灰野敬二『ここにもこんなにブルースが宿っているとは...by 灰野敬二』
2020-11-29

大阪芸術大学所蔵のインドネシア民族楽器・ガムランのフルセットを灰野敬二が独演した
2007年11月25日録音の約67分1トラック入りCDである。
演奏会場になった大阪芸術大学内 芸術情報センターは、
パイプオルガン専用に建築された特殊エコーのコンクリートホールとのこと。
大・中・小、さまざまな銅鑼や鍵盤打楽器が使われているが、
宇都宮泰がレコーディング・ディレクションとマスタリングを行ない、
ひとつひとつの響きが生きているダイナミクス抜群で立体感十分の仕上がりだ。
個人的には90年代にむさぼり観に行っていた灰野のライヴの中で、
アクセントのようになっていたパーカッション・ソロ・パフォーマンスを思い出す。
灰野の音楽パブリック・イメージが轟音なのは疑いの余地なしだが、
最も大きな音と
最も小さな音の振り幅も灰野の音楽の肝だ。
特に気が引き締められて厳粛な気持ちになるから、
最も小さな音が空間を司るパーカッション・オンリーのライヴを狙って足を運んだこともある。
その当時の録音のCDだったら
ジョン・ゾーン主宰のTzadikから出た『Tenshi No Gijinka』(1995年)を思い出すが、
本作にヴォーカルは入ってない。
ただ使っている楽器が同じでないにしても、
変わってない…と思った。
でも金属質の響きがほとんどながら使っている楽器の性格上、
わりと“リズム”も“メロディ”もわかりやすい。
即興というよりは曲を紡ぎ出しているプレイだ。
音色に惚れて灰野が入れ込んでいくような様子が目に浮かび、
面白いように楽器をあやつり・・・いや愛でている。
静謐な時間が続くが、
ラウドに炸裂する瞬間も。
こういう楽器で演奏しても間合いのとり方や音のリズムがやっぱり灰野敬二である。
ソロでも不失者でも、
このCDの“曲”を灰野がエレクトリック・ギターのリフで進めたとしても何ら違和感がない。
澄み切った響きも音色も灰野敬二そのもの。
研ぎ澄まされたサイケデリック感覚に包まれ、
たとえ“あの声”が入ってなかろうが名前を伏せて再生しても灰野敬二!とわかるほどの
唯一無二の空気感にあらためて感服もするアルバムだ。
★灰野敬二『ここにもこんなにブルースが宿っているとは...by 灰野敬二』(HÖREN MIMI-028)CD
二つ折りのペーパー・スリーヴ仕様。
このライヴの模様が綴られたThe WIREの2008年2の87号(1月号)掲載の文章に加筆した英文ライナーと
その和訳が載った二つ折りのインサート封入。
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