片山広明×石渡明廣×藤掛正隆『8 Seasons』
2013-10-31

2012年5月13日に東京・仙川のジェニーズ・キッチンで行なったライヴを8曲収めた約46分のCD。
片山広明(テナー・サックス)は渋さ知らズで活動してきた以外にソロ・アルバムも強力で、
石渡明廣(エレクトリック・ギター)は片山や渋谷毅のグループなどでも活動し、
藤掛正隆(ドラムス)はZENI-GEVAや#9を経て最近は渋さ知らズを含む多彩な活動を展開している。
かつての剛腕ぶりをキープしつつ飄々と図々しく胆力十分の
片山のサックスがメロディをリードするジャズ・アルバム・・・・と思いきや、
そうとも言い切れない。
片山の演奏はいわゆるフリー・ジャズとは一線を画す自由形のジャズと言えるかもしれないが、
季節が変わるように曲が進むにつれて表情が推移し、
石渡と藤掛の中から民俗音楽やらダブやらファンクやらのグルーヴが薄っすらと芽を出していくのだ。
石渡はジャズ・ギターっぽい演奏があまりなく音が浮遊し、
ベースのような音で転がりながらうねるパートが多い。
藤掛はジョン・ボーナムを敬愛してイギー・ポップの後ろで叩きたがっていることも納得ながら
繊細なタッチでドラムを震わせる。
片山は太いシャープかつ優雅な太い響きで応える。
日常生活だけでなく音楽も他人の“音の声”に耳を傾けながらの交感がいかに大切かも見えてくるし、
四季ならぬ“八季”を描いていく人間も見えてくる演奏だ。
豪放磊落でありながら軽妙洒脱で粋なパフォーマンス、
ジャズの細道をぶっとく進む名演である。
本作リリース・レーベルの主宰者でもある藤掛による録音と編集に加え、
中村宗一郎によるマスタリングで盤石の仕上がりの一枚。
★片山広明×石渡明廣×藤掛正隆『8 Seasons』(FULLDESIGN FDR-2017)CD
薄手のブラケース仕様。
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