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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

堅いトリオ『堅 KEN』

堅いトリオ


片山広明(渋さ知らズ他~テナー・サックス)、
関島岳郎(ストラーダ、栗コーダーカルテット他~チューバ)、
藤掛正隆(元ZENI GEVA~#9他~ドラムス、エレクトロニクス)
による新バンドのデビュー作。

バンド名の英語表記を“UNWAVERING THREE”としているように、
一つのバンドに縛られない“揺るぎ無き三人”ならではの地に足の着いた堅いプレイが楽しめる。
リリース元のサイトによれば即興とのことだが、
あらかじめ作曲されてしっかりアレンジした曲を演奏しているようにも聞こえるほど
しっかり構成の行き届いた流れである。

テナー・サックスがメロディをリードしているように聞こえるパートが多いというのもあって
ジャズの色が強めながら、
ヴァラエティに富む構成。
鍵を握っているのはチューバだ。
疾走するテナー・サックスを横目にリズム楽器のような音も刻み、
まったりのっそり朴訥としたユーモラスな音を悠々自適に鳴らし、
ディジェリドゥのような感じで反復もし、
しっかりスウィングもしている。
ドラムは両者の間に経つビートをおくゆかしく打ち、
ファンキーなテイストを加味しつつハーモニーが生まれている。

「堅」「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」というタイトルも意味深長で、
静かな歌心が滲み出ている音にピッタリのアルバムだ。


★堅いトリオ『堅 KEN』(フルデザイン FDR-2034)CD
薄手のプラケース仕様の約55分9曲入り。


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蓮根魂『月蝕の夜』(REN KON KON『The Night Of Lunar Eclipse』)

蓮根魂『月食の夜』


奇才・のなか悟空(人間国宝、騒乱武士~ドラム、パーカッション、声)が
過半数の曲を作曲した、
蓮根魂(REN KON KON)のデビュー・アルバム。
横浜エアジンでレコーディングのCDだ。

のなか悟空以外のメンバーは、
横澤和也(ヴォイス、石笛)
大由鬼山(尺八)
西田紀子(シエナウインドオーケストラ~フルート)、
西村直樹(上々颱風、白崎映美&東北6県ろーるショー~ベース)である。


いきなり24分を越えるインプロヴィゼイション・チューンで攻めてくる。
声明(しょうみょう)を思い出す声で始まるオープニングだけでなく
全体に和の侘び寂びが効いたアルバム・タイトル曲だが、
長尺でも飽きないナチュラルな流れで持っていく。
不失者の静かなパートみたいにジャズの方法論でロックをやっているように展開するのも大きく、
そういうトーンは他の曲からも聞こえてきて引き込まれる。

2曲目は「畦道ロック」という痛快なタイトルどおりの曲である。
打楽器がバンカラに鳴る“和楽ロック”で、
勇壮なメロディの中に掛け声が入ってきてお祭りっぽくなるストレンジ・チューンだ。
3曲目の「オバケのワルツ」は蓮根魂流のラフなジャズ・ロック。
「ゲゲゲの鬼太郎」の主題歌っぽいフレーズとかもちょろりと聞こえてきて曲名どおりで、
フルートがプログレな趣を醸し出している。
4曲名の「雷神」は作曲者の大由の尺八がリードするが、
これまた15分を越えるロング・ナンバーでも迷宮入りのジャズ・ロックのように楽しめた。
最後の曲の「あと2泊3日」もプログレなフルートが活躍している。


メンバー全員がエゴのバランスを考えていて、
特にドラムの音が比較的抑えめで他のパートが引き立てられている。
不思議と全体的にポップで小難しく気取ってなんかいない。
そのへんも大切な一枚だ。


★蓮根魂『月蝕の夜』(地底 B83F)CD
カードボード状の二つ折りのペーパースリーヴ仕様の約68分5曲入り。
実際のジャケットの色は↑の画像より濃い。


泉邦宏『NO PROBLEM』

泉邦宏『NO_PROBLEM』_convert_20181007185638


渋さ知らズでも活動してきた山梨県拠点の奇才・泉邦宏の新作。
非常に多作でアルバムによって作風が大きく異なり歌ものの作品もけっこう出しているが、
今回はインスト・オンリーである。
全曲自作独演でミックスとマスタリングも自分でやり、
ふくらみのある音作りと立体感のある音像の仕上がりも特筆したい。


