MORBID EVILS『In Hate With The Burning World』
2015-09-30

フィンランドのグラインドコア・バンドROTTEN SOUNDのフロントマンである、
Keijo Niinimaa(vo、g)が中心になった“スラッジ/ドゥーム・コア・バンド”のデビュー作。
冷厳な暗黒サウンドでゆっくりと押しつぶして苦しみが解放される佳作である。
いかにものバンド名とアルバム・タイトルにふさわしい“確信犯”ならではのサウンドだ。
メタル寄りっぽいイメージのバンド名ながら、
同じくグラインド・コアの“深化形”であるCORRUPTEDやDYSTOPIAともリンクする音だが、
“後追い”ならではのシンプル音のテクスチャーだからこそストレートなノリの音圧で押す。
ROTTEN SOUNDでも匂わせているメタル・クラストやデス・メタルのリフも織り込み、
ドゥーム・メタルやブラック・メタルの終末感のダシも効き、
ずっしりとズブズブズブズブ落とし込んでいく。
ミニマルな曲にもかかわらず、
転調のセンスも良くて聞かせどころをさりげなく設けていて飽きない。
個々の音の響きがクリアー(not クリーン)で、
シンバルも多用して適度にタメの効いたリズムで打ち鳴らす無慈悲なドラムも鮮やかに鳴り、
アルバム全体がパーカッシヴだ。
徹底してスロー・テンポだが、
牛歩のドライヴ感がずっとある。
追いつめて、追いつめて、圧殺する。
「Cruel」「Crippled」「In Hate」「South of Hell」「Pollute」「Burning World」
といった曲のタイトルも“いかにも”で、
SLAYERの「South Of Heaven」に引っかけたかのような「South Of Hell」も含めて潔い。
野太い声がゆっくりと吐く歌詞には“ヤツら”なんていない。
一人称と二人称しかない。
人間すべてが“共犯者”みたいな歌い口がとてもリアルだ。
浮ついた焼き直しのメッセージ・ソングと違い、
ここいらのバンドは自分自身のはらわたから言葉を搾り出している
音と共振した必要最小限の簡潔な言葉だからこそ確実に殺る。
でも歌詞に頼ったバンドでもない。
サウンドそのもので目覚める。
音が激しければいいってもんじゃないが、
大層なことを歌っていても響きが生きていなければ結局は頭デッカチに聞こえてしまう。
煩悩と葛藤の表われである軋みが震えているものこそ信じられる。
ずっぽりとハマる一枚。
オススメ。
★MORBID EVILS『In Hate With The Burning World』
12ページのブックレット封入の薄手の紙ジャケット仕様の約44分6曲入り。
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