なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

INCAPACITANTS『Survival of the Laziest』

INCAPACITANTS『Survival of the Laziest』


非常階段のメンバーでもあるT.ミカワが80年代初頭に始め、
非常階段の元・準メンバーで多彩な展開しているF.コサカイと活動している、
“ノイズ・デュオ”のニュー・アルバム。
彼らが数々の代表作をリリースしてきたALCHEMY Recordsからの10年ぶりの新作でもあり、
まさに満を持した快哉痛快盤である。

二人の温厚な佇まいからは想像がつかない突き抜けた殺戮の調べがいきなり心臓を直撃する。

パッケージ裏には担当パートとして二人とも“エレクトロニクス、ノイズ”とクレジットされている。
ただジャケットの内側にはエレクトリック・ギターを振り回すコサカイの写真もあり、
実際エレクトリック・ギターの極北の音のようでもあり、
ヒトの声らしき音声も聞こえてくる(幻聴か?)。

猛烈な勢いで渦とクダを巻く二人のノイズの絡み合いはインプロヴィゼイションだろうが、
フリー・ジャズが好きな方もイケるのではないだろうか。
サウンドの分離のいい音の仕上がりだから、
ノイズがどう鳴ってどう湧き出ていてどう搾り出されているかも目に映るほど痛いほどよくわかる。
全身ノイズの絡み合いが半端ない。
ノイズ以前に高周波高音波超高濃度のエレクトロニック・ミュージックでもある。

マグマの如き灼熱こってりノイズが、うねる、うなる、沸騰する。
ドライになんてなりようがない泥酔ノイズである。
どぶろくの熱燗みたいに気合ムンムン。
氷結したウォッカみたいに冷気キンキン。
二人ともインテリとして一部で知られているが、
むろん頭デッカチとは百万光年対極のノイズである。
存在自体がノイズになって無意識のうちにエンタテイナーと化す彼らのライヴと同じく、
汗が飛び散る肉体派ノイズでエナジーほとばしる。
本作のエピローグでしっかり確認できるように、
INCAPACITANTSのライヴでモッシュが巻き起こるのも当然だとこのCDを浴びてもわかる。

アルバム・タイトル(ちなみに今回の“邦題”は懶者生存)でも毎度クスッと笑わせてくれるが、
トローンもヘッタクレもないデリケイト・ノイズの放射連射はゲラゲラ笑っちゃうほど豪傑である。
ほんとうにエクストリームなものほどめまいがするほど美しいこともあらためて知る。
人知れずメロディも漏れてくる。

gooの辞書によると“incapacitant”とは、
“無能力化剤:一時的な眠け, めまい,麻痺まひなどを誘発し,人を活動不能にする薬剤毒ガス,催涙ガス”
を意味するという。
言い得て妙ではないか。

INCAPACITANTSに妥協はない。
あくまでもストロング・スタイル。
INCAPACITANTSに進歩もない
94年リリースのCDのタイトルで表明したようにまさしく“no progress”。
だからこそ歳を重ねるごとに激烈になっている。
やはり、恐るべし。


★インキャパシタンツ『Survival of the Laziest』(ALCHEMY ARCD-256)CD
昨年6月の東京BUSHBASHにおける約33分のライヴ・テイク1曲を含む約76分4曲入り。
ジャケット現物の色合は↑の画像よりも濃いです。


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阿部怪異『阿部怪異』

阿部怪異


非常階段JOJO広重やT.美川(INCAPACITANTS)も参加して80年代初頭に活動していたユニット、
阿部怪異(ABEKAII)の唯一の単独作であるカセット・アルバムのCDリイシュー。
そのカセットのA面とB面がCDの一トラックにすべて収められているが、
一つのトラックに数曲分収められているようにも聞こえる2トラック入りだ。
ちなみにカセット・テープでのオリジナル版のリリース元は、
灰野敬二やタコ(TACO)のファーストも出したPINAKOTHECA Recordsである。

各々のセッションによって5~6人が参加していたようで、
ドラム、ギター、キーボード、ベース、シンセサイザー、サックスなどを使い、
ほぼインストのフリー・ミュージックといった趣。
とはいえパワフルなドラムが鍵を握っている演奏だからけっこうノりやすく、
ロックである。

