なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

GOATWHORE『Vengeful Ascension』

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米国南部ルイジアナ州ニューオリンズ拠点の“エクストリーム・メタル・ロックンロール・バンド”が、
『Constricting Rage Of The Merciless』以来約3年ぶりにリリースした7作目。
ヴォーカルのベンは
EYEHATEGODのブライアン・パットンがギターを弾くSOILENT GREENの一員でもあるが、
そっちはずっとリリースがないからここ数年はGOATWHOREに集中しているようだ。

13曲入りのCDが追加されている限定版2枚組CD版を買った。
妖しくデザインで古びた感触の紙に凝った字体(でも読みやすい)で歌詞などがプリントされた
呪文書みたいな40ページのブックレット綴じ込み仕様で、
エンボス加工のハードブックカヴァー体裁パッケージである
(ちなみに非限定盤のジャケットはまったく別のデザイン)。


アルバム本編は、
サードからずっと手掛けていたエリック・ルータン(元MORBID ANGELHATE ETERNAL)の手を離れ、
デス・メタル・バンドのEULOGYでギターを弾いていたジャレット・プリッチャードのプロデュース。
ヴォーカルも含めて
デス・メタルとブラック・メタルのevil&mean(邪悪で卑しい)アメリカン“ロックンロール”ブレンドで、
ブレがない。
大きすぎない音でミックスされた小回りの利いたドラムをはじめとして一段と抜けがいい。
ドゥーム・メタルなスロー・パートも盛り込みつつあちこちで疾走するが、
スラッシュ・メタルというよりはクラスト・パンクの音のつぶれ具合だし、
メタル・パンクとも大いに接点があるサウンドだ。
HELLHAMMER、MOTORHEAD、後期DISFEAR、GENOCIDE SS(GENOCIDE SUPER STAR)あたりの
黒い疾走感が、
イイ意味でアメリカンのドライな感触で焼き上げられていてビールが美味い。
なんだかんだ言って根がロックンロールだからである。

歌詞も地獄や神を歌い込んでいて“それっぽい”が、
ウソ臭いメッセージ・ソングの百万倍リアルに世界状況をシビアに暗示した深い表現で示唆に富む。

約42分10曲入りというコンパクトなヴォリュームも潔い。

GOATWHORE.jpg

約51分13曲入りのボーナスCDの方はあちこちで細かく発表してきた音源+αだ。
2015年12月録音の2曲+2017年3月録音の4曲+1曲のダイナミズム溢れるライヴの他に、
スプリットEPやデジタル配信、日本盤のボーナス・トラックで発表した音源などで構成されている。
その中でもMOTORHEADの「(Don't Need) Religion」、DARKTHRONEの「Under A Funeral Moon」、
CELTIC FROSTの「Into The Crypt Of Ray」の渋いカヴァー群は、
ベタながらバンドの本質がよく表れている。
“逆時系列”で昔の音源にさかのぼっていく曲の並びで、
一番古いのがセカンドを出した2003年の録音だ。
こっちを聴くと進化なんか知ったこっちゃないが深化はしている姿勢を再認識する。


全曲ノリノリ、
いい意味でアメリカン。
メタル以前にロックとしてクールな作品だ。


★GOATWHORE『Vengeful Ascension』(METAL BLADE 3984-15510-0)2CD


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OBITUARY『Obituary』

170502 OBITUARY『Obituary』


80年代の半ばに活動を始めて大メジャーな存在にはならないにしても常に第一線で活躍している
米国フロリダ出身のデス・メタル・バンド、
OBITUARYによる『Inked In Blood』以来の約2年半ぶりのオリジナル・アルバム。
マイペースで活動を続けてスタジオ録音アルバムとしてはこれが記念すべき10作目だが、
節目に付けたセルフ・タイトル作にふさわしい自信満々のアルバムである。


