なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Julian Cope『Saint Julian』[2 CD Expanded Edition]

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今やサイケデリック・ロックや日本の昔のロックの研究家としても知られる英国のジュリアン・コープが
87年にリリースした当時2年半ぶりのサード・ソロ・アルバムのリイシュー盤。

14曲入りのボーナス・ディスク付の2枚組CD仕様で、
ぼくは持ってないから正確なことは言えないが、
昔日本盤で発売されたことのあるものと同じ収録曲のようだ。
リマスタリング!とはっきり明記されてないとはいえ、
少なくてもLPしか持ってなかったぼくにとっては鮮やかな響きが
彼のアルバムの中では珍しく晴れ晴れとした作風のアルバムにピッタリである。


バンド(TEARDROP EXPLODES)時代よりもソロになってからの音楽活動の方が注目を集めた
意外と数少ないアーティストの一人だが、
このアルバムは英国でのチャート・アクションも最高の11位を記録。
楽曲のテクスチャーはR&Bをベースにしているから
この後にアルバムで増えるファンキーな曲も顔を出す。
といってもサイケデリックな方向性から外れて突き抜け、
最もハードな“ロックンロール・アルバム”である。

バンド・メンバーのうちギタリストはセカンド以降のジュリアンの音楽的パートナーで、
ドラマーはこの後ポール・マッカートニーの『Flowers In The Dirt』に参加している。
なにしろスッキリ歯切れのいい音だ。
例によって歌詞はシニカルなテイストを含むが、
曲はストレート。
音はタイト。
RAMONESのアルバムを何枚も手掛けたエド・ステイシアムもプロデュースに関わっていることも大きい。
ジュリアン・コープ史上最もメジャー感がある一枚だ。
思い出すと大江慎也が離脱した後のROOSTERZが対バンした日比谷野音での初来日公演は、
セカンドの『Fried』の直後だったから鬱々な疾走感が最高だった。
その公演を塗り替えるように最高だった、
本作の後のエネルギッシュな2度目の日本公演(ぼくが観た会場は確かMZA有明)が蘇る。


約14曲入りのボーナスCDはシングル/EPに収めた曲やミックスなどで構成。
86~87年のレコーディングの音源と思われ、
2曲はライヴ・テイクだ。
オリジナル曲はこの『Saint Julian』には入り得ない地下音楽指向のものばかりで、
前作のセカンド『Fried』にピッタリの曲が多く、
やっぱり放っておいたらジュリアンは“地下音楽”に走ってしまうようだ。
13th FLOOR ELEVATORSの「I’ve Got Levitation」とPERE UBUの「Non-Alignment Pact」という、
“いかにも”すぎる選曲のカヴァーも素直で逆に微笑ましい。
最大のヒット・シングルになった「World Shut Your Mouth」を
TROUBLE FUNKのメンバーがリミックスしたものも入っている。
TROUBLE FUNKと言えばMINOR THREATやBIG BOYSが対バン(サポート・アクト)もしたわけで、
そう考えるとまた色々つながってくる。


ぼくがリアル・タイムでジュリアンを追っていたのは『Autogeddon』(94年)まで。
SUNN O)))が2003年に出した『White 1』で名前を見つけてビックリした記憶がある。

本作のあとにジュリアンはブラック・ミュージックにますます接近。
それはともかくコンセプト的にどんどん頭デッカチな方向に向かっているように思えてきたのだ。
同時代の英国ハードコア/Oi!/アナーコの新世代パンク勢とはほとんどダブらず、
英国のパンク/ニューウェイヴの流れの中で出てきた人ならではの理念型の人である。
基本的にアンダーグラウンド気質ながら、
コンセプトが先行するから音楽以外の要素に重きを置く評論家がいじりやすいタイプであり、
カメレオン体質とヴォーカリゼイションと端正なロックンロール解釈も含めて
デイヴィッド・ボウイに意外と近い。


でもこれはTEARDROP EXPLODESも含めて
ジュリアン・コープ史上最も肉体的なアルバムの一つ。
ロックしている。
今こういう音が欲しい。
久々にハマっている。


★Julian Cope『Saint Julian』[2 CD Expanded Edition](UNIVERSAL UMCREP2019)2CD
ボーナスCDに収録した12’EPのジャケットなどの写真やライナーが載った16ページのブックレット封入。


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コメント

85年渋谷LIVE INN

初めまして、yuccalinaと言うアラフィー主婦です。古いエントリーにお邪魔致します。

ジュリアンが85年に初来日した時、渋谷のLIVE INNで追加公演があったと思うのですが、ご覧になった方を探しています。行川さんは行かれなかったでしょうか?

因みに、St. Julianツアーの東京公演は、渋谷公会堂と芝浦ファクトリーで、有明MZAは89年、My Nathon Undergroundの時でした。(チケットの半券が残ってますので、確かだと思います)

私も一応『20 Mothers』まではアルバムを持っていましたが、熱心に聴いていたとは言えません。91年の公演にも行っておらず、その後の彼の活動を知ったのも、ほんの数年前に『ジャップロックサンプラー』のことを知ってからです。しかし、現在、彼のそのマイペースな生き方に、再び惹かれつつあり、これから20年の空白を少しずつ埋めていこうと思っているところです。

長文になってしまい、失礼致しました。

Re: 85年渋谷LIVE INN

yuccalinaさん、書き込みありがとうございます。
初来日公演はブログで書いた日比谷でしか観てないです。
あと、その有明MZAで観たことは覚えています。
僕も90年代後半以降のジュリアン・コープはほとんどフォローしてなかったです。サイケデリック追求の人というわけではないですが、奇しくもそっちの方の日本の現役ミュージシャンを観ていって掘り下げていくうちに軽く思えてきてしまったというのが正直なところです。でもポスト・パンクの人として80年代のアルバムは今でもイケます。
ジュリアン・コープを再び意識しはじめたのは、やっぱりSUNN O))のアルバム『White1』に参加してからですね。

Julian Cope@Live Inn

行きました。何かお尋ねしたいことがあればどうぞ…でももう30年前なので記憶が定かではありません(汗)。

行川さん、横レスで失礼しますが、、、

る・さんへ、こちらにもコメントして頂いてたんですね。色々教えて頂いてありがとうございましたm(__)m

yuccalinaさん、るさん、コメントありがとうございます。
yuccalinaさんのサイトにうかがいました。コンタクトが取れて良かったですね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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