なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~』

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カナダの東部トロント出身のベテラン・ヘヴィ・メタル・バンドのドキュメンタリー映画。
ヴァイブレイターで嬉々としてギターを弾くメタルならではの昔のお馬鹿なライヴ・シーンも含むが、
2005~2006年のANVILの喜怒哀楽を普遍的な視点で描いている。

スティーヴン・スピルバーグの『ターミナル』を脚本化したサーシャ・ガバシが、
ガキの頃にローディーをしていたANVILのことを思い出して監督となり映画化。
ガバシが脚本を書いた来年公開の映画『Henry's Crime』の主演でトロント育ちのキアヌ・リーブスは、
「可笑しくて、美しくて、感動的! これは信じ難いほど素晴らしい友情の物語だ」と感想を漏らしたという。
確かに邦題が言い得て妙のネヴァー・ギヴ・アップ!な“The Story Of ANVIL”で、
“ロック=ライフスタイル”を気取る不良自慢ストーリーとは一線を画し、
かっこ悪いところも全部見せる笑いとペーソスにまみれた“メタル馬鹿一代”の人間ドラマだ。


レミー(MOTORHEAD)、ラーズ・ウルリッヒ(METALLICA)、トム・アラヤ(SLAYER)、
スコット・イアン(ANTHRAX)、スラッシュ(元GUNS N’ ROSES/現VELVET REVOLVER)が、
異口同音に「素晴らしいバンド」「スラッシュ・メタルの元祖」と絶賛している。
スラッシュは「売れてるバンドは山ほどいるけど、30年も活動を続けてるバンドはごくわずかだ。
ローリング・ストーンズ、ザ・フー、アンヴィルだ」とも語る。
彼らと並ぶぐらいANVILはすげーバンドなんだぜ!と言いたいのだろうが、
そもそもThe WHOは何度か解散/長期間活動停止をしているし、
続けているとはいえROLLING STONESだって超マイペースな活動ぶりである。

続けていればエライってもんじゃない。
だがANVILの根性の据わり方はハンパじゃない。
執念を感じる。

81年のデビュー作『Hard 'N' Heavy』から一昨年の『This Is Thirteen』まで20枚近くのアルバムを発表。
しかも驚くべきことにリリースのインターヴァルを空けないコンスタントな活動を続けている。
しかも今まで純然たるメジャーのレコード会社から一枚もアルバムをリリースしてない。
METAL BLADE Recordsから87年に出した『Strength Of Steel』がビルボードの191位にランクインしたが、
いわゆる商業的な成功からはずっと遠い。

84年に西武ライオンズ球場(現西武ドーム)で行なわれた野外イベントの、
“スーパー・ロック’84 イン・ジャパン”のシーンから映画はスタートする。
SCORPIONS、WHITESNAKE、BON JOVIと一緒にANVILも出演したライヴだが、
活動歴など違うし欧米のバンドより不利な立場だったとはいえ、
その後の活動で“格差”ができたことは否めない。
ヘヴィ・メタル/音楽のフィールドに限らずどの世界でもタイミングの悪い人間は憂き目を味わう。
ANVILもヘヴィ・メタル・バンドとしては世界的にそこそこ有名だからプライドもあるだろうし、
メジャーな存在ではないが無名でもない“中途半端なポジション”ならではの苦悩は、
様々なジャンルのアーティストに共通する。

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バンドだけではメシが食えないにもかかわらず、
ANVILはツアーもガンガンやるしアルバムのレコーディングもコンスタントにやるし、
なおかつ家のローンも家庭もある。
メンバーが普段生活のためにやっている給食の宅配の仕事で働くシーンや、
“現場仕事”をしているシーンも盛り込まれている。
電話での勧誘セールスのアルバイトも性格が実直すぎて長続きせず。
やっぱり要領よく立ち回ることができないのだ。

アウシュヴィッツを生き延びた父親の話などの家庭の話も映画にリアリティをもたせている。
メンバーの親も子供も奥さんも妹も登場。
五十代になってもロック・スターをあきらめない息子/夫/父/弟に対し、
“いつまで続けるの?”という経済面をはじめとしたシビアな現実問題も率直に投げかけつつ、
“いつまでも応援したい”とも思う複雑な心情を吐露する。

かつて大舞台に立ったからだろうかANVILは草野球気分でバンドをやっているわけではない。
人生や業界の酸いも甘いも知って半世紀を生きているにもかかわらず、
いやだからこそやるからには“成功”を目指す。

インディ・レーベルの若手バンドと同じようなヨーロッパ・ツアーの様子は、
年配のヘヴィ・メタル・バンドだとドサまわり紙一重の“巡業”と言いたくなる。
5週間のツアーでギャラはゼロ。
レコード会社も来ない。
トラブルもたくさん。
新作のレコーディング中も内輪揉めだ。

実のところオリジナル・メンバーであるスティーヴ“リップス”クドロー(vo、g)とロブ・ライナー(ds)は、
高校時代の73年から一緒にバンドをやっている。
いわば腐れ縁だ。
真剣に向き合っている者同士だからこそピュアな軋轢が生じる。
何度も雨降って地固まりここまで来た。

インディ・レーベルで苦汁を舐めてきた経験ゆえにメジャー・レーベルからリリースしたくて、
自らレコード会社に営業するシーンも見られる。
なかなか報われない働き者のオヤジたち。
でも悲壮感が漂うどころかファニーに映る。
インターネット時代に汗かいて我が道を進み続けるヘヴィ・メタル・バンドならではのキャラの強さゆえのことだ。

締めもライヴ・イン・ジャパンである。
しかも舞台は千葉・幕張メッセでの“ラウドパーク06”。
出番は最初で真昼間だが若い観客がほとんどで大盛り上がり。
撮影を開始した2005年の時点で日本のビッグ・ステージへの出演は予定してなかったが、
ANVILと監督の情熱がすべてを動かした。
シンプルにこう言いたくなった……dreams come true!と。


ぼくはANVILのアルバムを『Absolutely No Alternative』(97年)しか持ってない程度の人間だが、
思わぬ人も登場するからメタル・ファンの笑顔が止まらないことは保証するし、
メタルの知識がなくても十分に入っていけるオープン・マインドの単純明快な作りがうれしい。
元気が出るよ。


●『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』
10月24日(土)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて公開。
公式HP:http://www.uplink.co.jp/anvil/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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