Charlotte Gainsbourg『Stage Whisper』
2012-02-29

父親がセルジュ・ゲンズブール、母親がジェーン・バーキンということでも知られる、
シャルロット・ゲンズブールの編集盤。
クロード・ミレール監督の映画『なまいきシャルロット』(85年)から脚光を浴び始めた女優だが、
86年に歌手としてもデビューし、
セカンドの『5:55』(2006年)はAIRが全面的にサポートしていた。
このCDはサード・アルバム『IRM』(2009年)以降にレコーディングしたという9曲と、
2010年の夏のライヴから抜粋した11曲で構成されている。
前半は新曲。
まず『IRM』で組んだBeckが曲を書いてプロデュースした4曲が続き、
エレクトロニック・サウンドのオルタナティヴ系ロックとも言える。
ビートの利いた曲が新鮮に感じたのだろう彼女曰く今までになく「ロック寄り」の曲も含むが、
しっとりした曲にコーティングした鮮やかな音作りはさすがBeckだ。
他の5曲は以下のとおりである。
Danger Mouseにデビュー・シングルをプロデュースされた
LAのELECTRIC GUESTのメンバーによるプロデュースの曲
(そのメンバーの一人が日本盤のボーナス・トラックの曲も手がけている)。
英国のNOAH and The WHALEのフロントマンのチャーリー・フィンクが
プロデュースとデュエットをした曲。
ニュージーランドのコナン・モカシン(Connan Mockasin)が書いてプロデュースした曲。
アイルランドのVILLAGERSを率いるコナー・J・オブライエンが書いてプロデュースした曲。
こうやって色々な人の曲を歌っていじられると個性を静かに発揮する人だなと気づかされたし、
次のオリジナル・アルバムも楽しみだ。
後半のライヴはファーストの曲はなく、
セカンドとサードの曲に加えて
ボブ・ディランの「Just Like A Woman(邦題:女の如く)」のカヴァーを披露している。
いわゆるロックの編成のバンドがバックで、
おくゆかしく多少先鋭的な音を加えながら適度に自己主張してシャルロットを引き立てる音が、
なかなかカッコイイ。
完成され切ってない演奏が彼女にはぴったりなのだ。
シャルロットもヴォーカルだけでなく、
曲によってカシオ・キーボード、カオス・パッド、フロアー・タム、パーカッションを演奏。
リズムにポイントを置いていることがうかがえる。
ヴォーカルはアルバム・タイトルどおりとも言えるが、
いわゆるウィスパー・ヴォイスとは一線を画し、
映画『アンチクライスト』での鬼気迫る熱演を思い出す調子で
突き放すかの如くクールに凛としているからこそ緊張感をキープできている。
育ちの良さは隠せずガツガツしない“非ハングリー・スピリット”を強みとし、
父親譲りのフレンチ系のふわふわしたところと、
母親とシャルロット自身がロンドン出身ならではのシャープなポップ感がブレンドし、
歌詞の英語の響きでさりげなくビシッ!と引き締まっている。
もちろんVELVET UNDERGROUNDでも歌っていたニコみたいな地鳴りのパワーはないが、
歌手であることに執着してない“どうにでもなる”ヴォーカルとパフォーマンス。
特にライヴでのヴォーカルは、
いい意味でどう転ぶかわからない存在感がさすが。
演じることで生々しさを醸し出す、
歌詞を脚本にした女優ならでは“演技ぶり”にクラクラしてしまうのであった。
★シャルロット・ゲンズブール『ステージ・ウィスパー』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-14316)CD
ツアー中の写真満載の24ページのオリジナル・ブックレットに加え、
日本盤は
1曲スタジオ録音のボーナス・トラック追加でオリジナル・ナンバー全曲の歌詞とその和訳付の
約69分20曲入り。
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