デス・メタルの中でも特にスローでシンプルな曲が光るバンドで、
だからこそ意外とフォロワーが存在しない。
たやすくマネできそうで決してできないグルーヴ感がはらわたから湧き出ているからだ。
ドラマーとヴォーカリストが兄弟で不変というのも大きいのかブレのない音楽性で、
MOTORHEADRAMONESやAC/DCみたいにいつも同じでいつも違う。
そういう点でもやっぱりこのアルバムも“ロックンロール”である。
INCAPACITANTSと同じく、
進歩もヘッタクレもなくてもいつも生き生きしているのは何気に精進を怠らずに意識が走っているからだ。
アメリカンな豪快ぶりもたのもしい。

メンバーが前作と同じというところにもバンドの状態の絶好調ぶりが表れている。
近作同様に録音もプロデュースも自分たちでやって粘着感とドライなテイストのブレントも申し分無し。
貫禄の超重量級サウンドで不変でありながら、
例によって今までにないことをさりげなく盛り込んでもいる。
ミディアム~スロー・テンポ主体のOBITUARYにしては珍しく、
スラッシーな曲で始まり次もツー・ビート・ナンバーという畳みかける曲が続いていきなりねじ伏せる。
OBITUARYの真骨頂であるスロー・チューンのテクスチャーの根っこにブルースのフォーマットがあると、
納得させられる曲もやっている。
シャウト・スタイルのヴォーカルが基本だけに今まであまり聞かせなった、
クリス・バーンズ(元CANNIBAL CORPSE、現SIX FEET UNDER)ばりの超デス・ヴォイスを挟み込む曲も心憎い。
もちろん“OBITUARY節”というべき“なぶり殺しスロー・チューン”に磨きをかけ、
巨大な刃を首に当ててゆっくり斬って処刑していくみたいなリフが恐ろしいスロー・ナンバーにも、
ドゥーム・メタルとも言える陰鬱曲にも燃える。

楽曲クオリティも高く、
シンプルながらさりげなくツボを突くアレンジ・センスも言うこと無し。
ドゥーム・メタルと違ってスローな曲だろうとドラムの手数が多くてビートの抜けがいいところも、
ゆっくりしたドライヴ感と躍動感に一役買っている。
すがすがしいギター・ソロもキラリと光る。
深刻な死の表現というよりは、やっぱりホラー映画みたいに現実と空想が入り混じった表現である。
デス・メタルなのに爽快ですらあるのは突き抜けているからだ。
間延び底上げ増量みたいなことをしてダラダラせず、
ボーナス・トラック付のCDでもトータル・タイム36分31秒で潔いところもさすがである。

デス・メタル以前に“これがロックだぜ!”とも言いたくなるアルバムだ。
頭デッカチの“ロック”に用はない。
初期から基本的に歌詞を公表しにないバンドだけに今回も歌詞カードの類は無しだが、
能書きなんていらねえからこの響きに感じてくれ!と言いたげな表裏のないサウンドだ。
曲名が十分キーワードにもなっている。
「Brave」「Sentence Day」「A Lesson In Vengeance」「End It Now」「Kneel Before Me」
「It Lives」「Betrayed」「Turned To Stone」「Straight To Hell」「Ten Thousand Ways To Die」
といったイマジネイションをくすぐるタイトルばかり。
30年以上活動しているにもかかわらず、
「Straight To Hell」なんてベタな曲名を付けてしまうところがまた素晴らしいではないか。

OBITUARYには「Back From The Dead」という名曲があるが、
これで死の淵から再生できる。
たとえ死に体でも生きていけると確信させられる。
まさにグレイト。
新たなる最高傑作の誕生だ。


★OBITUARY『Obituary』(RELAPSE RR7370)CD
僕が買ったCDは「No Hope」(むろん捨て曲じゃない)というボーナス・トラック追加の11曲入りで、
表ジャケットにエンボス加工が成された三面デジパック仕様。
“掛け帯”付き。


OBITUARY『Ten Thousand Ways To Die』

OBITUARY『Ten Thousand Ways To Die』


80年代半ばから活動している米国フロリダ産デス・メタル老舗バンドOBITUARYの新録盤。
新曲2曲がメインのCDで、
ライヴ12曲がボーナス・トラックになっている。


