町田町蔵+北澤組『腹ふり』
2015-06-29

92年にリリースされた町田町蔵+北澤組のデビュー・アルバムの
最新デジタル・リマスタリングSHM-CDでの紙ジャケット・リイシュー盤。
ライナーを書かせてもらいました。
例によってここでは極力ライナーとダブらないように書く。
もちろん町田町蔵(町田康)が発表したアルバムの中でも最高傑作のうちの一枚だが、
コンスタントに音楽活動を続けていたとはいえ
町田関連のオリジナル・フル・アルバムの音盤リリースは、
INUの『メシ喰うな!』以来の11年ぶりであった。
というわけで音源でしか町田をチェックできなかったファンにとってはもちろんのことだが、
その間のライヴを観てきているファンにとっても衝撃的な内容の一枚だった。
まずは反復を特徴とするブラック・ミュージック色の強いサウンド。
北澤組の音楽趣味の色が強いのだろうが、
R&B~ファンクやジャズのグルーヴ感に貫かれ、
奇天烈なアコースィック・ブルースも披露している。
それまでの町田の作品を考えると意外にも思えるが、
ライナーに付け加えると、
「メシ喰うな!」をはじめとしてINUの曲で町田が作曲した曲は反復が肝になっていることを思えば、
リフレインが多い『腹ふり』に町田がハマっていることも何ら不思議はない。
今回のCDはビッグ・スケールの音像の立体感が際立ち、
LED ZEPPELINの中期を思わせたりもする。
ヴォーカルの重ねやパーカッションの妙味も昔のCD以上に楽しめる仕上がりだ。
INU時代を知っている人にとっては肯定性が光る歌詞も衝撃的だった。
町田康としての作家活動に直結もしている。
と同時に、
これぞパンク!としか言いようがない言葉が豪胆にロックンロールしまくっている歌詞なのである。
オリジナルCDと同じく今回のリイシュー盤にも歌詞カードは付いてない。
『町田康全歌詩集』などの町田康の本に載せてはいるから公開したくないということではないが、
少なくてもCDに耳を傾ける際は
歌詞を読まずに声の響きと同時に瞬間的に感じてほしいということかもしれない。
もちろん“パンク歌手”町田のヴォーカルは十分ほぼすべての言葉が聞き取れる発声だ。
アルバムにしろシングルにしろ日本の歌手やバンドには歌詞カードが付くのがレコード時代から一般的だが、
そもそも昔から欧米などで制作されたレコードやCDには歌詞カードが付かないことも多いではないか。
僕も初めて輸入盤を買った時は歌詞カードが付いてなくて“不良品”と思ったぐらいだが、
そもそも歌詞は読むものではなく聴くものということである。
ダイナミックな音の渦の中で突き上がってしまいには歌い上げる強烈なまっすぐのこの歌唱を浴び、
そんなことをあらためて思う。
解き放たれている圧倒的な大作だ。
★町田町蔵+北澤組『腹ふり』(徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA10114)SHM-CD
約76分15曲入り。
ジャケットには厚手の紙が使われ、
オリジナルCDと同じく荒木経惟撮影の20ページの“町田町蔵写真集”が封入されている。
なお実際のジャケットの地の色は↑の画像より白っぽい。
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