なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

擾乱主(ジョーランズ/Jorans)『永遠なる木霊』

擾乱主 Jorans


福井県拠点の皇帝魚(vo、g)が石塚俊明(ds、per/頭脳警察ほか)と出会い、
2012年に結成したバンドのファースト・フル・アルバム。

このCDには川崎淳一(b、noise)を加えた3人がメンバーとしてクレジットされている。
さらに石間秀機(FLOWER TRAVELLIN' BAND)が5曲目と7曲目と9曲目で独自楽器のsitarlaを弾き、
最後の曲では
石塚もメンバーのギャーテーズの橋本雅敏が詩、
Massadogss (Last call)がインディアン・ドラム、
Hoshikoがコーラスで参加している。

FLOWER TRAVELLIN' BANDっぽいのリリカルなインストも含むが、
日本語で歌う繊細なヴォーカルが前面に出つつバンドならではのダイナミズムも大切にした仕上がりだ。
前に出すぎずに歌を立てつつも即“Toshiの音!”とわかる自己主張のビートでしっかり“歌う”、
石塚のドラム・プレイも寡黙にして雄弁である。

1968~1969年あたりのPINK FLOYDの抒情性に覆われつつ和の情念も滲む曲あり、
70年代の日本のフォークを思い出すセンチメンタリズムの曲あり、
ジャズのビート感の曲あり、
疾走躍動する曲あり、
和製サイケな音と朗読で進める曲あり。
曲によっては、
ボブ・ディランとニール・ヤングのリズムが混ざったような歌い方で艶やかなギター・ソロが光り、
ちょいファンキーで“吉田拓郎 meets 友川カズキ”みたいな佇まいの歌も聴かせる。

「BLUE」「楢山節考」「天国の扉」「ムスカリ」「光に照らされた快楽」「黒い海」「2107」「Noise」「Eternal Echo」という曲名からもイメージが広がってゆく。
石塚が手がけたジャケットやCD盤面のアートワークがぴったりの異形の桃源郷みたいな一枚。


★擾乱主(ジョーランズ)『永遠なる木霊』(NUDE VAMP NVR-004)CD
約38分9曲入り。
https://www.facebook.com/%E6%93%BE%E4%B9%B1-Jo-Ran-%E6%93%BE%E4%B9%B1%E4%B8%BB-Jorans-214570071986117/


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藤田亮(Ryo Fujita)『「DEAT DEAT DEAT」(クールの激情)』

藤田亮IMG_4050


大阪拠点に活動している藤田亮のドラム・ソロ音源シリーズ第3弾。

16分強のCD-R作品ながらすべてが丁寧な仕上がりである。
ドラム・セットの形が見えてくるほどの上下左右の立体感が抜群で、
彫りの深い音像にまず飲み込まれる。
自分自身の音と律動をそのまま出せる人は言い訳も能書きも必要としないこともあらためて思わされる。

インプロヴィゼイションかもしれないが、
作曲された曲がいくつか連なった演奏にも聞こえ、
数か所で無音に近い時間が入って場面が転換し、
全体の流れがしっかりと構成されている。

今回もダビング無しの一発録りだ。
使用機材は、バスドラム 一個、タム 一個、フロアタム 一個、スネアドラム 一個、シンバル 3枚のみ。
ドラム本来の鳴りと言えるサスティーンを活かす藤田の普段のコンセプトとはあえて逆のことを行ない、
すべてにタオルをかぶせて各三本のマイクに異なった量のリヴァーブ・エフェクトをかけているという。


リズムを刻むだけではなく、
ドラムでどれだけのことが語れるか、
ドラムでどれだけのことが歌えるか。
しかも声高に叫ぶことなく、
寡黙に走る。

シンバルを有効に使っているパートも多く、
太古の太鼓みたいな音も聞こえてくる。
いわゆるオールド・ロック・スタイルのライヴ恒例のドラム・ソロみたいなプレイではない。
デリケイトな演奏で感じやすい音だ。
音圧に頼らないにもかかわらず、
いや、だからこその静謐なるダイナミズムが激しく息をしている。

使いまわされたジャズのリズムもロックのリズムも、なぞってない。
でも打楽器個々の演奏ではなくあえてドラム・セットでの演奏という点も含めて、
ロックを感じる。

今回はジャケットは、
英国のパワー・エレクトロニクス・ノイズ・ユニットである、
WHITEHOUSEの80年のデビュー・アルバム『Birthdeath Experience』を思わせる。
でも“危険物”に見えるジャケットをよく見ると遊び心と生活が見えてくるし、
音そのものが胸いっぱいの命の胎動だ。

