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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

坂田明×坪口昌恭×早川岳晴×藤掛正隆『坂田明×トリプルエッジ』

坂田明×トリプルエッジ


坂田(アルト・サックス、クラリネット、ヴォイス)、
坪口昌恭(ピアノ、シンセサイザー)、
早川岳晴(ベース)、
藤掛正隆(ドラムス)
が2017年の8月に東京・阿佐ヶ谷のイエロー・ヴィジョンで行なったプレイを収録。
約50分5曲入りのCDである。


インプロヴィゼイションらしいが、
その場でいわゆる曲として練り上げていったかのようで、
平均時間が約10分とやや長めながら個々のトラックも構成が行き届いた作りだ。

1曲目はサックスがメロディをリードしてミニマルなピアノが静かに追走する
軽妙で品のあるまさにジャズ!で始まるが、
ドカドカうるさいバンカラなドラムとよく動くベースがジャズに留めず、
フリーキーなジャズ・ヴォーカルで坂田が応戦するエキサイティングなナンバーだ。
ジャズに敬意を表しつつ気取ったジャズはアッカンベェ~みたいなノリが楽しい。

この4人が一緒にやってジャズに収まるわけがない。
ヘヴィなベースが導く2曲目のオープニングはドゥーム・ロックが迷宮入りしたみたいだが、
KING CRIMSONちっくな緊迫プレイに転換する中でサックスが甲高い音で滑走。
楽曲としてはエキセントリックなようでどのパートも歌心バッチリだ。

3曲目は、うなり声から始まる“坂田節”全開のアブナイ即興歌唱が核。
ゆとり”と一味違う柄の悪い原始プレイで新種のクラウト・ロックみたいになっている。
4曲目はドラムとベースがファンキー&ダイナミックで、
シンセサイザーがポップに飛んだかと思えばピアノが優雅に走り、
サックスが熱くて景気がイイ。
ラストは楽器をほっぼり出したような坂田が傍若無人に不気味な声を飛ばしつづける中、
他の3人がダイナミックかつデリケイトなジャズ演奏で迎え撃つみたいなパフォーマンスだ。


立体感十分のレコーディング仕上げも申し分なしの一枚。


★坂田明×坪口昌恭×早川岳晴×藤掛正隆『坂田明×トリプルエッジ』(FULLDESIGN FDR-1040)CD
薄手のプラケース仕様。


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マリア観音『東夷偽史先住民拙言滅裂多仁』

マリア観音ジャケ


30年以上活動を続ける東京拠点のマリア観音の新録CD。
木幡東介(vo、トランペット、銅鑼ほか)が核で、
平野勇(ds、コーラス)、伊藤明子(b、コーラス)、a_kira(g、kbd、コーラス)という、
バンド活動再開後の現在のメンバーでレコーディングした初のスタジオ録音作品の約61分6曲入りだ。
アルバム・タイトルの『東夷偽史先住民拙言滅裂多仁』は
“とういぎしせんじゅうみんせつげんめつれつおおしじん”と読む。


これまでも行なわれてきた既発表曲のリメイク作品ながら、
やはり久々のバンド・レコーディング・アルバムという点がポイントだ。
1994年の『義眼』、
1999年の『開き盲目』、
1994年の『懺悔の風呂場』(そのジャケットが本作のCD盤面のデザインの元)、
2001年の『木幡東介 独演独奏』、
1995年の代表作『犬死に』などで発表されてきた曲の、
「義眼」「絶滅」「静かな夜」「冬の蝶」「漆黒界」「刺生活」に新たな息が吹き込まれている。

そういった曲名とアルバム・タイトルのイメージを裏切らない濃厚な言葉が躍り踊る歌詞だが、
理屈抜きにサウンドだけでまず虜にする。
長めの曲が大半を占めているとはいえ、
歌メロはキャッチーと言えるほどフック十分の日本語ロックだ。
音圧に頼らないサウンドの仕上がりで、
アクが強い歌い方だけにあえてそうしたのか必ずしもヴォーカルが前面に出てなくて、
楽器とのバランスのいいハーモニーが楽しめる出来。
大仰な曲展開でありながら
日本語の歌メロが印象に残ってポピュラリティがたんまりなのだ。