自称“基本的にはサックス奏者”だけに
大半の曲はオーネット・コールマンの流れを感じさせるサックスが旋律をリードするが、
曲によってはオクターバーのエフェクターをかませるなど
アルト・サックスの音も艶やかなだけでは終わらない。
ほとんどの曲はコンガが土台になっていてパーカッシヴな音も目立ち、
その他の楽器なども使ったと思われるが、
シンプルな作りである。

ジャズと民俗音楽を泉邦宏流に天然ブレンドしたかのようだが、
もちろんチンドン音楽もファンクも湧き出てくる。
今回も通称“ブライアン・ジョーンズのソロ・アルバム『ジャジューカ』”の
『Brian Jones Presents The Pipes Of Pan At Joujouka』を思い出すところもチラホラだ。
唯一コンガが土台になってない曲はフリーキーなキーボードっぽい音も漏れてきて、
スペイシーな辺境メロウ・サイケみたいな味わいも楽しめる。

歌詞はないが、
「No Problem」「Peace」「Let's Dance」「Anti-Major」「No Program」「Young Days」
「Stay Here」「No Progress」「Today」「Good Morning Izumingos」「Just Like All Of Me」
といった簡潔な曲名に泉のストレートな思いが託されている。

怪しくも妖しいジャケットがピッタリの一枚だ。


★泉邦宏『NO PROBLEM』(キタカラ K-31)CD
セルフ・ライナーが内側に載ったカードボード状の二つ折りペーパー・スリーヴの
約62分11曲入り。
実際のジャケットは↑の画像よりもすべての色が濃い。


カニコーセン『初期のカニコーセン』

初期のカニコーセン_convert_20180924201610


兵庫県拠点に精力的なリリースと日本津々浦々でのライヴ活動を続ける
奇才・男性シンガーソングライターが中心のユニットのカニコーセンが、
7年前に作った曲を再録音した約57分20曲入りのCD。
ベースの一部とコーラスで一人の女性が参加して
アートワークのイラストは他の人が担当しているが、
歌と演奏のほとんどだけでなく
レコーディングや編集、パッケージ制作も一人で丁寧に仕上げたリアル自主制作盤である。


ギター、ベース、ドラム/パーカッション、キーボードらしき音が聞こえてきて、
シンプルながら彩り豊かなサウンドでカントリー調やファンク調も含むが、
全体的には“エレクトリック・フォーク・ロック”と呼びたい趣だ。

オリジナル曲のソングライティングも旨みが光る。
アレンジのディテールが凝っていて聴かせどころをしっかり設ける作りは、
カヴァーらしき曲でさらによくわかる。
ルー・リードの「Walk On The Wild Side」とSly & the FAMILY STONEの「Family Affair」の
日本語リメイクみたいな曲が特に絶妙だ。
浜田省吾の「路地裏の少年」のリメイクに聴こえる曲や
伊東ゆかりの「小指の思い出」の替え歌みたいな曲も面白い。

飄々とした佇まいで、
初々しい歌声そのものからもシニカルなスパイスを感じるが、
のどかな雰囲気でも言葉のパンチが効いている。
さりげなく主張を匂わせている曲も含みつつ、
見聞きした光景や実体験もネタにしていると思われる歌詞からは生活が透けて見え、
ユーモアとペーソスが滲む。

でも哀愁に逃げてない。
まったりした曲が多いが、
どの曲もひそかに躍動している。
打ちひしがれても卑屈なんてどこ吹く風とばかりのエネルギーが染み出している。
だらだら曲を続けることなく短めの曲が多く、
もう一盛り上げできそうなところで打ち切る曲の終わり方も潔い。
特に短い「名前を呼ぶだけで」は名曲だ。

誤解を恐れずに“芸人”と呼びたくなるほどスルメみたいに楽しめる一枚。


★カニコーセン『初期のカニコーセン』(no label, no number)CD
曲に関連したシンプルなイラストも歌詞に添えられた16ページのブックレット封入で、
味のある質感の紙ジャケット仕様。
非常にお求めやすいお値段で販売されているが、CD-RではなくCDである。
https://www.kanikoosen.com/


