映画『ロスバンド』
2022-01-30

ロック・コンテストの会場を目指してノルウェーを縦断するバンドのロードムービー。
青春映画かもしれないが、
いい意味で爽やかとは言いがたいカオスがあちこちで勃発するパンクな快作である。
もうすぐ発売される某誌で映画評を書いているが、
“一般的に不快とされるという言葉”は外し、
ポイントを押さえながら読者層を意識して入り込みやすく仕上げた。
けど監督がノルウェーの人で北欧パンク系をよく聴いており、
ちょいマニアックなネタのスパイスが効いている映画だから、
そのへんを中心にこのブログでも書いてみる。

というわけでストーリーは、
お手数ですがオフィシャル・サイトを参照していただきたい。
確かに夢をあきらめない青春映画だが、
ギター/ヴォーカル+ドラムのティーンエイジャーの少年2人が、
9歳のチェロ奏者の少女を迎え入れてベースレス・トリオのバンドを組んだこと自体がパンク!だ。

まず書いておきたいのは、
昨年秋に他界した元TURBONEGROのヴォーカルのハンスが出演していることだ。
主演とかではないが、ちょい役ではなく、
物語のキーパーソンの一人の元ミュージシャン役である。
この映画は2018年に本国ノルウェーでは公開されているが、
2010年にTURBONEGROを離れてからこんな感じになったか…と思うとリアルすぎる姿で、
TURBONEGRO時代からさらに深まった厭世感の漂う佇まいに息を呑むばかりだ。

映画の中で流れる曲の数々も特筆したい。
こういった曲がこの映画を単なる爽やかな青春音楽映画とは一線を画す息遣いにしているからだ。
ホントこういうところにしっかり向き合わないと監督の意思が台無しになる。
TURBONEGROの曲ももちろん使われていて、
邪悪テイスト滲む『Party Animals』(2005年)収録の「High On The Crime」である。
ノルウェーのバンドでは他にも、
MOTORPSYCHOの「Feel」が映画のカギを握る曲になっている。
KVELERTAKの『Kvelertak』(2010年)の「Mjød」が聞こえてきた時には、
この監督、タダモノじゃない!と確信した。
GLUECIFERの「I Got A War」も渋い。
スウェーデンのバンドだが、
HELLACOPTERSの「I’m In The Band」の使用もポイント高い。
彼らの最高の曲!とは言わないが、
歌詞もさることながらこの曲収録の2005年のアルバムのタイトルが『Rock & Roll Is Dead』。
このフレーズが本作の“裏テーマ”と言っても過言ではない。

何よりロスバンドのオリジナル曲の「Kill, Death, Destroy」がこの映画の肝だ。
血管ブチ切れハードコア・パンクの曲とサウンドが
登場人物たちの無限大のフラストレイションそのものだ。
あと、その曲名。
監督はブラック・メタルを意識したのかもしれないが、
G.I.S.M.を思い起こすのは僕だけではないはずだ。
てな感じで、
この映画は一晩たっぷり語り明かせるほどネタ満載だから、
問答無用に大スイセン。

★映画『ロスバンド』
原題:LOS BANDO
ノルウェー・スウェーデン/2018年/94分/カラー/ノルウェー語・スウェーデン語/シネマスコープ/5.1ch/映倫PG-12
監督:クリスティアン・ロー
出演:ターゲ・ホグネス、ヤコブ・ディールード、ティリル・マリエ・ホイスタ・バルゲル、ヨナス・ホフ・オフテブロー他
後援:ノルウェー大使館 配給:カルチュアルライフ 宣伝:VALERIA
FILMBIN AS © 2018 ALLE RETTGHETER FORBEHOLDT
2月11日(金)より、新宿シネマカリテ他にて公開。
www.culturallife.jp/losbando
スポンサーサイト