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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ミッドナイトFM』

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人気女性ラジオDJを襲う不条理な恐怖を描く韓国のサイコ・スリラー映画。
監督はこれが2作目で『JSA』の美術監督を務めたキム・サンマン。
主演女優は『夏物語』『あなたは遠いところに』で知られるスエで、
“準主演”男優は『オールド・ボーイ』以来の悪役というユ・ジテである。


物語はほとんどが生放送中の4時間の中で繰り広げられる。

ソニョンは深夜の人気ラジオ番組『真夜中の映画音楽室』のパーソナリティを務める女性で、
娘の失語症治療のために渡米することになり、
5年間続けたレギュラー番組のDJの席を降りることを決意。
だがよりによってその最終回に、
いや最終回だからこそ“事”は起こった。
生放送中のスタジオに突然かかってきた電話は告げた。
「自分の指示通りに曲を流さなければ家族を殺す」と。
まもなくソニョンの携帯にライヴ映像が送られてきた。
ソニョンの高級アパート内でおびえる娘と
番組出演中に彼女たちの世話をしているソニョンの妹の人質姿であった。

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動揺するソニョン。
だが犯人の男の命令を無視して番組を止めるわけにはいかない。
だが娘たちと妹が心配だ。
葛藤しながら番組を続けるが、
男は単なる曲のリクエストに留まらずマニアックな無理難題を“リクエスト”していき、
男の希望どおりには進行しないから二人の娘と妹が危険にさらされ、
その映像がまたソニョンの携帯に送られてくる。
危機を感じたソニョンは
生放送を続けながら家族を救う“直接行動”に出ることを決意したのであった。

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インターネット時代の今でも
曲のリクエストなどのリスナーとの直接的なコミュニケーションはラジオの魅力の一つだろうが、
それを逆手に取った一種のラジオ番組ジャックである。

男はソニョンのパラノイアな熱狂的ファンのようだ。
番組を降りることが残念すぎて猛烈に気に入らなくなっているようで、
いわば“好意の逆噴射”である。
“統合が失調”しているという男の過去や“前科”も映画の中で触れられるが、
何しろ話が通じない。
ソニョンを“相棒”と錯覚している。

別の日の放送でソニョンが
「連続殺人犯は映画でも嫌ですね」とトークしたことも気に入らなかったようである。
正義感云々以前に、
二人の娘を持つ母親として世を憂えたのであり、
それが現実のものとなって娘たちを救う母親としての奮闘も本作の見どころの一つだ。

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映画とその関連音楽を扱うラジオ番組が舞台だから、
映画ファンのツボを突くネタが色々と出てくる。
中でも犯人の男は『タクシードライバー』に憧れを抱いているようで、
「俺を英雄と呼べ」といった強硬なリクエストもソニョンに迫る。
「レナード・コーエンの方じゃなくてCONCRETE BLONDEのヴァージョンだよ! 間違えるな!」
と男が激怒するシーンがある。
音楽に関してもマニアック。
まさにすべてにおいて“manic”な男なんである。

ねちねちねちねち卑怯な手をゆるめない陰湿極まりない犯人の男。
不気味な存在感は格別であり、
表情を変えないで表情を出す演技力に舌を巻く。
ひたすら憎ッたらしい。
だがやはり憎しみを増幅させるほど映画としては成功なのである。
おかげで目が離せない。

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底意地の悪い局のプロデューサーから
熱烈なファン争いで犯人の男との何気に戦うソニョンの“追っかけストーカー”のオタクまで、
脇役陣もキャラが強くて印象に残る人物ばかりなのも高得点。
ヘヴィかつ極めてシリアスなストーリーを適度に風通しのいいものしているのは、
そういった文字通りの“役者たち”の貢献なのである。

特に凝ったことはしてないが、
シンプルにポイントを押さえたカメラ・ワークや編集もナイス!だ。
あくまでも行き詰る空気感とストーリーのスピード感を高めるために王道で攻めている。
カーチェイスのシーンみたいに“いかにものスピード感”の場面は少ないが、
全体にリズムがある。
時間をたっぷりすけてなぶり殺すようなシーンのスローなリズムには
SUNN O)))のような“ドローン・ドゥーム”の時間軸を感じる。

むろん映画自体は韓国映画ならではのスタミナばっちりである。
やはりtoo muchなサービス精神旺盛で濃密。
登場する男たちの妄想ぶりと迷走ぶりに対して、
シングル・マザーのカッコよさも際立つ映画なのであった。


★映画『ミッドナイトFM』
2010年/韓国/カラー/106分/原題:MIDNIGHT FM
5月26(土)、新宿武蔵野館、シネマート心斎橋にてロードショー、
ほか全国順次公開。
http://midnightfm-jp.com/
©2010 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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