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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

LYNYRD SKYNYRD『Last Of A Dyin’ Breed』

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名実共にサザン・ロックの雄と言える米国南部フロリダ州ジャクソン出身のバンドが
『God & Guns』Vから3年ぶりにリリースした13作目に数えられるオリジナル・アルバム。


元BLACK CROWSのジョン・コルトが新ベーシストとして加入したとはいえ、
本作のレコーディングはドラムと共にベースも“ヘルパー”が演奏しているが、
むろんまったく問題無し。
74年のヒット曲の「Sweet Home Alabama」級のキャッチーな曲が多く、
それでいて塩辛いスパイスと甘いアルコールが利いており、
問答無用に明快なサザン・ハード・ロックンロールと言い切りたい。
レゲエのリズムが背骨になった曲あり、
重低音がうねる曲あり、
“カントリー・ハード・ロック”と呼びたい曲あり、
ピアノが目立つリリカルなドラマチック・ナンバーありで、
威風堂々。
やさしくストロングな曲がまったりと押せ押せなんである。

唯一のオリジナル・メンバーであるゲイリー・ロッシントン(g)によれば、
「メンバーがスタジオで一緒にプレイして楽曲を作り上げていった」らしいが、
歌を軸にしたテクスチャーの曲ばかりだ。
あらためてノイズ・インプロヴィゼイションみたいなものは非常階段が極めたように思える昨今、
こうやってしっかり曲を書いてプレイしているバンドの地に足の着いたサウンドに惹かれる。

ぼくも80年代までこういうアメリカン・ロックは
ブルースを引きずっていて伝統にのっとっているから“敵”!ですらあったが、
今思えばカンボジアの虐殺者ポル・ポト・・・いや・・・どこぞの原理主義者みたいな頭である。
斬新に見せかけたトリッキーなやつや陳腐なレベル・ミュージックといった、
頭デッカチで実は血が通ってない“唯物史観”みたいな音楽の浅はかさがどんどん見えてくるにつれ、
こういう心と肉の滑らかな汁で潤った響きがリアルに迫ってくるようになった。
生活が聞こえてくるサウンドだからウソがない。
自分を切り開いて歌っている音楽はプリミティヴな感情の震えがナマのままだから人間が聞こえてくる。

だからこそ当代のロック最前線のバンドたちにも命のグルーヴが直結している。
実際どの程度影響を受けているのかはわからないが、
まったりした曲が多いとはいえヘヴィな音作りの本作を聴くと、
MELVINSやHIGH ON FIREBARONESSといった
ハードコア以降の“現在進行形アメリカン・ヘヴィ・ロック・バンド”が、
LYNYRD SKYNYRDの流れもくんでいることがわかる。
あまり直で影響は反映されていないが、
BRUTAL TRUTHのメンバーも大ファンだったりして、
細かいジャンル問わずアメリカンのロックな人間はLYNYRD SKYNYRDファンが多い。
みんな根が不変の音楽性と同じく揺るぎない歌にも打たれているとも思われる。

実にイイこと歌っている。
人生の歌にしてもラヴソングにしても達観したかのように太っ腹。
こせこせしてない。
ジャケットどおりの世界観である。
LYNYRD SKYNYRDは“流行り”に流されて取って付けたメッセージを歌うようなことはない。
そんなのいちばんかっこわるい。
だからこそアルバム・タイトルも意味深長だ。
“すたれる運命にあるものや絶滅しかけの部類の最後の姿”・・・
このフレーズにぼくは“Fuck you”“I don’t care”の心を見る。
自嘲&自虐気味にも映るが、
実は強固な自信に裏打ちされた言葉ということは本作を浴びればわかる。

アルバムのバック・カヴァーに女性二人(参加ミュージシャンだろうか)と共に映るメンバーが、
期待を裏切らないムサいヴィジュアルなのもうれしい。
むろんわざとらしく不潔ってのと違う。
生活がルックスになっている。
77年に飛行機事故で他界した兄の後を継ぐ二代目シンガーのジョン・ヴァン・ザントの
暑苦しすぎず風通しのいい歌声が象徴するように、
煩悩から解き放つ一枚。


★レーナード・スキナード『ラスト・オブ・ア・ダイイン・ブリード』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-14576)CD
12ページのオリジナル・ブックレットに加え、
日本盤は本編とダブらないスタジオ録音の4曲(歌詞付)と「What’s Your Name」のライヴを追加し、
ボーナス・トラックのライヴの曲以外の全曲の歌詞の和訳が読みやすく載ったブックレットも封入。
約64分16曲入り。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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