なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

愛のために死す(AINOTAMENISHIS)『エクリシス(XLISIS)』

愛のために死す


2004年の結成以来、
どこかのシーンに収まることなく東京拠点に独自の展開を続けている4人組のロック・バンド、
愛のために死す(AINOTAMENISHIS)の新作。

OMやONNAのリリースでも知られる米国のHOLY MOUNTAIN Recordsから
2007年に出したLP『Live '418』でレコード・デビューし、
同年にPSF Recordsのシリーズ・オムニバスCD『『Tokyo Flashback 6』に参加している。
2010年にGYUUNE CASSETTEから出したCD『部屋と夢』に続くアルバムである。


僕の知る限りNIRVANA解釈の最もリアルな“生もの”の作品だ。
彼らは10年以上前にNIRVANAの「About A Girl」をレコーディングしたこともあるし、
ドラムも含めて『Bleach』前後のNIRVANAを思い出すが、
むろんいかにものグランジーなスタイルとは別モノ。
歌詞も含めてNIRVANAの中に、
曲によっては語りも入るフリーキーなヴォーカリゼイションも含めてINUが混在し、
曲によっては『Y』の頃のThe POP GROUPが息をしているみたいな佇まいである。
何しろフラストレイションと葛藤がそのままのたいへんデリケイトなサウンドなのだ。

さりげなくフックを設けた曲に緩急のパートが織り交ぜられ、
ところによってはシンセサイザーやスティール・ギターが彩りを添え、
まろやかなムードからソリッドなパンク、
研ぎ澄まされたシスコ・サウンド的なサイケデリックの感覚も息づく。
曲もさることながら音そのものが混沌としていて、
ギターの軋みからもヒリヒリピリピリしたリリシズムが滲み出している。
音と共振して張り裂ける思いを炸裂させつつ押し殺すようなヴォーカルは、
打ちひしがれた激情で膨張している。
町田町蔵(not 町田康)も思い出する文系センスの言葉も観念を突き抜けてリアルに迫る。

10年以上活動しているにもかかわらず気負いが失せずに“青い表現”のアルバムだ。
変わらないということは本気ということでもある。
どこか不揃いでゴツゴツしてしている。
GAUZEのセカンド・アルバムのタイトル『Equalizing Distort』じゃないが、
なんでもかんでも合理主義で人間らしい歪みやノイズですら均一化されている昨今、
とても人間を感じる一枚。


★愛のために死す『エクリシス』(RECONQUISTA RRCD-001)CD
丁寧な作りの六つ折りポスター・ジャケット仕様の約41分8曲入り。


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カニコーセン『ヤギアキコのおまんこふやけるまでシャブりたい』

カニコーセン


“播州スラッジフォーク”を標榜して
兵庫県加古川市を拠点に2010年から多彩かつ精力的なリアルDIY活動を続ける、
奇才男性のユニットのカニコーセンの5作目。
ベース演奏にゲストを招いている以外は、
作詞作曲歌演奏すべてのパフォーマンスを一人でやっている。
ギターの弾き語りが基本ながらバンドにも聞こえる手の込んだ作りで“生”の表現を繰り広げる。


70~80年代の“日本語フォーク/ロック”の2017年アップデート版みたいなアルバムだ。
シティ・ポップスやブルーハーツの替え歌みたいな曲もやってのける。
加藤和彦と北山修の「あの素晴しい愛をもう一度」をはじめとして色々な曲を引用&応用しているが、
そういったものもオマージュに聞こえる。

“播州スラッジフォーク”に偽りない曲もやっているが、
穏やかなトーンで進める曲が大半を占める。
ただ全曲ポップで取っつきやすいとはいえ、
毒やらなにやら盛っているスラッジーな歌オンリー。
歌詞の世界観がイメージできそうだから参考までに曲名を記しておく。

「カレーパン怖い」「お墓難民電話相談室」「ちんぽのロックンロール」「キスしたい」
「ヤギアキコのおまんこふやけるまでシャブりたい」「どこでもディスコ」
「ミルクマン・オブ・ヒューマン・サッドネス」「浜辺のくらし」「嫉妬のハナモゲラ」「じゃあね」
「サンデードライブ」「エンド・オブ・ザ・ワールド」「墓をください」

イギー・ポップギターウルフが言ってきているようにタイトルがまず大事だ。
そもそもアルバム・タイトルからして救いようがないほどクレイジーである。
ブックレットの画から察するに実在アナウンサーの人を指しているとも解釈できるが、
同名曲の歌詞だと彼女は一種のアイコンみたいな存在で、
その曲名のフレーズは本人の気持ちとは限らず呪文のような言葉らしい(セルフ・ライナー参照)。

