Lou Reed『Live In Argentina』
2020-01-30

1996年のブエノスアイレスでのライヴ。
ルー・リードの当時の最新作『Set the Twilight Reeling』に伴うツアーの中の一つで、
メジャーな流通で売られているから違法リリースではないと判断して紹介する。
ラジオでオン・エアした音源が使われているようだ。
ときおりDJらしき男性の無神経なノリノリの“掛け声”がどの曲にも一瞬入る、しかも演奏中に。
RAMONESの同種のライヴCDでも出くわした同じDJかもしれない。
エゴ丸出しの論外の存在だが、
このCDではどの部分でも一瞬だけだからノイズとして聞き流すことも可能だ。
曲のデータのつなげ方の単純なミスと思しき曲間で一瞬音が消える“不備”も気になる。
ジャケットは薄い紙一枚だ。
でも音質は90年代のブートレッグのような感じで問題無し。
各パートがよく聞こえるし、
特に中低音がよく出ていてヘヴィな音のバランスが理想的である。
何よりパフォーマンス自体が素晴らしい。
ルーがピークに昇りつめる直前の時期。
悪かろうはずはない。
ルー・リードが詩人以前にロックンローラーであり強靭なギタリストもあることを再認識して震え、
2階最前列の指定席で前のめりになって観た同年9月の日本ツアーの時のステージが蘇る。
実際のライヴではもっと曲をやっていて、
物理的に収録制限時間がある1枚のCDにまとめるべく披露した曲の中から抜粋編集したと思われ、
ハードなギターが際立つメリハリ十分の曲を中心にした感じだ。
セットリストでその時々のライヴの方向性が見え隠れするルー・リードだが、
このCDの選曲も偏っていてファンに媚びることはない。
言わずもがな、その時々のおのれを放射することが誠実な表現者であることをわかっていた。
僕が観たこのツアーの東京公演がどうだったかは思い出せないが、
このCDでVELVET UNDERGROUND時代に発表した曲は「Sweet Jane」のみ。
しかもクライマックスではなく2曲目に入っている。
一方で『Magic And Loss』の「Dorita - The Spirit」がオープニング・ナンバーというところに、
インプロヴィゼイションのニュアンスを含むエレクトリック・ギターでも魅了した90年代のルーのライヴが
集約されてもいる。
『Set the Twilight Reeling』の曲はやっぱり多めで、
「NYC Man」「Set the Twilight Reeling」「Hang On to Your Emotions」「Egg Cream」「Riptide」。
ボ・ディドリー・ビートが踊るルー史上最もポップな曲の「I Love You Suzanne」では、
同時期の東京公演でその曲の魅力に初めて気づいたことを思い出す。
このCDは「I Love You Suzanne」に加えて、
ルーの長い歴史の中でも埋もれがちな1984年の『New Sensations』の収録曲が、
「New Sensations」と「Doin' the Things That We Want To」の計3曲入っているのも高得点だ。
人気作『New York』からは「Dirty BLVD.」と「Strawman」、
デイヴィッド・ボウイとミック・ロンソンのプロデュース作『Transformer』の「Vicious」もやり、
ロックなエレクトリック・ギターに比重を置いた選曲だ。
ルーのエレクトリック・ギターがギンギンでリズム隊のヘヴィな音も、
ストロング・スタイルで喉を震わせるヴォーカルも最高。
小細工を必要としない“本物”だけが持ち得る凄味。
ルーに惚れ直す。
★Lou Reed『Live In Argentina』(LASER MEDIA LM 4057)CD
77分13曲入り
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