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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

MISERY INDEX『Rituals Of Power』

MISERY INDEX


米国東海岸のメリーランド州バルティモア出身のデス・メタル・バンドによる新作。
2000年代の頭から地道かつマイペースかつコンスタントに活動を続け、
これは『The Killing Gods』以来の約5年ぶりの6作目のオリジナル・アルバムである。
今年3月のグレイトな来日公演直後のリリースでヘヴィ・ローテーションにもかかわらず、
まだどこにも書いてなかったから紹介したい。


演奏パートごとにレコーディングを行ない、
ドラムはエリック・ルータン(元MORBID ANGELS、現HATE ETERNAL)が録音している。
ミキサーは、
VISION OF DISORDER『The Cursed Remain Cursed』をプロデュースし、
EXHUMEDの『Necrocracy』もミックスしたウィル・パトニー。
いい意味で乾いた感触で音の抜けが良く分離のいい仕上がりだ。

ドゥーミーなオープニングから高速のラストまで、
個々の曲も全体の構成も緩急織り交ぜてメリハリをつけ、
じっくり練って仕上げたことが想像できる。
適度にコーラス・バートも設けて絶妙なアレンジ・ワークも光り、
フック十分の楽曲クオリティも高く、
聴いていて疲れない音作りも含めて押しつけがましくなく何度でも楽しめるアルバムだ。

ブラスト・ビートも使うデス・メタルながら、
あくまでも“ここぞ!”という要所にのみブラストを突っ込んで効果を上げる演奏スタイルで、
ブラスト・ビート以外のパートでも手数が多く曲を加速させているドラムがやっぱり見事である。
黙示録的な悲嘆のギター・ソロも聴かせどころで挿入し、
4人の音の絡みもクールな業火の如きサウンドはやっぱりデス・メタルと呼ぶにふさわしい。
さらにミキサーの影響ではないだろうが、
VISION OF DISORDERのようなメタル・ハードコアのグルーヴ感も肝で、
速いところだけでなくミディアム・テンポのパートのコクも素晴らしい。

ヴォーカルはデス・ヴォイスというよりやっぱりハードコアな気合の咆哮に近いが、
言葉を一つ一つはっきり撃ち飛ばす。
アメリカのホラー映画にも近いドライな音の感触ながら、
神話的な要素も多少絡めつつ、
歌詞はもちろんあくまでもリアリスティック。
世界各地の混沌状況がイメージできて「New Salem」という曲が象徴的だ。

16ページのブックレットでは不敵なツラ構えのメンバー4人の雄姿も拝める。
覚悟を決めたいい意味で大人の佇まいで、
正直に表れるサウンドに加えてヴィジュアルにも本気度が滲む。

約36分9曲入りというコンパクトに凝縮した作りにより、
この系統の音楽に連続して向き合える程良いヴォリューム感でリスナーに配慮し、
アルバムを通して一気に聴いてほしいという意思も感じられる。

大スイセン。


★MISERY INDEX『Rituals Of Power』(SEASON OF MIST SOM 510)CD
『白鯨(Moby-Dick)』のハーマン・メルヴィルらの金言もアートワークに載っている。

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CATTLE DECAPITATION『Medium Rarities』

CATTLE DECAPITATION『Medium Rarities』


90年代半ばから活動しているカリフォルニア州南部のサンディエゴ出身のデス・メタル・バンド、
CATTLE DECAPITATIONの編集盤。
1998年から2015年にかけてのレア音源が23曲収められている。

EPやトリビュート盤、ボーナス・トラックで発表した曲が中心で、
1999年発表のファースト・アルバム『Human Jerky』レコーディング前の
リハーサル・テイクのデモ6曲は未発表だ。
録音時期がバラバラにもかかわらず
パーカッシヴかつパンチの効いたメリハリ十分の音の仕上がりで統一感があり、
時系列ではなく全体の流れを考慮した曲順で構成されているから一つのアルバムのように楽しめる。