とはいえむろん初期から不変のマリア観音ならではの匂ってくる表現に磨きをかけている。
“interracialなファック”とも言うべき異ジャンルの官能的な“まぐわい”で、
越路吹雪の「愛の讃歌」とジギー・スターダスト時代のデイヴィッド・ボウイの邂逅みたいな曲あり、
いわゆるレア・グルーヴとムード歌謡がエロチックに交尾した曲あり。
キーボードが楽器の音をリードするパートが多く、
“ソウル・プログレ”とも呼びたくなるフリーキーに奇想天外なアレンジだが、
いくら複雑なリズムを絡めようと曲の流れがナチュラルだから一気に聴かせる。

マリア観音といえば情念のイメージも強いが、
現メンバーの演奏は音の抜けがよく、
風通しのいい音のミックスも相まってこのCDも聴きやすい。
とはいえ、
R&Bの性臭と70年代“辺境”ロックの体臭が洗っても落ちないほど染み込んだ異形万歳盤。


★マリア観音『東夷偽史先住民拙言滅裂多仁』(エレクト ER031)CD
木幡の簡潔なコメントと言葉数の多い歌詞も内側に載り、
木幡が手がけた切り絵と絵画で構成されたジャケット付。


espaço『First Impression』

エスパソ


ポルトガル語で“空間・宇宙”を意味するespaço(エスパソ)を名乗る、
東京拠点のジャズ・バンドが15年ぶりにリリースしたサード・アルバム。

柳原たつお(ダブル・ベース)が唯一のオリジナル・メンバーで、
石田幹雄(ピアノ)、
青木秀明(テナー/ソプラノ・サックス)、
小野寛史(ギター、ギター・シンセサイザー)、
上村計一郎(ドラムス)の5人組だ。

小野が作った1曲以外は柳原が作曲。
主旋律はやっぱりサックスやギターだが、
決して攻撃してくる音ではないとはいえ、
ダブル・ベース奏者が作った曲が大半だけにさすがパーカッシヴでナチュラルな音圧も十分だ。
しっとりまったりもしつつ快走するパートが際立ち、
ダイナミック&デリケイト&パワフル。
ジャズという言葉からイメージできるスタイルで、
フォー・ビートに留まらず多彩なリズムを絡めながらもシンプルに聴かせ、
転がっていくサウンドに胸がすく。

何しろ楽曲がいい。
ポピュラリティに富んで親しみやすく、
俗っぽくなりすぎずに程良く凛としていて品格も十二分。
ジャズのノスタルジーに陥らずに現在進行形なのは瑞々しい響きに表れている。

いい意味でジャズらしいイイ湯加減の一枚。


★espaço『First Impression』(May MRCD-1003)CD
タバコのヤニがこびりついているようなジャズ喫茶・新宿サムライのレコード棚の写真の、
厚手の二つ折り紙ジャケット仕様の約70分11曲入り。


組原正×藤掛正隆『組原正×藤掛正隆』

組原正×藤掛正隆


GUNJOGACRAYONでの活動で知られる組原正と、
元ZENI GEVA~#9で渋さ知らズやEDGEなどで多彩な活動を展開している藤掛正隆の合体盤。
昨年11月の東京・阿佐ヶ谷イエロービジョンでの演奏を編集した約45分9曲入りのCDである。

組原はエレクトリック・ギターとヴォイス・エフェクトを担当。
藤掛はドラム演奏に加えてtb-3(エレクトロニクス)も操り、
本作のエンジニアやエディットも行なっている。


