なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

友川カズキ ワンマンライヴ at東京・高円寺ショーボート 2009年12月26日

友川


友川カズキの完全独演ライヴに行ってきた。

50年の2月に秋田で生まれ、
70年代初頭にステージで歌い始め、
74年にレコード・デビューしたシンガーソングライター。
2000年代の半ばまでは“友川かずき”と名乗っていた。
コンスタントにライヴ活動やリリースを続けるかたわら、
絵画や競輪解説や映画方面などでも活躍中。
最新作は今年発表した約15年ぶりのギター弾き語りアルバム『イナカ者のカラ元気』である(↑がジャケ写)。


何気に細かいトピックをマメに提供してくれる友川だが、
またちょっと回りがにぎやかになっている。
フランスの映像作家ヴィンセント・ムーンの監督による自身のドキュメンタリー映画が、
デンマークのコペンハーゲンのドキュメンタリー国際映画祭で2009年の音と映像の賞を受賞したのだ。
その映画は93年のアルバムのタイトルにならって『花々の過失』という邦題が付けられ、
日本でも来春公開されるという。
ヴィンセント・ムーンといえば米国のR.E.M.とのコラボレーションで知られている人だが、
友川に惚れ込んで友川にアタックして友川に密着撮影した模様である。

外国の方と思しき人の姿もこの日の会場にチラホラ見られた。
友川の言葉はストレートだが、
いわゆる標準語に囚われないがゆえにある程度日本語に意識的でないと理解しにくい部分はある。
だが友川の歌声の響きから言霊を感じ取る外国の人も増えている。
日本で生活している人が外国語を理解し切らずとも様々な国の歌の深層を感じ取って痺れるのと同じだ。

今秋も電車で日本ツアーを行なった米国のアコースティック・デュオDamon & Naomiはライヴで、
永山則夫がモチーフの「私の花」をカヴァーしている。
ポーランドのブラック・メタル・バンドのDEAD RAVEN CHOIRは、
2007年のカヴァー・アルバム『My Firstborn Will Surely Be Blind』で「木々は春」をリメイク。
静かな曲も激しい曲も友川カズキという“二面性”を示す事実である。
各々の割合は人によって違うが、
晴れ晴れした気持ちだけとかひたすら暗いだけなんてことはありえない。
それも友川だ。


例によって終始腰掛けてのアコースティック・ギター弾き語りライヴだったが、
ステージに現れて歌う前に開口一番、
クリスマスの過剰な盛り上げ方に対してMCで中指を立てる。
イルミネーションへの憎悪も根っこにあるようだが、
友川の歌が虚飾とは対極の淡く鈍い天然の光であることを思えば当然だろう。
生活感にあふれるエスプリに富む舌鋒は冴えわたり、
前述した映画の賞に関してやビートたけしの映画、
タバコが一箱400円になることに関連してマリファナや覚醒剤に関する私見など、
ぽんぽんぽんぽん言いたい放題。
けど滑稽で一理あり憎めぬお笑いトーンのMC。
それも友川だ。


といっても友川にとっては極めてレアな状態でステージに臨んだ一夜である。
この晩は二部構成。
第一部は本人曰く“初めてシラフで歌ったライヴ”であった。
風邪をひいて強力な薬を体内に入れたため、
その上アルコールを入れると“爆発”して、
翌日の“競輪の予想/解説の仕事”ができなくなる危険性もあるため控えたという。
ただし第二部では薬も抜けてきたということで我慢もできなくなって少量のビールを補給して歌った。

ふだんのライヴではガンガンガンガン曲間でアルコール燃料を補給しながら歌う友川。
酔っ払って歌えなくなったライヴは観たことないが、
べろんべろんになるとMCもべろんべろんになったりする。
前後不覚になって傍らに置いたジョッキをぶっ倒してあちこちベチャベチャになったこともある。
それも友川だ。


シラフのライヴだったからかMCの語りも心なしかシャープに思えたし、
だらだら話が長くなくて引き締まっていた。
弾き語りのパフォーマンス自体もいつもより研ぎ澄まされていたように思える。

EASTERN YOUTHの吉野寿は大ファンであることを昔から公言している。
友川と同じ東北出身のメンバーが中核のハードコア・パンク・バンドであるIDORAのインタヴューでも、
友川の名を挙げていた。
音楽スタイル的にはフォークかもしれないし精神的にはパンクかもしれない。
けどどっちでもいい。

たいていアルコールが注入されているとはいえ友川は丸腰だ。
「ピストル」という名曲があるとはいえ友川の素手だ。
むろん暗黒と叙情のもつれあいの歌詞が直で脳みそに撃たれるのはキョーレツだが、
声そのものでの喧嘩ができることが重要。
それも友川だ。


やっぱりぼくが今でも燃えるのは、
“悪だの正義だのない/どっちを己が恐いかだ”と歌い切る「一切合財世も末だ」のような激しい曲。
そういう曲を連発されたら即昇天しそうだが、
年を食ってきてからはまったりした曲の味も感じられるようになった。
未完の状態ながら、
友川にしては政治家へのストレートな御意見ソングと言えそうなホームレスが素材の新曲も披露する。

アンコールを含めてトータル2時間弱。
飄々とした毒気が心の風通しを良くしてくれた。
ソフトフエルト・タイプの帽子をかぶって粋にキメた服装もカッコよかったのである。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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