VIBRATORS『Punk Mania - Back To The Roots』
2015-04-22

70年代後半のロンドン・パンク・ムーヴメントの中からデビューしつつも“ポッと出の新人”ではなかったバンド、
The VIBRATORSの新作。
昨秋リリースされている作品にもかかわらず今頃ゲットしたが、
昨年のベスト・アルバムのリストに割り込ませるべき今回もウルトラ・グレイトな作品である。
リーダーのノックス(g、kbd、vo)は数年前に“バンドから離れる”という宣言をしているし、
実際ノックスの姿はオフィシャル・サイトのメンバー写真から外されている。
だがMOTORHEADのレミーと同じく今年70歳になるノックスは、
2013年の前作『On The Guest List』同様に今回も全面的に参加。
大半の曲を一人で書き、
歌も演奏も担当している。
ツアーには参加しないようだが、
レコーディングでは変わらずノックスが中心メンバーということをあらためて知らしめるアルバムだ。
前作に引き続きVIBRATORSのオリジナル・ベーシストのパット・コリアーが
バンドと一緒にプロデュースしている。
オリジナル・ドラマーのエディーも元気で怪力ビート健在である。
渋く繊細なノックスの歌をはじめとするヴォーカルは色っぽい。
ギターもギンギン鳴っていながらたいへん艶っぽい。
盟友UK SUBSで長年弾いてきたことで知られるニッキー・ギャラットがギラギラしたギターで5曲に参加
(1曲ソングライティングにも関わっている)。
前作から短いインターヴァルにもかかわらず、
アルバム本編はすべてオリジナル曲で固めたソングライティングの妙味に痺れるしかない。
捨て曲がひとつもない。
ノックス以外のメンバーが一人で書いたハード・ロッキン4曲もいいアクセントになっていて、
なかなかヴァラエティ豊かな作品に仕上がっている。
テキトーにそれっぽいノイズでごまかしたやつとか、
小賢しくギミックでごまかしたやつとか、
まわりのみんなと一緒のメッセージでごまかしたやつとか、
戦略を立てることに一生懸命で中身がない頭デッカチのやつとか、
飽きたからとかいってヤリ捨ててやってることコロコロ変える無責任なやつとかみたいな、
ウソが一切ない。
音作りもシンプルなのに、
いやシンプルだからこそ深い。
それでいてさりげなくアレンジは凝っている。
ひとつひとつの音も声も旨みいっぱいでパンチもたっぷり効いている。
いろんな音楽のダシが染みた甘酸っぱくワイルドなパンク/パワー・ポップ/ロックンロールの連打で、
しあわせ元気になれる。
ロートル・バンドなんて絶対に呼ばせない。
まさにバリバリの現役のサウンドだ。
ティーンエイジャーのとは言わないが、
二十代のパンク・ロック、
いやノックスに焦点を当てるとすれば、
『Pure Mania』(77年)でアルバム・デビューした三十代の頭そのままのパンク・ロックンロールである。
変わってない。
若作りしたサウンドではないにもかかわらず若い。
天然でいつのまでも若く瑞々しい。
だからひたすらほんとうにかっこいいのだ。
とても大切なもの、
とても大切なことが、
すっぴんのまま伝わってくるアルバム。
全力大スイセン。
★VIBRATORS『Punk Mania - Back To The Roots』(CLEOPATRA CLP-200902)CD
本編14曲で、
FLAMIN’ GROOVIESの「Slow Death」のカヴァーを含むボーナス・トラック3曲入りの約49分のCD。
薄汚れたデザインにふさわしいように意識したのか、
僕が買ったCDのブックレット(といっても一枚の紙を二つ折りしただけの簡素なもの)の紙の端は、
裁断が乱暴だったのかギザギザが目立ち、
紙全体がくたびれているが、
それはそれで味になっている。
実際のジャケットの“V字”は↑の画像より赤みが強いです。
スポンサーサイト