なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『リミッツ・オブ・コントロール』

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ジム・ジャームッシュの監督/脚本の新作映画である。

主演は西アフリカ・コートジボワール生まれのイザック・ド・バンコレ。
『ナイト・オン・ザ・プラネット』『ゴースト・ドッグ』『コーヒー&シガレッツ』に続く、
ジャームッシュ映画への登場だ。
他の俳優もまさに“役者”揃いで、
20年前のジャームッシュ作品『ミステリー・トレイン』にも出演した工藤由貴もそのひとり。
Borisの音楽が大きくフィーチャーされているのも大きなポイントだ。


スペインの地に降り立ったコードネーム“孤独な男”(イザック)が、
“自分こそ偉大だと思っている男を墓場に送れ”という任務を遂行していくドラマである。

No銃
No携帯
Noセックス

機密保持のためでもあろうが、ストイックかつアナログな方法で事が進められていく。
太陽が上がっている時間に“孤独な男”がカフェでエスプレッソを2カップ注文したところに、
「スペイン語は話せるの?」という合言葉と共に謎の“仲間”が現れ、
勝手にしゃべり倒した末に暗号の入ったマッチ箱をテーブルに置いて去る。
その繰り返しで、
よくわからないままあれよあれよといううちに静かなるクライマックスへ。

会話らしき会話はあまりない。
順繰りと登場する“仲間”の一方的な話の中に意味深な言葉をはさみこみつつ、
寡黙こそが雄弁であることも示しているかのようだ。
なにより土地の空気と人の体臭が匂ってきそうなほどの映像力に持っていかれる。
細かい筋道を超越して鈍い光を放ち続ける映像が本作のテーマのひとつの想像力を引き出す。
“孤独な男”のハードボイルドな佇まいがたまらなく粋だし、
進行自体もひたすらクール。
贅肉を削ぎ落としたストイックな主人公と、ゆるい時間の流れ。
すべてがジャームッシュの真骨頂である。

映画のタイトルはウイリアム・S・バロウズの同名のエッセイから採り、
映画の冒頭にはアルチュール・ランボーの詩の一節が流される。
ある意味“いかにも”の引用なわけだが、
ベタなところもまたジャームッシュらしい美学だ。

ジャケ

そのジャームッシュ、
『リミッツ・オブ・コントロール』の構想の段階でBorisの音楽を扱うことは候補に挙げていたらしい。

2005年の前作『ブロークン・フラワーズ』でSLEEPの曲「Dopesmoker」を使っていたから、
ジャームッシュも“その筋の人”かと思っていたが、
やはり“真性”であった。
EARTHの“枯れた名曲”「Omens and Portents 1: The Driver」も流れてくるし、
今回もストーナー的な薫りが薄っすらと全編を覆っているとも言える。

Borisの曲は「Feedbacker」「Farewell」などに加えて、
SUNN O)))とコラボレートした曲も要所要所で断片的に使われている。
BORIS名義で音源を発表したエネルギッシュなロックの曲はなく、
どちらかというとboris名義のイメージの研ぎ澄まされたサイケデリックな曲が多い。

すべての音楽がBorisというわけではないし選曲はジャームッシュが行なっているが、
テロップに“Music by Boris”とクレジットしたのは、
ジャームッシュ自身がBorisの音楽に具体的なインスピレーションを得たからだという。
映画の奥底に潜むサイケデリックとすら言える幻想性や落ち着いたトリップ感を、
Borisの音楽がゆっくりと浮き彫りにしていく。

個人的には、
いくらNINE INCH NAILSに誘われて北米ツアーしようがあまり実感はなかったのだが、
昔から見てきたジャームッシュの映画にBorisの音楽がたくさん使われていることを目の当たりにし、
4人編成時代の極初期から観てきたバンドだけに感慨深くなった。


“ジャームッシュ節”健在!どころか、ますます磨きをかけた映像作家ぶりにうならされるばかりだ。
タイトルに呼応した最後に映るメッセージも見逃さないように。


9月19日、シネマライズ他にて全国ロードショー

(C)2009 PointBlank Films Inc. All Rights Reserved.

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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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