なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『オジー降臨』

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70年代と90年代後半以降のBLACK SABBATHのシンガーとしても知られる、
オジー・オズボーンのドキュメンタリー映画。
原題は“God Bless Ozzy Osbourne”である。

ヘヴィ・メタルのエキサイティングな精神性の肝はエグさと馬鹿馬鹿しさだが、
それを同時にメジャー・フィールドで徹底的に体現し続けた人間はオジー以外に見当たらない。
この映画も81年のセカンド・ソロ・アルバムのタイトルどおりの
オジーの“Diary Of A Madman(狂人日記)”を年代順にたっぷり押さえている。
と同時に2000年代以降のオジーとなると、
MTVの番組『オズボーンズ』でも披露されたオズボーンズ一家を抜きには語れない。
というわけで
二人目の妻シャロンとの間の末っ子である息子のジャック・オズボーンが製作・企画したことにより、
ステージに立つ“ロック・スター”のオジー・オズボーンの枠内だけに留まらず、
“家庭人失格”なオジー・オズボーンも容赦なくさらす。
だがロクデナシのオジーで終わらせずに方向性はあくまでもポジティヴだ。

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オジーが音楽を志すきっかけになったBEATLESのポール・マッカートニーがけっこうしゃべっており、
BLACK SABBATHファンであることは昔から公言してきたヘンリー・ロリンズ(元BLACK FLAG)、
METALLICA加入直前の2000年代初頭にオジーのバンドのメンバーだったロバート・トゥルージロ、
オジーの“ホテル室内大便描画”の現場に立ち会って
バッド・ボーイズ・ロックンローラーとしての敗北感を味わったトミー・リー(MOTLEY CRUE)、
ジョン・フルシアンテ(元RED HOT CHILI PEPPERS)などの“同業者”も登場してオジーを語る。
もちろんBLACK SABBATHの面々も新たなインタヴューに応じており、
ランディ・ローズやザック・ワイルドらのソロでのバンド・メンバーも過去の映像などで登場。
さらに前述の現在のオズボーンズ一家の他に、
前妻との間の子供やオジーの“きょうだい”などの家族関係の発言もたんまり挿入し、
70年代から2000年代までのオジーのライヴ・シーンを織り交ぜて構成している。

労働者階級から這い出てきて70年にBLACK SABBATHのシンガーとしてアルバム・デビューし、
若いうちから商業的に成功したことが災いしたのか
70年代からドラッグとアルコールのプールにどっぷり浸かる。
80年にソロ・デビューし、
わかりやすいメタル色とロック・スター色を強めた活動ですぐ商業的に成功するも自身はボロボロ。
BLACK SABBATH、父親、最初に持った家庭、片腕だったギタリストのランディ・ローズなど、
自身が原因ではなかったものも含めて自分にとって大切だったものを次々と失った痛手を癒すべく、
特にアルコールの底無し沼にハマって溺れながら音楽を続けた。
だがオジーは数々の伝説的な奇行も含めて、
そういったことを命がけですべてエンタテインメントに自己プロデュースしていたようにも映る。
誤解を恐れずに言えば稀代のエクストリームな“ロック芸人”であることが表されている。

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ストレートにキツイ言い方をすれば“いかにオジーが弱い人間で甘ったれか”の映画でもある。
どちらが優れているとかの比較ではないが、
なんだかんだ言っても自己に厳しい3つ年上のMOTORHEADのレミーとの生き様の違いもよくわかる。
GG Allinは“後輩”かもしれないが、
ほとんどのパンク/ハードコア勢とも根本的に美学みたいなものが違うこともはっきりわかる。
逆に言えばオジーは“ロックンロール伝説”を突き詰めて一身に引き受けた。
そもそもこういうライフ・スタイルをしていた人間はほとんど途中で死んでしまっている。
ある意味カッコイイまま死んだロック・スターは恥をさらさなくて幸いなりだろう。
だがオジーはロックンロール・ライフの“極道”を歩み続けたにもかかわらず生き延びたからこそ、
ある意味カッコ悪い姿もさらしまくっている。
そういうオチャメな生々しい道のりをモロ出しにした映画でもある。
灰野敬二が歌うところの“生きて苦しめ!”ってこと。
のたうち回る姿は滑稽だが美しい。
それがオジーだ。

BLACK SABBATHのオリジナル・メンバーの他の3人の本音も興味深い。
自己責任でコントロールしながらドラッグなどを楽しんできた3人だが、
BLACK SABBATHを率い続けてきた唯一のメンバーのトニー・アイオミ(g)の語り口が
シニカルかつ冷ややかに見えるのはぼくだけではないだろう。
こういう映画の場であっても、
過去のことは水に流して「まぁまぁ、いいじゃないか」と馴れ合わないのもグレイトである。
33年ぶりの“オリジナル・サバス・アルバム”を来年リリース予定とはいえ、
90年代後半にオリジナル・メンバーでBLACK SABBATHが再編するも活動が断続的なのは、
オジーがクビを斬られた80年から時間が経ってもシコリが残っているからだとあらためて想像した。
あきれて愛想をつかしたのも無理はないと思えるほどのライフ・スタイルが綴られているのだ。

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ただ少なくても現在の妻でありマネージャーでもあるシャロンだけは、
BLACK SABBATHをクビになった直後以降ずっとオジーの“乳母”であり続けた。
二人が“初夜”の話を楽しそうに取りかわすシーンもイイ。
そして今回の映画を企画した息子のジャックはオジーが“更正”に奮闘する姿を見て、
評価を改めた。
一方でオジーの他の子供たちが自分の“父親”に対してお茶を濁さない発言をしているのもクールだ。
最初の奥さんと間の二人も含めてオジーに対する子供たちの評価はマチマチだ。
もちろん経済的に不自由したことはないだろうが、
何度も何度も人並外れた痴態や醜態を見てきた子供たち。
捨てられたり虐待されたりせずに育ててもらったことに対する感謝はしても、
親を尊敬し切れない肯定し切れない気持ちがわだかまるのも自然なこと。
そんな親子も少なくないはず。
そういう気持ちをストレートに映し出しているから、
『オズボーンズ』とは別の生々しい家族映画としても楽しめる。

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アルコール大好きな人間が主役で親子関係もあぶり出したという点で、
映画『友川カズキ 花々の過失』に近い“ヒューマン・ドラマ”のニュアンスも感じる。
ただ無頼派とはいえやっぱり友川はアートな映画を作らせるだけの“大人の表現者”だし、
アルコールへの漬かり方の度合いと素材の爆発性により
むろん『オジー降臨』はケタ違いにrawな仕上がりである。
最終的には製作/企画者である息子のオジーに対する気持ちが溢れ出す映画だ。

“御爺降臨”とも呼びたくなる一歩手前でオジー留まっているのは、
ステージに上がる直前に欠かさない喉とボディのトレーニングなどで努力しているからでもある。
そしてアルコール依存症の克服。
“自分を愛せるようになるまでの感動の物語”に仕上がっているのも、
妙にオジーらしい。


★映画『オジー降臨』
2011年/アメリカ/94分
12月17日(土)より、シアターN渋谷で公開。
ほか全国順次公開
(c)2011 Next Films/ Schweet Entertainment.   


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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