INCAPACITANTS『As Loud As Possible』[2LP + 7” reissue]
2022-04-30

非常階段でも活躍中のT. Mikawaが80年代初頭に始め、
多彩な活動を続けるF. Kosakaiが相方のデュオ・ノイズ・ユニットINCAPACITANTSのレコード。
1995年にCDで出したアルバムをリマスタリングして2枚のLPの4面に“分割編集”し、
未発表音源を両面に収録の7”レコードを加え、
ドイツのレーベルがリリースしたリイシュー盤である。
INCAPACITANTSのスローガンとも言いたくなるジャストなアルバム・タイトルだが、
レコード針がレコードの溝から再生するノイズひとつひとつの響きに恐れおののきながら、
たいへん緻密な音のテクスチャーに息を呑む。
エレクトロニクスとヴォイスが入り混じったブレのない熱きサウンドの放射は、
頭デッカチなノイズものとは一線を画す圧倒的なダイナミズムをたたえている。
A面は地鳴りのような音で幕を開け、
ジリジリしたノイズに左右上下から砲撃の如く侵攻してくるノイズが絡んで音が膨張し、
ゆっくりとスベクタルな流れの中に吸い込まれていく。
謙虚な佇まい、だが鳴りは、ふてぶてしい。
B面はマグマの濁流みたいな怒涛のサウンドでスリリングな展開の狂騒ノイズ。
C面の前半はその続きだが、途切れていても違和感なくフェイドアウトもいい感じで、
笑っちゃうほどの痛快ノイズである。
C面の後半は、途切れること無きエクスタシーにうなされるノイズの波状攻撃。
D面は、まさにハーシュ…いや熾烈ノイズと呼びたい音が阿鼻叫喚ヴォイスで加速するのであった。
7”レコードの2トラックは、回転しているレコードを見ながら聴いていると目が回ってくる。
高炉の中に放り込まれた気持ちになるノイズの強度が凄まじい。
INCAPACITANTSの音源は長尺のトラックがほとんどだが、
音のクオリティを考慮すると実際問題物理的に収録分数に制限がある7”レコードならではの短さで、
5分前後の尺に凝縮したINCAPACITANTSの神髄が堪能できる。
音に匹敵するインパクトのアートワークの写真群もLPと7”サイズになってさらに味わい深い。
東京アンダーグラウンドの“基地”でもあったレコード店のモダ~ンミュージックを筆頭に、
マニアックな店が多かった東京の明大前駅近くの飲み屋・梵婆家でくつろぎ、
“できあがった”二人で彩られている。
二つ折りLPジャケットの4面と7”のジャケットの両面、
さらに3枚のレコードのレーベル両面が、
すべて異なるモノクロ写真が使われているのもポイントで、
レコードを聴きながら眺めているとますます侘び寂びが効いて酔えること必至だ。
トータル太っ腹な3枚組である。
★INCAPACITANTS『As Loud As Possible』[LP + 7” reissue](TOTAL BLACK 170)2LP + 7”
長文英文ライナーが載ったインサートも封入。
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