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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

うすらび『レッドルーム』[UsuraBi『once in a red room』]

うすらび


東京拠点のトリオ・バンドが、
昨年8月に東京・八丁堀の七針でライヴ・レコーディングした音源が元のCD。
研ぎ澄まされたサイケデリック感覚にゆっくりと覚醒させられる約59分11曲入りだ。

うすらびは、
ALCHEMY RecordsからのアルバムもあるDOODLESで活動してきた利光暁子(vo、g)が中心で、
他のメンバーは川口雅巳(b)と諸橋茂樹(ds)。
川口は川口雅巳ニューロックシンジケートなどではヴォーカル/ギターで、
HARDY ROCKSなどでもギターを弾き、
哀秘謡でもベーシストを務めていた。
諸橋も魔術の庭などで多彩な活動を展開している。
DOODLESは本作のリリース元である川口のレーベルからCD-R作品を発表したことがあり、
川口と諸橋は90年代からBROOM DUSTERSでのバンド・メイトでもある。


実際のライヴ自体もそうだったのだろうが、
いわゆるオリジナル・アルバムのような展開の構成で、
高まっていく流れがまず素晴らしい。
バンド内のケミストリーも最高で、
3人がしっかり丁寧に音で交感している様子が見えてくるほどだ。

基本的にはヴォーカルを軸にした歌もののバンド・スタイルともいえるが、
インプロヴィゼイションを含めたような曲も中盤に披露。
緩急織り交ぜた多彩なソングライティングも光り、
誤解を恐れずに言えばキャッチーな曲も多く、
半数近くを占めるアップテンポの曲は“ロックンロール”に聞こえるほど躍動している。
ベースはどの曲もささやかに音でよく歌ってる。
ドラムは曲によってボサ・ノヴァっぽいリズムを絡めたりしてよく“転がり”、
アルバム全体の“快走感”に一役買っている。
ギターはデリケイトに鳴り、
ギター・ソロは“これぞエレクトリック・ギター!”と叫びたくなるほどクールに切り込んでくる。

きゃしゃな声だが、
はかなげなようで強い響きのヴォーカルも耳に残る。
外来語すらほとんど使わずやわらかい日本語の語感を活かしたやさしい癒しすら感じる歌声で、
諦観を超えた深い肯定性をたたえる歌詞が静かに息をしている。
はつらつとした終盤2曲は特に胸がすく。

バンド名の由来は知らないが、
まさに“薄ら日”。
だが、まぶしい。

ギターが1本に聞こえず、
CDならではの鮮烈な響きを活かした立体的な音像の仕上がりも素晴らしい。
繊細だがダイナミクスも抜群だから
ライヴが観たくなる。
ジャケットなどもたいへんていねいな作りで、
まさにパッケージ全体が表現の佳作だ。
オススメ。


★うすらび『レッドルーム』(Purifiva PCD-04)CD
四つ折り歌詞カード封入の二つ折り紙ジャケット仕様の約59分11曲入り。
バーコードが印刷されてない点も特筆したい。


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sara (.es) / 大友良英 / 磯端伸一『HUMANKIND』[Utsunomia MIX- 005]

HUMANKIND_jacket.jpg


ピアノなどをプレイするsara (.es)らが様々な音楽家とコラボレートするライヴを、
宇都宮泰が“CD化”していく“Utsunomia MIX”シリーズの第5弾。
インプロヴィゼイションと思しき約59分曲入りだ。

今回のパフォーマンスは、
sara (.es)[ピアノ、パーカッション]、
NHK朝ドラの『あまちゃん』の音楽で有名な大友良英[ギター]
大友と同様に高柳昌行の“門下生”だった磯端伸一[ギター]によるもの。
sara (.es)の活動拠点である大阪ギャラリーノマルでのグループ展 “HUMANKIND”における
今年6月の公演を、
宇都宮が録音とミックスとマスタリングを行なって作品化したCDが『HUMANKIND』である。