張りつめている作品だし、
祈りの音楽に聞こえるが、
神聖なムードとは一線を画している。
こっそりと「大阪で生まれた女」を豪快に歌うような人だけにあけっぴろげで開かれている。

まさに“クールの激情”の一枚。


★藤田亮『「DEAT DEAT DEAT」(クールの激情)』(No Label, No Number)CD-R
CD-Rのフォーマットで薄手のプラケース仕様ながら、
厚手の紙で作られたジャケットも丁寧な作りだ。
https://www.facebook.com/rfujita3


川島誠(Makoto KAWASHIMA)『Dialogue』

川島誠『Dialogue』


2008年から埼玉県を拠点にアルト・サックスの即興演奏を始め、
2011年に『Solo』でCDデビューした川島誠(alto sax)の新作。
川島のライヴの根城である埼玉県入間郡越生町のギャラリィ&カフェ山猫軒で録音し、
自主制作レーベルの“ホモサケル・レコード”からリリースしたCDである。

むろんアルト・サックス一本勝負で、
19分間に想いを凝縮した1トラック入りだ。


いきなり消え入りそうな音のオープニングからまもなく無限に音がふくらむ。
じっくりと、ゆっくりと、ひめやかに、肝の据わった音の出し方で、
つややかで、のびやかで、もの寂しい音色が空間に広がる。
てらいなくクールに感情にタメを効かせ、
身を削って、一音、一音、紡ぎ出しているようなヒリヒリした響き。
はらわたから音を震わせているから、
はらわたが音で震わされる。
こわれそうなほど強直なストロング・スタイルの音に胸がすくばかりだ。

“対話”を意味するCDタイトルは映画などのセリフも意味するから一概には言えないが、
“dialogue”はやや軽めの“会話”のニュアンスの“conversation”とはやっぱり違う重みがある。
一種の“対峙”みたいに感じで話を交わす印象の言葉で、
“真剣勝負!”みたいな堅苦しい作品ではないが、
やっぱりこれはしっかりと真正面から向き合っている対話の音楽だ。
特定の人との“dialogue”であり、
聴き手との“dialogue”であり、
おのれ自身との“dialogue”である。

その“特定の人”として想像できる人たちが、
ジャケット裏面に“スペシャル・サンクス”としてリスト・アップされている。
阿部薫がよくライヴをやっていた福島市のカフェ・パスタンのママだった故・松坂敏子らとともに、
東京で80年代半ばから活動していたPSF Recordsの主宰者の故・生悦住英夫もクレジットされている。
川島の2015年のアルバム『Homo sacer』は結果的ながらPSF Recordsのラスト・リリースになったが、
これはサイケデリック音楽や前衛音楽とともに生悦住が大好きだった“本物の演歌”でもある。
喉を震わせているアカペラの歌謡ブルースのようであり、
まさに“歌う”アルト・サックスが、
おくゆかしく熱い“うたごころ”をたたえているのだ。

屋台のラーメン屋さんのチャルメラにも通じる郷愁を誘う人懐こいメロディにもあふれている。
大衆酒場でケンカしている輩が、
このCDが鳴った途端に争いを止めて聴き入って涙するみたいな光景もイメージできる。
そんな夕暮れ、そして早朝の息吹も聞こえてくる。

インプロヴィゼイションかもしれないが、
一瞬一瞬、瞬間瞬間、ひと時ひと時で歌を紡ぎ、
心に残るメロディをつなげて連なった音は絶えることのない“生”である。
すすり泣きや嗚咽みたいな音も漏れてくるから哀歌や悲歌にも聞こえるが、
センチメンタルに逃げない胆力に打たれるばかりだ。

これまたほんとグレイト。
新たなる名盤と言い切れる。


★川島誠『Dialogue』(Homosacer HMSD-003)CD
川島自身が手がけたアルバム・カヴァーのカードボード状のペーパー・スリーヴ仕様。
http://kanpanelra.wixsite.com/homosacerrecords


加藤崇之×早川岳晴×藤掛正隆『崖っぷちセッション・リマスター』

崖っぷちセッション・リマスター


加藤崇之(g)と早川岳晴(b)と藤掛正隆(ds、エレクトロニクス)によるライヴ・レコーディング盤。
以前2枚のCD-Rで発表した音源のリマスタリングCDリイシューだ。
今年『Trio Edge』を出したトリオで、
今回のCDも早川と藤掛によるフリー・セッション・シリーズの“崖っぷちセッション”に
加藤が“参戦”した時の実況録音である。