LOCUSTと掛け持ちしていたゲイブ・サービアン(g、ds~現RETOX)在籍時の
初期ナンバーはもちろんのこと、
他の曲もオリジナル・アルバムよりコンパクトに凝縮された曲が多い。
ブラスト・ビート込みのサウンドもアレンジもデス・メタル寄りだが、
あまり長くない曲はグラインドコア寄りで、
ストーナー録音技師ビリー・アンダーソンも加勢したドライな音作りがアメリカンならではの残虐性。
音楽的にも歌詞的にも影響大のCARCASSの「Burnt To A Crisp」はハマりすぎだし、
BIRTHDAY PARTYの「Sonny's Burning」のカヴァーもまた渋い。

ロブ・クロウ(PINBACK他)と数年前に始めたショートカット・グラインドコア・デュオの
ANAL TRUMPでは演奏とソングライティングに徹している、
トラヴィス・ライアン(vo)の“デス・スクリーム”も気合十分。
ヴォイス混じりのノイズ・チューンも血がしたたる生々しい音像だ。

ナイーヴなラヴ&ピースやヒューマニズムを“屠殺”せん!とばかりの勢いである。
動物や植物を犠牲にして生きてるくせにエゴで肥える傲慢なヒトという“種”に対しての警告の如き
“人面焼きジャケット”だけでなく、
CATTLE DECAPITATION流のウロボロス解釈みたいなCDケース・トレイ下の画も象徴的だ。

ビーフ・ジャーキーが好物なら“ヒューマン・ジャーキー”も喰え!ってな一枚。


★CATTLE DECAPITATION『Medium Rarities』(METAL BLADE 3984-15620-2)CD
歌詞が載った8ページのブックレット封入の約35分23曲入り。


TERRORIZER『Caustic Attack』

TERRORIZER『Caustic Attack』


MORBID ANGELの音の核だったピート・サンドヴァル(ds)がそれ以前からやっていた、
グラインドコア創始バンドの一つであるLA出身のTERRORIZERの4作目。
前作『Hordes Of Zombies』(2012年)からまたピート以外のメンバーが入れ替わっていて、
トリオ編成でのレコーディングだが、
まったく問題ないどころか吹っ切れたグラインドコアで疾走する快作だ。


TERRORIZERの一員を新たに成しているのは、
MONSTROSITYをずっとやってきて本作のプロデュースの中心になったリー・ハリソン(g)と、
MONSTROSITYのメンバーだったこともあるサム・モリナ(vo、b)。
歴史的なファースト・アルバム『World Downfall』(1989年)とはもちろん違うが、
ピュア・グラインドに徹した潔さという点で匹敵するほど胸がすくアルバムである。

ハードコア・パンクとデス・メタルのダシが絶妙に効いていて、
パワーでゴリ押しの作品とは一線を画す。
いい意味で味わい深いグラインドコア・アルバムに仕上がっており、
約44分14曲を一気に聴かせるのだ。
ツボを押さえた楽曲クオリティも高く、
緩急起伏つけながらも曲の中にダラダラもったいつけたパートがなく、
グラインドコアの肝が濃密凝縮されている。

やはり泣く子も黙る問答無用のピートのドラムだ。
鬼ブラスト・ビートとツー・ビートを滑らかに絡めて曲を加速させ続けるクールな戦闘的ドラム・センスに
痺れるしかない。
メタル的にタイトなだけでなく適度に抜けがよくて“ロックンロール”もしているし、
手数足数にはジャズも入っていてドラムがリード楽器と化している。
新メンバーの2人もピートに臆せずプレイして溶け合い噛み合い絡み合い、
グレイトなケミストリーが生まれている。

デス・ヴォイスでリズミカルに歌われている言葉はジャケットそのままだ。
政治関係にしても国内問題しか相手にしないエゴ丸出しのラヴ&ピースに用は無い。

歌詞の冷厳な筆致も音の感触そのままだが、
閉塞状況を突き抜ける意思が音に宿ってもいる。
各パートがバランスよくゴリゴリの音像が見えてくるレコーディング仕上げもパーフェクト。
TRIVIUMALL THAT REMAINSAUGUST BURNS REDBLACK DAHLIA MURDERなどの、
2000年代以降のハードコア系メタル・サウンドのアルバムを多数手がけてきた
ジェイソン・スーコフらのミックスの功績も大きい。

