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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

THE GEROGERIGEGEGE『SENZURI CHAMPION REVISED』

GEROGERIGEGEGE ゲロゲリゲゲゲ


奇才・山ノ内純太郎が1985年からやっている東京拠点のプロジェクト、
GEROGERIGEGEGEが1987年に出したファースト・アルバムの改訂版。
昨年12月に自主レーベルからリリースしたCDである。
ジャケット・デザインは『Senzuri Champion』のオリジナル盤のLPとほぼ同じで、
多少ダブっている曲名もクレジットされているが、
そのレコードと同時期の85/87年録音の6トラック入りながら中身は別テイクも込みで別物だ。


THROBBING GRISTLEのアルバム・タイトル『Second Annual Report』になぞらえた
特異な言語感覚が冴えわたる曲名の1トラック目の「SEMZURI AN[NU]AL REPORT」から、
予備知識のない方は度肝を抜かれること必至である。
大ざっぱにアルバム6トラックの構成を書くと、
自慰の最中がイメージできるやさしくデリケイトな気持ち良さげの声が中心の短めのトラックと
ハードなサウンドの長尺トラックが交互に出てくる。
その極端な落差がポイントの一つで、
日々の営みとはそういうものだとあらためて思わされる流れだ。
“行為”の生録とその男の心象風景を描いたかのようでもあり、
GEROGERIGEGEGEが大切にしているドキュメンタリー感も滲み出ている。

未発表テイクの「LIVE AT TOKYO GAY CENTER」がイントロの約22分半の2トラック目は、
大半がストロング・スタイルのハーシュ・ノイズの嵐。
曲名に偽り無しの「VIOLENCE ONANIE」そのもので、
満たされぬ思いが炸裂加速し続けるクラスター爆弾の如き阿鼻叫喚ノイズの放射だ。
ノイズ(・ミュージック)やインプロヴィゼイションに対して「オナニー」と馬鹿にする人もいるが、
気合の入ったグレイトなオナニーは人の心を打つことをあらためて知らしめる。

スペインからの絶妙の“ハァハァ声”の3トラック目に続いて4トラック目は15分強の激烈モノ。
ディープなヘヴィ・アンビエントチューンがをオープニングで、
まもなくライヴ録音のフリー・フォームの反復ノイズ・ハードコア・パンクに突入して
絶叫混じりのヴォイスもインプロヴァイズし、
当時親しかった日本のハードコア・パンク・バンドのLSDのカヴァーも終盤に披露している。

フランスからの絶妙の“ハァハァ声”の5トラック目に続き、
ラストはアルバム・タイトル曲の“DEATH BALEARIC MIX”が9分強。
これまた研ぎ澄まされて厳かな重厚深海ドローン・ノイズで、
“センズリチャンピオン”に成った後の空漠感と罪悪感と幸福感がどこまでも広がっていき、
締めはもちろんアレである。


このアルバムのオリジナル盤がリリースされた頃と違い、
イカれた音声もインターネットでかなり採集できる世の中になったからこそ、
編集や音声の響きへの気遣いをはじめとして緻密な仕上がりだ。
ただ生音をくっつけただけのモノとは一線を画し、
山ノ内が2年かけてミックスやエディット等を行ない、
中村宗一郎がリマスタリングを行なっている。

だが言うまでもなく頭デッカチとは真逆。
“念”が貫くリアルな意味でトータル・パンク・アルバムだ。


★ゲロゲリゲゲゲ『センズリチャンピオン―改訂版―』(VIS A VIS AUDIO ARTS VAVAA90)CD
曲解説(英訳あり)付きの約52分6トラック入り。


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佐藤幸雄とわたしたち『わたしたち²(ワタシタチノジジョウ)』

佐藤幸雄とわたしたち/わたしたち2



PUNGO、すきすきスウィッチ、絶望の友などで活動してきた佐藤幸雄(vo、g)のユニット、
佐藤幸雄とわたしたちが11ヶ月のインターバルで出したセカンド・アルバム。
昨年8月の東京のロフト・ヘヴンにおけるライヴ・レコーディングで、
佐藤の他のメンバーは前作に引き続き、
POP鈴木(ドラムス、コーラス)と柴草玲(ピアノ、コーラス)である。


緩急織り交ぜて研ぎ澄まされた日本語ロックで、
さりげなく熱くあたたかいヴォーカルは一度耳にしたら一生忘れない。
トーキング・スタイルの曲も含めて
ちょっぴり前のめりの歌い方に気合と気負いが生々しく表われ、
その慣性の力でぐいぐいじっくり押してゆく。

