Måneskin『Rush!』
2023-01-25

2010年代半ばにスタートしたイタリアのロック・バンド“マネスキン”の新作。
サード・アルバムと言えそうな痛快盤である。
ここ数年、日本でも話題の絶えない4人組だが、
フェイクでもポーザーでもない。
日頃メイン・ストリームものに疎い僕も、
何かの際にたまたま目にした映像で“これは!”と引っかかり、
初めてちゃんと向き合ったこのアルバムも見事にハマった。
やっぱりイタリア出身のバンドというのが大きい。
このアルバムで母国語の歌詞は3曲のみだが、
英語で歌われる曲もイギリスやアメリカのバンドとは一味も二味も違う。
子どもの頃から馴染みのイタリア語の響きやリズムで英語が基本のロックを解釈しているサウンドで、
カンツォーネっぽくも聞こえる。
下品というわけではないしダーティを気取っているわけではないが、
自然と滲み出た程良くsleazyな匂いも大好き。
スノッブはあっちいけ!ってな調子なんである。
デイヴッド・ボウイの全キャリアをフォローしたような曲!と書いたらホメすぎだが、
そんな佇まいのポップなアルバムだ。
やっぱりオルタナティヴ・ロック以降の音楽的ヴォキャブラリーを感じるし、
今時のダンス・ミュージックの要素も上手く活かしてもいる。
でも“ロックンロール”がテーマの一つと思しきサウンドだし、
僕にはロック讃歌に聞こえる。
粉川しの執筆のライナーにも納得させられた。
エロいことばかり歌っているわけでもないが、
音楽そのものが妙にセクシャルで色っぽい。
女性ベーシストをはじめとしてメンバーのルックスにも持っていかれる。
アーティスティックであると同時に刺激的・・・それがいい感じで適度に下世話なところも大好きだ。
という流れでアルバム・カヴァー(表ジャケット)も興味深い。
一見なんてことのないようでアブないという点でKORNのファーストを思い出す。
裏面を見てさらにビックリ。
表ジャケットの別角度ヴァージョンである。
SCORPIONSの『Virgin Killer』の発禁ジャケットが頭をよぎるほど、
これって大丈夫なのか?って写真なのだ。
CDディスクもアソコに穴が空いているデザインだし、
ちなみにLPのLPのレーベル面の真ん中には
G.I.S.M.の『M.A.N.』のLPレーベル面みたいに穴が空いていて、
レコード・プレイヤーにLPを置いたら“貫かれる”作りである。
そういうアートワークのCDが大メジャーのレコード会社から発売されたこともまた、
やたらコンプライアンス云々がやかましい世の中だけに快挙だ。
全部ひっくるめてプリミティヴなほどロックなリリースなのである。
日本盤は、
昨年サマーソニックとは別に
8月18日に東京・豊洲PITで行なった初の単独来日公演の模様を10曲収めたCDを
初回限定生産でプラス。
オーディエンス超盛り上がりのパフォーマンスが音質良好のサウンドで楽しめる。
★マネスキン『ラッシュ!』(ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP-6503 ~ SICP-6504)2CD
16ページのオリジナル・ブックレット封入。
日本盤は、
本編の歌詞と和訳が載った44ページのブックレットが付き、
ボーナス・トラック「Touch Me」追加の18曲入り。
日本盤の初回限定生産盤は
昨年8月18日の東京・豊洲PITで行なわれた初の単独来日公演の模様を10曲収めたCD付。
日本で撮影されたと思しき厚手の紙の32ページのスペシャルフォトブックも
スリップケースに封入されている。