1トラック目の「HUMANKIND #1」は大友と磯端のデュオ演奏が28分強入っている。
ところによってはメロディも漏れてくるが、
もちろん一般的なイメージのギターの音はほとんど聞こえてこない。
旧知の二人ながら、さぐりあい、
序盤から両者が硬質な音を断続的に鳴らすが、
どのようにして音を出しているのかわからない。
いわゆるノイズのようであっても雑音ではなく、
ひとつひとつの音が研ぎ澄まされている。
デレク・ベイリーがジャズとされるのならばジャズに近い様相。
傍若無人ではなくコントロールされたプレイだから、
ジョン・ウェットン在籍時の70年代KING CRIMSONのインプロっぽい曲も思い出す。
音階の認識や感覚を捉え直されて勉強にもなったセッションである。

2曲目の「HUMANKIND #2」はsara (.es)と大友のデュオの24分弱。
小鳥の鳴き声みたいな音と硬質な小音で始まるも、
まもなくピアノが静かに走り出し、
いい意味でいかにものエレクトリック・ギターの音と渡り合う。
だが、まもなくアンビエントな空間に突入し、
つかず離れずの二人。
それでも再びピアノは走り、ザクザクしたギターに共振したピアノが加速して終盤に高まり、
静かなピアノで終える。
どうしてもこういう展開にヤられる僕であった。

3曲目の「HUMANKIND #3」は3人の共演。
7分弱の中で、
ちょっとジャズっぽく牧歌的にも聞こえ、
大団円と言えそうなCDの締めである。


立体感がますます格別な音の仕上がりだ。
ヘッドホンで聴くと左右のチャンネルがはっきり分離し、
やや広めの空間でのプレイに聞こえる。
スピーカーから聴くとやや狭めの空間に聞こえ、
音が混ざっている感じで、
小さなヴォリュームでもギターの音圧を感じるからけっこうパーカッシヴな印象の一枚。


★sara (.es) / 大友良英 / 磯端伸一『HUMANKIND』[Nomart Editions(ノマル) NOMART-126]CD
来年1月28日まで水戸の現代美術ギャラリーで個展開催の今村源の作品引用ジャケットで、
8ページのブックレット封入の“ソフト・プラケース”仕様。
レコードだけでなくCDも高騰化していく状況の中で、
販売価格:2,000円(税込2,200円)という点も特筆したい。


MNHRS『MNHRS』

MNHRS.jpg


INCAPACITANTS非常階段のT.美川(electronics)、
doubtmusicの沼田順(guitar, electronics)、
Theの付かないSTALINの前期や町田町蔵+北澤組OVERHANG PARTYなどで活動してきた西村雄介 (bass)、
元ZENI GEVA他の藤掛正隆(drums)による“ユニット”のCD。
今年5月に東京都の下町の台東区なってるハウスで行なったライヴが約50分5曲収められている。

左右から熾烈ノイズが発射されて中央ではロックなドラム&ベースが炸裂し、
けっこうヘヴィ・ロックなサウンドだ。
ところによってはハードな演奏の時の不失者も思い出すが、
タイトな怪力ドラムとグル―ヴィ・ベースの影響でファンキーなリズムだからもっとわかりやすく、
疾走するパートも多くて取っつきやすい。
ギターとドラムの演奏も含めてNULL在籍時のYBO2も思い起こす。

シンプルなリズムのベースとドラムとの共演が珍しい人だけに、
爆音というよりバランス取れたエレクトロニクスでヘヴィ・ロックを演出したような美川のプレイも
新鮮で聴きどころだ。


★MNHRS『MNHRS』(doubtmusic/Fulldesign FDRdmf-001)CD
三つ折りペーパー・スリーヴ仕様。
↑の画像は全体のバランスが多少おかしくてキズありに見えますが、実物のデザインに近いです。


sara (.es) & tatsuya nakatani『森の創造物 / CREATURE IN A FOREST』

Utsunomia MIX - 004


sara (.es)[ピアノ、パーカッション]と、
関西を中心の音楽活動のあと渡米したナカタニタツヤ[パーカッション]による、
今年1月のライヴを34分弱収めた1トラック入りのCD。

録音とマスタリングを手掛けた宇都宮泰が
sara (.es)のコラボレーション作品を手掛けた第四弾の、
“Utsunomia MIX - 004”としてのリリースでもある。
たいへんデリケイトな音の仕上がりで音の“破片”までが聞こえてくる。
と同時に、
たいへんダイナミックな音の仕上がりで肉体的な音も楽しめるCDだ。