もっと朗々とした歌い方だし声質も違うが、
スロー・ナンバーから疾走チューンまで
後期VELVET UNDERGROUNDから80年代までのルー・リードの様々な曲を思い出す。
とはいえスカで転がる曲あり、
TRIPSと組む前の80年代前半のKENZIのバラードが頭をよぎる曲もありだし、
柴草の声と思しき女性ヴォーカルが大半を歌うアップ・テンポの曲はちょいサーフ風味。
いい意味でバック・バンドに徹してないドラムとピアノの音も自由に曲を刺激しながら歌を盛り立て、
フリー・フォームな演奏パートでも音はけっこうポップだが、
リフレインで進めながら高まってゆくドラマチックなラスト・ナンバーは圧巻だ。

切ない肯定感にゆっくりと包容されていゆく。
「きっとうまくゆく」「いるばあい/いないばあい」「説明」「かわってゆくひと」
「キャッチフレーズ」「ぼくのたち」「てとてとて」「天国」「種と水」「かくもの/かかれるもの」
といった曲名からも歌の空気感が醸し出されてくる。

歌詞とその英訳が読みやすく載った8ページのブックレットを開くとまた発見がある。
小学校の国語の教科書みたいにひらがな表記が目立つのも納得のやさしい歌詞は
わかりやすいからこそ深く色々と解釈でき、
と同時に英訳で歌詞の謎が解けたりもするのがまた面白い一枚。


★佐藤幸雄とわたしたち『わたしたち²(ワタシタチノジジョウ)』(アルケミー ARCD-264)CD
約41分10曲入り。



川島誠(makoto kawashima)『you also here』

川島誠


1981年に埼玉県で生まれて2008年にアルト・サックスを始めた音楽家、
川島誠の独演による計約54分のCD。
川島の思い入れの強いステージとスタジオでの個人練習の計4トラックが収録されている。


1トラック目は2016年12月13日の26分のライヴ。
東京・明大前駅そばのキッド・アイラック・アート・ホールの閉館直前に行なった演奏で、
実質的に50年以上アンダーグラウンドの“基地”だった場が無くなるのを悼むようにも聞こえる。
東京・明大前駅そばのアンダーグラウンドのもうひとつの“基地”といえば、
もともとフライヤーがベタベタ貼られた階段の2階だったレコード店のモダ~ンミュージックである。
店長の生悦住英夫はインディペンデント・レーベルのPSF Recordsを主宰し、
2014年3月にモダ~ンミュージックの店舗がなくなってからもリリースを続け、
川島の2015年のアルバム『Homo sacer』がPSFの最終作になった。

その生悦住が病気で他界する2ヶ月ほど前の演奏ということを思えば、
さらに無限の想いが湧き上がってくる。
東京・明大前駅そばのアンダーグラウンドの積年の念を吸い込んで川島が血と肉にし、
26分に凝縮して解き放ったかのようでもある。
空間いっぱいに広がる悠久の調べに痺れ、艶やかな音色にとろける。
たいへんおくゆかしく紡ぎ出しながら大胆に鳴る強靭な響き。
身を切るような魂の震え。
それでいて日本の歌謡や童謡、唱歌のような旋律も滲み、
インプロヴィゼイションと呼ぶには“歌”があふれている。
まさに侘びと寂びの哀歌だ。


2トラック目は
ニューヨークのダウンタウン・ミュージック・ギャラリーでの13分強のライヴ。
こちらは目の前で演奏されているような音で、
殴り込みじゃないがケンカをふっかけるような切っ先の鋭いブロウも飛び出し、
何度もカマしてくる。
アタック感が強くてパンチの効いた音での攻めのパフォーマンスながら、
むろん時に演歌にも通じる骨太の歌心が吹きすさび炸裂。
いい意味で“濁り”も解き放つかのような演奏であり、
アートというより土臭く泥臭く男臭く、
デリケイトにすすりなく音もまた川島らしい。

3トラック目は埼玉・川越のi.M.Oスタジオでの約2分のプレイ。
インタールードみたいにすばしっこく駆け抜ける。

そして10分強のラスト・トラックは埼玉・飯能アミーゴでの演奏。
文章を書く手を止めて聴き入ってしまう伸びやかな“歌”は、
キャッチーとは言わないまでもフック十分で心に残る。
もちろんシリアスなストロング・スタイルだが、
研ぎ澄ましながらチンドンのような庶民メロディで街中をうねりながら歩くイメージが浮かび、
川島の中に秘められたオチャメで快活な一面がよく表れたているテイクだ。

