なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ブラッディード・バット・アンバウド』

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77年から83年までのカナダのバンクーバーのパンク・シーンを捉えた
2011年製作のドキュメンタリー映画。
スーザン・タバタが監督とプロデュースを行なっている。

USAに代表されるようにカナダも昔から地域によってシーンに違いはあるが、
特に西海岸のバンクーバーは近場の米国カリフォルニアのパンク・シーンとのつながりが深い。
とりわけ北カリフォルニアサンフランシスコのシーンとはサポートし合ってきた歴史がある。
そういう関係があったから
80年代初頭のUS初期ハードコアを語る際にカナダのパンク・バンドが含まれることも多いのだ。
そういう観点でも展開していた映画『アメリカン・ハードコア』のように、
当時の演奏シーンや膨大な写真などを盛り込みながら様々な関係者の話で進めていく構成。
多少マニアックなシーンかもしれないが、
発言のたびに名前と(元)所属バンド名のテロップが出るし、
開放的なシーンを反映して“一見さん”も感じさせるパワフルな作りになっている。

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D.O.A.

D.O.A.のリーダーのジョー・シットヘッドや
D.O.A.の初期のアルバムのベーシストで後にANNIHILATORに加わったランディ・ランページなどは、
当時と最近のインタヴューを収録。
The SUBHUMANS(注:英国産のSUBHUMANSとは別バンド)のジェリー・ハナー、
MODERNETTESのマリー・アームストロングとジョン・アームストロング、
DISHRAGSのジェイド・ブレイド、
POINTED STICKSのニック・ジョーンズらは最近の談話を中心に収めている。
90年代以降のMETALLICAのアルバムの制作をはじめとして今や裏方としてビッグ・ネームだが、
当時PAYOLASの一員でバンクーバーのパンク・バンドの70年代末の作品からプロデュース業を始めた、
ボブ・ロックが登場するのも興味深い。
ちなみにパンクとみなしてないから声を掛けなかったのかバンド側が出演拒否したのかは不明だが、
NOMEANSNOについては言及されていない。

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SKULLS(D.O.A.とThe SUBHUMANSのメンバー在籍のバンクーバー極初期のパンク・バンド)

ダフ・マッケイガン(FARTZ~GUNS N’ ROSES~VELVET REVOLVER~LOADED)、
ヘンリー・ロリンズ(BLACK FLAG~ROLLINS BAND)、
ロン・レイス[チャヴォ](元BLACK FLAG)、
ジェロ・ビアフラ(元DEAD KENNEDYS)
ペネロープ・ヒューストン(AVENGERS)
キース・モリス(元BLACK FLAG、CIRCLE JERKS~OFF!)
グレッグ・ヘトソン(BAD RELIGION、CIRCLE JERKS)も出演。

特にダフ、ヘンリー、ロン、ジェロは、
自分たちの地元との違いも含めてバンクーバーのシーンの特徴を的確に語っている。
ヘンリーはD.O.A.離脱後のチャック・ビスキッツを迎えた82年にBLACK FLAGで一緒にやっているし、
ジェロは自分のレーベルのALTERNATIVE TENTACLES Recordsから
バンクーバーのバンドの作品をたくさんリリースしてきた。
「西海岸は常にいい音楽を生む」と言っているように気候などの地政学的な共通点も相まって
シアトル拠点だったダフは国は違えどバンクーバーに親近感を抱いていたようだ。
ジェロも“北米西海岸のシーン”として、「連帯意識が生まれた。ニューヨークとは異なった」と語る。

といった具合にバンクーバーのシーンの多様性を象徴するごとく色々な方面の人が語っていて、
起伏がありヴァラエティに富む内容で飽きない。

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MODERNETTES

オールド・ロックの伝統で伸ばしていた髪をパンク・ロックに出会って切ったとか、
パンクな格好をして歩いていると周りからジロジロ見られたとかイジメられたとか、
自分でも変人と自覚していたといった、
国籍問わず当時の“パンクス”共通の素朴な(しかし切実な)話題もある。
むろん多少身内話も含むが、
普遍的にアピールする内容だ。

ポリティカルなシーンでもあった。
死傷者が出る可能性もあったThe SUBHUMANSのメンバーの“テロ”にも時間を割いて生々しく言及し、
彼らとは逆のポジションと言える右翼の暴力的な行動を反面教師に内省も込めて語る。
ただし政治的云々に関しては音楽的にも攻撃的だったD.O.A.とSUBHUMANSが目立っていただけで、
実際は“Never Mind The Politics”なバンドも多かったことも伝え、
その代表であるPOINTED STICKSのメンバーの笑える痛烈な発言が非常にリアルだ。
POINTED STICKSといえば
デニス・ホッパーの80年の映画『アウト・オブ・ブルー』(ちなみに主題歌はニール・ヤング)
にライヴ・シーンで登場しており、
その映像とエピソードも披露される。

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POINTED STICKS

女性が目立ったのも特徴でアート性も大切していたシーンであり、
たとえ政治的だとしても大半のバンドはユーモアのダシも利いていた。
また音楽的にも過去のロックの流れをくんでいたバンドが多かったことが象徴するように、
“セックス、ドラッグ&ロックンロール”の旧来のロックのアティテュードの人も少なくなかったようだ。
その悪い面が露わになってハードコアの拡大による暴力的な動きも重なり、
ひとまずシーンがフェイドアウトしていくところまで押さえている。

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DISHRAGS

むろん様々な人の話を生き生きと磨くのは当時の映像や写真の数々である。
D.O.A.のもさることながら米国東部のスラッシュ・メタル・バンドのOVERKILLのヴァージョンが有名な、
The SUBHUMANSの究極のパンク・アンセム「Fuck You」のライヴ映像がクールだ。
DISHRAGSもMODERNETTESもYOUNG CANADIANSのライヴも非常に新鮮。
ライヴはもちろんのことD.O.A.は「World War III」のミュージック・ビデオも面白い。
以上のようなほぼ完奏のもの以外に断片的な映像もたっぷり盛り込まれているが、
その挿入のタイミングが絶妙で全体のスピード感を生んでいる。
いい感じでパンクならではの雑然とした空気感の中でリズムがずっと鳴っているからこそ
この界隈のシーンに馴染みがない方もノせる映画なのだ。

当時からツアーに積極的で紆余曲折を経ながらもコンスタントに活動を続けているD.O.A.の存在が
やはり際立つ。
歌詞も重要なバンドとはいえ頭デッカチとは対極のプリミティヴな歌で、
能書き無しにストレートな音楽そのものの説得力が違う。
リーダーのジョー・シットヘッドのヴィジュアル見たら
枯れた“元パンクス”とは違うことが一目瞭然。
そういう観点で見るとまたほろ苦い映画でもある。

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一般の音楽ファンにも認知度が高い70年代のニューヨーク・パンクやロンドン・パンクはともかく、
70年代末以降のパンク(/ハードコア)の一ローカル・シーンを描いたドキュメンタリー映画というのは、
意外とあまりない。
そういう意味でも非常にフレッシュだし、
日本のバンド以外にはあまり興味がない方にも見ていただきたい。
知っているバンドがあまりないとしても
パンク・ロックが好きならば感じる映画だと断言する。


★映画『ブラッディード・バット・アンバウド』
2011年/カナダ/ビスタ/カラー/デジタル上映/ 75分
9月1日(土)~ 9月28日(金)、東京・シアターN渋谷でレイトショー。
http://www.recordshopbase.com/bloodied_but_unbowed/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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