とはいえ、これまで僕が聴いたカニコーセンの中でもトップクラスのオゲレツ度。
妻子持ちなのに大丈夫か?とちょっぴり心配もするが、
奥さんはこのアルバムの制作に協力しているから“公認”&黙認と思われる。
そんでもって家族のために働く男の悲哀の歌もきちっと歌っている。
けどなんだかんだでしあわせとも勝手に推測できる。
飄々と突き放した歌い口も奏功し、
しあわせ自慢に聴こえないのがいい。

とにかく緻密パラノイアな凝ったプロデュースが施されていて飽きさせない。
独り言一人芝居みたいなパートもあるし、
本来の意味での芸人の表現だ。
ぼやきも山ほど芸にしているが、
恨み情念ドロドロってやつじゃなく、
やっぱりポップに突き抜けている。
だからこそピリッと甘辛いスパイスの効いた歌が活き、
救われるアルバムだ。

アルバム・タイトルのエピソードとリンクする公衆便所ジャケットやブックレットの画は、
BLACK FLAGやMINUTEMENやOFF!でお馴染みのレイモンド・ペティボンを思い出す
(もっと近いのがDRIVE LIKE JEHUの『Yank Crime』のジャケット)。
そのへんのバンドを聴いているとは思えないが、
やはりスラッジーな心根が共振していると思わずにはいられない一枚。


★カニコーセン『ヤギアキコのおまんこふやけるまでシャブりたい』(No Label, No Number)CD
約44分13トラック入り。
ほぼすべての歌詞が載ってセルフ・ライナーを含む解説も載った24ページも紙ジャケットも、
手作り感が溢れて味のある丁寧な仕上がりだ。
裏ジャケット右隅の“500円也”というクレジットもうれしい。
https://www.kanikoosen.com/


燻裕理『よいこデイズ』

燻裕理『よいこデイズ』


70年代に頭脳警察や裸のラリーズなどでプレイしていた
兵庫県の姫路拠点のヒロシNarこと燻裕理(くんゆうり)による新作。

90年代に入ってニプリッツやポートカスで活動し、
2000年代の半ばからソロ・アルバムをガンガンどんどん出していき、
これが11作目だ。
近作同様に神戸のBLONDnewHALFのCOZがドラムを担当している以外は、
歌もギターもベースもキーボードも一人でやっている。


いい意味で相変わらずである。
CDを再生して1秒でぐにゃゅぅ~っとした燻裕理の脱力アシッドの香りに包まれ、
ポップな“真性”サイケデリック・ロックンロールに身も心もヤられる。
R&Bもブルースもヘヴィ・ロックもクラウト・ロックも祭囃子も、
くだけたまんま原型なく“躁”天然色で鳴っている。

ギターは変化球も消える魔球もなんでもござれでノーコンのようでストライクにバッチリだし、
ベースも脱臼しているようでリズムがしっかりしているし、
キーボードがなかなか活躍している。

あくまでも悠々自適。
せっかちなのか早く歌いたいのか歌に入るまでの“手続き”が面倒くさいのか曲のイントロが短く、
曲自体も短めで唐突に終わる。

演奏も何もかも、ちょい千鳥足。
だが元気である。
今年の12月に65歳になるのも恐るべしな今回の歌は、
アルバム・タイトルどおりに燻裕理が“よいこだった時代”を綴ったものと勝手に解釈できる。

いつになくオゲレツな言葉やエッチネタで“責めて”くる。
といっても無邪気な小学生がおもしろがって「うんこうんこ」と連発するレベルで、
放送禁止用語や淫行条例には<ほとんど>引っかかってないのも天真爛漫小学生レベルで、
セックスってことを知ったばかりの早熟やんちゃ小学生レベルなのも楽しい。

意味不明のお茶目な言葉が混ぜこぜなのも燻裕理流。
“キンタマ”を連発しながら「ロマンスを君に」という素敵なラヴソングに仕立てるのも燻裕理流。
森進一も山下たつろうも歌い込み、
小学一年生の男の子から中学一年生の女の子までになりきってもいる。

愛嬌たんまりで調子っぱずれ紙一重のヴォーカルはフリークアウトした小学生みたいだし、
よっぱらいのオッサンが子供時代に戻って妄想を歌っているようでもある。
どんな曲でもヴォーカルのトーンがほとんど変わらないのはルー・リードモリッシーと一緒だ。

B型射手座という根っからの自由人で怖いもの無し。
あっぱれな一枚。


★燻裕理『よいこデイズ』(Gyuune Cassette CD95-70)CD
約35分16曲入り。
漢字をよく知っている中学生が書いたみたいな書体で読みやく歌詞が載った8ページのブックレットも
チャーミングだ。


