なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

WAR OF AGES『Arise & Conquer』

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どんなジャンルの音楽でもバンドが増えればそうなるが、
2000年代の米国産メタルコアも粗製乱造の様相を呈していると言わざるを得ない。
ルーツ・ミュージック系をやらせたら右に出る国はないアメリカ合衆国だが、
分野問わずU$A特有の独りよがりで力まかせの単細胞な発想がメタルコアとマッチしてしまっている。

だが、むろん必ず例外があることを忘れてはならない。


WAR OF AGESは米国北東部ペンシルヴァニア出身の5人組。
『Arise & Conquer』は本国だと1年前にリリースされたオリジナル・サード・アルバムだが、
デリカシーとダイナミズムが見事にブレンドして抜きん出た作品である。
なにより自己表現への真剣な姿勢がひしひしと伝わってくるのだ。

たとえるならば“LAMB OF GOD meets SHADOWS FALL”
LAMB OF GOD風のハードコア・メタル的な音の叩きつけを、
SHADOWS FALLを思わせるキャッチーな曲作りの中で展開しているかのようだ。
ドゥーム・メタルのスロー・リフやグラインド・コアのブラスト・ビートも多少入ったりするが、
いい意味で“後進バンド”の強みを活かしている。
タメを効かせたドラムをはじめとして、個々の演奏者のミュージシャンシップも申し分無し。


なんたってヴォーカルが強烈だ。
1秒聴いて筋金入りだとわかる声。
コレでこのバンドはイケると確信した。
やっぱりフィル・アンセルモ(元PANTERA~SUPERJOINT RITUAL/現DOWN)の影響下の咆哮だが、
無数のフォロワーみたいに「オレはタフだぜ!」みたいな連中と覚悟が違う。
そんなの知ったこっちゃないし、そんな余裕はない。
フィル・アンセルモ直系のスタイルはリズム感に乏しいものが目立つが、
WAR OF AGESのヴォーカルは基本的に、
初期ニュースクール・ハードコアみたいに“なたを振り下ろす発声”だからメリハリ十分である。

一瞬一瞬にケリをつけている。
ジョン・ブラノンみたいだ。
むろん元NEGATIVE APPROACH~LAUGHING HYENAS/現EASY ACTIONのヴォーカル。
寝ている最中もこめかみに青筋立てているようなヴォーカル。
いくら音楽性が変ろうが「俺にはこれしかできねえんだよ」ってなヴォーカル。
不器用であることを一本気へと転化させたヴォーカル。

フロントマンは目立ちたがり屋でどうしてもカッコつけたがるシンガーが多いのか、
ジョン・ブラノンみたいな120%リアル・ハードコアなヴォーカルは意外と聴けない。
けど、WAR OF AGESのヴォーカルはいい意味で“ブラノン・チルドレン”の喉。
これはどう聴いても本気だ。
混じりっ気無しで得体の知れぬフラストレイションの解放、それがすべてなのである。


WAR OF AGES は“クリスチャン・メタルコア・バンド”とも呼ばれている。
ZAOもそんなふうに言われていたこともある。
“クリスチャン・メタルコア”というのがどう意味なのかはわからないが、
確かにそういうニュアンスはWAR OF AGESの歌詞の随所にも表れている。
ところによっては聖書の一節みたいだし。
HIGH ON FIREのマット・パイク(vo、g)は、
自分は宗教的な人間ではないにしろ歌詞を書く際に聖書はとても参考になるということを言っていたが、
どことなく近いニュアンスを感じる。
手垢にまみれた“パンク教科書”どおりのアンチ・キリスト教とかの物言いはイージーでしかない。
物事そんな単純に白黒つけられない。
それこそ、その手の人が好んで嫌悪の素材にしていたジョージ・ブッシュと意識の根っこは一緒だから。

『Arise & Conquer』のプロデュースは、
AS I LAY DYINGのヴォーカルのティム・ランベシスも手がけている。
前述したZAOのアルバムに関わっていたが、これまた鮮烈な音の仕上がりだ。
マスタリングもパーフェクト。
何やっても甘やかしてくれる身内以外も納得する作り、これができてない作品も多い。
そういうところにも音楽に対する意識が表れるのである。

爽快だが、“暴れていい汗かいたぜ!”みたいなノリで終わらせないものがある。
思索的だが、マニアックにお勉強して作り上げた“優等生パンク”にはない感情がある。
人間を感じさせるストレートな一枚なのだ。


●ウォー・オブ・エイジズ『アライズ・アンド・コンクアー』(DOOM PATROL FOUNDATION DOOM-0013)CD
日本盤は2006年の前作『Pride of the Wicked』の3曲を追加。
和訳付なのもありがたいし、ブックレットも歌詞も含めて字が見やすいのも特筆すべきだろう。
読ませる気がないみたいな小さな文字等のデザインがホント多いから。



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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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