水晶の舟 9月14日 at 吉祥寺SILVER ELEPHANT

水晶の舟


1999年から東京拠点に世界的な活動を続けているサイケデリック・バンドの、
水晶の舟の単独公演<UNDERGROUND SPIRIT Ⅺ - 花の記憶>のライヴに行ってきた。

会場に入るといきなりお香らしき匂いに鼻をくすぐられた。
キリン・ラガーの瓶ビールをラッパ飲みしながら開演を待つと、
まもなくステージに水晶の舟の4人が姿を現す。


水晶の舟の現在のメンバーは、
バンド創設者である紅ぴらこ(vo、g他)と影男(g、vo他)、
そして松枝秀生(b他)、原田淳(ds他)である。
バンドとしては結成19年目だが、
一人一人は40年前後の音楽キャリアを持つ筋金入りだ。
PSFレコードからリリースした2枚のCDを含めて、
内外の様々なレーベルから作品を発表してきている。


対バンのあるライヴとは違って水晶の舟の様々な表現が堪能できた。

手に持ってささやかに奏でる色々な打楽器をはじめとして、
ロック・バンドがほとんど使わない多彩な楽器をメンバー全員がところどころで使い、
ライヴのところどころで儀式めいた“コーナー”も設けられていた。
インプロヴィゼイションも織り交ぜていた。

とはいえヴォーカルを中心にしたロック・サウンドが基本と言える。
2本のギター、ベース、ドラムスによる“歌もの”のパートが多く、
ミニマルなテクスチャーで10分から20分ぐらいかけてじっくりと進めながら曲を高めていく。
曲は長めながら歌が軸にあるから難解ではなくて音楽の中に入っていきやすい。
いかにものアンダーグラウンドの閉鎖したイメージとはかけ離れていて、
とても開かれた音楽だ。


研ぎ澄まされた歌声と音のブレンドが真正のサイケデリック・ミュージックを生み出していく。
裸のラリーズ、
エレクトリック・ギター弾き語りがメインのライヴにおける灰野敬二
中期までのVELVET UNDERGROUNDを頭をよぎる瞬間もあった。
でも、いわゆる轟音はほとんど聞こえてこない。

水晶の舟のロックにはエゴがない。
自分の中のものが浄化されていくかのようで、
とてもナチュラルでオーガニックなやさしい響きだ。
やわらかなサウンドでストロング・スタイルのサイケデリックの味わいがゆっくりと広がっていく。

淡くて時にコシが強くなる松枝のベースも、
パワフルでロックな疾走も見せる原田のドラムも、
いい意味でリズム隊らしく水晶の舟の屋台骨。
しなやかに曲を動かしていた。

影男のギターは紅ぴらこのギターに寄り添ってシャープにおくゆかしく大胆だ。
数曲で歌う影男のヴォーカルは、
ところによっては林直人(AUSCHWITZ)と金子寿徳(光束夜)も思い出したが、
いぶし銀の渋味の効いた“ソウル・ミュージック”だ。

一方で紅ぴらこのギターはノイジーではないにもかかわらず強靭な鳴りで覚醒させる。
怖いほどである。
大半の曲で歌う紅ぴらこはシャーマニックな佇まいで、
ニコがやさしくなったように喉を震わせ、
斜め上を見ながらたおやかな歌声を歌声を解き放っていく。
とても小柄でオフ・ステージだと砕けたところも見せるが、
ステージではとても大きく見えて凛とし、
派手な動きをしないだけにクールでカッコいいステージングに魅せられた。

日本語の歌も相まって和の情趣が湧き上がる。
この夜のライヴの副題である“花の記憶”と関連があるのか、
紅ぴらこが手にしたギターのヘッドの部分には赤い花が飾られていた。
「バラが咲いた」のカヴァーに聴こえた曲も長尺で濃厚に披露し、
デリケイトな哀切の歌心に痺れた。


ライヴ中に、
シリアへの緊急医療援助のためのチャリティ・ライヴを2013年の年末に水晶の舟が行なったことを、
ふと思い出した。
“みんなと一緒”ではない水晶の舟の独自の活動展開がひそかに表れていた行動だが、
そういう祈りめいた光も歌と音から確かに放たれていた。


静かなる波と渦のサウンドの中を
まさに水晶の舟でゆっくりと進んでいくような
とてもしあわせな2時間半。
愛おしくなるほど大切にしたい。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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