2018年のベスト・アルバムに追加したい強力盤だ。


★TERRORIZER『Caustic Attack』(THE END TE737-2)CD
歌詞が載った12ページのブックレット封入で味のある質感の二つ折り紙ジャケット仕様の
約44分14曲入り。
実際のジャケットの色は↑の画像よりやや茶系のセピア色がかっている。


HATE ETERNAL『Upon Desolate Sands』

HATE ETERNAL『Upon Desolate Sands』


MORBID ANGELのエリック・ルータン(vo、g)率いる
米国フロリダ出身のデス・メタル・バンドが『Infernus』以来約3年半ぶりに発表したニュー・アルバム。
3~4年のインターヴァルをとりつつコンスタントなリリースを続け、
これが7作目だ。


HATE ETERNAL、
あらためて実にグレイトなバンド名である。
モリッシーのファースト・ソロ・アルバム『Viva Hate』と並ぶクールな“hateフレーズ”だ。
ANAL CUNT
『40 More Reasons To Hate Us』というアルバム・タイトルや
『Defenders Of The Hate』というEPタイトルもファニーだった。

“hate狩り”みたいな世の中になって息苦しい。
“hate”は本来いわゆる人種差別に関係なく最も人間らしいピュアな感情であり、
“hate”を解き放つことで救われるとあらためて知るアルバムだ。


他のバンドのレコーディングも多数手がけている売れっ子で唯一のオリジナル・メンバーの、
エリックが今回も録音とミックスとプロデュースを担当。
今回はエリックのスタジオではなくポーランドでのレコーディングというのも興味深く、
周りの国々から蹂躙され続けたあの国の“血塗られた歴史”もイメージできるほど
研ぎ澄まされた空気に包まれている。

OBSCURAのメンバーだった(2009年の『Cosmogenesis』と2011年の『Omnivium』で演奏)、
ハンネス・グロスマンが新ドラマーとして加入したことも大きい。
NILETRIPTYKONと対バンした2010年のOBSCURA初来日公演時に叩いていた人である。
タメを効かせつつブラスト・ビートをブチ込む引き締まったウルトラ・パワフルなビートで、
HATE ETERNALをさらなるネクスト・レベルへと引き上げた。

メリハリの効いた音作りで適度に抜けがいいサウンドに仕上がっており、
交響楽を凝縮したかの如きドラマチックな展開で荘厳な雰囲気を醸し出す緻密な曲でありつつ、
聴かせどころを設けたソングライティングとリズムのズラしも絶妙なアレンジ・ワークが光る。
MORBID ANGELの流れをくむブラスト・ビート込みのサウンドだが、
マッチョな戦闘的感覚や音詰め込みゴリ押しデス・メタルとは一線を画して凛々しく、
いわゆるメロディック・デス・メタルのスタイルではないにもかかわらず哀悼の旋律が湧き上がる。
アルバムの締めは悼みと痛みと傷みのインスト・ナンバーだ。

歌詞も、
「The Violent Fury」「What Lies Beyond」「Vengeance Striketh」「Nothingness Of Being」
「All Hope Destroyed」「Portal Of Myriad」「Dark Age Of Ruin」Upon Desolate Sands」
「For Whom We Have Lost」
といった曲名からイメージできるデス・メタル・ワールドそのもの。
抒情詩と叙事詩がブレンドしたかのようで、
開かれた視点だから内向きに陥らずに普遍的に捉えられる内容だ。
もちろんポリティカルな歌詞ではないが、
中東やアフリカ、アフガニスタンやパキスタンなどの現在進行形の受難や惨劇が思い浮かび、
極限状況の厭戦…いや厭世の心象風景である。

