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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『レザーフェイス―悪魔のいけにえ』

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その後のホラー映画の指針となった『悪魔のいけにえ』シリーズの8作目。
シリーズの最初の2作を監督したトビー・フーパーの最後のプロデュース作品であり、
2007年の『屋敷女』で知られるフランスのジュリアン・モーリーとアレクサンドル・バスティロが監督だ。

“テキサス・チェーンソー虐殺王”レザーフェイスがどのように誕生したかが描かれる。
『悪魔のいけにえ』シリーズは各々レザーフェイスの背景が異なるわけだが、
数々の“伝説”を塗り替えた“真実”の物語である。
18禁指定されているほど観るのにかなりの覚悟が必要な映画でもあり、
だからこそ1974年の第一弾作に匹敵するほど容赦無き傑作に仕上がっている。

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このブログにアップした画像は映画のイントロダクションの幼年期のみだが、
映画の大半はオリジナル『悪魔のいけにえ』の10年ほど前の少年期~青年期のストーリーである。

5歳の誕生日のプレゼントにチェーンソーをプレゼントされた少年。
異常な環境で育った少年は農場近くで起きた少女の変死事件により青少年の更生施設へと送られる。
少年は青年になった10年後、
未成年のカップルに強いられ、女性看護師を人質誘拐して、収容されていた精神科病連の施設から脱走。
狂気に満ちた一人の警官に執拗に追われる中で道連れにされた青年は、
友達で気立てのいい巨体の男性、やりたい放題のイカれたカップル、巻き込まれた女性看護師とともに、
死に物狂いの逃亡を続ける。

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ジャンル限らずグレイトな映画のすべてがそうであるように無駄がなくテンポも文句なく、
一気に見せる。
この映画の物語の時代である50年代と60年代の空気感も、
鮮やかすぎない映像色で生々しく醸し出されてもいる。

血も涙もない映画であると同時に、
言うまでもなく出血多量映画でもある。
スクリーンで体験すると際立つ感動的なほど妥協なき描写に身震いがする。

ホラーものに限らず戦争ものも含めてCGで血を漫画ちっくに見せる映画が最近多いが、
色にしろ噴き出す状態にしろ血の見せ方がリアルそのもので、
さすが本家本元!と膝を打ちたくなる。

“最小限で最大限の効果”ということが、さすがよくわかっていると思った。
たとえば臓物が飛び散る類の映像をダラダラ続けるとただエグいだけに思えてしまったりもする。
チラ見せじゃないが、
最高のアングルとフレーム使いを駆使して残虐シーンを短時間に凝縮することで、
観た人に永遠の“トラウマ”を植えつけるのだ。

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強烈な映像に現実味を満たせているのが脚本。
とてもわかりやすい。
と同時に複雑な心理の描写が素晴らしい。
レザーフェイスになる少年をはじめとして感情表現が見事な演技力に引き込まれる。
みんな役に成り切っていて必死なのだ。

ラヴ・ロマンスみたいな要素もさりげなく織り込まれている。
クレイジーな未成年カップルのモロな行為もその一つだが、
レザーフェイスになる直前の青年と更生施設の青少年に親身な女性看護師との関係もキーポイント。
だが女性看護師の様々な面での“甘さ”と
ただ巻き込まれてしまっただけに規格外の恐怖から逃れたい一心の自然な気持ちによる行動の連続が、
愛情に飢えていた純な青年にとっては“裏切り”と映るようになっていく。

“犯罪者”に理解を示す若い警官も登場するが、
復讐心に駆り立てられて社会のゴミは抹殺すべし!とばかりに発砲する一人の無法者警官もいいスパイス。
アメリカンの極端なアティテュードで突き進んでいるわけだが、
その警官の銃とレザーフェイスのチェーンソーの“殺害ツール”のコントラストも見どころの一つだ。

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中途半端なユーモアでお茶を濁すシーンはなくストイックなほど“皆殺しのテーマ”を追求し、
深い美すら感じる。
だから現実感のない設定のようでとてもリアリティを帯びているのだ。

『悪魔のいけにえ』シリーズは人間の“罪”などを掘り下げて示唆に富む映画でもある。
今回は社会性が強く、
家庭環境はその後の人生の道筋をつけてしまうことをほのめかす。
笑顔の絶えない家族とは対極の中で育った人間は歳を重ねるごとに歪みがひどくなる。
もちろんこの映画のシチュエーションはエクストリームだが、
日本で最近ニュースで伝えられる例だけでも子どもが極端な環境で育てられた話が絶えないわけで、
世界中で考えたら無数ではないか。
人間不信、というか厭人の極みがレザーフェイスに思えてならない。

レザーフェイスになる青年が苦渋の決断を下す終盤を、
期待どおりと思うか否かで『悪魔のいけにえ』のコア・ファンか一般の映画好きかが判明する。
そのクライマックスが“一瞬”であることに僕は、
レザーフェイスに生まれ変わる前夜の青年の“最後のやさしさ”を見た。


さりげなく盛り上げる音楽の使い方も特筆したい。
無垢と憎悪と悲嘆のチェーンソーの調べと見事なハーモニーを織りなしている。

必見。


★映画『レザーフェイス―悪魔のいけにえ』
2017年/アメリカ/カラー/89分/R18+
5月12日(土)より新宿シネマカリテ他にて全国順次公開
c2017 LF2 PRODUCTIONS ALL RIGHTS RESERVED
http://leatherface.jp/


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
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