TYPHUS(チフス)『TYPHUS(チフス)』
2016-08-31

現GAUZEのシンが中心になって80~81年にやっていたパンク・バンドの音源集。
中村宗一郎のリマスタリングも奏功し、
スタジオ録音の曲は音質良好でライヴ・テイクも音の分離はまずまずだ。
イズミ(vo~後にあぶらだこ)+タム(g~後にThe STALIN~G-ZET~ブラッドベリ)、
シン(b)、タク(ds~後にスティグマ)での録音が19テイク、
タク(vo、ds)+タム(g)+シン(b)での録音が2テイク、
イズミ(vo、g)+ロミ(vo)+シン(b)+タク(ds)での録音が5テイク入っている。
80年10月のスタジオ・リハーサルの7曲、
80年12月のスタジオ・リハーサルの6曲、
80年10月のスタジオ・ライヴの5曲、
81年1月11日録音のソノシートの4曲(遠藤ミチロウのPOLITICAL Recordsからのリリース)、
81年2月8日の新宿JAMデビュー・ライヴの4曲が収録されている。
70’sパンク・ロックとハードコア・パンクの間を突き進むハード・パンクといった様相だが、
ハードコア・パンクの原石がギラリと光りながら転がっているサウンドだ。
同じ曲でも録音時期が後になるにつれて速くなっているところがポイントで、
1~3ヵ月違うだけでもビート感がずいぶん違う。
いかに短期間で加速していったかも伝わってくるCDなのだ。
ほとんどツー・ビートでもちろん速いが、
ところによってはMC5みたいだしサーフ・ロックやR&Bも自然と溶け込んでいたように聞こえる。
UK SUBSを思い出したりもするが、
全体的にはRAMONESがカオティックにスピードアップしたかのようだ。
といっても
『Too Tough To Die』以降のRAMONESが時々やったハードコア・パンク風の曲よりしなやかで、
パンク・ロック特有のポップな隠し味も十分なところにうならされる。
やはりベースが目立つが、
体裁を気にしてないヴォーカルも無茶していて素晴らしい。
本作の14曲目から18曲目までのテイクが入った5曲入りのプロ・コピーのカセット作品を売っていた、
東京のレコードショップBASEの本作に関する説明文が興味深い。
女性リード・ヴォーカルの曲の「ノータッチ」と「万引き」が、
それぞれSLITSのジャケ無しタイトル無しのオフィシャル・ブートレッグに入っていた
「A Boring Life」と「Slime」のカヴァーという説を唱えているのだ。
聴いてみて、確かに、なるほど、“リメイク”にも聞こえる。
ちょっと意外なルーツでTYPHUSのサウンドがハジけている一因がわかろうってものだ。
洋邦問わずパンク・ロック/ハードコア・パンクが好きなら“必ず必聴”。
★TYPHUS(チフス)『TYPHUS(チフス)』(スーパーフジ ディスク FJSP265)CD
紙一枚ながら厚手で重み十分のジャケットがプラケース入った仕様のパッケージの
約43分26曲(全13曲26テイク)入り。
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