BOSS HOG『Brood X』
2017-05-30

JON SPENCER BLUES EXPLOSIONのフロントマンのジョン・スペンサー(g、vo)と
その奥さんのクリスティーナ・マルティネス(vo)が中心になった米国のバンドが、
フル・アルバムとしては17年ぶりにリリースした4作目。
日本でも盛り上がった90年代の状況が噓のように
JON SPENCER BLUES EXPLOSIONの方も地味な存在感になっているが、
ジョン・スペンサーはヴィジュアル的にスター性十分で
やってきた音楽が鮮烈だったから目立っていただけである。
彼自身はロッカー!というより地味なミュージシャン気質の強い人だし、
クリスティーナも超美人ながら野心めいたものをあまり感じさせない。
そんな悠々自適ぶりがイイ感じで表れている。
録音とミックスは、
FUCKED UPやKILLSも手掛けてきた人で、
GRAVITY Recordsから2001年にアルバムも出したSEA OF TOMBSを
マリオ(CLIKATAT IKATOWI~ROCKET FROM THE CRYPT~OFF!~EARTHLESS他)
とやっていたビル・スキッベ。
こういう人脈も、
アメリカのパンク/オルタナティヴ・ロックの地下シーンの流れとつながりが見て取れて興味深い。
“おしどり夫婦”バンドとも言えるが、
鍵盤楽器奏者を除いて95年のセカンド・フル・アルバム『Boss Hog』からメンバーは不変である。
リズム隊の2人のウェイトも高く、
5人で曲を作ったことが伝わってくるバンド感バッチリのヴァラエティに富むアルバムだ。
夫唱婦随ならぬ“婦唱夫随”バンドだけに、
“アイク&ティナ・ターナーのオルタナティヴ・ロック解釈路線”を推し進めている。
一回聞いたら忘れないオープニングのオチャメな変態フリーキー・ギターだけで勝負は決まった。
全体的に楽曲は多彩ながら“ガレージR&B”と呼びたくなるサウンドで、
80年代後半のPUSSY GALORE時代にジョン・スペンサーがカヴァーしていたBLACK FLAGを
ちょい思い出すパンク・ロック・チューンも楽しい。
もちろん音はシンプルながら練っていて、
ギターの音数は少なく中低音域が協調された音作りでまったりとグルーヴし、
適度に腰が砕けたスリージー&クールな音の色気もバッチリだ。
デュエットのパートももちろん聴きどころだが、
さりげなく深みを増したクリスティーナのヴォーカルにもびっくりした。
いかにも歌が上手い人!の調子で歌い上げるわけではにないが、
“インディ・ロック女子”とは一線を画す本格派志向も顔を覗かせ、
特にラストのブルース・ナンバーが白眉である。
見直した。
というか惚れ直した。
お見事。
★BOSS HOG『Brood X』(IN THE RED ITR 311)CD
ジャケットの現物は↑の画像より黒色が強めでステッカーは外ビニールに貼られている。
LPヴァージョンのアルバム・カヴァーが内側にプリントされた二つ折りカードボード仕様の
約34分10曲入り。
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