フリー・ジャズっぽい演奏が聴こえてくるところもあるが、
全編フリー・フォームのプレイでじわじわ攻め入ってくる。
水泳だと自由形は≒クロールであり、
クロールはストロング・スタイル・・・このCDもまさにそうだ。
“フリーというジャンル”を狙ったようなプレイのCDやライヴに出くわすこともあるが、
このCDはジャンルから解き放たれつつ、
いわゆるスタイルではないロックに聴こえる。
ギターやドラムなどの音の質感がロック・・・硬質なのだ。
ダラダラせず比較的にコンパクトに凝縮された9曲入りという作りも大きい。

どうやって演奏しているのかわからない音である。
絡み合うとか、ぶつかり合うとかいう感じのプレイはあまり聴こえてこない。
お互い適度に距離をとりながら、
ストイックにソリッド&シャープ&パーカッシヴな音を紡ぎ出し、
せり合い、渡り合っている。
無機的なようで少しずつ熱を帯び、終盤は白熱そのものとなる。

冷厳なるギターはサンプラーを使っているようにも聴こえる音で、
ドラム・マシーンを使っているようにも聴こえる。
インプロヴィゼインション中心に聴こえるが、
ライヴ・レコーディングとは思えない緻密な“作り”だ。
音がループするところなどポップかつカラフルでもあり、
ユーモラスかつホラーな音も湧き上がる。
ときおりエイト・ビートを入れつつドラムも自由なリズムの組み立てで対峙し、
とぼけたビートや四つ打ちも挿入しながらローリングもする。

というわけで決して頭デッカチではなく肉体的なサウンドだ。
GUNJOGACRAYONもリリースしていた80年代初頭のPASS Recordsの空気感、
さらにマーク・スチュワートのソロ作の緊迫の空間や解体の音作りも思い出した。
「dsweaa」「frdbb」「kjuicc」「kiuodd」「maweee」「triff」「xzyuygg」「qeqrhh」「jyii」
という暗号か造語かって感じの謎の曲名の数々でまた迷宮のイマジネイションが広がる。

オススメ。


★組原正×藤掛正隆『組原正×藤掛正隆』(FullDesign FDR-2035)CD
薄手のプラケース仕様の約45分9曲入り。


Suzuki Junzo『Todos los fuegos el fuego』

Suzuki Junzo『Todos los fuegos el fuego』


みみのことや20 GUILDERSなどのメンバーでありつつソロ活動も精力的な、
東京拠点の音楽家スズキジュンゾの幾枚目かのソロ・アルバム。
自身のレーベルからのリリースのインスト作品だ。

20 GUILDERSの相方のタバタミツルがエレクトリック・ギター、
本作の録音と整音を行なったリチャード・ホーナーがEMS Synthi、
元・光束夜~元・不失者の高橋幾郎がドラムで参加。
でもエレクトリック・ギターやエレクトリック・ベース、シンセサイザーを演奏した
スズキの響きが大半を覆っているように聞こえる。

序盤は、
フリー・ジャズ、ジャーマン・エレクトリック・ミュージック、70年代末のCANが頭をよぎる、
滑らかでゆるくぬるくまったりではある。
だがいつのまにか、
初期TANGERINE DREAM、ASH RA TEMPEL、クラウス・シュルツのソロみたいな
ロックの迷宮に突入。
やがてサイケデリックかつスペクタクルな彼岸の大河を生み出して流れていき、
たゆたいながら熱度を増してゆく音の波に飲み込まれる。
ていねいに、ていねいに、織り成した抑えめの音圧にもこだわりを感じる。
“プロデューサー”としての音作りもさることながら、
スケール巨大な作曲家としてのスズキの異様な才覚もヒシヒシと伝わってくる。

ヘルツォーク映画の音楽にふさわしいといっても決して過言ではなく、
ほんと濃い映画を一本観たほどの満腹感も味わえる。
“すべての火は、火”というアルバムの邦題にピッタリの研ぎ澄まされた音の渦に覚醒される。
グレイト。


★Suzuki Junzo『Todos los fuegos el fuego』(PLUNK’S PLAN RECORDINGS PPCD018)CD
厚手の紙を二つに折り曲げたジャケットの約52分1曲入り、


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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