なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CONTORTIONS『Buy』

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ジェイムズ・チャンス(ヴォーカル、サックス他)がニューヨークで率いたバンドの79年のファースト・アルバム。
一般的なロック・ヒストリーからは落とされるかもしれないが、
ちょっとアンダーグラウンドまで掘り下げたロックの名盤セレクションには必ず入るマスターピースである。


77年末から79年頃までのニューヨークで“ノー・ウェイヴ”と言われるちょっとしたムーヴメントが起こった。
当時パンク・ロックの流れをくむポップなバンドたちの動きはニューウェイヴと呼ばれ始めていたが、
それに対する回答にも思える言葉だ。
“ニューウェイヴなんて全然新しくないだろ新しいのはこっち”、
いや“新しいもへったくれもない”と言いたかったかのようだ。
存在しているのはカオスだけであった。

その“ノー・ウェイヴ”の動きの断面を収めたアルバムが、
ブライアン・イーノのプロデュースによる78年のオムニバス・アルバム『No New York』だ。
ROXY MUSICのキーボード/シンセサイザー奏者として真に華々しくシーンに現われたイーノが、
ULTRAVOX!の『Ultravox!』に続いて手がけた“パンク/ニューウェイヴ系”のアルバムとも言える。
アカデミックではなく“パンクな手法”でジャズやファンクや現代音楽などを絡めてロックンロールを解体し、
カオティックなサウンドを生み出していたバンドたちの宴である。
そこにTEENAGE JESUS AND THE JERKS、MARS、D.N.A.と共に収録されていたのが、
CONTORTIONSだった。

CONTORTIONSにはよく“SEX PISTOLSとかよりずっとパンク!”みたいな声が寄せられるが、
そういう乱暴な物言いは70’sパンクや以降の“青二才ども”を黙殺しているように聞こえて好きじゃない。
少なくてもCONTORTIONSはパンク・ロックじゃない。

という話になると、
GERMSらが参加した79年のオムニバスLP『Yes LA』が、
『No New York』に対するLAパンク・シーンからの回答だったことを思い出す。
当時のLAパンク・シーンには『No New York』を“パンクじゃない!”と言う人がいたのかもしれないし、
ニューヨーク・パンクの影響がほとんどなかったLAシーンならではの複雑な感情も読み取れるが、
気持ちはわかる。
オシャレとも言われた当時のLAパンクはロンドン・パンク譲りの音楽性とファッションでもあったが、
いい意味でロックンロール流れをくんだ野暮ったさもあった。
ジェイムズ・チャンス以上に(自己)破壊的だったGERMSのダービー・クラッシュはオシャレじゃないだろうし、
ぼくは音楽が魅力的ならばパンク・ロックのある種の“幼稚性”も好きだから。


ジェイムズ・チャンスはニューヨークのスノッブな観客が大嫌いでよくステージから降りてケンカしたらしいが、
『Buy』は昔聴いた時もそうだしあらためて聴いてオシャレとも思う。
しゃら臭ぇ!のはパンク・ロックだが『Buy』は実際に洒落ている。
混沌とした音とはいえそういうヒップでスマートな佇まいだから子供の頃は入れ込みまくることはなかったが、
ミュータントすぎて当時ついていけなかったとも言える。
今聴いてもビックリするのだから100万年後に聴いても驚異的に粋なアルバムであることも確かだ。

『Buy』は無軌道なジャズ/ファンク・パンク・サウンドと言える。
パンクと言われてきているのはスピード感とハジケ方によるところが大きいが、
ロックンロールの常道なんて屁とも思わぬ不遜極まり無きパフォーマンスが繰り広げられる。
とにかくうるさい。
あっちこっち飛びまわる2本のギターもノイジーってわけじゃないのにうるさい。
ドゥーム・ロックと対極みたいな高音域で忙しく鳴るギターだからでもある。
ベースもファンクと呼ぶには落ち着きがない。

ジャズの基本を習熟した上で崩しているからこそ凄みが濃いサックスを吹きまくったかと思えば、
吐き出したら止まらないジェイムズ・チャンスのヴォーカルの加速度もハンパじゃない
叫び声もうるさいうるさいうるさい。
イギー・ポップよりうるさい。
フラストレイションの叫びじゃない。
エクスタシーに達した時みたいな歓喜の叫びに聞こえる。

どこもかしこも三半規管がおかしいと思わざるを得ず、
目が据わっているのに視線が定まらぬサウンドにめまいを禁じ得ないのだ。


同時期にスタートしたGANG OF FOURをはじめとして、
英国のポスト・パンク/ニューウェイヴの流れにはファンクがかったバンドも多かったが、
CONTORTIONSの音みたいにキレることはなかった。
ジェイムズ・チャンスの中で沸騰するフリー・ジャズの血がCONTORTIONSを“ゆがめた”のである。

実は後に東京でFRICTIONを結成するレックとチコ・ヒゲも極初期のメンバーだった。
影響を硬質な音に純化させた彼らはともかく、
“ポスト東京ロッカーズ”みたいなファンクがかった多くのバンドにCONTORTIONSのスタイルが透けていた。
遠藤ミチロウも大ファンでThe STALINの数曲にも影響が見え隠れするし、
ジャパニーズ・ハードコア周辺にも大ファンの人がいる。
変態性と妙にキレやすい音で通じるのではないだろうか。


●ジェイムズ・チャンス&ザ・コントーションズ『バイ』(Pヴァイン PCD-24229)CD
78年春の強烈なライヴが3曲追加されているが、
特にエルヴィス・プレスリーの「Jailhouse Rock」のカヴァーはパンク・ロックとの接点も見えるカオスだ。
オリジナルLP発売元のZE Recordsの人が書いた興味深い英文ライナーや本編の歌詞とそれらの和訳付で、
英国盤LPのデザインにならった紙ジャケット仕様である。
まさにクール!な一枚。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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