フリー・ジャズ、ポスト・パンク、ミッド・テンポの宇宙音楽、純プログレ、
ショート・カット・パートの繰り返しなどなどで構成され、
ちょいポップ、でもフリーキー、ところによってファンキー。
不失者、THIS HEAT、CONTORTIONSを思い出す瞬間もある。
もちろんエエかっこしいみたいなのじゃないしサブカル臭もなく、
パンク・ロックから逸脱していた初期関西パンクの流れをしっかりくんでいるやんちゃな演奏で、
RAMONESのディー・ディー・ラモーンばりの“カウント”もところによっては聞こえてくる。

セリフなどが入っているわけではなく音楽オンリーだが、
何が飛び出してくるかわからない“ドラマ仕立て”の流れ。
ユニット名を時代劇『子連れ狼』の登場人物から引用したことに納得の珍妙な緊迫感に包まれた怪盤、
いや快盤である。


★阿部怪異『阿部怪異』(ALCHEMY ARCD-257)CD
ユニット名の名付け親でもある美川のライナー付の約47分2曲入り。


20 GUILDERS『2』

20 GUILDERS『2』


近年はACID MOTHER TEMPLEやGREEN FLAMESで世界的に多彩な活動を展開し続けているタバタミツル
みみのことのフロントマンでもあるスズキジュンゾによる、
“20ギルダーズ”が結成10年目に放った約5年ぶりのスタジオ録音セカンド・フル・アルバム。

タバタは80年代から、
のいずんずり、BOREDOMS、LENINGRAD BLUES MACHINE、ZENI GEVAでキャリアを重ね、
スズキはソロでも多作しているミュージシャンだ。
タバタは、ヴォーカル、エレクトリック・ギター、アコースティック6弦・12弦ギター、ベース、
コーラス、シンセサイザー、オルガン・マシーン、
スズキは、ヴォーカル、アコースティック6弦・12弦ギター、エレクトリック・ギター、コーラス、
シュルティ・ボックス、ベース、ハーモニカなどを担当。
高橋幾郎(元HIGH RISE、光束夜、MAHER SHALAL HASH BAZ、Che-SHIZU、不失者/
現・血と雫)が全9曲中6曲でドラムを叩き、
リチャード・ホーナーがエンジニアを務めている。

曲ごとにリード・ヴォーカルをシェアし合う体制で
陽性の侘び寂びが滲む“日本語エレクトリック・アシッド・フォーク・ロック”が繰り出される。
お茶目でストレンジなポップ・アレンジも施されている中で、
さりげなく筋金入りの真正ナチュラル・サイケデリック・チューンの連続に酔わされるばかりだ。
LED ZEPPELINのサードに入っていても不思議はないリリカルな曲や、
“エレクトリック・ニール・ヤング”のような9分近くに及ぶ曲にも痺れる。

歌ものと言えるだろうが、
必ずしもヴォーカルが前に出てきているわけではない。
楽器もたっぷり歌っており、
ヴォーカルと音とのハーモニーを楽しめるミックスにもなっている。

もちろん声は生だ。
なんらポーズつけぬデリケイトきわまりない歌声も心に響く。
初々しいタバタのヴォーカルは、
90年代前半に活動していた伝説のバンド“ハカイダーズ”時代も思い出す繊細歌唱だ。
晴れやかに苦み走ったスズキの歌唱も渋くてたまらない。
曲によっては60年代後半から70年代前半の軽やかな日本のフォーク・ミュージックも思わせるほど
人なつこいが、
“バターになった三匹の虎”を歌う「焚曲」をはじめとして、
“業”を感じさせる歌詞は底無し沼の諦観と達観の境地に達している。

深い、深い、歌心がゆっくりところがる。
オススメ。


★20 GUILDERS『2』(gyuune cassette CD95-67)CD
8ページのブックレット封入の約47分9曲入り。


ホアチョ×藤掛正隆(Whacho×Fujikake)『2.6METS』

FDR2027j.jpg


ホアチョ(KILLING TIME、ウズマキマズウ、スプラトゥトラプス他)と
藤掛正隆(元ZENI GEVA~#9、現・渋さ知らズ他)による打楽器中心のCD。
横浜ストーミーマンデーにおける2014年4月のライヴ音源を
藤掛が編集とミックスを行なって仕上げた約70分7曲入りの作品である。

