IMPERIAL STATE ELECTRIC『Reptile Brain Music』
2013-11-25

元ENTOMBED~HELLACOPTERSのスウェーデン出身のニッケ・アンダーソン(vo、g他)率いる
パンク・ロックンロール・バンドの『Pop War』(2012年)以来のサード。
日本発売ではカヴァー中心の編集盤『Radio Electric』に続くCDだ。
プロデュースを行なったニッケが
“デス・メタル仲間”の元DISMEMBERのフレッド・エストビーと共同で所有しているスタジオで、
彼と一緒に録音とミックスを手がけたアルバムである。
もともとニッケのソロ・プロジェクトとして始まり、
ライヴではヴォーカル/ギターに徹するニッケが多少ベースやドラムも演奏しているとはいえ
ますますバンドらしくなっている。
本編の曲のうち4曲は、
DATSUNSのフロントマンであるドルフ・デ・ボースト(b、vo)らの他のメンバーも曲作りに参加し、
トビアス・エッジ(g、vo)が一人で書いた曲や、
その二人それぞれがリード・ヴォーカルを取った曲も含まれている。
パワー・ポップもソウル・ミュージックもガレージ・パンクもブルースも溶け込んでいる。
言ってみれば末期を除くTHIN LIZZYみたいにシンプルながらも言葉にしにくいサウンドなのだが、
もちろんパンク、
そしてエクストリーム・メタルのフィルターを通したロックンロールである。
バンドによってはスラッシュ・メタルやデス・メタルにもロックンロールのテクスチャーとグルーヴを見出す、
ニッケならではの音楽的洞察力と“体現力”に裏打ちされている。
デス・メタルにロックンロールのノリを加えたENTOMBED時代のニッケの演奏パートはドラムだったが、
やはり曲作りの中心だった当時の流れでデス・メタルのダシはさりげなく効いており、
ベーシックなテクスチャーの曲でも金属質の邪悪性が滲む音色が他のバンドと一味違う。
そこが伝統芸能のロックンロールやパワー・ポップが好きな人にすれば“メタル”なのかもしれないが、
エクストリーム・メタルもOK!で内向きの守りに入らない新世代のロックンロール・ファンに
愛されるゆえんである。
ベースとドラムのビートの音が大きくてアタック感が強くパーカッシヴなのもポイントが高い。
粗いギターで押すだけではなく歌心があるバンドだ。
もちろん明らかにパンク・ロック以降のロックンロールだが、
パンクによくある“わざとらしさ”は微塵もない。
言い訳なんかせず直感でやればいいのだ。
というわけで繊細なヴォーカルにも耳を傾けたい一枚。
ボーナス・トラックで聴けるアコースティック・ナンバーも渋くて泣ける。
★インペリアル・ステイト・エレクトリック『レプタイル・ブレイン・ミュージック』(トゥルーパー・エンタテインメント QATE-10048)CD
日本盤は本編の歌詞の和訳が付きボーナス・トラック2曲追加の約40分14曲入り。
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