1曲の「Loathe」はOBITUARYらしいスロー・チューンによる曲名通りに胸糞悪くなるほどの嫌悪グルーヴで、
ジャケットどおりに無数の屍の無念の命の中から産まれ出た怪物そのもののサウンド。
至福のフレーズのアルバム・タイトル曲である2曲目もミディアム・テンポで、
これぞOBITUARY!のドライな粘着サウンド。
録音もしているセルフ・プロデュースで文句無し!の2曲だ。

残りの12曲は今年2~3月の北米ツアーの中から11ヶ所のライヴをピックアップしてまとめたものだが、
むろん音質のバラつきなどの違和感を覚えさせない仕上がりである。
『Frozen In Time』(2005年)から1曲、
『Inked In Blood』(2014年)から2曲、
『Slowly We Rot』(89年)から4曲、
『Cause of Death』(90年)から4曲、
『World Demise』(94年)から1曲という、
最初の2作の曲が過半数を占める極端なセットリストで構成。
だがむろんなんも問題はない。

誤解を恐れずに言えばOBITUARYはロックンロール・バンドである。
ブラスト・ビートを使わず、
大ざっぱに言えばスラッシュ・メタルとドゥーム・メタルを粘着質の残忍な音でドライにブレンドし、
飲めや歌えやの“ロックンロール”の肝で笑いながら晴天の下で皆殺しにするようなサウンドだ。
ロックンロールは“いかにもの様式”のスタイルだけじゃない。
デス・メタルだってブラック・メタルだってロックンロールが根っこのバンドは無数存在するわけである

抜けのいいドラムをはじめとしてアメリカンな開放精神炸裂のダイナミズムに解放される。
メンバー写真の満面の笑顔が最近のSCORPIONSの写真みたいなところも実にクール。
浴びれば生き延びられる一枚だ。


★OBITUARY『Ten Thousand Ways To Die』(RELAPSE RR7364)CD
計約55分13曲入り(そのうちメドレーの2曲は1トラック扱い)。
帯付き。


DARKTHRONE『Arctic Thunder』

DARKTHRONE『Arctic Thunder』


ノルウェー拠点に80年代の後半からコンスタントに活動し、
ブラック・メタルのイメージの強い“エクストリーム・メタル・デュオ”DARKTHRONEの約3年半ぶりの16作目。
エンジニアとミックスはノクターノ・カルト(vo、g、b)が行ない、
前作に引き続きジャック・コントロール(元WORLD BURNS TO DEATH、現BUTCHER)が
マスタリングを手がけている。
緻密な作りでありながら、
ゆるくてプリミティヴでヒリヒリした生々しい質感の仕上がりも最高の作品だ。


一般人でも開かれた意識であればその時々で多少やりたいことが違ってくるもので、
ミュージシャンだとそれがレコーディング・アルバムなどの作風に表れる。
DARKTHRONEは“ブラック・メタリック・ハードコア・パンク”の流行りを予見して嘲笑うかの如く、
2000年代に日本のバンドも含むハードコア・パンクからの影響の強い曲も多数放ったが、
変わったも変わってないもヘッタクレもない。
メタルもパンクも関係なくロックでいいじゃないか。
いつも書くように音楽も映画も文章もウワベのカタチではなく“行間”の意識に耳を傾けるものだから。


今回はブラック・メタルに“回帰”したとも言えるが、
ブラスト・ビートで突っ切るタイプではなく、
ずっとDARKTHRONEの中で発酵し続けている“ブラックの種”がじんわりと広がる曲が連なる。

ツー・ビートを挿入しつつスロー~ミディアム~アップ・テンポで推移しながらノリが良く、
またまたパンク・ロックとの接点が見えてくるほどフック十分の曲作りも冴えている。
パワー・メタルも含めてスラッシュ・メタル前夜の80年代の暗黒ヘヴィ・メタルに、
パンクの“ファック・ユー!”アティテュードの弾を撃ち込み、
ブラック・メタルの暗赤色の血で塗りたくったかのようなアルバムだ。
異形のメタルと畸形のパンクの混血にも聞こえる。
ブックレットで2ページ割いてビッシリ名前を挙げたサンクス・リストには
リー・ドリアンの名前もクレジットされているが、
彼がやってきているCATHEDRALWITH THE DEADとの接点も大いに感じられる。
裏ジャケットでフェンリッツ(ds他)はNAPALM DEATHのTシャツを着てキメてもいる。

