なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ウィッチ』

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原題も“魔女”というそのものズバリのタイトルで迫る2015年の米国のホラー/オカルト映画。

ホラー映画といっても残酷なシーンはストイックなほど必要最小限だが、
だからこそ派手な出血映画の百万倍ダメージが大きい。
じわじわ憑かれていくような映画である。

サブ1

1630年の米国北東部のニューイングランド地方が舞台。
父ウィリアム(ラルフ・アイネソン)と母キャサリン(ケイト・ディッキー)は、
5人の子供たちと共に森の近くの荒れ地にやって来た。
街を追い出されたからだが、
清教徒として敬虔なキリスト教生活を送るためでもあった。
しかし赤ん坊のサムが何者かに連れ去られて行方不明に。
悲しみに沈む家族だったが、
“犯人”は森の魔女か狼かと考える中で、
父ウィリアムは子どもたちの最年長の少女トマシン(アニヤ・テイラー=ジョイ)が
魔女ではないかと疑い始める。
家族全体が疑心暗鬼になっていく中、
森ではぐれた長男が異常をきたす。

サブ2

“敵”になりそうな何かを“犯人”にデッチ上げて物事を“解決”する手法は古今東西絶えない。
他者を非難することで自分の不備や“罪”から目をそらして自己保身に務める輩も古今東西絶えない。
トランプ米国大統領が例によって自己愛と被害者妄想をふくらませて魔女狩りという言葉を使うが、
そういうトンチンカンな解釈ではなく、
いわゆる魔女狩りは世界中のどこかで今も行われている。
科学がすべてとはまったく思わないが、
ある種の科学が通用しない地域においてだろうし、
この映画の舞台も時代的に科学的なことが入り込む余地はほとんどなかったとも想像できる。
それが話の流れだけでなく全体を覆う空気から伝わってくるところが映画ならではの表現の深みで、
描き方と切り口は気がついたから血が噴き出しているような感じでじわじわひたひた強烈だ。

家族崩壊の物語とも解釈できる。
身内ほど信用できない、
最初に殺すべきは身内、
なんてこともあらためて思ったりする。
子どもを信用しない親、
きょうだいを信用しないきょうだい、
そんな反目から魔女が生まれるみたいにも映る。
家族の中でも魔女狩りが行なわれるクレイジーなことは現代でも起こっているわけで、
嫉妬の気持も重なり特に目立つ女性が生贄というのも普遍的で現代に通じるとも思わされる。

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やはりBLACK WIDOWなどのオカルトちっくなへヴィ・メタル・バンドを思い出す映画でもあり、
BLACK SABBATHから始まるドゥーム・メタルの曲の雰囲気にも近い。
ヘヴィ・メタルには“WITCH”を含むネーミングのバンドが多く、
ANGEL WITCH、WITCHFINDER GENERAL、WITCHCRAFTWITCHERYWITCH MOUNTAINなど、
それっぽいムードを醸し出すバンドばかりだ。
やや別系統ながら、
DINOSAUR JR.のJ・マスキスがドラムを叩くモロのバンド名のWITCHもその一つと言える。

そういうバンドの曲が使われているわけではないが、
オーガニックで冷たい音響効果もじわじわ効いてくる映画だ。

悪魔と切り離せない生き物の山羊がシンボリックに登場するところも恐怖を静かに煽るポイントで、
ファンタジックな作り物というより妙に真実味を帯びた仕上がりである。

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ストーリーだけでなく映画全体の空気感の大切さにもあらためて気づかされる。

今回が長編映画デビュー作になるロバート・エガース監督は、
撮影前に彼の地の当時のことをかなり調査して制作に取り掛かったという。
魔女に関することや悪魔憑きのことを緻密に調べ、
そういう感じのセリフや発音も当時の記録を参考にしたらしい。
だからこそgodやsinといった言葉もリアルに響く。
物語の舞台になった地の風俗(もちろん本来の意味の方)や風習、信仰、伝承も調査し、
家や服装、調度品なども再現。
一人一人の衣装・・というか日常着も見どころだ。

ディテールにこだわった作りであることが一目瞭然だが、
ニューイングランド地方に比較的近いカナダのオンタリオ州の北部で撮影された森林地帯の
寒々とした気配にも身が引き締まる。
もちろんスクリーン全体で魅せる広がりと奥行きのある映像で、
影と光と緑がまぐわったかのような“ウィッチ・カラー”と呼ぶべき底無し沼の深い色合いの
オーガニックな映像美に、
ひたすら飲み込まれていく。

メイン2

子役たちも含めて俳優陣もみな熱演だが、
特に主演のアニヤ・テイラー=ジョイに惹かれる。
セリフから察するに初潮を迎えたぱかりとも解釈できる年齢設定にも思えるが、
微妙なロリータ・フィーリングで蠱惑的な魅力がある。

裸身も披露するが、
分厚く着込んでいるようでガードが甘い服装だからエロチック。
彼女が身にまとう“ファッション”にも魅了され、
童話に出てくるお姫様のような佇まいのフェミニンな香りを漂わせつつ、
やはり魔女なのかも・・・と思わせるオーラにじわじわ痺れていくこと請け合いだ。


★映画『ウィッチ』
2015年/米国/英語/カラー/93分/原題:WITCH
配給:インターフィルム
(c)2015 Witch Movie,LLC.All Right Reserved.
7月22日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
http://www.interfilm.co.jp/thewitch/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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