パーカッションとピアノの即興というイメージから、とにかく、かけ離れている。
特に、
saraも演奏しているパーカッションとクレジットされた楽器を
どう扱って音を出しているのか“謎”のプレイなのだ。
何しろ、いきなりヴォイスみたいな音声が聞こえてくる。
何かの打楽器を使っていると思われるが、
ケチャも想起するリズムと音だ。
まもなくさらなる広がりの音空間を生み出していくが、
以降もところどころで声に聞こえる。
楽器が“歌っている”のだ。

ブルース・ハープみたいな音も聞こえてくる。
どんな感じでパーカッションから音を出しているのか想像力をくすぐられる。
まもなくピアノが静かに入ってくるが、
一種の打音として舞い、
ある意味ノイズに近い音も鳴らす荒々しいパーカッションとも渡り合い、
フリー・ジャズのフォーマットの加速も楽しめる。

saraは幼少期から様々な音楽を聴いてきたようだが、
https://jazztokyo.org/interviews/interview-267-sara-es/
のインタヴューによれば、
「初めて脳天に衝撃を受けたのはロックのサウンドで中学時代はディープ・パープルの虜でした。」とのこと。
“三つ子の魂百まで”、納得である。
彼女の演奏は、やはり僕にとってはジャズよりロック。
だから好きなのだ。

二人とも静謐な時間を大切にし、
それでいてスリリングな緊張感をキープ、
それでいて軽やかな演奏。
終盤には尺八みたいな音も聞こえてきて、
その後ちょっとしたドローン。
音が止んでからもしばらくCDの再生が続く時間の“音声”も絶妙の余韻だ。

エキサイティングでも優雅、凛然としている。
もちろんヘッドフォンだと音のディテールまで楽しめるが、
スピーカーを通して聴くとたとえ小さなヴォリュームでも見事な交感が肌で感じられる仕上がりだ。
グレイト。


★sara (.es) & tatsuya nakatani『森の創造物 / CREATURE IN A FOREST』(Nomart Editions NOMART-125)CD
録音とミックスを行なった宇都宮泰のライナーが日本語と英語で読めるインサート封入の
ソフト・プラケース仕様。


ALBEDO GRAVITAS『Luminescence』

ALBEDO GRAVITAS


ALBEDO GRAVITASは、
kito-mizukumi rouberや長谷川静男などで多彩な活動を展開する内田静男(b)が、
内田らとのArcheusやソロなどで活動するヒグチケイコ(vo、p他)と
光束夜やOVERHANG PARTYの後期のメンバーでもあったSachiko(エレクトロニクス他)の
グループに加わって派生したユニットだ。
そんなトリオの約39分3曲入りのセカンド・アルバムが『Luminescence』である。

まず再生2秒で立体的な音像の仕上がりに引き込まれる。
スタジオ録音ならではの緻密なレコーディングだが、
インプロヴィゼイションとは思えぬアルバム全体のナチュラルかつ幽玄な流れも見事だ。

Sachikoは一種の“触媒”のように
エレクトロニクスやヴォイス、ささやかなパーカッション、メロディカを静かな佇まいで空間に入れていき、
そのサウンドの中をヒグチと内田が“おのれ”を出しながら渡り合う。
“4string”とクレジットされた楽器をプレイする内田は
どうやって演奏しているのかわからない音を寡黙かつ雄弁に、謙虚かつ豪胆に鳴らす。
ヒグチのクレジットが“voice, vocals, piano”と記されている点も特筆すべきだ。
ピアノは優雅でありながらたっぷりパーカッシヴに打たれ、
そこにヴォイスとヴォーカルが加勢する。
ヒグチの声は歌でありヴォーカル・パフォーマンスでもある。
発声はディアマンダ・ギャラスというよりはパティ・ウォーターズに近く、
1970年前後のNICOも頭をよぎる。
時に妖艶、そして恐ろしい。

3人が適度に距離を取りながらの張りつめたプレイに息を呑み、
研ぎ澄まされたサウンドに覚醒される。
グレイト。


★ALBEDO GRAVITAS『Luminescence』(Musik Atlach MA020)CD
日本語と英語のライナー封入の二つ折りペーパー・スリーヴ使用の約39分3曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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