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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BRUTAL TRUTH『End Time』

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米国のグラインド・コア進化形バンドの2年ぶりの6作目。
再編後の2作目だが、
一発限りの再結成に終わらない順調な活動がうれしい。

セルフ・プロデュースが行なわれ、
スコット・ハル(AGORAPHOBIC NOSEBLEED、PIG DESTROYER)によるマスタリング。
2年前の来日公演時にインタヴューした際、
日本ツアーを最後にギタリストが変わる旨を新メンバーの名を挙げながらダン・リルカー(b)が語っていた。
でもクレジットによれば前作『Evolution Through Revolution』に引き続きエリック・バークが弾き、
他のメンバーを加速させるようなフレーズを連発して貢献。
唯一のオリジナル・メンバーになったダンはチャイナ・シンバルも叩き、
リッチ・ホーク(ds)はエレクトロニクスもあやつっている。


デス・メタルの骨格ではないが、
いきなり92年のファースト『Extreme Conditions Demand Extreme Responses』の1曲目も思い出す、
スロー・チューンでヤられた。
ときおり入るスロー・ナンバーの他の曲は2分以下が大半。
96年の『Kill Trend Suicide』以降の
ストーナー・テイストのタレたっぷりカオティック・グラインド・コアの音像ながら、
各パートは比較的よく聞こえ、
曲はハードコア・パンクをフリーキーにふくらませたようなヘヴィ・チューンの嵐だ。

止まらないドラムを筆頭に野放しでぐにゃぐにゃ変形したファストコアとも言える。
依然として音のメタル度は薄く、
曲は行方知らず。
暴走というのはこういう音を指す。
ヒリヒリ感を増した声でケヴィン・シャープ(vo)が吐く簡潔な言葉だけではなく、
サウンドでも世界中の混沌を魚眼レンズで見渡したような心象と情景を描き出す。

ダンとリッチのリズム隊は“オーガニック・グラインド”とも言いたくなる気持ちよさだ。
なにしろこの人たちは物分りのいいフツーの演奏をしないから。
直感でどんどん明日を知らないフレーズを創り出している。
15分強の本編ラストの曲はマトモとは思えないBRUTAL TRUTH真骨頂。
けいれんノイズとフリー・ジャズに15分以上ファックされ続けるグラインド・コアで恐ろしい結末だ。
初来日時に対バンもした旧友CATHEDRALのアルバム・タイトル『Endtyme』とは関係ないだろうが、
まさに“クサ”まみれの“終末感”に覆われている。

何曲にも分かれているし音楽性も違うが、
ルー・リードの『Metal Machine Music』やSLEEPの『Jerusalem』みたいに、
リピートで流しっぱなしにして精神安定音楽としても絶好のアルバムである。
なぜならネガティヴが反転して確信に満ちたポジティヴな流れの響きだから。


★ブルータル・トゥルース『エンド・タイム』(リラプス・ジャパン YSCY-1218)CD
20ページのブックレット封入。
日本盤は本編23曲の他に、
「Swift And Violent」の“ヴァイオレント・ヴァージョン”と
S.O.Bのショートカット・ナンバー「S.O.B」+DISCHARGEの「The Nightmare Continues」のカヴァーを加え、
ジョージ・セキによるほとんどの歌詞の和訳が付いた約57分26曲入り。
DISCHARGEのカヴァーは特に崩しているわけでもないのに、
根がUKハードコアではないBRUTAL TRUTHだけに原曲とまったくノリが違っていて面白い。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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