なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CATHEDRAL『The Last Spire』

Cathedral_h1.jpg


90年代以降のドゥーム・メタルの道を切り開いてきた英国のバンド、
CATHEDRALの最終章の10作目である。

本編は約56分8曲。
3分強のオープニングと30秒強の終盤のインタールード以外はヴォーカル入りで長い曲ばかりだ。
歌主導のポップ・ミュージックに背を向けたかのような作りは、
世間の流れに背を向けたロック本来の潔く正直で誠実な在り方である。
ただロング・ナンバーが多かろうが、
妙に凝った展開をせずにオーガニックに曲が進んでいるからエナジーもダイレクトに伝わってくる。
1年半ほど前に発表した12”『A New Ice Age』の曲を入れないところにも、
ひとつの作品に対する愛情とアルバム全体の流れを大切にする姿勢を感じるのだ。

それにしてみ並々ならぬ気合いである。
2曲目の「Pallbearer」以降は
デビュー・アルバム『Forest Of Equilibrium』(91年)が激化にしたようなトーンが続く。
立ちはだかるものすべてを薙ぎ倒して進まん!とばかりの音像の動きに圧倒される。
最初で最後のレコーディングになったスコット・カールソンの演奏の影響もでかい。
骨のある音は一昨年の来日公演でも体感できたが、
REPULSION時代に作り上げたグラインド・コアのベースのドゥーム・ヴァージョンで攻め抜くのである。

這いつくばるような曲だけでなく、
重い足取りで快活に進む曲も実にパワフルだ。
ハモンド、メロトロン、モーグ、シンセサイザーも挿入され、
アコースティック・ギターも使ってトラッド系のプログレ要素も流し込まれ、
躁状態の曲こそないにしろ今までの集大成の奇形のドゥーム・メタルが威風堂々に迫る。
王者の貫録も漂うが、
横綱相撲と呼ぶほどの守りに入った保身性は微塵も感じられない。

リー・ドリアン(vo)は嘆きのブルータル歌唱を極め、
歌詞も現時点でのリーの冷厳な終末認識と言える。
CATHEDRALの最期が近づくにつれて色濃くなっていた、
アナーコ・パンクとメタル・クラストとドゥーム・メタルをつなげる世界の黙示録の像である。
そもそも1曲目の“インスト・ナンバー”「Entrance To Hell」は、
リーが絶大な影響を受けたCRASSのコラージュ・チューンみたいじゃないか。

暗いが暗黒ではない。
鬱や陰とも違う、
CATHEDRALならではの奇妙な明るさをたたえている。
多くのドゥーム・バンドと同じく今回のアートワークも黒が貴重ではなく、
ポスター・ジャケットを広げると“いびつ”にカラフルでサウンドの色そのものだ。
フェリーニの映画みたいな内アートワークの絵柄だけでなく表ジャケットも原点を感じさせる。
デビュー・アルバム『Forest Of Equilibrium』から92年にシングル・カットした、
12”EP『Soul Sacrifice』のジャケット以来のほぼシンメトリー(左右対称)の画だ。
もっと言えば最初の音源である90年のカセット『In Memorium』のアートワークにつながる。
まるで輪廻であり、
CATHEDRALが転生を繰り返して何度も生まれ変わることを予見しているかのようである。

日本盤のボーナス・トラック「Tombs Of The Blind Dead」のデモも興味深い。
タイトルはスペインの監督アマンド・デ・オッソリオによるホラー映画の英題だ
(邦題は『エルゾンビ/落武者のえじき』『エル・ゾンビ 死霊騎士団の誕生』)。
この映画は2001年の『Endtyme』収録曲「Templars Arise! (The Return)」の元ネタであり、
ファーストの『Forest Of Equilibrium』制作に際しても下敷きにした映画のタイトルなのである。

彼より5つほど年上とはいえ、
ぼくはリー・ドリアンと同じような流れで音楽を聴いてきているから様々な思いが去来する。
前進を止めないリーはギャズ(g)らとSEPTIC TANKに取り組んでいて、
まもなく日本のMCR COMPANYからデビューEPをリリース予定でたのもしい。
ともあれ『The Last Spire』はヘヴィ・メタルやドゥーム・メタルの枠内に留まらず、
ロックの歴史を一ページも二ページも作ってきたバンドのフィナーレにふさわしいアルバムである。


★カテドラル『ザ・ラスト・スパイアー 終焉』(トゥルーパー・エンタテインメント QATE-10035)CD
日本盤は前述のボーナス・トラック1曲プラスの約62分9曲入り。
ジャケット表デザインのステッカーが封入され、
本編の曲の歌詞とクリス・チャントラー(MOSS)の英文ライナーの和訳付
(だが色々な事象に引っかけたデリケイトな歌詞だからその和訳を参考にしつつ自分でも訳すことを推奨)。
九つ折りのポスター・ジャケットを出し入れしても傷みにくい厚手のブラケース仕様という配慮も嬉しい。


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コメント

NAPALM DEATHは1st、2ndが好きなのですがCATHEDRALは聞いたことがないです。今更ながら聞いてみようと思うのですが、やはり1stから順に聞いていったほうがいいですか?

能年さん、書き込みありがとうございます。
そうですね。リー・ドリアンがどういう意識で極端な方向・・・つまり最速から最遅に向かったかを体感する上で、ファースト『Forest Of Equilibrium』をまず聴いてギャップを味わっていただきたいです。
次にセカンドの『The Ethereal Mirror』を聴くと、また別のギャップ・・メジャー感を味わえます。メンバーはいい思い出がないアルバムのようですが、ライヴの定番ナンバーが多いですし、このアルバムがあってこそ次に進めたのではないかと。サード『The Carnival Bizarre』も良盤です。
結局順番に・・・・ってことになりますが、その3作は是非。2011年のライヴ盤『Anniversary』でも新作までの代表曲がけっこう聴けます。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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