片山広明×藤掛正隆『INSIDE or OUTSIDE』

片山広明×藤掛正隆『INSIDE or OUTSIDE』


渋さ知らズ周辺の活動でも知られる同士の
片山広明(テナー・サックス)と藤掛正隆(ドラムス、エレクトロニクス)が、
今年7月に横浜のストーミー・マンデーで行なったライヴのCD。
藤掛がエディットして約37分6曲にまとめられている。


歌いまくるサックスがまず圧巻だ。
ジョン・コルトレーンやアルバート・アイラー、
さらにオーネット・コールマンが思い浮かびもするが、
豪放磊落な野武士の佇まい。
ぶっきらぼうにジャズを突き抜ける陽気なブルースの如き野太い持続音に身震いがする。
のんびり始まり、
飄々と、
優雅に、
悠然と、
ゆるまず、
何が起ころうが動じず、
じっくりと自在に気持ちよく歌い上げる。
勢い余って声が聞こえてくる瞬間にも息を呑む。
それでいてまろやかで艶っぽいのだからたまらない。

ドラムはいかにものジャズのリズムは叩かない。
新種のダンス・ミュージックみたいなリズムも繰り出しながら、
バンカラゆえにジャズに成り切れないのがたのもしいドラムがサックスにロックを焚きつける。
片山の音にひるまず、
藤掛はエレクトロニクスも発しつつ腕っぷしの強い原始ビートでジャブを繰り返し、
時にアッパーカットを食らわす。

名義どおりに、足し算ではなく掛け算の演奏である。
どっちも豪胆。
ある時は土足で闊歩し、
またある時は下駄履きで踏み込んでくる。
タメにタメて、
しまいには加速する。

パンク・ジャズとか呼ばれる類いのエキセントリックなことはやってない。
言い訳無用の音だ。
どんなジャンルにも言えるように、
あくまでもストロング・スタイルのアウトサイダーを貫くがゆえに、
オベンキョーして頭でこしらえた優等生の様式美とは百万光年かけ離れている。
あくまでも肉体派の汗が音から滲んでいる。
本物にジャズもパンクもヘッタクレもない。

はらわたから放射される音は、
はらわたを震わせる。
はらわたを揺さぶる。

そして歌心の大切さをあらためて知る。

熱を帯びてゴツゴツした“生”の音の感触の仕上がりもグレイト。


★片山広明×藤掛正隆『INSIDE or OUTSIDE』(FULL DESIGN FDR-2031)CD
薄手のプラケース使用。


擾乱主(ジョーランズ/Jorans)『永遠なる木霊』

擾乱主 Jorans


福井県拠点の皇帝魚(vo、g)が石塚俊明(ds、per/頭脳警察ほか)と出会い、
2012年に結成したバンドのファースト・フル・アルバム。

このCDには川崎淳一(b、noise)を加えた3人がメンバーとしてクレジットされている。
さらに石間秀機(FLOWER TRAVELLIN' BAND)が5曲目と7曲目と9曲目で独自楽器のsitarlaを弾き、
最後の曲では
石塚もメンバーのギャーテーズの橋本雅敏が詩、
Massadogss (Last call)がインディアン・ドラム、
Hoshikoがコーラスで参加している。

FLOWER TRAVELLIN' BANDっぽいのリリカルなインストも含むが、
日本語で歌う繊細なヴォーカルが前面に出つつバンドならではのダイナミズムも大切にした仕上がりだ。
前に出すぎずに歌を立てつつも即“Toshiの音!”とわかる自己主張のビートでしっかり“歌う”、
石塚のドラム・プレイも寡黙にして雄弁である。

1968~1969年あたりのPINK FLOYDの抒情性に覆われつつ和の情念も滲む曲あり、
70年代の日本のフォークを思い出すセンチメンタリズムの曲あり、
ジャズのビート感の曲あり、
疾走躍動する曲あり、
和製サイケな音と朗読で進める曲あり。
曲によっては、
ボブ・ディランとニール・ヤングのリズムが混ざったような歌い方で艶やかなギター・ソロが光り、
ちょいファンキーで“吉田拓郎 meets 友川カズキ”みたいな佇まいの歌も聴かせる。

「BLUE」「楢山節考」「天国の扉」「ムスカリ」「光に照らされた快楽」「黒い海」「2107」「Noise」「Eternal Echo」という曲名からもイメージが広がってゆく。
石塚が手がけたジャケットやCD盤面のアートワークがぴったりの異形の桃源郷みたいな一枚。


★擾乱主(ジョーランズ)『永遠なる木霊』(NUDE VAMP NVR-004)CD
約38分9曲入り。
https://www.facebook.com/%E6%93%BE%E4%B9%B1-Jo-Ran-%E6%93%BE%E4%B9%B1%E4%B8%BB-Jorans-214570071986117/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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