NASHVILLE PUSSY『Pleased To Eat You』
2018-10-30

米国ジョージア州アトランタ出身のハード・ロックンロール・バンドのNASHVILLE PUSSYが、
『Up The Dosage』から約4年ぶりにリリースした7作目のオリジナル・アルバム。
世界で一番好きなバンドの一つであり続けているのは新作を出しても毎度ブレてないからだ。
今回もバッチリ進んでいるから鳴りが生き生きしている。
またまた最高だ。
ドラマーが変わった。
ステージの配置で中央の男二人を両脇から女二人が挟む図式がNASHVILLE PUSSYの伝統だから、
新ドラマーのベン・トーマスももちろん男性である。
前ドラマーが1997年のファーストの『Let Them Eat Pussy』から叩いてきただけに驚きだが、
抜けのいいビートでNASHVILLE PUSSYに新しい息を吹き込んでいる。
2005年の4作目『From Hell To Texas』と2009年の5作目『From Hell To Texas』を手がけ、
後期RAMONESの第五のメンバーにもなったダニエル・レイがプロデュースし、
クレジットから察するにバンドと一緒にソングライティングにも関わったと思われる。
ギチギチだった前作も強力だったが、
ダニエルはパンク・ロック畑のプロデューサーだけに
いい感じでポップ感を取り戻して風通しのいい音の仕上がりになっている。
録音とミックスは、
2002年のサード『Say Something Nasty』をプロデュースしたデイヴィッド・バリックだ。
AC/DCやMOTORHEAD、LED ZEPPELINらのハード・ロックの肝を血と肉にしつつ、
RAMONESのコンプレックスやユーモアを
ハードコア以降の“ファック・ユー!”アティテュードで増幅したような歌詞を含む肝はパンク。
底無し沼の如く深い。
ロックンロールをさらに突き詰めたこのアルバムを浴びた今、
誰が何と言おうがNASHVILLE PUSSYを現在進行形のロックンロールの化身と断言する。
淫水焼けならぬ“ブルース焼け”した太いサウンドでありつつパンク・フィーリングたんまりで、
アップテンポのハード・ロックが躍り続ける。
同じような曲は一つもない。
パンクもハード・ロックもヘッタクレも無しで内向きの憂き世をぶっとばす。
これがNASHVILLE PUSSYだ。
ロックンロール・バンドには欠かせないカヴァーも今回は3曲収録している。
まずはジョージ・クリントンのPARLIAMENTSの「Testify」(ハモンド・オルガン入り)。
2つ目はサード・アルバム『Say Something Nasty』のジャケットで敬意を示したバンドの、
NAZARETHの「Woke Up This Morning」(スティール・ギター入り)。
もう一曲は米国のシンガーソングライターであるスティーヴ・アールの
「CCKMP」(Cocaine Cannot Kill My Pain)である。
FEARの「Let's Have A War」を思い出す曲名の「We Want A War」をはじめとして、
調子のいい“正義”に満ちた“ロックンロール・ソング”の蔓延に中指立てたみたいな歌詞も絶好調。
けっこう骨っぽい歌声で頓智を効かせながらさりげなく挑発しまくる。
いつにも増して世界や人類に対する危機感も漂うが、
そこはもちろんNASHVILLE PUSSY、
ウソのない表現に胸がすくばかりだ。
ラスト・ナンバーが終わった後に3分半ほど、
ブレイン・カートライト(vo、g)のものと思しき声で
歌詞を抜粋した言葉が説教(preach)みたいに唱えられるのも神妙な締めである。
なんもかも馬鹿馬鹿しくなるとNASHVILLE PUSSYが欠かせない。
僕にとっては無限にインスパイアされる救済のロックンロールだから。
ひたすらグレイト。
★NASHVILLE PUSSY『Pleased To Eat You』(EAR MUSIC 0213354EMU)CD
“PARENTAL~”がプリントされた↑のジャケットとカタログ・ナンバーの米国盤は、
裏面に歌詞やクレジット等が愉快に載った12面折りのポスター封入のデジパック仕様。
デジパック各面にモノや液にがっつくメンバー一人一人の口のアップがプリントされ、
CDのジャケットのサイズだとほぼ原寸大の口の大きさでちょい生々しいアートワークだ
(実際のジャケットの色は↑の画像よりも鮮やかです)。
トータル・タイム約49分13曲入り。
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