ホアチョはパーカッション、ULTサウンド、ウェイヴ・ドラム、toycussion、エレクトロニクス、
藤掛はドラム、リズム・ボックス、エレクトロニクスで音を鳴らす。
藤掛が力強いドラムで足腰を担い、
ホアチョが遊び心を転がしていくパートが多いとはいえ、
相性バッチリの二人だけにはっきりした役割分担がないような演奏だ。

反復リズムを基本にプリミティヴな音がポップに踊り躍り、
諧謔精神も滲み出ているが
人を食ったような滑稽演奏もひっくるめて全部もちろん真剣プレイ。
頭デッカチじゃなくパワフルな肉体演奏である。
ジャングルと宇宙と海中を行きかうようで、
ところによっては四つ打ちも挿入され、
ところによってはベーシストが参加していると錯覚するダブっぽいグルーヴ感も内包し、
ところによっては声みたいな音声も聞こえてくる。

インプロヴィゼイションというより“曲”だし、
エレクトロニクスによるものと思しき哀愁メロディなどいわゆる音階も感じられるから親しみやすい。
様々な“ビート”の彩り豊かな音色や弾力感もしっかり収めた仕上がりも特筆したいCD。


★ホアチョ×藤掛正隆『2.6METS』(FULL DESIGN FDR-2027)CD
本作の雰囲気がよく表われているホアチョ撮影の写真のジャケットが封入された薄手のプラケース仕様。
二人それぞれとユニット等をやってきているホッピー神山のライナー付。


RYO FUJITA『HITO.RI.GOTO』

藤田亮


柳川芳命などの様々なミュージシャンと共演する一方で須原敬三らとバンド活動も行ない、
大阪拠点に多彩な活動を繰り広げている1976年生まれの藤田亮の新作。
いわゆる他の打楽器類も使っているように聞こえるが、
オーヴァーダビング無しのドラム独演一発録りと思しき約22分1トラック入りだ。


藤田がインスパイアされたバンドCHAOS UKの83年のファースト・アルバムを思い出すジャケットだが
(ちなみに裏面[↓の画像]はINUの『メシ喰うな!』)、
パロディというよりオマージュの気持ちが感じられる。
音の方はノイズ・コアではなく、
あえて轟音と正反対の、ちいさな、ちいさな音で勝負したかのようで、
ジャケットの4つの黒い四角形を手描きしたことに象徴されるように、
音も手作りの佇まいだ。

祭太鼓みたいなリズムやマーチング・ドラムのリズムも息をしていて、
いわゆるロックのリズムとは一線を画す。
かといってジャズでもなく、
いかにも民俗音楽とも違う。
原始のリズムであり、
太古(ancient)からのリズムにも聞こえるが、
すべては藤田自身の律動である。

実際は使っているのだが、
バス・ドラム(キック)の音はほとんど聞こえてこないほどの打ち方だ。
スネアの音は転がり、
ところによってはスティックを使わずに手で叩いているようでもある。
たいへんデリケイトにシンバルを多用しているところも特色で、
個人的には様々なジャンル含めて最近の作品ではあまり聴いたことがないほど高音域が際立つ。

静寂を司り、
贅を削ぎ落とし殺ぎ落とし、
研ぎ澄まされている。
精気が静かに息づく覚醒の調べに、
霊魂(soul/spirit)を呼び起こすような意志と意思が宿る。
祈祷の音楽といっても過言ではない。

灰野敬二のパーカッション・ソロ・パフォーマンスも思い出す。
ただし藤田はドラム・セットを使っていると思われ、
いわゆるロック・バンドのドラム・ソロのダイナミズムも内包しているのが嬉しい。

マイクの立て方などの録音方法やマスタリングなどにも気を配ったと思しき、
音の定位が見えてくる立体感抜群のレコーディングの仕上がりも特筆したい。
ドラムを打っている腕の動きも見えてくるほどだ。
だからこそヴォリュームによって聞こえ方が違い、
ヴォリュームを下げてもドラム・セットの各部分の響きがしっかり聞こえてくるが、
それでもなお“プレイ・ラウド!”とも言いたくなる。

確かな個性が光る一枚。

藤田亮 ジャケット裏

★RYO FUJITA『HITO.RI.GOTO』(No Label, No Number)CD-R
薄手のプラケース仕様ながら厚手の紙のしっかりした作りのジャケット封入。
https://www.facebook.com/rfujita3


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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