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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

The HARDY ROCKS at 高円寺HIGH 4月28日

HARDY ROCKS


灰野敬二の新バンドのデビュー・ライヴを観てきた。

ジュリエッタ霧島(b)が灰野の追っかけだったというキノコホテルがまずプレイし、
サポート・アクトに留まらぬ見せどころ満載のパフォーマンスを披露してくれたあと、
The HARDY ROCKSが登場する。
メンバーは灰野敬二(vo他)、川口雅巳(g)、山崎怠雅(g)、なるけしんご(b)、片野利彦(ds)である。

70年代末結成の不失者にはサイド・ギタリストを含む4人編成やドラマー無しのデュオ編成の時期もあったが、
灰野がやってきているバンドはほとんどがトリオ編成である。
なぜかと言えば、
ジミ・ヘンドリックスのバンドやBLUE CHEERのグレイトな時期やMOTORHEADのグレイトな時期が
みんなトリオだったことが暗示している。
そんなバンド歴だからこそThe HARDY ROCKSの編成は異色だ。
5人組でカヴァーをするバンドという点で2013年末から数回ライヴをやったHARDY SOULの流れにあるが、
リズム隊が違うThe HARDY ROCKSはバンド名どおりにもっとロックだ。
歌謡曲だろうがソウル・ミュージックだろうが灰野がやれば全部ロックになるってことを示すようなバンドでもある。

カヴァーをやるバンドという点では、
灰野がヴォーカル/ギターで川口がベーシストを務めて90年代末~2000年代初頭にやっていた哀秘謡を思い出す。
哀秘謡は歌謡曲などの日本の曲はもちろんのこと英語の曲も日本語でやったバンドだったが、
The HARDY ROCKSはいわばその反対。
ある意味“洋楽をやる”バンドで、
歌謡曲も英語の歌詞でカヴァーしていた。

入場の際に観客にセットリストが配られた。

HARDY ROCKS 20160428セットリスト

「Gimme Some Lovin」はインストで、
本番では「It’s A Man’s, Man’s, Man’s World」の前にジーン・ヴィンセントの「Be-Bop-A-Lula」もやった。

十代の頃に好きで歌っていた曲のカヴァー集と言えそうなほど灰野の原点の連なりに思える。
「Born To Be Wild」でタンバリンをスティックでひっぱたいた他は灰野がヴォーカル・オンリーで迫り、
そういう点でも灰野が公に出た最初のバンドである70年代初頭のロストアラーフ(LOST ALARPH)を思い起こさせ、
つまりこれまた原点である。

楽器から解き放たれて自由度五割増しになった灰野は、
ギターなどを演奏するステージ以上に耳と目で同時に感じさせるパフォーマンスを繰り広げ、
ほぼ全編ハンド・マイクで歌いながら激しい舞踏のような自然体の動きでも引きつける。
一方で、
ときおり灰野はある種の指揮者のような感じで他のメンバーに向き合って“ヒント”を与え、
自分の子供世代の4人に肉体でロックを伝承しようとしているようにも見えたが、
そういう動きもまたナチュナルなステージ・アクションとして見せるのであった。

楽曲を解体して無限大にふくらませるサイケデリックなトーンやリフやリズムの組み立て方が灰野ならではで、
<灰野が演奏しないで歌と“プロデューサー”で参加している不失者>がカヴァーしている様相だった。
原曲の肝を尊重しつつ灰野のやることだからアレンジがそのままのはずはない。
特に歌謡曲はロックなリフとビートの音に加えて英語に“リメイク”された歌だから、
哀秘謡でもカヴァーしていた「黒い花びら」や「骨まで愛して」も、
よぉーく耳を傾けなければわからなかった。

英語の曲の方は、いくら感情が膨張した灰野の歌唱でも歌詞が同じと思われるからなんとかわかる。
一番原曲に近かった「Born To Be Wild」は
HIGH RISEを百万倍ワイルドに加速させたみたいな超絶プレイで、
まさに“ボーン・トゥ・ビー・ワイルド”な灰野の真骨頂であった。
MC5のカヴァーでも知られる「It’s A Man’s, Man’s, Man’s World」のエクストリームなソウル歌唱にも痺れた。
極上ドゥーム・ロック仕立ての「In My Room」と、
原曲ではツー・ビートのパートをブラスト・ビートで走った「Witch」の解釈にも苦笑しながら殺られた。

ロックの魔術性もさることながら、
ロックのカッコよさをひたすら体感した。
天然の歪みのヴォーカルに悶絶しっぱなしの中で灰野のオリジナル曲の元ネタ探しも面白かった。
やっぱり音楽でもなんでも発見が無数の表現はエキサイティングでたまらないのだ。
こうなったらもう、
MOTORHEADやウィルコ・ジョンソン関連やジョニー・サンダース関連やONLY ONESやCHAOS UKも
やってほしいと思わずにはいられない。

歌詞がすべて英語だからか別れの一言もいつもの「どうもありがとう」ではなかった。
灰野が照れくさそうに「サンキューベリーマッチ」と言っていたように聞こえた。

久々に打ちのめされた。


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
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