SCAR THE MARTYR『Scar The Martyr』
2013-09-27

SLIPKNOTでドラマーとして知られるだけでなくMURDERDOLLSではギターを弾いた、
ジョーイ・ジョーディソンら始めた米国産のニュー・バンドのデビュー・アルバム。
ジョーイはドラムの他にベースとほとんどのリズム・ギターも演奏し、
全曲の作曲を手掛けて共同プロデューサーにもなっている。
他のメンバーは、
元DARKEST HOURのクリス・ノリス(g)、
元STRAPPING YOUNG LADのジェド・サイモン(g)、
そして無名ながらすべての歌詞も書いたヘンリー・デレク(vo)。
さらにNINE INCH NAILSでも演奏してきたクリス・ヴレンナがプログラミングで参加している。
ミックスはSHADOWS FALLやHATEBREEDやHOWLのアルバムでお馴染みのゼウスだが、
FEAR FACTORYのレコーディングでは片腕と言えるほど貢献し続けている
ライス・フルバー(元FRONT LINE ASSEMBLY)がプロデュース。
というわけでインダストリアル・テイストも薄っすらと隠し味の仕上がりになっているが、
シンプルなリズム中心なのが逆に新鮮なジョーイのドラムを核にあくまでも生演奏でぐいぐい進める。
SLIPKNOTのヒップホップ・テイスト減でエクストリーム・メタル二割増しのグルーヴに、
プリミティヴな民俗音楽のビートも楽曲に動脈注射して躍動している。
やはりジャンル問わずドラム叩きが作曲するバンドは強い。
ステージと同じくソングライティングでも曲の後ろから楽曲全体を見て全パートのことが頭に入っていて、
曲でコスモス(小宇宙)を描いているからだ。
たいがいドラムがリードするような曲になっているから歌が前面に出ていてもリズムにぬかりがない。
音自体はエクストリーム・メタル以降の鳴りだが、
曲は半数が6分以上の長さの曲ながらサビを設けた歌をメインに置いた作りでもある。
しっかりした発声のヘンリーも妖しくブルータルなヴォーカルで健闘し、
中核を成すメロディアスなパートもこなれてないことを強みにした生々しさ。
“forgive, but never forget(許そう、だが二度と忘れない)”という一般的なフレーズを
「Never Forgive Never Forget」とアレンジして綴る歌など、
やはりデス・メタルとドゥーム・メタルの価値観にも彩られている。
ナチュラルなヴォーカルと抜けのいいドラムとの“デュエット”もクールだ。
ヴォーカルも楽器もバンド名どおりに殉教者に深々と傷跡をつける歌心がデリケイトに震えている。
潔癖症の歌なんか断罪すればいいのだ。
ヴォーカルはよく歌っているしギター・ソロが挿し込まれるところひっくるめて
2013年型のハード・ロック/ヘヴィ・メタル!と言いたいところだが、
日本盤は、
KILLING JOKEがファーストの『Killing Joke』(80年)に収めた「Complications」のカヴァー入り。
これがまた完コピーに近いからこそSCAR THE MARTYRのパンク気質が浮き彫りになっている。
サブ・プロジェクトとして埋もれさせたくない一枚。
★スカー・ザ・マーター『スカー・ザ・マーター』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-15287)CD
十字の形状のブックレット封入で、
日本盤は本編の歌詞の和訳とボーナス・トラック1曲追加の約77分15曲入り。
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