オススメ。


★川島誠(makoto kawashima)『you also here』(Homosacer HMSD-004)CD
紐綴じ用の留め具が付いた味のある厚手の黒紙封筒パッケージ仕様。
http://kanpanelra.wixsite.com/homosacerrecords


INCAPACITANTS『Zouvneree』

INCAPACITANTS『Zouvneree』


非常階段に加入する前のT. 美川が80年代初頭に始め、
長らく非常階段の準メンバーだったF.小堺とマイ・ペースかつコンスタントな活動を続ける、
東京拠点のノイズ・ユニットの重鎮INCAPACITANTSによる約1年半ぶりの新作。

INCAPACITANTSならではのストロング・スタイルをキープしつつ、
エレクトロニクスとヴォイスだけを操って作られたとは思えないほど
めくるめく鮮烈のノイズ・ワールドを展開している進取の4曲入りだ。


まず1曲目の「Electronic Music Incapacitated」は、
タイトルどおりのノイズで血塗られたエレクトロニック・ミュージックである。
ホラー映画のモンスター/クリーチャーの会話や動きみたいな音で
SFっぽい空気感を醸し出しつつ、
サイケデリックな感覚でめまいがしてくるほど生々しい。
ベテランの彼らだけに以前もこういうアプローチをしたこともあるかもしれないが、
僕にとっては“新境地”。
手練と呼ぶにふさわしい“演奏”で11分あまりインプロヴァイズしていく曲だ。

2曲目のDevelopment Hell in a Cell」は、
嵐の前の静けさからこれまたSFちっくな音が断続的に生まれては消えていくうちに、
荒涼とした空間がどこまでも走っていくような金属音の静かなる放射へと連なる。
ノイズを超越した研ぎ澄まされた美の響きの中からギター・ソロみたいな音も聴こえてきて、
15分以上にわたって厳粛ですらある“演奏”を繰り広げる。

11分強の3曲目の「Ear Health by Stealth」は曲名どおりの佇まいで、
どっしり揺るがぬ工業地帯ノイズ・ドローンの電磁波のような鳴りの持続により
確かな“耳の健康”を約束する。

そしてラストの「We Are the Bushbashwhackers!!!」は、
泣く子も黙る“INCAPACITANTS節”全開のノイズ波状攻撃である。
トランペットのソロ演奏みたいな音などなどの無数の音や
百万光年もの遠くからの声が漏れ聴こえててくるのは、
INCAPACITANTSの濃厚ノイズが導き出した幻聴だろうか。
緻密な音の絡み交わりはまさにアマルガムであり、
溶鉱炉の中に放り込まれたような快楽にむせかえる。
爆音で鳴らさなくても神経に効いてきて鼓膜の危機も感じる。
エクスタシーに達する寸前の33分を過ぎたあたりでノイズを絶やす“つれなさ”も、
耳に対するINCAPACITANTSならではの“やさしさ"に他ならない。


EMERSON, LAKE & PALMERの73年のアルバム『Brain Salad Surgery』の邦題である、
『恐怖の頭脳改革』というフレーズそのものの強力盤だ。


★インキャパシタンツ『ズヴネリー』(ALCHEMY ARCD-263)CD
約71分4曲入り。


堅いトリオ『堅 KEN』

堅いトリオ


片山広明(渋さ知らズ他~テナー・サックス)、
関島岳郎(ストラーダ、栗コーダーカルテット他~チューバ)、
藤掛正隆(元ZENI GEVA~#9他~ドラムス、エレクトロニクス)
による新バンドのデビュー作。

バンド名の英語表記を“UNWAVERING THREE”としているように、
一つのバンドに縛られない“揺るぎ無き三人”ならではの地に足の着いた堅いプレイが楽しめる。
リリース元のサイトによれば即興とのことだが、
あらかじめ作曲されてしっかりアレンジした曲を演奏しているようにも聞こえるほど
しっかり構成の行き届いた流れである。

テナー・サックスがメロディをリードしているように聞こえるパートが多いというのもあって
ジャズの色が強めながら、
ヴァラエティに富む構成。
鍵を握っているのはチューバだ。
疾走するテナー・サックスを横目にリズム楽器のような音も刻み、
まったりのっそり朴訥としたユーモラスな音を悠々自適に鳴らし、
ディジェリドゥのような感じで反復もし、
しっかりスウィングもしている。
ドラムは両者の間に経つビートをおくゆかしく打ち、
ファンキーなテイストを加味しつつハーモニーが生まれている。

「堅」「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」というタイトルも意味深長で、
静かな歌心が滲み出ている音にピッタリのアルバムだ。


★堅いトリオ『堅 KEN』(フルデザイン FDR-2034)CD
薄手のプラケース仕様の約55分9曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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