fc2ブログ

なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ザ・デクライン』

Dec1_B1.jpg


ハリウッド映画『ウェインズ・ワールド』(92年)を手がけたペネロープ・スフィーリス監督による、
『ザ・デクライン』シリーズ3部作の第一弾。
79年の12月から80年の5月にかけてLAで撮影された歴史的なLAパンク・ドキュメンタリーである。

実はパンフレットやプレス資料用に3000字前後の文章を書かせていただいているので、
それとあまりダブらないように必要最小限の情報と補足したい見どころなどを簡潔に書いてみる。


登場するバンドは、
BLACK FLAGGERMS、X、CATHOLIC DISCIPLINE、Alice Bag BANDCIRCLE JERKSFEARで、
全バンドのしっかりした映像の数曲分のライヴが楽しめるし
(英語でも字幕を出している数曲の歌詞はその日本語字幕もあり)、
最初の4バンドは各々の“アジト”でのインタヴューも収めている。

Decline1_main_[Darby_Crash]s
ダービー・クラッシュ(GERMS)

BLACK FLAGはグレッグ・ギン(g)、ゲイリー・マクダニエル(b)ことチャック・ドゥコウスキー、
ロボ(ds)、ロン・レイズ(チャヴォ・ペデラスト)のメンバー時代で、
ロン在籍期間は短かったから特に貴重な映像だ。
棲家にしていた教会内のインタヴューにはロボが不参加だが、
他の3人は非ヴァイオレントな意味でアブない笑顔を浮かべ、
“神経衰弱”や“鬱”というタイトルの曲をやっているのもダテじゃないことが伝わってくる。

Xはまったりした佇まいで“ハリウッド・パンク”の代表格としてのアート性も香る。

GERMSは厨房に立つダービー・クラッシュも見どころだ。

CATHOLIC DISCIPLINEはシンガーがスラッシュ・マガジン(パンク・ファンジン)の記者で、
“アンチ馴れ合い”のライターとしてのアティテュードにちょっとした共感を覚える。

Alice Bag BANDは元BAGSのアリス・バッグのバンドで彼女のファッション・センスも素敵。

CIRCLE JERKSはBLACK FLAGのオリジナル・シンガーのキース・モリスと
BAD RELIGIONのギタリストでもあるグレッグ・ヘトソンを擁したバンドで、
速い!軽い!短い!の三拍子揃っていた初期の彼らの魅力炸裂ライヴに観客も肉弾戦で応えている。

FEARは、
USAのオトコ臭さムンムンの好戦アティテュードとキャッチーなパンク・ロック・チューンのブレンドが、
ラガー・ビールみたいな喉ごしでたまらない。
ゲイや女性をはじめとして他人を不快にさせること必至の絶好調のMCなどの素行不良ぶりも、
後にリー・ヴィング(vo)が役者としても脚光を浴びただけに少なからずカメラを意識していたと思われる。
監督によれば笑いを狙うべく映画で採用したシーンとのことだし、
ANAL CUNTの曲名や歌詞みたいな調子で楽しむのが勝ち!である。


この中で当時アルバムをリリースしていたバンドはGERMSのみで、
CATHOLIC DISCIPLINE、Alice Bag BAND、CIRCLE JERKSに至ってはレコード・デビュー前だ。
というのもあってか登場した大半のバンドに対して監督は音楽や曲のネタをほとんど訊いてないのだが、
にもかかわらずバンドのキャラを浮き彫りにした手腕がお見事。
というわけで個々のバンドのことを知らない方でも楽しめる。

上記のバンドのライヴを観に行っているパンクスの話や物腰も興味深く、
全部ひっくるめてニヒリズムに覆われている。
そういったパンクの原点を思い知らされるヒリヒリした映画だ。


★『ザ・デクライン』100分
(C) 1981 Spheeris Films Inc. All Rights Reserved.
新宿シネマカリテ 3/19(土)〜25(金)
渋谷HUMAXシネマ 3/26(土)〜4/1(金)
http://decline.jp/


スポンサーサイト



 | HOME |  古い日記に行く »

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (15)
HEAVY ROCK (274)
JOB/WORK (427)
映画 (395)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (56)
METAL/HARDCORE (53)
PUNK/HARDCORE (500)
EXTREME METAL (150)
UNDERGROUND? (189)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (159)
FEMALE SINGER (51)
POPULAR MUSIC (41)
ROCK (101)
本 (12)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

Template by たけやん