SOULFLYやSIGHの新作も手掛けたliran Kantorのジャケット画もフィットしたオススメ盤。


★HATE ETERNAL『Upon Desolate Sands』(SEASONS OF MIST SOM505D)CD
12ページのブックレット封入のデジパック仕様の約39分9曲入り。


BEHEMOTH『I Loved You At Your Darkest』

BEHEMOTH『I Loved You At Your Darkest』


エクストリーム・メタルの域を超えて
ロックとしても名実ともにポーランドを代表するバンドのBEHEMOTHによる、
オリジナル・アルバムとしては『The Satanist』以来の約4年半ぶりになる11作目。

HIGH ON FIREも新作『Electric Messiah』の曲の中でも歌い込んだ
旧約聖書に登場する巨獣BEHEMOTHをネーミングしたバンドだけに、
もちろんタダモノじゃない。
決まりきったジャンルの中で安住することを潔しとしない音楽性も含めて、
外向きの意識に貫かれた佳作である。

プロデュースは
IN FLAMESとの仕事を重ねつつ前作をバンドと手掛けたダニエル・バーグストランドで、
前作に引き続きSLAYERDEFTONESも手掛けたマット・ハイドがミックス。
BEHEMOTHの多様性がしっかり表れた音の仕上がりになっている。


こういうサウンドと歌詞のバンドがチャートのトップになることに
BEHEMOTHの母国ポーランドの底力を見る。
国内にとどまらず米国も含めて世界的な支持が厚くなる一方だが、
今回いい意味でさらにリスナーの層を広げそうだ。

キリスト教~カトリックへの反発が主要モチーフの歌詞も熾烈な音も、
もちろん妥協無し。
ブラスト・ビートを絡めてブラック・メタルとデス・メタルの絶妙の混血サウンドを展開するが、
ブラック・メタルの色がやや強めのアルバムだ。
KILLING JOKEをはじめとする
ダークなポスト・パンクのクールな律動と旋律も随所から感じられ、
AMEBIXTAU CROSSのようなメタル・クラストの進化形のニュアンスも滲む。

贅肉を削ぎ落してコンパクトに凝縮した曲作りが素晴らしく、
抜けのいいドラムのリズムとビートをはじめとするアタック感の強い音作りも特筆したい。
曲によってオーケストラや子どもの合唱を適度に絡ませるなど、
アレンジ・ワークもツボを突く。
とにかくメリハリがある。

言葉を噛みしめながら声を発するヴォーカルは、
デス・ヴォイスともブラック・メタリックなスクリームとも違う苦い喉を震わせて“詠唱”する。
「溶解」「シベリアの狼」「ゴッド・イコール・ドッグ」「邪悪蔓延るカトリック教会」
「悪霊バルツァベル」「磔が緩かったなら」「アンジェラス13 ~闇の祈り~」「聖母哀傷」「無能者」
「ローマの信徒への手紙 5章8節」「我ら千年の月日」「凝固」「燃ゆる五芒星よ」といった、
直訳を基本にしつつ曲の本質を捉えた曲名の“邦題”がピッタリの世界を綴る。

歌詞に直接表れているわけではないが、
第二次世界大戦中に象徴されるポーランドの歴史の悲嘆も滲み出ている。
蹂躙してきたナチスやソ連などの強引な勢力を反面教師にもしてきた地で生まれ育ったバンドだけに、
サウンドそのものが押しつけがましくない。
デリケイトなのだ。

何度も何度も聴ける中毒性の高い一枚。
オススメ。


★ベヒーモス『アイ・ラヴド・ユー・アット・ユア・ダーケスト』(ビクターエンタテインメント VICP-65504)CD
↑の“ジャケット画像”はブックレットの表紙で、
実際のパッケージは表の面に穴の空いた漆黒のスリップケースに覆われている。
歌詞と曲解説のようなコメントが載った24ページのブックレット封入。
日本盤は1曲追加された約52分13曲入りで、
歌詞や曲解説の和訳とわかりやすくポイントを押さえた田村直昭執筆のライナーも載った
12ページのブックレットも封入されている。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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