本編の6曲は2007年に東京・荻窪のルースター・ノースサイドでやったライヴ。
2007年にCD-R盤で少数出していた『from Gakeppuchi Session』(FCDR-2007)が元だ。
「track A」「track B」~といった曲名から察するにインプロヴィゼイション演奏と思われるが、
“作曲された曲”にも聞こえる。
藤掛の好エディットも奏功しているというのもあるが、
演奏がダラダラしていなくてフリー・フォームながら引き締まっているからだ。

ジャズ・ロックに聞こえるところも多いが、
ファンクやダブ、ラテン音楽、民俗音楽、アンビエント・ミュージックなどなど、
“音楽モラル”なんて関係なくナチュラル・ブレンドされている。
静かなパートを設けつつ、
もったいぶって小難しくせず、
3人ともかなり持っている演奏テクニックに溺れず、
あくまでもダイナミックに展開。
音は強靭だし、
ほとんどの曲は加速し、
のびのびとクールな情熱を炸裂させている。

シリアスだが、
さりげなく頓智の効いた音も鳴らし飛ばす。
普段やっている音楽とはかけ離れているだけに、
加藤流の硬質なハード・ロック・ギター・リフとハード・ロック・ギター・ソロも聴きどころだ。


ボーナス・トラックとして2014年に横浜のストーミー・マンデイでやったライヴを1曲追加。
前述の『Trio Edge』のレコーディング時のアウトテイク「Last Drive」で、
そのCD発売記念ライヴ時に限定配布されたCD-R(FCDR-2026)に入っていた曲である。
グルーヴィなリズム隊と謎の音を発し続ける加藤が拡散と収斂を繰り返しながら、
本作の締めにふさわしい加速でデッドヒートする。


いずれも藤掛のドラムがいい意味でジャズにならないのが大きい。
NEUROSISのレーベルから2001年に『10,000 Light Years』を出した頃のZENI GEVAのメンバーで、
当時並行してBAKI(GASTUNK)や諸田コウ(元DOOM)らと#9をやっていたぐらいだし、
根がどうしょうもなくロックなのだ。
だから全体が肉体的。
そんな大切なことをあらためて思わせもする一枚である。


★加藤崇之×早川岳晴×藤掛正隆『崖っぷちセッション・リマスター』(FULLDESIGN FDR-2030)CD
薄手のプラケース仕様の約72分7曲入り。


SHORO CLUB『from 1959』

SHORO CLUB


大友良英(エレクトリック・ギター)、
不破大輔(コントラバス、エレクトリック・ベース)、
芳垣安洋(ドラムス、パーカッション)によるバンドの
SHORO CLUB(ショロークラブ)によるライヴを収めたCD。
昨年11月に名古屋の得三でレコーディングされ、
全6曲中の4曲に山本精一(エレクトリック・ギター、ヴォーカル)が参加している。

序盤はカヴァー2連発。
まずオーネット・コールマンの代表曲「Lonely Woman」で、
加速するフリー・ジャズの中からあの有名なメロディが聞こえてきて、
KING CRIMSONのロバート・フリップが数式をかなぐり捨てたようなギターが炸裂する。
続いてはブリジット・フォンテーヌのこれまた代表曲で、
「ラジオのように」という邦題で知られる「Comme à la radio」。
16分に拡長しようがキャッチーな曲の魅力も伝えるテイクだ。

ジャム・セッション風の演奏をはさんで4曲目は
チャーリー・ヘイデンの「First Song」の静かなカヴァー。
5曲目は石川啄木の詩に不破が曲を付けた「ひこうき」だが、
山本が朴訥に歌う曲ならではのまったりトーンで、
研ぎ澄まされたギター・ソロが光る“エレクトリック・フォーク・チューン”に仕上がっている。
そして山本・作詞/大友・作曲の「SORA」を、
ニール・ヤング with CRAZY HORSEも真っ青のギンギンにやって締めるのであった。

“ショローCLUBの回春行脚2016”というタイトルのライヴならではの、
“初老”が気を吐くエネルギッシュなロック演奏もけっこう聴かせるバンド・パフォーマンス。
と同時に不破と芳垣だけでなく大友もやっぱりジャズが基本の人だと勝手に思いもしたが、
山本不参加の曲における大友のヴィオラのような音のメロディアスなギターも聴きどころだ。


★SHORO CLUB『from 1959』(地底 B71F)CD
約66分6曲入りのデジパック仕様。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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