ELUVEITIE『Everything Remains As It Never Was』
2010-06-29

スイスで2002年に結成された“フォーク・メタル・バンド”、
ELUVEITIE(エルヴェイティ)の4枚目のフル・アルバム。
“フォーク・メタル”はちょっとマニアックなメタル・サークルでしかまだ通用しない言葉だと思うが、
“Folk Music meets Heavy Metal”、いや“Folk Song meets Heavy Metal”といったサウンドと言える。
フォークといってもアコースティック・ギター弾き語りの世界ではなく、
いわばfolk songの英語本来の意味の“民謡”のメロディをヘヴィ・メタルの音で展開したものだ。
極端な話、日本の民謡をヘヴィ・メタルでやってもその枝分かれの一つになるわけだが、
ELUVEITIEはケルト民謡からもインスパイアされている。
ケルトといえば英国スコットランドやアイルランドがイメージされるが、
スイスもケルトの“血”が混ざった土地だから自然なアプローチと言える。
アコースティックな音だけのアレンジにしてノーマル・ヴォイスで歌われれば、
プログレ/トラッドな音楽になりえる曲が多い。
ぼくが知っているだけでもそういうことをやっているバンドは、
日本でもたくさん活動している。
だがELUVEITIEの『Everything Remains As It Never Was』はヘヴィ・メタルが心臓だ。
基本的には“DARK TRANQUILLITY meets AT THE GATES meets IN FLAMES”と言うべき、
スウェーデンのメロディック・デス・メタルのスタイルを踏襲したサウンド・スタイルで、
ブラスト・ビートの入れ方はブラック・メタル的でもある。
そこに民謡のテイストを旨く溶け込ませた
8人編成でギター、ベース、ドラムの他に、
フィドル、バグ・パイプ、ティン・ホイッスル、マンドリン、フルートなどを挿入。
メイン・ヴォーカルのデス・ヴォイスは男性だが、
ハーディ・ガーディやフルートも演奏するサブ・ヴォーカルの女性のウエイトも大きい。
そういうアコースティックな楽器を埋もれさせずメタルの音と絶妙にブレンドさせた
コリン・リチャードソンのミックスもベテランならではの手腕。
セカンド以降のCARCASSや90年代のNAPALM DEATHを手がけたことで知られる人だが、
ヨーロッパの調和の精神も見て取れる仕上がりなのだ。
メンバーのルーツでもある欧州の古代ガリアを旋律だけではなく歌詞でもテーマにしている。
英語で歌っているからそんなにクセは強くないが、
伝承や神話の類いを太古のことで終らせることのないリアリスティックな表現は、
NILEの世界観と同様に現代ともダブる。
少しは良くなっているとは思うが、
残念ながら根はあまり変わってないということだ。
エクストリーム・メタル・ファンだけではなく、
アコースティックなケルト系が好きな方の琴線にも引っかかると思う。
★エルヴェイティ『エブリシング・リメインズ』(ハウリング・ブル HWCY-1284)CD
16ページのブックレット付。
日本盤にはさらに本編の2曲のオルタナティヴ・ヴァージョンと歌詞の和訳付だ。
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