AT THE GATES at 渋谷TSUTAYA O-EAST 5月29日
2018-05-30

メロディック・デス・メタルの先駆でありつつパンク/ハードコアっ気も強い、
スウェーデンのへヴィ・メタル・バンドのAT THE GATESによる日本ツアーの初日。
出たばかりの6作目『To Drink from the Night Itself』のリリースに伴う
世界ツアーの初日でもある。
まずはサポート・アクトとして東京拠点のSURVIVEとHELLCHILDがプレイ。
特に19時スタートで最初に登場のSURVIVEはしっかり前を向いたステージングが印象的で、
エクストリーム・メタルを中心に様々なヘヴィ・メタルの肝を吸収したフック十分の楽曲を繰り出し、
海外ツアーで鍛えられた“魅せる”パフォーマンスと確かなサウンドで未知の観客も引き込んだ。
セット・チェンジに時間がかかると観る側の気持ちもダレてしまいがちだが、
セッティング・スタッフの尽力によってサクサク準備が進み、
AT THE GATESは20時35分頃に現る。
パーフェクトだった。
もう鳴らしてるサウンドそのものがすべてを語っていた。
そのすべてが確信だった。
まずエイドリアン・アーランドソンのウルトラ・パワフルなドラムにまたまた殺られた。
夢に出てきそうなほど超絶だった。
大柄ゆえにドラム・セットをちょっと見おろすような高さでの演奏というのもあって、
ドラムを組み伏すような体勢で叩きまくる見た目も圧巻。
HAUNTEDでも叩いているとはいえ怪力は同じであってもリズム・パターンは別で、
“AT THE GATESビート”と言うべき独特のリズムがこのバンドの核だとあらためと思い知らされた。
手数足数多くラフなのに緻密で、
ミディアム~スロー・テンポの曲でも加速度をキープ。
この前のめりのドラミングによって、
たとえMCがときおり入ってもライヴ全体のスピード感もキープされているのがAT THE GATESだ。
そういう点でRAMONESのライヴとリンクするといっても過言ではなく、
メタル以前にロックとしても素晴らしいスピード感の持続だ。
ヨナス・ビョーラーのベースも強力だ。
メロディック・デス・メタルとも呼ばれるサウンドにもかかわらず、
リズムがAT THE GATESの肝であることをあらためて知らしめるリズム隊の一角として音が目立ち、
作曲の中核にもなっている人だけにバンドをリードしてステージでも前方で演奏。
少々かっぷくのいいボディもトレード・マークとしていい味を出していた。
そのヨナス・ビョーラーの双子兄弟のギタリストであるアンダースがバンドを去ったことが不安だったが、
まったくの杞憂であった。
新ギタリストのヨナス・ストールハマールはリード・ギターのパートを多く担当し、
適宜バッキング・ヴォーカルもとって単なる後釜以上のプレイで魅せ、
メガネ+長いアゴ髭+長髪+スリム・ボディのヴィジュアルもなかなかだ。
もう一人のギタリストのマーティン・ラーソンとのコンビネーションもバッチリである。
AT THE GATESのギタリストは意外と目立たずバンドの“両脇”を固めるようなポジションだが、
俳優なら“バイプレイヤー”のプレイで緩急の曲にメロディックなエッジを効かせていた。
もちろんトーマス・リンドバーグ(vo)も元気元気だ。
髪や髭に白いものが目立ったが、
映画『サスペリア』の音楽で知られるイタリアのプログレ・バンドのGOBLINのTシャツを着用し、
ちっこいキャップをかぶりながら“見せる”ステージングで場内に渦を巻き起こす。
極端に派手なアクションはしないが、
しばしば曲を始める前にドラムに向き合って人差し指を突き出した右腕を高く上げてから始め、
しばしば曲を始める前にマイク・スタンドをパフォーマンスの“武器”として駆使。
ハードコア・パンクとデス・メタルとブラック・メタルが混在したヴォーカリゼイションも健在で、
血が滲むほど喉を震わせていた。
代表作の95年の4作目『Slaughter Of The Soul』と
復活作の2014年の前作の『At War With Reality』の曲が多かったが、
新作からも同じぐらいの曲数を披露して以前の曲にしっかり馴染んでいた。
最初の3作の曲を盛り込んでファンを湧かせたことも言うまでもない。
全曲クライマックスだったから、
ほんとライヴが始まって1秒ですべての観客のマグマは一気に炎上した。
神風じゃないが、
一瞬にしてステージからの得体の知れないサウンドの“風圧パワー”に飲み込まれていた。
尊重し合いながら大モッシュ・サークルもできあがっていた。
曲間では“AT THE GATESコール”が飛び出し、
みんな思い思いの形でAT THE GATESを歓待。
バンド側もエナジーのフィードバックをしっかり受け止め、
ビシッと観客に向き合ったパフォーマンスでビ応え、
熱い鋼鉄の交感が生まれていた。
“ヘビメタ”だの“メタル”だのといった中途半端な省略言葉じゃなく、
これぞヘヴィ・メタル!な重金属音にトータル90分酔いしれた。
まさにグレイト。
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