FU MANCHU『Gigantoid』
2014-06-30

80年代終盤結成でストーナー・ロックを代表するカリフォルニアのバンドによる、
オリジナル・フル・アルバムとしては『Signs Of Infinite Power』(2009年)以来の11作目と言える作品。
FU MANCHUのレーベルからのリリースだ。
オリジナル・メンバーは、
USハードコアとストーナー・ロックのミッシング・リンクのバンドであるVIRULENCE
(SOUTHERN LORD Recordingsから出ている編集盤CDは必聴)でギターを弾いていた
スコット・ヒル(vo、g)のみではある。
けどもう一人のギタリストとベーシストは90年代半ばから不変で、
ドラマーも2000年代に入ってから不変だ。
音楽性も不変である。
自分らをそのまんま出せばこうなる。
肝が揺るがないからそれで十分にイケるのだ。
守り入るとかってのじゃない。
何にしてもいくら自分自身がないからといって策を弄するとロクなことはない。
脳ミソと心臓にシールドを直でブチこんでファズ鳴らせばいつでもクールなFU MANCHUだ。
STOOGESのサイケデリック・ロックンロールと
BLACK SABBATHのヘヴィ・ロックのアメリカン・ブレンドを、
カリフォルニアやボストンをはじめとする80年代前半のUSパンク/ハードコアのアタック感で叩きつける。
やや“先輩”のMUDHONEYとは音楽性もヴォーカルのヘタレ具合も近いが、
FU MANCHUの方がちょいヘヴィだ。
もちろんどのアルバムも“金太郎飴”ってわけじゃない。
今回はスロー・パートがやや多めで、
カリフォルニアの砂漠で太陽をサンサンと浴びた“ドゥーム・ロックンロール”がふてぶてしい。
どの“宇宙”にも飛べるゆるさが身上にもかかわらずレイドバックと無縁なのは、
やはりハードコア以降の強度に貫かれた音だからである。
適度にゴツくてダイナミックなレコーディングの仕上がりも功を奏している。
それでいてギターにもベースにもドラムにも歌心が滲み、
8分近くのスロー・ラスト・ナンバーにおける透きとおった繊細なサイケデリック・トーンも捨てがたい。
ここ数年は車関係のジャケットではなく
“infinity(無限)へのトリップ”をイメージさせるアートワークになっているが、
今回のサウンドと曲名もジャケットのイメージに沿っている。
押しつけがましい気合は勘弁だが、
へなへなヴォーカル(だがこういう声が80年代初頭のUSハードコアの主流)もひっくるめて
なかなかガッツある。
KYUSS時代は近いところにいたジョシュ・ホーミの
QUEENS OF THE STONE AGEみたいな“進化”もそれはそれでいい。
でもやっぱりFU MANCHUが好き!と言い切りたいアルバム。
だって永遠に“いなたい”んだもの。
★FU MANCHU『Gigantoid』(AT THE DOJO ATD008)CD
約35分9曲入り。
スポンサーサイト