なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

MOSS『Horrible Night』

Moss-HorribleNight.jpg


ヴォーカル専任のメンバーがフロントに立ちドラマーがCATHEDRALの新作のライナーも書いていた、
ベースレス・ドゥーム・メタル・トリオの新作。

オリジナル・フル・アルバムとしては『Sub Templum』以来の約5年ぶりの3作目とも言えるが、
EP扱いとはいえ長編だから実質的には前作の『Tombs Of The Blind Drugged』(2009年)に続き、
本国イギリスではリードリアン(CATHEDRAL、SEPTIC TANK)主宰のRISE ABOVE Recordsからのリリースだ。


DISCHARGEのウルトラ・ドゥーム・カヴァーも衝撃的だった『Tombs Of The Blind Druggedから
目覚ましい深化と進化を遂げている。
“進化”というと、
「変わっちまった!」というネガティヴな声が飛ぶようなロクでもない結果に終わっている例も多いが、
彼らは違う。
バンドとしてだけでなく個人としても人間は多かれ少なかれ色々なことをしたがるのも自然なわけで、
MOSSも変わったというよりこれまでとは別のアプローチに果敢なチャレンジを試みたのだ。

今回は真正ピュア・ドゥーム・メタルであり、
メロディアスな歌を解き放つ曲がほとんどだからエピック・ドゥーム・メタルと言ってもいい。
初期CATHEDRALを思わせる極端なスロー・テンポも含みつつ、
同じ英国のSOLSTICEやWARNINGのような終末の叙情が揺らいでいる。

シンプルなリフの反復が核でテクスチャーがミニマルなスロー・テンポの曲だし、
ほとんどが10分前後という長い曲メインなのも不変だ。
長さをまったく感じさせないオーガニックなゆらぎが司り、
ドローンとフィードバックを飲み込みながらグルーミーなサイケデリックの大河が流れ続ける。
ベーシスト不在でも中低音不足なんてことがまったくないほどコシが強く、
キック・ドラムとギター・リフの共振で重低音の強度を増幅(amplifier)し、
スネアとギターのハーモニーで飛べる。

MOSSにとって何より新しい攻めは“歌うヴォーカル”である。
70年代に「Black Sabbath」を歌っていた時のオジー・オズボーンが百万倍デリケイトになったかのように、
たゆたう歌唱なのだ。
こわれそうな喉を切々と震わせて刹那の歌心が静かに佇んでいる。
以前のアルバムのトレード・マークだったANAL CUNTみたいな煩悶スクリームはほとんどないが
あくまでもナチュラルな心の声であることは変わらない。

米国のPENANCEの曲「A Wayfarer's Tale」の歌詞が3曲目「Dark Lady」に引用されている。
その曲を収めたPENANCEの『The Road Less Travelled』が92年にRISE ABOVEからリリースされ、
そのデビュー作当時のPANANCEのドラマーはCATHEDRALのデビュー作でも叩いていたことを思うと、
ドゥームの血の広がりと流れを感じさせる。
音楽性が違うとはいえ
歌詞の中の“夜”という言葉の使い方が裸のラリーズのドゥーム・ヴァージョンにも思えてくるが、
プライヴェイトの人間関係をイメージさせつつ普遍的な隠喩に富んでいる。

ずぶずぶずぶずぶハマる底無し沼のドゥーム地獄サウンドだからこそ、
沈み込むだけでなくゆっくりと立ち上がって高いところで息をしている天界を目指すみたいに
言葉と音圧で背中を押してくれる。
東尋坊から飛び降りるための背中ではない。
はいつくばってでも生き延びるための背中である。

グレイト。


★MOSS『Horrible Night』(METAL BLADE 3984-15195-2)CD
約54分6曲入り。


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コメント

今日も聴いていました。新譜を楽しみにしていたバンドだったんで見つけた時はすぐに買いましたが、聴いてやっぱり驚きました。ぼくもすぐにWARNINGを思い出しました。WARNINGの特に1st感はありそうでなくて凄く好きなんです。ただ行川さんが書かれてる通りもっと良い意味での人間らしさを感じました。音楽的には変わりましたが、醒めてない所でしょうか。変にカッコつけてなくて、どっからでも突き刺しやがれ的な感じがしました。メンバーが人間的にもでかくなってるのはホントに同感です。

LIFEさん、書き込みありがとうございます。
ぼくもやっぱりWARNINGがまず頭に浮かびました。単なる反戦反核バンドじゃなかったDISCHARGEのドゥームな本質も受け継いでいると思います。
そう、わざとらしくないんですよね、ヴォーカルが。だから人間らしい。“どっからでも突き刺しやがれ的な感じ”・・・上手い表現ですね。だからとてもやさしい音楽なのです。大好き。

以前のコメント欄にてオススメしてる方がいらっしゃったので、興味を覚えて購入しましたが思いがけずハマりました。
轟音の中に埋もれるかのような、頼りなくも哀感溢れるヴォーカルが印象的でした。
Rise Aboveは他にもCathedral、Uncle Acidなど良盤好盤のリリースが相次いでいて嬉しい限りです。通販したSeptic TankのEPももうすぐ届くので、それも楽しみにしております。

Korokuさん、書き込みありがとうございます。
轟音とヴォーカルのバランスもいいですね。レコーディングのデリケイトな仕上がりも大きいと思います。
RISE ABOVEものは近々また数作品書くと思います。全部をフォローしているわけではないですが、さすがのリリースばかりです。今月はリー・ドリアン絡みのものをたくさん書いています。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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