタリングだ。

地方レベルながら政治家にもなったフェンリッツ(ds)が平易な英語で綴る歌詞は
黙示録の如く出口無しの閉塞の世を描き出す。
だが言葉に頼りすぎず、
呪詛すら感じさせるヴォーカルと楽器の音の響きにすべての意思が宿る。
内にこもらず、
すべてが生のまま外に向いて放射されている。

焼けつく冷気と凍りつく熱量に痺れとろける。
さすがの一枚。
まさにグレイト。


★DARKTHRONE『Old Star』(PEACEVILLE CDVILEF785)CD
歌詞が載った8ページのブックレット封入の38分強の6曲入り。
スリップケース付。


MISERY INDEX『Rituals Of Power』

MISERY INDEX


米国東海岸のメリーランド州バルティモア出身のデス・メタル・バンドによる新作。
2000年代の頭から地道かつマイペースかつコンスタントに活動を続け、
これは『The Killing Gods』以来の約5年ぶりの6作目のオリジナル・アルバムである。
今年3月のグレイトな来日公演直後のリリースでヘヴィ・ローテーションにもかかわらず、
まだどこにも書いてなかったから紹介したい。


演奏パートごとにレコーディングを行ない、
ドラムはエリック・ルータン(元MORBID ANGELS、現HATE ETERNAL)が録音している。
ミキサーは、
VISION OF DISORDER『The Cursed Remain Cursed』をプロデュースし、
EXHUMEDの『Necrocracy』もミックスしたウィル・パトニー。
いい意味で乾いた感触で音の抜けが良く分離のいい仕上がりだ。

ドゥーミーなオープニングから高速のラストまで、
個々の曲も全体の構成も緩急織り交ぜてメリハリをつけ、
じっくり練って仕上げたことが想像できる。
適度にコーラス・バートも設けて絶妙なアレンジ・ワークも光り、
フック十分の楽曲クオリティも高く、
聴いていて疲れない音作りも含めて押しつけがましくなく何度でも楽しめるアルバムだ。

ブラスト・ビートも使うデス・メタルながら、
あくまでも“ここぞ!”という要所にのみブラストを突っ込んで効果を上げる演奏スタイルで、
ブラスト・ビート以外のパートでも手数が多く曲を加速させているドラムがやっぱり見事である。
黙示録的な悲嘆のギター・ソロも聴かせどころで挿入し、
4人の音の絡みもクールな業火の如きサウンドはやっぱりデス・メタルと呼ぶにふさわしい。
さらにミキサーの影響ではないだろうが、
VISION OF DISORDERのようなメタル・ハードコアのグルーヴ感も肝で、
速いところだけでなくミディアム・テンポのパートのコクも素晴らしい。

ヴォーカルはデス・ヴォイスというよりやっぱりハードコアな気合の咆哮に近いが、
言葉を一つ一つはっきり撃ち飛ばす。
アメリカのホラー映画にも近いドライな音の感触ながら、
神話的な要素も多少絡めつつ、
歌詞はもちろんあくまでもリアリスティック。
世界各地の混沌状況がイメージできて「New Salem」という曲が象徴的だ。

16ページのブックレットでは不敵なツラ構えのメンバー4人の雄姿も拝める。
覚悟を決めたいい意味で大人の佇まいで、
正直に表れるサウンドに加えてヴィジュアルにも本気度が滲む。

約36分9曲入りというコンパクトに凝縮した作りにより、
この系統の音楽に連続して向き合える程良いヴォリューム感でリスナーに配慮し、
アルバムを通して一気に聴いてほしいという意思も感じられる。

大スイセン。


★MISERY INDEX『Rituals Of Power』(SEASON OF MIST SOM 510)CD
『白鯨(Moby-Dick)』のハーマン・メルヴィルらの金言もアートワークに載っている。

CATTLE DECAPITATION『Medium Rarities』

CATTLE DECAPITATION『Medium Rarities』


90年代半ばから活動しているカリフォルニア州南部のサンディエゴ出身のデス・メタル・バンド、
CATTLE DECAPITATIONの編集盤。
1998年から2015年にかけてのレア音源が23曲収められている。

EPやトリビュート盤、ボーナス・トラックで発表した曲が中心で、
1999年発表のファースト・アルバム『Human Jerky』レコーディング前の
リハーサル・テイクのデモ6曲は未発表だ。
録音時期がバラバラにもかかわらず
パーカッシヴかつパンチの効いたメリハリ十分の音の仕上がりで統一感があり、
時系列ではなく全体の流れを考慮した曲順で構成されているから一つのアルバムのように楽しめる。

LOCUSTと掛け持ちしていたゲイブ・サービアン(g、ds~現RETOX)在籍時の
初期ナンバーはもちろんのこと、
他の曲もオリジナル・アルバムよりコンパクトに凝縮された曲が多い。
ブラスト・ビート込みのサウンドもアレンジもデス・メタル寄りだが、
あまり長くない曲はグラインドコア寄りで、
ストーナー録音技師ビリー・アンダーソンも加勢したドライな音作りがアメリカンならではの残虐性。
音楽的にも歌詞的にも影響大のCARCASSの「Burnt To A Crisp」はハマりすぎだし、
BIRTHDAY PARTYの「Sonny's Burning」のカヴァーもまた渋い。

ロブ・クロウ(PINBACK他)と数年前に始めたショートカット・グラインドコア・デュオの
ANAL TRUMPでは演奏とソングライティングに徹している、
トラヴィス・ライアン(vo)の“デス・スクリーム”も気合十分。
ヴォイス混じりのノイズ・チューンも血がしたたる生々しい音像だ。

ナイーヴなラヴ&ピースやヒューマニズムを“屠殺”せん!とばかりの勢いである。
動物や植物を犠牲にして生きてるくせにエゴで肥える傲慢なヒトという“種”に対しての警告の如き
“人面焼きジャケット”だけでなく、
CATTLE DECAPITATION流のウロボロス解釈みたいなCDケース・トレイ下の画も象徴的だ。

ビーフ・ジャーキーが好物なら“ヒューマン・ジャーキー”も喰え!ってな一枚。


★CATTLE DECAPITATION『Medium Rarities』(METAL BLADE 3984-15620-2)CD
歌詞が載った8ページのブックレット封入の約35分23曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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