BETWEEN THE BURIED & ME『Coma Ecliptic』
2015-07-27

カリフォルニアの“メタル・ハードコア・プログレッシヴ・ロック・バンド”の、
『The Parallax II: Future Sequence』以来になる約3年ぶりの7作目のオリジナル・アルバム。
ジャケットのバンド名の表記が
これまでの“BETWEEN THE BURIED AND ME”から“BETWEEN THE BURIED & ME”に変わっているが、
ブックレットのクレジットの方は“BETWEEN THE BURIED AND ME”のままだから深い意味はないとも思う。
高名なプロデューサーにも頼めそうなポジションになっているだろうが、
付き合いが長くて気心の知れたジェイミー・キングと今回も共同プロデュース。
バンドの自然な成長をレコーディングしてきた者との作業も功を奏し、
急激な変化をすることなくナチュラルにプログレッシヴなロックを推し進めた。
今回チェロ以外はメンバー5人だけでプレイしている。
アレハンドロ・ホドロフスキーの映画を思わせるジャケットが、
これまでの彼らの作品にはない実写映画風だけに驚きだ。
最近のDREAM THEATERもイメージするが、
やはりエリート・ミュージシャン集団の彼らほどイイ意味でカッチリしてない。
演奏技術の問題もあるのかもしれないが、
いくらテクニカルなアプローチを試みてもテクニカルに成り切らないのだ。
異端ながらハードコア・シーン出身の性(さが)ってやつである。
とはいえ、
ときおり入る咆哮やハードなリフなどの(ニュースクール/メタル・)ハードコアの名残はますます減っている。
音的にはピアノをはじめとする鍵盤楽器がリード。
80年代以降も含むKING CRIMSONの“数学的な組み立て”に
サイケデリック要素が抜けてからの70年代のPINK FLOYDの理知性を絡めたかののようで、
大半の曲が6分以上だ。
でも意外と取っつきやすい。
もちろん複数のメンバーがとるヴォーカルはヘヴィ・メタルの伝統にのっとってなく、
大半を占めるいわゆるノーマル・ヴォイスは一般的なポピュラー・ミュージックの歌唱に近く、
ところによっては甘い喉も震わせるのだ。
後期BEATLES風のメロディとコーラスも目立ち、
変拍子を使っていて曲が長くてもキャッチーな落としどころを設けている。
曲間はほとんとなく、
The WHOの『Tommy』『Quadrophenia』やPINK FLOYDの『Wall』もイメージし、
これまでのアルバム以上に一種の“ロック・オペラ”に仕上がっている。
物事にも人間にも時間をかけて向き合うことがなくなってきて飛ばし“聞き”が当たり前で、
結局周りに流されてトレンド軽薄短小お手軽の今、
アルバム一枚トータルで聴かせる本作が商業主義とはとうてい思えない。
部分部分ポップだろうとこんな大仰な構成のこのアルバムがコマーシャルとは思えない。
愚直だ。
でも、やる。
だって周りに合わせることがいちばん醜いから。
新種のプログレとしても楽しんでいただきたい一枚。
★BETWEEN THE BURIED & ME『Coma Ecliptic』(METAL BLADE 3984 15392-2)CD
約69分11曲入り。
少なくても僕が買った↑のカタログ・ナンバーのCDは、
8ページのブックレットが綴じ込まれたハードカヴァーのブック仕様のバッケージだった。
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