シューゲイザーっぽいパートでも響きがやっぱり違って耽美にはなり得ぬ光が鈍く輝く。
嫌悪憎悪のヴォーカル、
殺伐としたギター、
味のあるトーンで重く抜けのいいビートを放つドラム、
そのどれもが個性的で、
響きに人間が表われるとあらためて思い知らされる。
深いところに届く重金属の響きはまさに記号化され得ないヘヴィなメタル。
愛と平和から遠く離れ、
アルバム・タイトルどおりの“極寒の雷鳴”サウンドは、
むろんメタルの肝の荘厳な邪悪な匂いムンムンである。

3曲は歌詞を載せずにブックレットにはイメージ画だけを載せているが、
すべて英語で歌われていると思われる。
何かの“念”を感じさせるヴォーカルが、
本作収録曲「Inbred Vermin」のタイトルである“生まれつき/近親交配の害虫”のニュアンスの世界観を歌い綴る。

ひとつひとつの音に吹き込んだ思いの強さがジャンル問わずそこいらのバンドと根本的に違う。
にもかかわらず緊張感と殺意に満ち満ちているというよりは
いい意味で余裕が感じられる作り。
それもまた根が“ロックンロール”であることの証しであり、
なにより映画のエンドロールみたいなアルバムのエンディングがまさに“ロックンロール”ではないか。
だからこそ気持ち良くてしょうがない貫禄の一枚だ。


★DARKTHRONE『Arctic Thunder』(PEACEVILLE CDVILEF568)CD
12ページのブックレット封入の約40分8曲入り。


SERPENTINE DOMINION『Serpentine Dominion』

SERPENTINE DOMINION『Serpentine Dominion』


KILLSWITCH ENGAGE
のリーダーのアダム・ デュトキエヴィッチが中心になった
米国の“新型エクストリーム・メタル・バンド”のデビュー作。

他のメンバーは、
CANNIBAL CORPSEのジョージ・コープスグラインダー・フィッシャー(vo)と、
BLACK DAHLIA MURDERのシャノン・ルーカス(ds)である。
アダムはこのアルバムでギター、ベース、ヴォーカル、プロデュース、録音、ミックスを担当。
歌詞はアダムとKILLSWITCH ENGAGEのジェシー・リーチが書き、
アートワークはKILLSWITCH ENGAGEのマイク・ダントニオが手掛けている。

以上のメンツから想像できる期待を裏切らない作品だ。

ジョージがリード・ヴォーカルだからというだけでなく
さりげなくジャズっぽい展開も含めてCANNIBAL CORPSEを思い出すデス・メタル・パート中心で、
ブラスト・ビート全開の猪突猛進パートや混沌のミディアム・テンポのパートで押す曲も含むが、
デス・メタルと言い切れないサウンドである。
メロディアスなインスト・ナンバーとアコースティックなインスト・ナンバーの2曲に加え、
曲によってはKILLSWITCH ENGAGEを思わせるメロディアスなサイド・ヴォーカルも入り、
叙情性もアクセントになっているのだ。
もちろん既存のメロディック・デス・メタルのスタイルとは一線を画す。
簡潔なギター・ソロで鮮血のメロディが噴き出し、
アダムの作曲ならではのフックがどの曲にも設けられていて暗雲の中から光も差し込んでいる。

音楽性はデス・メタル寄りでも歌詞はポリティカルなニュアンスが強い。
シリアをはじめとする中東、アフリカ北部、アフガニスタン~パキスタンなど、
世界中の紛争の現場をイメージする。
アルバム全体が哀切の念に貫かれていて悲嘆が簡潔に凝縮された聴き応え十分の一枚。


★SERPENTINE DOMINION『Serpentine Dominion』(METAL BLADE 3984-15490-2)CD
12ページのブックレット封入の約27分9曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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