PURSON『The Circle And The Blue Door』
2013-05-31

英国ではリー・ドリアン(CATHEDRAL、SEPTIC TANK)主宰のRISE ABOVE Recordsからリリースされた、
女性がフロントに立つロンドンの“ドゥーム系バンド”のファースト・アルバム。
本IPSO FACTO(同名異バンドあり)のロザリー・カニンガム(vo、g)以外は
メンバーとしてクレジットされている人間とレコーディングに参加した人間は異なるから、
曲作りもプロデュースも大半を手掛けた彼女が中心である。
今やメタルと歌ものは切り離され区別いや差別される悲惨な状況になってしまっているが、
ヘヴィ・メタルもフォーク・ロックもポップ・ロックも歌ものロックもロックンロールも
すべてロックで語られたオープンな時代の音楽の精を吸った魔力に覆われている。
ギターのリフよりもオルガンやメロトロンとベースが音の軸の曲が多くてビートが効いている。
ロザリーが2000年代後半に率いていた女性バンドのIPSO FACTOはゴシック要素も魅力だったが、
PURSONではもっとサイケデリックに掘り下げたディープなアプローチを試みている。
しなやかな歌と音のDEEP PURPLE・・・と言ったら誤解を与えるだろうか。
オールド・ロックに留まらず、
アンダーグラウンドで太陽を浴びたみたいな60~70年代の“ガレージ・ポップス”や、
1940年代以前の欧州のポピュラー・ミュージック、
さらにキャバレー・ミュージックやソフト・ファンクの趣も漂う。
豊潤そして芳醇。
おくゆかしくはずむ音からほのかな色香が包み込み、
奥にこもった音からはやさしい妖気が放たれる。
それをサイケデリックと言ってもいいだろう。
70年代初頭までのジョニ・ミッチェルが魔女性を帯びたようなヴォーカルにもわざとらしさはない。
たおやかな喉を震わせる。
きゃしゃながらクールに濡れて屹立した歌声が実に魅惑的だ。
まっすぐ力まずに発声しているからこそ
ヴォーカルそのもののサイケデリックな響きでも眩惑する。
“devil”という言葉も使いながら詩のような歌詞でイマジネーションを日常から外にふくらませる。
奥野高久執筆のライナーによればフロントに立つロザリーは現在23歳だという。
幼稚で甘ったれた音楽や映画には辟易することも多いが、
レイドバックした陳腐な大人のロックではなく、
自分のやっている表現に責任をもつという意味での大人のロックに痺れる。
凛としている女性はクールだ。
何度も何度も耳を傾けずにはいられない一枚。
★プルソン『ザ・サークル・アンド・ザ・ブルー・ドアー』(トゥルーパー・エンタテインメント QATE-10039)CD
16ページのブックレット封入に加えて日本盤は、
本編にも入っている先行シングル「Leaning On A Bear」のB面曲を追加した約51分11曲入りで、
ボーナス・トラック以外の歌詞の和訳付。
なおMETAL BLADE Recordsがリリースした米国盤のジャケットは、
バンド名が黄金色でやや大きめで側面のバンド名とアルバム・タイトルも黄金色になっている。
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